5 / 62
第四話★ 野生動物用の罠作り
しおりを挟む
『午前10時現在、○○地方はおおむね晴れとなっています——』
「……」
小さな事件は報道されないようだ。手掛かりがないだけかもしれないが、今のところは捜査に進展がないと思った方が気分は楽になる。まだ建国から2日目だ。早々に一国一城の主をやめるつもりはない。
さて、2日目の今日は絶好の仕事日和だ。畑には水を撒いた。飲み水も今日の分は湧き水から汲んできた。残り時間はタップリとある。けれども、目立った行動は出来ない。焚き火などをやれば、山火事だとヘリコプターが飛んで来て確認されてしまう。
だとしたら、一日中ラジオを聞いて、図書館にある本を読むべきだろうか? それもいいが、身体を動かさないと夜に寝れなくなる。それは困る。
洞窟の中はある程度、快適な暮らしが出来るようにリフォーム済みなので、ほぼやる事はない。洞窟の中は一人用の小さなテントが張られていて、そのテントの中で寝袋に入って寝ている。虫や寒さというものは気にはならない。食糧は野生動物に荒らされないように箱にキチンと保管している。
んっ? 野生動物か……。
「なるほど、まずは人間よりも野生動物を警戒するべきかもしれない」
鹿や猿、猪ぐらいはこの森にもいるはずだ。熊のような危険な生物はいないとは思うが、毒蛇はいると思った方がいい。
毒蛇に噛まれたりしたら、それこそ終わりだと覚悟しないといけない。この国に今一番必要で一番足りないのは外敵に対しての防衛設備だ。
野生動物は洞窟に侵入したり、畑の作物を荒らしたりと人間以上に身近な敵だ。捕獲できれば、貴重なタンパク源にもなり、キチンと加熱処理すれば、寄生虫は排除できるので食べる事も可能だそうだ。やはり知識は持って来て正解だった。
サバイバル本を読み終わると、早速罠作りを開始した。まずは畑の周りに設置しよう。大量に設置すると目立ってしまうが、洞窟の近くに人が来た時点で終わりだ。罠を見られる心配をするのはやめた方がいい。
手持ちの道具で作れそうな罠は今のところは落とし穴しかない。サバイバル本に載っていた罠は、ゴムやらワイヤーと持っていない材料が必要になる。代用品になるものを森の中で探すよりはスコップで穴を掘った方が早そうだ。
「はぁっ! せい! はぁっ! せい!」
両手で銅のスコップを持つと、しっかりと柔らかい土の地面に突き立て、枯れ葉の混ざった土砂を払い退ける。土木作業員になった事はないが、一時間もやれば手の平にマメが出来そうだ。罠は一日一つ作る事にしよう。
「……これでは効率が悪いな」
30分も掘れば、30分後にどの程度の落とし穴になっているか分かる。広範囲に掘ると、どうしても時間は掛かってしまう。そして、その落とし穴を隠す為に、枝やシートも大きな物を用意しなくてはならない。
大型動物を捕まえようと意識するから、大きな落とし穴を作ろうとする……つまりはその考え方が間違っていたのだ。作る落とし穴は、狭く深くものでも問題ないのだ。
人の脛ぐらいまでの穴を掘り、穴の底に尖った枝を数本設置した。対人地雷と同じで足を負傷させれば、数日か数週間後には死亡してくれるはずだ。
即死級の落とし穴を作るのを諦めると、小型の穴を畑の回りに数十個掘った。あとはラジオを聞きながら、尖った枝をナイフで数十本用意するだけだ。
「……」
小さな事件は報道されないようだ。手掛かりがないだけかもしれないが、今のところは捜査に進展がないと思った方が気分は楽になる。まだ建国から2日目だ。早々に一国一城の主をやめるつもりはない。
さて、2日目の今日は絶好の仕事日和だ。畑には水を撒いた。飲み水も今日の分は湧き水から汲んできた。残り時間はタップリとある。けれども、目立った行動は出来ない。焚き火などをやれば、山火事だとヘリコプターが飛んで来て確認されてしまう。
だとしたら、一日中ラジオを聞いて、図書館にある本を読むべきだろうか? それもいいが、身体を動かさないと夜に寝れなくなる。それは困る。
洞窟の中はある程度、快適な暮らしが出来るようにリフォーム済みなので、ほぼやる事はない。洞窟の中は一人用の小さなテントが張られていて、そのテントの中で寝袋に入って寝ている。虫や寒さというものは気にはならない。食糧は野生動物に荒らされないように箱にキチンと保管している。
んっ? 野生動物か……。
「なるほど、まずは人間よりも野生動物を警戒するべきかもしれない」
鹿や猿、猪ぐらいはこの森にもいるはずだ。熊のような危険な生物はいないとは思うが、毒蛇はいると思った方がいい。
毒蛇に噛まれたりしたら、それこそ終わりだと覚悟しないといけない。この国に今一番必要で一番足りないのは外敵に対しての防衛設備だ。
野生動物は洞窟に侵入したり、畑の作物を荒らしたりと人間以上に身近な敵だ。捕獲できれば、貴重なタンパク源にもなり、キチンと加熱処理すれば、寄生虫は排除できるので食べる事も可能だそうだ。やはり知識は持って来て正解だった。
サバイバル本を読み終わると、早速罠作りを開始した。まずは畑の周りに設置しよう。大量に設置すると目立ってしまうが、洞窟の近くに人が来た時点で終わりだ。罠を見られる心配をするのはやめた方がいい。
手持ちの道具で作れそうな罠は今のところは落とし穴しかない。サバイバル本に載っていた罠は、ゴムやらワイヤーと持っていない材料が必要になる。代用品になるものを森の中で探すよりはスコップで穴を掘った方が早そうだ。
「はぁっ! せい! はぁっ! せい!」
両手で銅のスコップを持つと、しっかりと柔らかい土の地面に突き立て、枯れ葉の混ざった土砂を払い退ける。土木作業員になった事はないが、一時間もやれば手の平にマメが出来そうだ。罠は一日一つ作る事にしよう。
「……これでは効率が悪いな」
30分も掘れば、30分後にどの程度の落とし穴になっているか分かる。広範囲に掘ると、どうしても時間は掛かってしまう。そして、その落とし穴を隠す為に、枝やシートも大きな物を用意しなくてはならない。
大型動物を捕まえようと意識するから、大きな落とし穴を作ろうとする……つまりはその考え方が間違っていたのだ。作る落とし穴は、狭く深くものでも問題ないのだ。
人の脛ぐらいまでの穴を掘り、穴の底に尖った枝を数本設置した。対人地雷と同じで足を負傷させれば、数日か数週間後には死亡してくれるはずだ。
即死級の落とし穴を作るのを諦めると、小型の穴を畑の回りに数十個掘った。あとはラジオを聞きながら、尖った枝をナイフで数十本用意するだけだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
熾ーおこりー
ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】
幕末一の剣客集団、新撰組。
疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。
組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。
志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー
※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です
【登場人物】(ネタバレを含みます)
原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派)
芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。
沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派)
山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派)
土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派)
近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。
井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。
新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある
平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派)
平間(水戸派)
野口(水戸派)
(画像・速水御舟「炎舞」部分)
終焉の教室
シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ラヴィ
山根利広
ホラー
男子高校生が不審死を遂げた。
現場から同じクラスの女子生徒のものと思しきペンが見つかる。
そして、解剖中の男子の遺体が突如消失してしまう。
捜査官の遠井マリナは、この事件の現場検証を行う中、奇妙な点に気づく。
「七年前にわたしが体験した出来事と酷似している——」
マリナは、まるで過去をなぞらえたような一連の展開に違和感を覚える。
そして、七年前同じように死んだクラスメイトの存在を思い出す。
だがそれは、連環する狂気の一端にすぎなかった……。
ファムファタールの函庭
石田空
ホラー
都市伝説「ファムファタールの函庭」。最近ネットでなにかと噂になっている館の噂だ。
男性七人に女性がひとり。全員に指令書が配られ、書かれた指令をクリアしないと出られないという。
そして重要なのは、女性の心を勝ち取らないと、どの指令もクリアできないということ。
そんな都市伝説を右から左に受け流していた今時女子高生の美羽は、彼氏の翔太と一緒に噂のファムファタールの函庭に閉じ込められた挙げ句、見せしめに翔太を殺されてしまう。
残された六人の見知らぬ男性と一緒に閉じ込められた美羽に課せられた指令は──ゲームの主催者からの刺客を探し出すこと。
誰が味方か。誰が敵か。
逃げ出すことは不可能、七日間以内に指令をクリアしなくては死亡。
美羽はファムファタールとなってゲームをコントロールできるのか、はたまた誰かに利用されてしまうのか。
ゲームスタート。
*サイトより転載になります。
*各種残酷描写、反社会描写があります。それらを増長推奨する意図は一切ございませんので、自己責任でお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる