【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第四話★ 野生動物用の罠作り

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『午前10時現在、○○地方はおおむね晴れとなっています——』

「……」

 小さな事件は報道されないようだ。手掛かりがないだけかもしれないが、今のところは捜査に進展がないと思った方が気分は楽になる。まだ建国から2日目だ。早々に一国一城の主をやめるつもりはない。
 さて、2日目の今日は絶好の仕事日和だ。畑には水を撒いた。飲み水も今日の分は湧き水から汲んできた。残り時間はタップリとある。けれども、目立った行動は出来ない。焚き火などをやれば、山火事だとヘリコプターが飛んで来て確認されてしまう。

 だとしたら、一日中ラジオを聞いて、図書館にある本を読むべきだろうか? それもいいが、身体を動かさないと夜に寝れなくなる。それは困る。

 洞窟の中はある程度、快適な暮らしが出来るようにリフォーム済みなので、ほぼやる事はない。洞窟の中は一人用の小さなテントが張られていて、そのテントの中で寝袋に入って寝ている。虫や寒さというものは気にはならない。食糧は野生動物に荒らされないように箱にキチンと保管している。

 んっ? 野生動物か……。

「なるほど、まずは人間よりも野生動物を警戒するべきかもしれない」

 鹿や猿、猪ぐらいはこの森にもいるはずだ。熊のような危険な生物はいないとは思うが、毒蛇はいると思った方がいい。
 毒蛇に噛まれたりしたら、それこそ終わりだと覚悟しないといけない。この国に今一番必要で一番足りないのは外敵に対しての防衛設備だ。

 野生動物は洞窟に侵入したり、畑の作物を荒らしたりと人間以上に身近な敵だ。捕獲できれば、貴重なタンパク源にもなり、キチンと加熱処理すれば、寄生虫は排除できるので食べる事も可能だそうだ。やはり知識は持って来て正解だった。

 サバイバル本を読み終わると、早速罠作りを開始した。まずは畑の周りに設置しよう。大量に設置すると目立ってしまうが、洞窟の近くに人が来た時点で終わりだ。罠を見られる心配をするのはやめた方がいい。

 手持ちの道具で作れそうな罠は今のところは落とし穴しかない。サバイバル本に載っていた罠は、ゴムやらワイヤーと持っていない材料が必要になる。代用品になるものを森の中で探すよりはスコップで穴を掘った方が早そうだ。

「はぁっ! せい! はぁっ! せい!」

 両手で銅のスコップを持つと、しっかりと柔らかい土の地面に突き立て、枯れ葉の混ざった土砂を払い退ける。土木作業員になった事はないが、一時間もやれば手の平にマメが出来そうだ。罠は一日一つ作る事にしよう。
 
「……これでは効率が悪いな」

 30分も掘れば、30分後にどの程度の落とし穴になっているか分かる。広範囲に掘ると、どうしても時間は掛かってしまう。そして、その落とし穴を隠す為に、枝やシートも大きな物を用意しなくてはならない。
 大型動物を捕まえようと意識するから、大きな落とし穴を作ろうとする……つまりはその考え方が間違っていたのだ。作る落とし穴は、狭く深くものでも問題ないのだ。

 人の脛ぐらいまでの穴を掘り、穴の底に尖った枝を数本設置した。対人地雷と同じで足を負傷させれば、数日か数週間後には死亡してくれるはずだ。
 即死級の落とし穴を作るのを諦めると、小型の穴を畑の回りに数十個掘った。あとはラジオを聞きながら、尖った枝をナイフで数十本用意するだけだ。



 
 

 

 
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