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第17話 空港での買い物
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♦︎道重・視点♦︎
「分かった。食糧と酒を持ってくる」
「お前の話は終わったようだな。俺の話に戻るとしようか。島で一番強い奴は誰だ?」
俺の交渉が終わったから、仁王立ちして待っていた剛田が住民達に言った。
交渉はとっくに失敗したと思っていたが、剛田の中では継続中だったようだ。
「そういえば馬鹿が残っていたな。勝ったら何が貰える? お前の友達は食糧と酒を用意してくれるそうだ。それ以外に俺達が欲しい物を用意できるのか?」
住民達の視線はかなり呆れているが、話を聞くつもりはあるようだ。
「そんなものは決まっている。世界一の男と戦える名誉だ。勝利の名誉は絶対にあり得ないがな」
「……こっちの男は話にならないな。服拾って、車に入ってろ」
住民達が答えを待っていたが、剛田が堂々と答えたものは、何の価値もないものだった。
話すのも見るのも無駄だと、手を振って話を終わらせると、住民同士の話に戻った。
「何だと! この……」
「剛田、話がある。車の中で話をしよう」
「だが……」
「いいから」
どう見ても相手にされていない。このまま勝手に殴り合いを始められたら困る。
まだ無駄な話を続けようとする剛田の腕を引っ張って、車の中に入るように説得する。
「腰抜けどもめ! 話にならない!」
「ああ、その通りだ。だが、今暴れられると困る。桃山達が人質になっている。暴れるなら俺の願いが叶って、桃山達を救出した後にしてくれ」
後部座席に座る剛田が話にならないと怒っているが、住民達も同じ気持ちだろう。
身勝手に暴れるなら、最低でも俺の願いが叶った後だ。桃山達は最悪諦める。
住民達の話が終わり、広場から空港を目指して、車を走らせた。
何があるか分からないからと、住民達は食糧と酒を要求してきた。
衣服と日用品は食糧と一緒に、定期的に落とされるそうだ。
獲物が原始人みたいに薄汚れていたら、旅行者が殺したいと思わないらしい。
よく分からない理論だが、浮浪者ではなく、普通の人間を殺す方が魅力があるみたいだ。
「いなかったな。探してみるか?」
十字路を通り過ぎると剛田が聞いてきた。十字路で待っているはずの撫子の車がなかった。
後部座席にはヴェロニカが乗っている。交渉材料にならないなら、子供二人と一緒に解放してもいい。
「どこにいるか分からないから、空港で待っていた方が無難だろう。今は食糧を集めるのが先だ」
「まあ確かにそうかもな。酒飲めば、テンションも上がるだろう。その時が戦いのチャンスだな」
まだ剛田は諦めていないようだが、食糧を積み込む車は多い方がいい。
フェンスの近くで車を止めて、ヴェロニカを降ろして縛って放置する。
あとは車で空港に戻って、二台の車に食糧品を積み込むとしよう。
金を大量に使う必要があるが、目的を達成できれば、親父も文句は言わない。
空港のホテルで、ちょっとしたお祝いをしたと言えば、誤魔化せるはずだ。
「悪いけど、ここで待っててもらう。一時間以内に戻ってくる」
手足を縛ったヴェロニカを道路脇に降ろして、飲み物とチョコレートを地面に置いた。
トイレはやせたから、少し時間がかかっても大丈夫だろう。
剛田に通訳を頼んで、ヴェロニカに理解させると空港に向かった。
二重の鉄扉が右と左に動いて、空港への道が開いた。
「車は一台だけか。別の場所に止めているのか?」
「さあな。とにかく乗ってくれ。こっちの車は充電も必要そうだ」
「そうだな。夜のゴールデンタイムには間に合わせたい」
門を通り抜けると、フェンス近くに止まっている一台の装甲車を見て、剛田が言った。
撫子達は空港に戻って来てないようだ。
子供が一緒だから、フェンス近くの森の中に、車だけ置いた可能性もある。
案外ホテルの中で、のんびりしているかもしれない。
白い九階建てのホテルの駐車場に車を止めると、土産物が並ぶ商店を見ていく。
映画館や遊技場、射撃場、プールやレストランもあるが、遊ぶ時間はない。
殺害者数のレコード記録が載っているが、最高が百五十四人と凄い数だった。
とても真似できそうにない。
少し高めの菓子や酒、缶詰に入った保存食を購入していく。
料理は売っていないから、レストランに頼んで大量に作ってもらう必要がある。
時間はかかるが、適当な物を用意したら交渉が失敗するだけだ。
剛田の言う通り、ゴールデンタイム、夜までに間に合わせてもらおう。
「手錠は売ってないんだな」
住民を生け捕りしたい旅行者はいないようだ。武器と一緒でロープも売っていなかった。
必要な物はランプぐらいだが、装甲車に乗っていたから、これも必要ない。
迷彩柄の軍服が売っているから、この辺を買っていくとしよう。
「……帰ってないのか」
買い物と料理の注文を終わらせると、ホテルの従業員に撫子がいる部屋を聞いた。
まだ二人は帰ってきてないみたいだ。桃山達と同じで捕まっている可能性がある。
食糧と酒を渡す前に、人質の人数を確認した方が良さそうだ。
交渉内容を変更する必要があるかもしれない。
「分かった。食糧と酒を持ってくる」
「お前の話は終わったようだな。俺の話に戻るとしようか。島で一番強い奴は誰だ?」
俺の交渉が終わったから、仁王立ちして待っていた剛田が住民達に言った。
交渉はとっくに失敗したと思っていたが、剛田の中では継続中だったようだ。
「そういえば馬鹿が残っていたな。勝ったら何が貰える? お前の友達は食糧と酒を用意してくれるそうだ。それ以外に俺達が欲しい物を用意できるのか?」
住民達の視線はかなり呆れているが、話を聞くつもりはあるようだ。
「そんなものは決まっている。世界一の男と戦える名誉だ。勝利の名誉は絶対にあり得ないがな」
「……こっちの男は話にならないな。服拾って、車に入ってろ」
住民達が答えを待っていたが、剛田が堂々と答えたものは、何の価値もないものだった。
話すのも見るのも無駄だと、手を振って話を終わらせると、住民同士の話に戻った。
「何だと! この……」
「剛田、話がある。車の中で話をしよう」
「だが……」
「いいから」
どう見ても相手にされていない。このまま勝手に殴り合いを始められたら困る。
まだ無駄な話を続けようとする剛田の腕を引っ張って、車の中に入るように説得する。
「腰抜けどもめ! 話にならない!」
「ああ、その通りだ。だが、今暴れられると困る。桃山達が人質になっている。暴れるなら俺の願いが叶って、桃山達を救出した後にしてくれ」
後部座席に座る剛田が話にならないと怒っているが、住民達も同じ気持ちだろう。
身勝手に暴れるなら、最低でも俺の願いが叶った後だ。桃山達は最悪諦める。
住民達の話が終わり、広場から空港を目指して、車を走らせた。
何があるか分からないからと、住民達は食糧と酒を要求してきた。
衣服と日用品は食糧と一緒に、定期的に落とされるそうだ。
獲物が原始人みたいに薄汚れていたら、旅行者が殺したいと思わないらしい。
よく分からない理論だが、浮浪者ではなく、普通の人間を殺す方が魅力があるみたいだ。
「いなかったな。探してみるか?」
十字路を通り過ぎると剛田が聞いてきた。十字路で待っているはずの撫子の車がなかった。
後部座席にはヴェロニカが乗っている。交渉材料にならないなら、子供二人と一緒に解放してもいい。
「どこにいるか分からないから、空港で待っていた方が無難だろう。今は食糧を集めるのが先だ」
「まあ確かにそうかもな。酒飲めば、テンションも上がるだろう。その時が戦いのチャンスだな」
まだ剛田は諦めていないようだが、食糧を積み込む車は多い方がいい。
フェンスの近くで車を止めて、ヴェロニカを降ろして縛って放置する。
あとは車で空港に戻って、二台の車に食糧品を積み込むとしよう。
金を大量に使う必要があるが、目的を達成できれば、親父も文句は言わない。
空港のホテルで、ちょっとしたお祝いをしたと言えば、誤魔化せるはずだ。
「悪いけど、ここで待っててもらう。一時間以内に戻ってくる」
手足を縛ったヴェロニカを道路脇に降ろして、飲み物とチョコレートを地面に置いた。
トイレはやせたから、少し時間がかかっても大丈夫だろう。
剛田に通訳を頼んで、ヴェロニカに理解させると空港に向かった。
二重の鉄扉が右と左に動いて、空港への道が開いた。
「車は一台だけか。別の場所に止めているのか?」
「さあな。とにかく乗ってくれ。こっちの車は充電も必要そうだ」
「そうだな。夜のゴールデンタイムには間に合わせたい」
門を通り抜けると、フェンス近くに止まっている一台の装甲車を見て、剛田が言った。
撫子達は空港に戻って来てないようだ。
子供が一緒だから、フェンス近くの森の中に、車だけ置いた可能性もある。
案外ホテルの中で、のんびりしているかもしれない。
白い九階建てのホテルの駐車場に車を止めると、土産物が並ぶ商店を見ていく。
映画館や遊技場、射撃場、プールやレストランもあるが、遊ぶ時間はない。
殺害者数のレコード記録が載っているが、最高が百五十四人と凄い数だった。
とても真似できそうにない。
少し高めの菓子や酒、缶詰に入った保存食を購入していく。
料理は売っていないから、レストランに頼んで大量に作ってもらう必要がある。
時間はかかるが、適当な物を用意したら交渉が失敗するだけだ。
剛田の言う通り、ゴールデンタイム、夜までに間に合わせてもらおう。
「手錠は売ってないんだな」
住民を生け捕りしたい旅行者はいないようだ。武器と一緒でロープも売っていなかった。
必要な物はランプぐらいだが、装甲車に乗っていたから、これも必要ない。
迷彩柄の軍服が売っているから、この辺を買っていくとしよう。
「……帰ってないのか」
買い物と料理の注文を終わらせると、ホテルの従業員に撫子がいる部屋を聞いた。
まだ二人は帰ってきてないみたいだ。桃山達と同じで捕まっている可能性がある。
食糧と酒を渡す前に、人質の人数を確認した方が良さそうだ。
交渉内容を変更する必要があるかもしれない。
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