【完結】死が二人を祝福するまで〜私立高校生八人の殺処分島への殺人修学旅行〜

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
上 下
12 / 26

第12話 勇者全滅

しおりを挟む
 ♦︎桃山・視点♦︎

「だらあああ!」

 マシンガンを両手で持って、階段を塞ぐ段ボール箱を撃ちまくる。
 段ボール箱の中から、斜めに切られた木製の土台が現れた。
 土台を乗り越え、段ボール箱を蹴り飛ばして、七階に上った。

「駄目だ。いない」
「ここももぬけの殻か」

 俺が階段の見張りをして、猿橋に七階の部屋を調べてもらった。
 ひと通り柱の裏まで調べると、猿橋が軽く首を左右に振って戻ってきた。

「外から見たら感じ、次が屋上だ。いるならそこだろう」
「やっとか。居なかったら他の建物を探さねえとな」
「ああ、ネズミ一匹見逃さない」

 階段を警戒しながら上っていく。
 階段の折り返し地点に段ボール箱のバリケードは無かった。
 屋上へと続く、扉が無い長方形の入り口が見えた。

「俺が行く。援護してくれ」

 罠があるとしたら屋上だ。猿橋が無言で頷いた。
 入り口の穴からは屋上の左右が見える。注意して覗いてみたが、左にも右にも住民は見えない。
 階段部分の屋根の上にいる可能性がある。壁の死角に隠れている可能性もある。

「よし!」

 屋根の上から攻撃される前に通過する。
 何度も深呼吸して気持ちを落ち着かせると、屋上に向かって走った。

「ぐぅぅ! くぅっ!」

 屋上に出ると、素早く屋根の上に銃口を向けた。誰もいない。
 次に屋根の左右の死角を確認した。誰もいない。

「猿橋、大丈夫だ。他の建物を探してくれ」
「分かった」

 イラつく結果だが、屋上を手に入れた。
 俺の目には、他の屋上には住民の姿は見えない。
 猿橋のライフルのスコープが頼りだ。

「面倒だな。まったく見えない。銃声にビビって隠れたのかもしれない」

 屋上から周辺の建物を探してみたが、窓から住民は顔を出さない。
 このまま夜まで我慢比べするのは得策じゃない。攻めるなら明るいうちがいい。

「それなら問題ねえな。建物から出たら、犬石がクラクションを鳴らしている。捕まえに行くぞ」
「いや、一階の窓から逃げれば分からない。探すだけ無駄になりそうだ」
「じゃあ、最初から食糧ポイントに行けば良かったのかよ……」

 永鳥が殺されたのに、一人も捕まえられないとか有り得ない。このまま空港に帰れない。
 アイツの親に何もせずに帰ってきたとは言えない。誰でもいいから住民を殺してやる。

「顔は隠した方がいいな」

 五階まで戻ると、永鳥の頭に俺の制服の上着を被せた。
 潰れた顔を見ながら運べるほど、精神的にタフじゃない。
 猿橋と一緒に永鳥に肩を貸して立たせると、引き摺っていく。

「ククッ。これが本当のお荷物な男だな」
「おい、馬鹿なこと言うなよ。落とすだろ」
「もう潰れているからバレないさ」

 階段を下りている時に冗談はなしだ。ただでさえ段ボール箱が邪魔で歩きづらい。
 足で押すように、階段に散らかっている段ボール箱を退けていく。
 四階まで下りたら、段ボール箱はないから下りやすくなる。

「う⁉︎」

 階段の折り返し地点を曲がって、階段を下りようとした。突然背中を強く押された。
 両足が浮かび上がり、身体が階段下に倒れていく。右を見ると驚く顔の猿橋が見えた。
 俺と同じように倒れている。二人一緒につまずくなんて有り得ない。

「ぐがあ! ぐががが、あがっ!」

 咄嗟に身体を捻って、顔面から落ちずに、身体の左側から落ちるようにした。
 肘と脇腹に階段の角が突き刺さる。身体が階段を滑り落ちていく。

「ぐうぅぅ!」

 下まで落ちずに階段の途中で止まった。
 骨が折れたような気分だ。苦しくて身体が動かない。

「XXXXX。XXXX」
「ぐぐぐっ……!」

 階段を下りてくる男の声が聞こえた。
 身体を横にずらして、上を見上げると、黒髪の白人が立っていた。
 階段にこんな奴がいたら気づいている。

 隠れられる場所なんて段ボール箱の中ぐらいだ。
 おそらく俺達が上に行っている間に、下から階段を上って、段ボール箱に紛れ込んだ。
 犬石の馬鹿が見逃したに決まっている。

「XXXXXXXX」
「がぐっ、がぶっ!」

 男の靴底が俺の顔面を踏み潰した。意識が飛びそうになる。
 もう一度靴底が顔面を襲うと、意識が完全に飛んだ。
 
 ♦︎犬石・視点♦︎

「いつまで待てばいいんだよ」

 三人が建物に入ってから、三十五分も経った。
 このぐらいの建物なら、十五分もあれば調べられる。
 銃声が聞こえたから、やられたんじゃないだろうか。

「仕方ないなぁー」

 住民は誰もいないけど、クラクションを数回鳴らした。
 これで反応がなければ、全滅している可能性が高い。

「……駄目か。逃げた方がいいのか、助けた方がいいのか、どっちなんだよ」

 五分待ったけど、誰も出てこなかった。やられたのなら建物の中に住民がいるという証拠だ。
 三人が殺されたのなら逃げた方がいいけど、捕まっているのなら助けた方がいい。

「はぁー、地獄の入り口みたいだ」

 建物の暗い入り口を見た。どう考えても入りたくない。それでも扉を開けると外に出た。
 銃声は一種類しか聞こえなかった気がする。相手が素手なら警戒すれば大丈夫だ。

「確か上の方だったんだよな」

 マシンガンの引き金に指を置いて、いつでも撃てる状態で進んでいく。
 銃声が聞こえたのは四階ぐらいだった。そこまで行けば何か分かる。

「こういうのって、壁とかから飛び出してくるんだよね」

 マシンガンを階段終わりの壁に向かって、数発撃って進んでいく。
 死角から飛び出す奇襲攻撃は定番だ。安全を確認しながら進んでいく。

「……これは?」

 四階まで上がると、階段近くの床に何かを引き摺った後を見つけた。
 床の一部が川が流れたように綺麗になっている。川は四階の部屋に向かって流れている。
 追いかけていくと、部屋の中に青緑色の制服を着た二人が倒れていた。

「永鳥と桃山?」

 床に倒れている二人は顔を制服の上着で隠している。体格だけで何となく分かるけど、猿橋がいない。
 もしかして、いつもの悪ふざけをしているんじゃないだろうか。僕を驚かして楽しむつもりなら最悪だ。
 近くにマシンガンを撃ち込んで、飛び起こしてやりたくなる。

「XX!」
「ごばぁ!」
 
 背中に突然激しい痛みが走った。鉄パイプで叩かれたような衝撃に身体が反っている。
 何が起こったか分からないうちに、二回目が右肩を襲ってきた。

「だがあ!」

 我慢できずに床に倒れると、また衝撃が襲ってきた。
 必死に左目だけで上を見ると、白人の男が見えた。
 手に持っているのは鉄パイプじゃなくて、猿橋のライフル銃だった。
 長い銃身を持って、僕に振り下ろしてきた。

「ががぁ!」

 使い方が違う。顔面にぶち込まれて、意識が消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ラヴィ

山根利広
ホラー
男子高校生が不審死を遂げた。 現場から同じクラスの女子生徒のものと思しきペンが見つかる。 そして、解剖中の男子の遺体が突如消失してしまう。 捜査官の遠井マリナは、この事件の現場検証を行う中、奇妙な点に気づく。 「七年前にわたしが体験した出来事と酷似している——」 マリナは、まるで過去をなぞらえたような一連の展開に違和感を覚える。 そして、七年前同じように死んだクラスメイトの存在を思い出す。 だがそれは、連環する狂気の一端にすぎなかった……。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

指がささくれ立った女

平井敦史
ホラー
あそこの廃病院のあたりに、出るんだそうですよ。指がささくれ立った女が。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...