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第3話 四人の仲間

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 ♦︎道重・視点♦︎

「空港にはホテル、病院、商店もあります。それではご自由に殺処分島をお楽しみください」

 武器を配り終えると、大尉の案内はこれで終わりのようだ。
 車に乗り込むと俺達を残して、軍事基地のような建物に向かっていく。

「剛田拳聖だったよな? 一人で参加したのか?」

 同学年だが、別クラスだ。百九十センチはある赤い坊主頭の男に話しかけた。
 総合格闘技の全国大会で三年連続で優勝した男だ。名前と顔ぐらいは知っている。

「ああ。クラスの誰かを誘ったわけじゃないからな。お前は両手に花でバカンス気分か?」

 俺の近くにいる撫子と薬師寺を見た後に、剛田が軽く笑って言った。
 確かにそう見えなくもないが、否定させてもらう。

「いいや、二人ともただのクラスメイトだ。バカンスがしたいなら、こんな島には来ない」
「だろうな。お前はレイプ魔にも戦闘狂にも見えないが、こんな島に何しに来たんだ?」
「親からの命令だよ。人殺しが成人の儀式なんでね」
「ほー、古臭いしきたりだな。暗殺者の末裔か」

 脳筋馬鹿かと思ったが、意外と話が通じるみたいだ。これなら問題なさそうだ。
 選んだ武器を見れば、その人間の性格が分かるという。
 撫子はハンドガン、薬師寺はサバイバルナイフ、剛田は武器なしだ。
 明らかに馬鹿だが、それだけ身体に自信があるのだろう。

「良かったら一緒に行動しないか? あの車なら四人乗れる」

 フェンスの前には装甲車が三台止まっている。単独行動は危険なだけだ。
 桃山達のように集団行動した方が、死亡リスクを減らすことが出来る。

「それはいいが、まずはお互いの自己紹介と目的を話そうぜ。フェンスの中は殺人OKだ。過去には友達同士で殺し合ったこともあるらしい。寝ている間に殺されたくねえよ」

 二つ返事で同意すると思ったのに、殺人旅行を選んだ理由を聞いてきた。
 俺に剛田を殺す意味はないが、撫子や薬師寺のような女を犯したいと思う奴もいる。
 桃山達なら俺を殺した後に、実際にやりそうな気がする。
 住民以外にも無駄な用心が必要そうだ。

「意外と用心深いんだな。じゃあ、俺から話す。名前は道重歩、島に来たのは親の命令で、嫌々参加している」
「嫌々って、それだとつまんねえだけだろ。親の言うこと聞けば何か貰えるのか?」
「結婚と大人の仲間入りぐらいだな。約束された将来と言えば分かるか」

 剛田は楽しみで来たようだが、理由は人それぞれだ。
 俺が来た理由は一族の伝統だからだ。父親、祖父と代々続けられている。
 命の重みを理解するのと、命を奪う覚悟と決断力を得ることが出来るらしい。

 歩という名前は将棋の駒から来ている。
 歩は敵の陣地に入ると、駒がひっくり返って『と金』になる。
 と金になると、金と同じ動きが出来るようになる。そして、金は王の隣にある駒だ。
 金は王に一番近い駒で、王と代れる可能性がある駒らしい。

 親が俺に求めているのは、死地に入って、人殺しで大きく成長した俺だ。
 この旅行は俺が父親の右腕になれる存在か、その最終試験のようなものだ。

「まあこんな感じだ。遊びではなく、将来がかかっている。悪いが楽しむつもりはない」
「ああ、悪かったよ。邪魔しないからせいぜい頑張れ。そっちの二人はどうして来たんだ?」

 俺の話を聞いて、剛田はつまらないといった顔をしている。
 これ以上聞くつもりはないと、撫子と薬師寺に聞いている。
 撫子が俺の婚約者で付いて来たと話すと、今度は不機嫌そうな顔で俺を見てきた。
 俺の所為じゃない。親と撫子が勝手に決めたことだ。

「薬師寺瑠華です。私は怖いもの見たさで来ました」
「本当か? それならホラー映画で十分だろ。自殺願望とかねえよな?」
「そんなものありませんよ。剛田君こそ素手が武器とか、自殺願望丸出しじゃないですか。住民は旅行者から奪った武器で武装しているそうですよ。弓とかボウガンで撃たれたら死にますね」
「口の悪い女だな。喧嘩売ってんのか?」

 薬師寺は静かな口調で毒舌を言っているが、目的は曖昧なままだ。
 目的が話せないのか、本当に怖いもの見たさで来たのかもしれない。
 これ以上無駄な詮索に時間をかけていられない。そろそろ終わりにしよう。

「薬師寺はもういいだろ。剛田の目的は何なんだ? 島で一番強い奴を倒しに来たわけじゃないだろ」
「何言ってんだ? それ以外にないだろ。俺は手加減抜きの本気の試合がしたいんだよ」

 冗談で言ったつもりだったのに正解だったようだ。
 剛田が強敵との出会いを想像しているのか興奮している。
 自殺願望があるのは、どちらかというと剛田の方だな。

「それなら熊を倒した方が早いだろ」
「いや、熊ならもう倒した。次にやるなら象しかいない」
「じゃあ、アフリカ行けば良かったんじゃないのか?」
「お前、何言ってんだ? 象は保護動物だぞ。倒せるわけないだろう」

 格闘馬鹿に何を言っても無駄らしい。
 これ以上は話すだけ、俺が馬鹿になりそうだ。
 話を終わらせることにした。

「よし、もう話は十分だな。そろそろ行こう。剛田は一人で死なずに頑張ってくれ」
「何言ってんだよ。一緒に行くに決まっている。俺が守ってやるよ」
「あー、助かるよ」

 置いて行こうとしたが、剛田は俺達と同じ車に乗るらしい。目的を聞いて信用したようだ。
 こっちは二、三人殺したら、残り時間は空港のホテルでゆっくりしよう。
 俺達八人で三日間も貸し切り状態なのに、使わない方が勿体ない。
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