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21日目

ジョブ狩師・肉師

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「知っていることを全部話しなさい。話すまで生きて返さないから」

 ミランダが脅迫した。ウェインが望んでいた食事が始まった。
 女性六人に囲まれて、心臓がドキドキしている。

「全部って言われても、何が知りたいのか教えてくれないと……」
「じゃあ、年齢ね」
「歳は18で、三人兄妹の長男です」
「えっ? アイツ、18なの。何月生まれ?」

 ミランダもまだギリギリ18だ。二月生まれで、現在は一月だ。

「確か九月だったような……」
「はんっ。アイツ、年下のくせに私に偉そうにしてたの。生意気なガキね」

 生意気さはミランダの方が確実に上だ。

「ジョブとスキルは何ですか? まだ聞いたことないです」

 機嫌が良くなったミランダは気にせずに、カノンが質問した。
 ステータスと住所と家族構成は知っている。知らないのはジョブだけだ。
 カノンに聞かれて、ウェインはペラペラ話し出した。

「アイツのジョブは狩師で、スキルに危険察知があるんだよ。自分と周囲の人間の危険度が分かるんだ。さっき助けたのも、スキルで分かったからで……ちなみに俺のジョブは肉師で、肉の加工が得意——」
「あんたのはどうでもいいわ。危険察知なら、ますます護衛に持って来いじゃない!」

 ウェインのジョブは、ミランダにはどうでもいいみたいだ。
 だが、ウェインが作る燻製肉とソーセージは絶品だ。そこそこ良い店が買取ってくれる。
 そんな中堅肉師のウェインが追加情報を教えてくれた。

「あー、それは無理かも。アイツ、危険を感じる女には近づかないようにしているから。多分、近づいたら自分が危険な目に遭うと分かったんだよ」
「ふーん、つまりは私が危険な女だと分かって、ビビったわけね」

 危険で厄介な女だ。カノンと同じで関わると身の破滅が待っている。
 カノンが危ない時は助けたが、自分が危ないと分かると距離を取っていた。

「ますます面白いじゃない♪ 私達、レベル30まで上げたいの。あんたに護衛の仕事をさせてあげるから、アイツも連れて来なさい。訓練所の魔物から身体を張って、私を守るのよ!」
「いやぁー、スライム程度なら護衛なんて必要ないよ。このナイフで数回刺せば倒せるから」

 ミランダは得意気に言っているが、訓練所の魔物スライムを知らない。
 ウェインがギザギザしている食事用の小さな鉄ナイフを持つと、それでテーブルを軽く突いて見せた。
 スライムはこの程度で倒せる雑魚魔物だと教えている。

「なに? イモ虫みたいに弱いの?」
「はい、弱いです。このぐらいの丸くて青い魔物です。丸い肉の塊、野菜だと思えばいいです」
「あぁー、なるほど。青トマトね♪ 赤トマトもいるの?」

 わざわざ護衛を頼む魔物じゃない。
 カノンは姉達にスライムの姿を手振りで教えている。
 フローラには伝わったようだ。

「はい、火山洞窟に赤い火スライムがいます。触ると手が燃えて危ないです」
「へぇー、それも買い物中の冒険者が教えてくれたの? 随分と長く話していたのね」
「はい、ペラペラともうしつこくて。帰してくれなくて」

 架空の冒険者にナンパされたと、カノンは余計なことを言いまくる。
 話が大きく脱線して、一番困るのはウェインだ。
 料理の皿は空になっている。護衛の仕事がないなら帰らせて欲しい。

 ♢

 訓練所のスライム見学が終わると、カノン達は屋敷に帰った。
 明日のレベル上げの護衛依頼をウェインに頼むと、ミランダは楽しそうだった。
 あの性格だから、男友達も女友達もいない。誰かと行動するのが楽しいようだ。

「準備を念入りにしないと死にますね」

 明日のレベル上げに行くのは、ミランダとカノンと使用人だけだ。
 ロクサーヌが危険な魔物狩りに、娘全員を行かせるわけがない。
 カノンは安全の為に武器を限界まで強化した。

【名前=クリスタル神風ダガー 種類=武器(短剣) 損傷率=0%
 レベル=30(最大レベル) 攻撃力=120 魔法攻撃力=120
 ステータス効果=HP+9999 MP+9999 力+999 素早さ+999
 その他の効果= 風魔法『極大風刃(消費MP50)』 時魔法『2倍速(消費MP50)』が使用可能】

「これで完璧です。危なくなったら、気づかれないうちに倒しましょう」

 青く輝くクリスタルの短剣に、カノンは全ての力を注ぎ込んだ。
 ステータス効果のHP、MP、力、素早さはもう上げられない。
 上げる必要もない程に強力過ぎる武器だ。
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