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僕の人生に良いことはなかった(犬獣人視点)

第6話 地下1階は草原だった

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「早くなんだも! 早くなんだも!」
「はいはい、落ち着いて落ち着いて」

 僕よりもアンガスの方が待ち遠しいみたいだ。
 ソワソワと地下1階の扉を開けるように言ってくる。
 壁に触れると、地下1階と唱えた。

「あれ? 階段がないんだも⁉︎」
「うん、でも丸い絵が床にあるよ」

 扉を開けると、床に葉っぱの絵が描かれていた。
 アンガスの言う通り、階段はない。
 もしかすると、この絵に乗れば地下1階に行けるとか?

「まさかねぇ~」

 でも、やってみないと分からない。
 試しに葉っぱの絵の上に乗ってみた。

「うわっ!」

 すると、絵が光って一瞬身体が宙に浮いたような気がした。
 でも、元いた場所のままだった。何も起こっていない。

「あれ? アンガスは?」

 でも、目の前にいたはずのアンガスが消えて、開いていた扉が閉まっていた。
 やっぱり何か起こったみたいだ。絵から降りて、扉を開けてみた。

「うわぁ⁉︎ なにこれ⁉︎」

 風が吹いている。地面が柔らかい草原だ。天井には流れる雲とお日様が見える。
 部屋の中なのに、外にいるみたいだ。

「へぇー、凄ぉ——あうちぃ! なにこれ?」

 草原を歩いていると、すぐに透明な壁にぶつかってしまった。
 透明な壁の向こうには草原が続いているのに、その先には進めない。
 絵の壁の中に閉じ込められた気分だ。

「いたんだも! 急に消えたからビックリしたんだも!」
「あっ、アンガス! ほら、草原だよ! 草あるよ!」

 絵の壁にある開いた扉から、アンガスが遅れてやって来た。
 急いで草原の緑色の細長い葉っぱを千切って、アンガスに見せた。

「もぉー、だから食べないんだも。まあ、そこまで言うなら、ちょっとだけ食べるんだも」
 
 食べてみてとは一言も言ってないのに、アンガスが自分で草を千切って口の中に入れた。

「むぐむぐ……だもん‼︎ この草⁉︎ 最高級の草なんだも‼︎ 今まで食べた草の中で一番美味しんだも!」

 やっぱり牛じゃん。地面の草を千切っては食べ、千切っては食べまくっている。
 僕も試しに食べてみたけど、すぐにペェッと吐き出す美味しさだった。

「あっ、この草無限に生えるみたい。これなら永遠に食べられるね」

 アンガスが食べまくっているのに、食べた草がすぐに伸びている。

「さすがに毎日は食べたくないんだも」
「その前に僕は食べられないよ。なんか野菜でも育てられないかな?」

 これだけよく育つなら、種とかまけばすぐに育ちそうだ。

「種は分かんないんだも。でも、野菜なら売ってるんだも。野菜を埋めれば育てられるんじゃないんかだも?」
「野菜屋かぁ~」

 別に野菜屋じゃなくても、野菜なら飯屋とか家とかに置いてある。
 このダンジョンのすぐ近くに飯屋があったから、そこから取って来れれば育てられるかもしれない。
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