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第8.5勝ざまぁ編(プロデューサーの場合)。
第121話・プロデューサー編完結。
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『ボォグゥ!』
「きゃああ~!」
「きゃああ~!ってか?フッフフフフ、ゲームの中とはいえ、女の子を殴るなんて現実じゃ出来ないからな。なかなか良い体験させてくれるぜ。」
エミィの私室に転送された岩田は、早速仕事中のエミィを見つけて殴りつけました。
「何だこれ?職業別訓練マニュアル?ハァ~、NPCが軍隊ごっこしてるのかよ。元村女が軍師とはな。まあいい、持っている本をすぐに出せ。エッサが持っていた本だ!」
(誰コイツ?エッサの知り合い?……ンンッ、殴られて痛いけど、95点。性格は最悪そうだけど。)
こんな時に岩田ゼウスの顔の評価はどうでもいいです。さっさと本を出さないと殺されますよ。
「本なんて知らないわ。あなたが誰かは知らないけど、ちょっと!何、ベッドの下を探しているのよ!やめなさい!」
ベッドの下を探す岩田を慌てて止めようとしますが遅いです。本は見つかってしまいました。だから、本はベッドの下に隠したら駄目です!アイテムボックスに入れてください。
『パラパラ…パラパラ…パァタン。』
「間違いないな。この本はシステムデータとリンクしている。表示されているのは一部だけだが、一体誰がこんな物を作りやがったんだ。」
(明らかに意図的に作られた本だが、俺の制作チームにこんな悪戯やって得する奴なんかいるか?だとしたら外部の奴……スポンサーの婆?いや、アイツも違うな。そもそも、こんな事する意味が分からねぇ。)
得体の知れない人物が、誰にも知られずに、自分の作ったゲームの中に落とし物をして行ったような奇妙な感覚です。外部からは切り離された岩田の仕事場に、そもそも関係者以外が侵入する事は不可能なはずです。
「万物の始まりの日よ!星々の母なる産声よ!光よ集まれ!闇を斬り裂く大いなる瞬間!ビッグバン!」
『ヒュルルッン……サァーーー!!!』
エミィのレベル60の魔法が炸裂しました。音のない大爆発によって生じた高熱の波が、エミィの部屋の中の家具や私物を容赦なく焼き尽くしてしまいました。
「ハァハァ、今ので倒せなくても人が来るのは時間の問題よ!あなた誰?エッサの仲間なの?私を殺すように頼まれたの?何とか言ったらどうなの!」
あの魔法を食らって生きているのなら、間違いなく基本ステータスはメインキャラクターと同じです。砂埃が漂う部屋の中に白いローブの男がまだ立っていました。
「何か勘違いしていないか?俺はエッサの仲間じゃない。それにエッサはさっき殺して来た所だ。あっあ、そうだ!エッサからの伝言があった。『エミィを殺さないで欲しい。エミィを殺さないで欲しい。』だ。俺がなんて答えたと思う?フッフフ、絶対嫌だ。ヒィヒヒヒヒ~~」
杖で殴って殺そうか、それともデータ女を犯してみようか、どれをやっても面白そうだ。おっと、邪魔者が来たら困るな。
バタバタとエミィの私室に向かって来る足音が聞こえて来ました。お城の兵士達でしょう。プロデューサーにかかれば雑魚と同じですが、数の多い雑魚をいちいち潰すのは面倒なだけです。
「システムコール・ケリュケイオン。この部屋を外部から切り離せ。」
『ビィー、隔離ですね。了解しました。完了まで、3、2、1………この部屋は外部から完全に切り離されました。』
訳の分からない言葉を喋る謎の男の正体に、エミィは気づいてしまったようです。
「ハッ!もしかして……あんた、プロデューサーなの?」
大正解です。勘もいい村女には、特別サービスで全裸にして神様の子供を孕ませてあげましょう。既に中に入っている胎児には消えてもらいます。
エミィを床に押し倒すと、杖をお腹に押し当てました。システムの力でエミィのお腹の中の、ロックタの子供は消えてしまいました。おそらくはは別の女性のお腹に強制転送されたのでしょう。
「ハァハァ、5分で犯して、孕ませて、出産させてやるよ!杖を使えば1人ぐらいの時間程度は簡単に操れる。そうだ!何人産ませられるか実験するのも面白そうだ!まずは1人目だな。」
『ビリビリ!ビリビリ!』
「お願い、やめてください!神様、お願いします!」
エミィの抵抗虚しく、力では岩田に勝てません。魔法を使おうにも、口を塞がれるだけです。このまま玩具にされて殺されるだけです。
『ビィー、ビィー、警告!警告!外部から何者かがこの場所に強制転送して来ます。警告します。外部からの侵入者です。』
「はぁ?そんな訳ないだろう!今あのビルの中にいるのは俺だけなんだぞ!」
動揺する岩田の前に、光の球体に包まれた死んだはずの人物が現れました。光の球体がパチンと破裂して消えて行きました。
「おいおい、その尻軽女を犯していいのはオラだけだべぇよ。それにまあまあの顔にも傷がついてるべぇ。殴るならボディーのするべぇ!」
「エッサ、本当に生きてたのね。」
「待たせたんだな。コイツをすぐに倒して、たっぷりと犯してやるんだべぇな。覚悟するんだべぇよ。」
結局はエミィの運命は変わりません。犯されて殺されるなら、39点のエッサよりも、95点の岩田ゼウスを選びます。神様、頑張ってください!
「あのスポンサーの婆か!あの女がセキリュティコードに細工して俺の会社に入っているのか!あの婆が!」
「ファイヤーボール。」
『ヒュ、ドォン!』
「ぐぅっ!どういう事だ!」
詠唱文無しの高速ファイヤーボールが岩田のボディーに直撃しました。避ける事も察知する事も出来ませんでした。
「お前と同じ事をしただけだべぇ。でも、苦しむ顔が見たいから威力は弱めたべぇ。次はもうちょっと痛くするべぇよ。」
(詠唱文無し、心の声も読めない、それに俺の痛覚センサーがオンになっている!何をした?何でオフにならねぇ。システムが婆に乗っ取られたのか?)
岩田の仕事場には誰もいません。いるのはゲーム世界にログイン中の寝ている岩田プロデューサーだけです。
「スリーアクアカッター。』
「ぐぅっ!あうっ!やめ!」
エッサの言う通りに少しずつダメージが増えて行きました。このまま、ただ立っていてもやられるだけです。プロデューサーは反撃します。
「もう一度、殺してやる!ライジング・パニィシュメント!」
「馬鹿のように、頼みの綱は一撃必殺魔法だべぇか。ハァ~~、やれやれ、タイムストップ。」
『カチコチ…カチコチ…ピィタ……』
同じオーディンの特殊魔法です。世界の時間が停止しました。動けるのはエッサだけです。
「止められるのは、10秒だけだべぇ。フレイムウェポン。」
エッサは付加魔法で両手剣全体に火の加護を付加しました。本来は狩人や聖騎士しか使えない魔法ですが、今のエッサならば全ての魔法を使う事も可能かもしれません。
「行くべぇよ。親友!オオーーー!天を焼き尽くす炎龍の咆哮!魔皇獄炎・豪・昇龍破斬!くたばれ~~!!」
『ドォスン、ビリビリ、ビリビリ……ギィギィ、ガァガァ!』
エッサの渾身の一撃でも、杖にはヒビも入りません。エッサが狙っているのは岩田ではありません。システム・ケリュケイオンの杖です。この杖がある限り岩田は強制的に何度もリトライし続けます。
「グッグッ、ぐぅへへへへ、本当に壊れないべぇな。木ならちょっとは燃えると思ったんだべぇがな。」
今も力を入れて攻撃を続けていますが、ビクッともしません。残り時間は1…0秒です。エッサの時間切れです。
「なっ!何で目の前にいるんだ!チッ、時間停止か。痛ぶる事しか考えてなかったから忘れてたぜ。」
「グッグッ、壊れるべぇ!」
「ハッハ、終わりだよ、エッサ。エミィと仲良く死ぬんだな。」
バチバチと稲妻の槍が出現し始めました。もう間に合いません。
(エッサが負ければ、私は確実に死ぬのね。)
エミィは死ぬ事を覚悟しました。そんなエミィの隣には、プロデューサーがエミィを犯そうとした時に床に置いた本がありました。
「………ぐっ!エッサ!この本を使って!」
こんなものでどうにかなるとはエミィは思いませんが、何もしないよりはマシです。プロデューサーが欲しがるものなら、何かに使えるかもしれません。
「だべぇ!この本でオラに杖でも叩かせるべぇか!エミィ、お前は尻軽の馬鹿女だべぇ。尻だけじゃなくて、頭も軽いなんて最悪なんだべぇ。………でも、やってやるべぇ。オラ!」
『ゴォツ!』
「「「………………」」」
誰もが予想していた通りです。壊れません。壊れる訳がありません。本は武器ではありません。分厚くて重い本でギリギリ鈍器になるぐらいです。エッサとエミィの無駄な足掻きでした。
「ヒィヒヒヒヒ、エッサ、残念だっ」
『ビィー、ビィー、メインシステムに異常が発生しました。システムを緊急停止します。シャットダウン開始まで、3、2、1………』
発動直前だったプロデューサーの魔法が消えてしまいました。それだけではないようです。視界に映る全てのものが徐々に暗くなって行きました。強烈な睡魔に抵抗する事が出来ずにエッサは倒れてしまいました。すぐ近くには同じように倒れた、プロデューサーとエミィがいました。
◆
『ギュイーーン。ピィピィ、ギィギィ。ビィー、ビィー、システムを再起動します。再起動開始………システムが再起動しました。おはようございます。ようこそ…ラストストーリーの世界へ。ランダムで振り分けられるゲームの登場人物になりきって、この世界を自由に冒険しましょう。』
(んんっ?なんだべぇ。オラ、寝ていたべぇか?)
「おい、起きるべぇ!おい、起きるんだべぇ!トトペット。仕事の時間だべぇよ。」
トトペットが目を覚ますと、目の前には先祖代々受け継がれているエッサ家のピカピカの銅の鍬がありました。
「なぁ!エッサ!ここは何処だべぇ!さっきまで城で戦っていたはずなんだべぇ!なんだべぇ!なんだべぇ!なんだべぇしか言えないんだべぇ!どういう事なんだべぇ!」
『パシィン!』
「うぐっ!』
トトペットはまだ14歳です。18歳のエッサに叩かれたらとても痛いです。涙が出ちゃいます。
「仕事だべぇ。今から8時間、オラの代りにオラの畑を耕すべぇ。オラ、しっかーーーーり見てるからべぇな。逃げ出したら殺すべぇよ。分かったら、返事をするんだべぇ。アシスタントディレクター。ヒッヒヒヒヒ、ヘェヘヘヘヘ~~一生こき使ってやるから、オラに感謝するんだべぇよ!」
「嫌だべぇ!嫌だべぇ!ログアウトだべぇ!ログアウトが何で表示されないべぇ!ログアウトさせて欲しいべぇ~~~!」
❇︎
『ザックザック。ザックザック。ザックザックザック。』
「あいやぁ~、今日もお日様がサンサンで清々しいお仕事日和だべぇさー。」
『パシィン!』
「うぐっ!」
「お日様じゃないべぇ、お天道様だべぇ!村人舐めんじゃねぇべぇ!このクソADが!おら!おら!そんなんじゃ、いつまでもディレクターに昇格させないべぇよ。分かったべぇな!」
今日もエッサの厳しい村人修業で、トトペットはボロボロです。家に帰ったら、泥がついたままのジャガイモが皿の上に1個だけありました。涙が止まりませんでした。
「オラ、こんな田舎嫌だべぇさ~。オラ、こんな田舎嫌だべぇさ~。王都に出るべぇさ~!王都に出たなら武器買って、エッサの寝込みを襲うんだべぇさ~。」
その夢は一生叶いませんでした。時々、泥のついたジャガイモではなく、泥の塊が皿の上に乗っていました。明らかに悪質な悪戯です。そんな日に限ってエッサが家まで遊びに来ては、『ほらほら、早く食べろよ!』とジャリジャリする食べ物を無理矢理食べさせようとしました。
ログインしたら最後、絶対にログアウト出来ない恐怖のゲームとして、岩田プロデューサーのラストストーリーは彼の精神と共に永久に封印される事になりました。
【ざまぁ編・プロデューサーの場合・完結。】
「きゃああ~!」
「きゃああ~!ってか?フッフフフフ、ゲームの中とはいえ、女の子を殴るなんて現実じゃ出来ないからな。なかなか良い体験させてくれるぜ。」
エミィの私室に転送された岩田は、早速仕事中のエミィを見つけて殴りつけました。
「何だこれ?職業別訓練マニュアル?ハァ~、NPCが軍隊ごっこしてるのかよ。元村女が軍師とはな。まあいい、持っている本をすぐに出せ。エッサが持っていた本だ!」
(誰コイツ?エッサの知り合い?……ンンッ、殴られて痛いけど、95点。性格は最悪そうだけど。)
こんな時に岩田ゼウスの顔の評価はどうでもいいです。さっさと本を出さないと殺されますよ。
「本なんて知らないわ。あなたが誰かは知らないけど、ちょっと!何、ベッドの下を探しているのよ!やめなさい!」
ベッドの下を探す岩田を慌てて止めようとしますが遅いです。本は見つかってしまいました。だから、本はベッドの下に隠したら駄目です!アイテムボックスに入れてください。
『パラパラ…パラパラ…パァタン。』
「間違いないな。この本はシステムデータとリンクしている。表示されているのは一部だけだが、一体誰がこんな物を作りやがったんだ。」
(明らかに意図的に作られた本だが、俺の制作チームにこんな悪戯やって得する奴なんかいるか?だとしたら外部の奴……スポンサーの婆?いや、アイツも違うな。そもそも、こんな事する意味が分からねぇ。)
得体の知れない人物が、誰にも知られずに、自分の作ったゲームの中に落とし物をして行ったような奇妙な感覚です。外部からは切り離された岩田の仕事場に、そもそも関係者以外が侵入する事は不可能なはずです。
「万物の始まりの日よ!星々の母なる産声よ!光よ集まれ!闇を斬り裂く大いなる瞬間!ビッグバン!」
『ヒュルルッン……サァーーー!!!』
エミィのレベル60の魔法が炸裂しました。音のない大爆発によって生じた高熱の波が、エミィの部屋の中の家具や私物を容赦なく焼き尽くしてしまいました。
「ハァハァ、今ので倒せなくても人が来るのは時間の問題よ!あなた誰?エッサの仲間なの?私を殺すように頼まれたの?何とか言ったらどうなの!」
あの魔法を食らって生きているのなら、間違いなく基本ステータスはメインキャラクターと同じです。砂埃が漂う部屋の中に白いローブの男がまだ立っていました。
「何か勘違いしていないか?俺はエッサの仲間じゃない。それにエッサはさっき殺して来た所だ。あっあ、そうだ!エッサからの伝言があった。『エミィを殺さないで欲しい。エミィを殺さないで欲しい。』だ。俺がなんて答えたと思う?フッフフ、絶対嫌だ。ヒィヒヒヒヒ~~」
杖で殴って殺そうか、それともデータ女を犯してみようか、どれをやっても面白そうだ。おっと、邪魔者が来たら困るな。
バタバタとエミィの私室に向かって来る足音が聞こえて来ました。お城の兵士達でしょう。プロデューサーにかかれば雑魚と同じですが、数の多い雑魚をいちいち潰すのは面倒なだけです。
「システムコール・ケリュケイオン。この部屋を外部から切り離せ。」
『ビィー、隔離ですね。了解しました。完了まで、3、2、1………この部屋は外部から完全に切り離されました。』
訳の分からない言葉を喋る謎の男の正体に、エミィは気づいてしまったようです。
「ハッ!もしかして……あんた、プロデューサーなの?」
大正解です。勘もいい村女には、特別サービスで全裸にして神様の子供を孕ませてあげましょう。既に中に入っている胎児には消えてもらいます。
エミィを床に押し倒すと、杖をお腹に押し当てました。システムの力でエミィのお腹の中の、ロックタの子供は消えてしまいました。おそらくはは別の女性のお腹に強制転送されたのでしょう。
「ハァハァ、5分で犯して、孕ませて、出産させてやるよ!杖を使えば1人ぐらいの時間程度は簡単に操れる。そうだ!何人産ませられるか実験するのも面白そうだ!まずは1人目だな。」
『ビリビリ!ビリビリ!』
「お願い、やめてください!神様、お願いします!」
エミィの抵抗虚しく、力では岩田に勝てません。魔法を使おうにも、口を塞がれるだけです。このまま玩具にされて殺されるだけです。
『ビィー、ビィー、警告!警告!外部から何者かがこの場所に強制転送して来ます。警告します。外部からの侵入者です。』
「はぁ?そんな訳ないだろう!今あのビルの中にいるのは俺だけなんだぞ!」
動揺する岩田の前に、光の球体に包まれた死んだはずの人物が現れました。光の球体がパチンと破裂して消えて行きました。
「おいおい、その尻軽女を犯していいのはオラだけだべぇよ。それにまあまあの顔にも傷がついてるべぇ。殴るならボディーのするべぇ!」
「エッサ、本当に生きてたのね。」
「待たせたんだな。コイツをすぐに倒して、たっぷりと犯してやるんだべぇな。覚悟するんだべぇよ。」
結局はエミィの運命は変わりません。犯されて殺されるなら、39点のエッサよりも、95点の岩田ゼウスを選びます。神様、頑張ってください!
「あのスポンサーの婆か!あの女がセキリュティコードに細工して俺の会社に入っているのか!あの婆が!」
「ファイヤーボール。」
『ヒュ、ドォン!』
「ぐぅっ!どういう事だ!」
詠唱文無しの高速ファイヤーボールが岩田のボディーに直撃しました。避ける事も察知する事も出来ませんでした。
「お前と同じ事をしただけだべぇ。でも、苦しむ顔が見たいから威力は弱めたべぇ。次はもうちょっと痛くするべぇよ。」
(詠唱文無し、心の声も読めない、それに俺の痛覚センサーがオンになっている!何をした?何でオフにならねぇ。システムが婆に乗っ取られたのか?)
岩田の仕事場には誰もいません。いるのはゲーム世界にログイン中の寝ている岩田プロデューサーだけです。
「スリーアクアカッター。』
「ぐぅっ!あうっ!やめ!」
エッサの言う通りに少しずつダメージが増えて行きました。このまま、ただ立っていてもやられるだけです。プロデューサーは反撃します。
「もう一度、殺してやる!ライジング・パニィシュメント!」
「馬鹿のように、頼みの綱は一撃必殺魔法だべぇか。ハァ~~、やれやれ、タイムストップ。」
『カチコチ…カチコチ…ピィタ……』
同じオーディンの特殊魔法です。世界の時間が停止しました。動けるのはエッサだけです。
「止められるのは、10秒だけだべぇ。フレイムウェポン。」
エッサは付加魔法で両手剣全体に火の加護を付加しました。本来は狩人や聖騎士しか使えない魔法ですが、今のエッサならば全ての魔法を使う事も可能かもしれません。
「行くべぇよ。親友!オオーーー!天を焼き尽くす炎龍の咆哮!魔皇獄炎・豪・昇龍破斬!くたばれ~~!!」
『ドォスン、ビリビリ、ビリビリ……ギィギィ、ガァガァ!』
エッサの渾身の一撃でも、杖にはヒビも入りません。エッサが狙っているのは岩田ではありません。システム・ケリュケイオンの杖です。この杖がある限り岩田は強制的に何度もリトライし続けます。
「グッグッ、ぐぅへへへへ、本当に壊れないべぇな。木ならちょっとは燃えると思ったんだべぇがな。」
今も力を入れて攻撃を続けていますが、ビクッともしません。残り時間は1…0秒です。エッサの時間切れです。
「なっ!何で目の前にいるんだ!チッ、時間停止か。痛ぶる事しか考えてなかったから忘れてたぜ。」
「グッグッ、壊れるべぇ!」
「ハッハ、終わりだよ、エッサ。エミィと仲良く死ぬんだな。」
バチバチと稲妻の槍が出現し始めました。もう間に合いません。
(エッサが負ければ、私は確実に死ぬのね。)
エミィは死ぬ事を覚悟しました。そんなエミィの隣には、プロデューサーがエミィを犯そうとした時に床に置いた本がありました。
「………ぐっ!エッサ!この本を使って!」
こんなものでどうにかなるとはエミィは思いませんが、何もしないよりはマシです。プロデューサーが欲しがるものなら、何かに使えるかもしれません。
「だべぇ!この本でオラに杖でも叩かせるべぇか!エミィ、お前は尻軽の馬鹿女だべぇ。尻だけじゃなくて、頭も軽いなんて最悪なんだべぇ。………でも、やってやるべぇ。オラ!」
『ゴォツ!』
「「「………………」」」
誰もが予想していた通りです。壊れません。壊れる訳がありません。本は武器ではありません。分厚くて重い本でギリギリ鈍器になるぐらいです。エッサとエミィの無駄な足掻きでした。
「ヒィヒヒヒヒ、エッサ、残念だっ」
『ビィー、ビィー、メインシステムに異常が発生しました。システムを緊急停止します。シャットダウン開始まで、3、2、1………』
発動直前だったプロデューサーの魔法が消えてしまいました。それだけではないようです。視界に映る全てのものが徐々に暗くなって行きました。強烈な睡魔に抵抗する事が出来ずにエッサは倒れてしまいました。すぐ近くには同じように倒れた、プロデューサーとエミィがいました。
◆
『ギュイーーン。ピィピィ、ギィギィ。ビィー、ビィー、システムを再起動します。再起動開始………システムが再起動しました。おはようございます。ようこそ…ラストストーリーの世界へ。ランダムで振り分けられるゲームの登場人物になりきって、この世界を自由に冒険しましょう。』
(んんっ?なんだべぇ。オラ、寝ていたべぇか?)
「おい、起きるべぇ!おい、起きるんだべぇ!トトペット。仕事の時間だべぇよ。」
トトペットが目を覚ますと、目の前には先祖代々受け継がれているエッサ家のピカピカの銅の鍬がありました。
「なぁ!エッサ!ここは何処だべぇ!さっきまで城で戦っていたはずなんだべぇ!なんだべぇ!なんだべぇ!なんだべぇしか言えないんだべぇ!どういう事なんだべぇ!」
『パシィン!』
「うぐっ!』
トトペットはまだ14歳です。18歳のエッサに叩かれたらとても痛いです。涙が出ちゃいます。
「仕事だべぇ。今から8時間、オラの代りにオラの畑を耕すべぇ。オラ、しっかーーーーり見てるからべぇな。逃げ出したら殺すべぇよ。分かったら、返事をするんだべぇ。アシスタントディレクター。ヒッヒヒヒヒ、ヘェヘヘヘヘ~~一生こき使ってやるから、オラに感謝するんだべぇよ!」
「嫌だべぇ!嫌だべぇ!ログアウトだべぇ!ログアウトが何で表示されないべぇ!ログアウトさせて欲しいべぇ~~~!」
❇︎
『ザックザック。ザックザック。ザックザックザック。』
「あいやぁ~、今日もお日様がサンサンで清々しいお仕事日和だべぇさー。」
『パシィン!』
「うぐっ!」
「お日様じゃないべぇ、お天道様だべぇ!村人舐めんじゃねぇべぇ!このクソADが!おら!おら!そんなんじゃ、いつまでもディレクターに昇格させないべぇよ。分かったべぇな!」
今日もエッサの厳しい村人修業で、トトペットはボロボロです。家に帰ったら、泥がついたままのジャガイモが皿の上に1個だけありました。涙が止まりませんでした。
「オラ、こんな田舎嫌だべぇさ~。オラ、こんな田舎嫌だべぇさ~。王都に出るべぇさ~!王都に出たなら武器買って、エッサの寝込みを襲うんだべぇさ~。」
その夢は一生叶いませんでした。時々、泥のついたジャガイモではなく、泥の塊が皿の上に乗っていました。明らかに悪質な悪戯です。そんな日に限ってエッサが家まで遊びに来ては、『ほらほら、早く食べろよ!』とジャリジャリする食べ物を無理矢理食べさせようとしました。
ログインしたら最後、絶対にログアウト出来ない恐怖のゲームとして、岩田プロデューサーのラストストーリーは彼の精神と共に永久に封印される事になりました。
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歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
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※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
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