上 下
113 / 122
第8.5章・ざまぁ編(エミィの場合)。

第113話・誰が持って行く。

しおりを挟む
ピィシャン落雷!』

ぐぅっ直撃!」

 エッサの雷魔法のダメージは1000を超えますが、本当に厄介なのは付属する状態異常効果です。

(弱麻痺効果か……一時的に敏捷が四分の1ぐらいは下がったかもな。)

 元々のギャランの敏捷は735です。エッサは1.5倍の1150ありました。なんとか技術でカバーして来たギャランですが、麻痺状態で現在の敏捷は551です。さすがに2倍の差は、技術だけではどうにもならないかもしれません。

「まあまあ頑張った方だべぇよ。でも、相手が悪かったべぇ。オラのような天才美少年剣士が相手じゃ勝てないのも仕方ないんだべぇ。落ち込まなくてもいいだべぇよ?」

 色々とツッコミたいポイントがありますが、今は放って置きましょう。ギャランは落ち込んでいる訳ではありません。

(どちらかといえば、見た目は田舎の成金剣士っぽいけどな。さてと、逃げられねーし、勝つのは無理っぽいな。外の奴らは全然来ないから期待はしない方がいい。俺に出来る最後の抵抗はこのぐらいか……)

「オラー!」

 地下迷宮の出入り口を塞ぐエッサに向かって、手に持っていた両手剣を全力で投げつけました。

『ブンブンブンブン………』

「プッププ、何処に向かって投げているべぇ?高過ぎだべぇよ。」

 ギャランは身体が痺れている所為か、エッサの頭を超えて両手剣が飛んで行きました。そのまま両手剣はダンジョンの出入り口を通って、外に出てしまいました。

「べぇ?……………この大馬鹿野郎がぁ!オラの剣が外に出てしまったべぇ。なんて事しやがったんだべぇ!」

 エッサは黙って、外に飛んで行く剣を見ていましたが、やっとギャランの真の狙いに気づいたようです。今さら気づいても、怒っても遅いです。

「ヘッヘ、早く取りに行かないと一生見つからないかもしれないぜ。」

 あの最大まで強化された、両手剣レーヴァテインをもう一度EXダンジョンから手に入れることはまず不可能です。ルナ辺りに拾われたら、まず手元に戻って来ないでしょう。

(余計な手間が増えたんだべぇ。この死に損ない達をさっさと殺して取り返しに行くしかないべぇな。)

 でも、そう簡単に殺されるような死に損ないはいないようです。ギャランはアイテムボックスから最初に持っていた両手剣を取り出しました。

「なあ、そんなに慌てるなよ。もうちょっとお兄さんと一緒に遊ぼうぜ!」

「はっ?……そんなに死にたいなら、5秒で殺してやるべぇ!」

 残念ながら5秒はすぐに過ぎてしまいました。エッサの予定通りには全然上手く行かないようです。

 ◆

『ブンブン…ガァツ!』

 ダンジョンの中から飛んで来た両手剣が地面に突き刺さって止まりました。人に刺さっていたら、戦力が1人減っていたかもしれません。

「んんっ?この剣はギャランのじゃないよな?」

 両手剣が突き刺さった場所の1番近くにいたのは、ザックでした。刺さっても良かったかもしれません。

「その剣はエッサのものだったが、俺とギャランの2人で奪い取ったんだが……何故、飛んで来たんだ?」

(へぇ~~、エッサの剣ね……結構高そうね。貰ったら駄目かしら?)

 早速ルナは剣をネコババするつもりです。残念ながら国宝級の武器を通り越して、神話や伝説も通り越した武器を買い取れる個人がいるとは思いません。国レベルの予算が必要になるでしょう。

「その剣、エッサが取り返しに出て来そうね。ここに置いておいて、もしも取り返されたら危ないから、私が王都に走って持って行ってあげるわ。さあ、貸して。」

 そのまま持ち逃げしそうですが、言っている事が間違ってもいないので従うしかありません。

「待て!その役目は俺とフローラの2人で十分だろう。ルナはここに残って指揮を取るべきだろう。さあ、俺に貸せ。」

 今度はザックが名乗り出ました。こっちはただ逃げたいだけのようです。どっちに任せてもいいのですが、正直言って、レベル30の兵士に任せた方が1番良いです。こんな簡単な仕事を取り合う時点で幹部として大問題です。

「斬空乱波!…斬空乱波!…斬空乱波!」

ザァンダメージ2170サァーーー兵士ローラン消滅。』

 レベル30の兵士が1人、突然飛んで来た斬撃によって消滅してしまいました。他にもドンドン飛んで来た斬撃に兵士達が殺されて行きました。

「中から攻撃しているぞ!ダンジョンの正面には立つんじゃない!」

 バロンが珍しくまともな指示を飛ばしています。こんな日もあるのかもしれません。

 地下迷宮の中からエッサは、少しでも兵士の人数を減らそうと、剣が落ちただろう場所に向かって、斬撃は出鱈目に飛ばし続けました。

「ぐぅがぁぁーー!ハァハァ、ヤバイぞ。レベル50でも下手すれば一撃で死んじまうぞ!」

 レベル50の兵士でも、ランク5程度の防具だと一撃で消滅させられるようです。でも、この程度の攻撃でエッサが止まる訳がありません。

「天空より降り注ぐ輝く流星よ!創世の時を巻き戻せ!生命を滅ぼす死の来降らいごうメテオインパクト流星の墜落!」

(ヒィヒヒヒ、ダメージ3000の広範囲魔法だべぇ。雑魚共はさっさと退場するんだべぇな!)

 上空から何本もの白い煙が落ちて来ています。地上の兵士達は誰も空の異変に気づいていないようです。地下迷宮の入り口から出て来るだろう敵に全員集中しているようです。流星が落下した事に気づいた時には、もう手遅れでしょう。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
重要ミッション!悪役令嬢になってバッドエンドを回避せよ! バッドエンドを迎えれば、ゲームの世界に閉じ込められる?!その上攻略キャラの好感度はマイナス100!バーチャルゲームの悪役令嬢は色々辛いよ <完結済みです>

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

異世界でもプログラム

北きつね
ファンタジー
 俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。  とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。  火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。  転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。  魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! ---  こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。  彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。   実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。   第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...