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第6章・エミィ編。

第79話・炎の邪神。

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 地下15階のボスモンスターは『イフリート』と呼ばれる炎の精霊です。最高神オーディン様を信じるこの世界の民にとっては、異教の神、すなわち邪神です。

「コイツを倒せば少しは涼しくなりそうだぜ!」

 ギャラン達三人の前には、メラメラと炎の身体を揺らめかせる、4メートル弱の大男が立っています。ハッキリと見える顔は美形で、年齢は若い青年ぐらいでしょうか。異教の神でも、神は総じて美しいものなのでしょう。

 接近し過ぎると、火傷のダメージを定期的に受ける事になるけど、弱点の水属性の武器も魔法も持ってない。基本は中距離からの斬空波でHPを削って、イフリートのトリプルファイヤーボールを盾で防ぐしかないわね。

 本の作戦ならば、前衛1人、魔術師2人、僧侶1人です。前衛1人にイフリートを任せて、魔術師2人で弱点の水魔法を当て続けます。僧侶は前衛のHP回復に努めます。

「作戦通りに行くわよ!ギャランは前衛で攻撃よりもガードと回避を優先するように。アランとバロンは魔術師として中距離で斬空波を当て続けるように。さっさと倒して帰るわよ!」

「「「オオォー!」」」

 エミィ達は疲労回復を含めて、昨日は地下14階で眠る事にしました。どんな場所でも、とりあえず寝れば、HPと MPは完全回復するようなので、食料と時間に余裕がある時は、回復アイテムを使用するよりも寝た方がお得です。

 地下1階から地下15階に到着するまでに、エミィはレベル13から29、ギャランはレベル53から54、バロンはレベル48から50、アランはレベル47から49に成長しました。現在のレベル的には、ここが最終到達地点です。

『名前・イフリート。種族・精霊。レベル48。HP13000。 MP不明。攻撃力377。魔力351。敏捷317。』

 ファイヤーボール1発でダメージ1000以上。それが3発連続で追尾して来るんだから、普通に全部喰らったら、私は死ぬわね。ここから先は武器よりも防具の性能が勝負の分かれ目になるわ。

 エミィは最初にイフリートのHPを見た時に、見間違いかと思ったぐらいです。地下14階のボスモンスターでもHP6240でした。いきなり倍に跳ね上がりました。

『ドォン、ドォン、ドォン!』

 トリプルファイヤーボールを、ギャランが盾で防ぎました。盾で防いでも、ダメージ1600以上です。ギャランのHPは3200を超えますが、それでも長期戦は無謀です。

「へっへっへっ、この俺が防御だけで、このザマとは情けねぇ。バロン!俺が死んだら、俺の代わりはお前がやれ!いいな!」

「そんなこと言うなよぉ~!お前は俺達の目標なんだよ。お前を倒す為に生きてる奴隷が何人いると思ってんだよ。誰かが死ぬぐらいなら、俺が死んでやる!オリャー!」

 バロンは作戦を無視して、イフリートに突撃して行きました。接近戦はイフリートに殺してくれと言っているようなものです。

 暑苦しい脳筋ね。まあ、いいわ。ギャランに攻撃力上昇の補助魔法を掛けて、攻撃してもらいましょう。バロンは馬鹿でも死にそうになれば、防御ぐらいはするでしょう。

「ギャランは中距離に下がって、攻撃準備。バロンはギャランの代わりに防御役をしっかりやるのよ!アランは MPを回復して、斬空乱波に切り替えなさい!ギャランも同じようにしてね。」

 さすがに、回復魔法のヒールだけじゃ、回復が追いつかないわ。HPに余裕がある人が交代で盾役をやった方が確実に安全でしょうね。それに攻撃役は最大威力の剣技を使用した方が、この場所ではいいはず。やっぱり、魔術師がいないと、この階は苦戦するわね。

 本の作戦通りにしたいものの、他の階では魔術師が苦戦する場所もあります。どんなにバランス良くパーティーメンバーを選んでも、苦戦する場所は苦戦します。

『ザァシュ!ザァシュ!』

「はぁはぁはぁ、そろそろ倒れてくれないと、こっちが暑さで倒れそうだぜ!」

 戦闘開始から、10分を過ぎました。剣技を叫び続けるだけでも喉が渇くのに、暑さも重なると、更に喉の渇きが加速されます。誰もが次の攻撃で、イフリートが倒れる事を願っていました。

「斬空乱波!」

『ザァシュ!サァーーー。』

 イフリートの左脇腹に斬空乱波が命中しました。ユラユラと揺れたと思ったら、少しずつ身体が灰になって消えて行きました。トドメを刺したのは、最後まで大声で叫び続けた熱い男のバロンでした。

「ふぅ~はぁ~。みんな、良くやったわね。さあ、王都に帰るわよ!」

「あぁ~、死ぬほどビールが飲みたい!」

「ヒィハァ~!今日は王様の奢りで飲み放題だぜ!」

 やっと地下迷宮15階までの探索が終わりました。あとは王様に急いで、イフリートが落としたランク6の兜を届けないと行けません。でもエミィは、今すぐに地下8階にある川の中に飛び込みたい気持ちでした。



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