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第6章・エミィ編。
第78話・地下迷宮の砂漠地帯。
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「ロックタ、そっちに鳥が逃げたべぇよ。しっかりと倒すんだべぇよ。」
ただ、地下迷宮の入り口で待つのは正直言って暇なので、エッサとロックタの2人は霊峰ミルドに出現するレベル20程度のモンスターを倒し回っていました。
はぁ~、エッサ様は恋人のエミィ様が危険な地下迷宮に入ったのに、心配ではないのでしょうか?もしかして、不安な気持ちを紛らわす為にこんな事をやっているのなら。あぁ~、何て可哀想なエッサ様でしょう。
ロックタは妄想の世界のエッサを崇拝しているようです。強くて、聡明で、優しいエッサが恋人のエミィを失う事になったら、何という悲劇なのだろうと、心の中で涙を流しました。
「鳥野郎!こっちだ。こっちに下りて来い!丸焼きにして食ってやる。」
私が少しでもエッサ様を元気にして差し上げないといけない。エミィ様なら必ず戻って来ると信じるしかないんだ。
何言ってるべぇか?モンスターは倒したら灰になって消えるべぇ。食べられる訳ないべぇ。ロックタはネギと人参でも食べてればいいんだな。
「斬空波!あれ、出ないぞ?エッサ様、斬空波が出ません。どうしてですか?」
ロックタが頑張って、ネギと人参で鳥モンスターと戦っていますが、エッサはロックタの宴会芸には興味もないようです。別の事を考えていました。
変態奴隷は放って置いて。さてと、そろそろ、あの奴隷達が死んだ頃だべぇか?地下13階か、14階ぐらいで全滅すると思うけろ、奴隷の代わりはいくらでもいるから問題ないべぇ。問題なのは、エミィだべぇ!オラの本を返す前に死なれると困るんだべぇよ。まあ、あの本は絶対に壊れないから、エミィの死んだ場所の近くに転がっているべぇ。取りに行くのが少し面倒臭いけろが、仕方ないべぇな。エミィ~、出来るだけ、早くに死ぬか、オラの所まで逃げ帰るんだべぇよ。
◆
「暑いなぁ~。何でダンジョンの中に、砂漠が広がっているんだよ?地下8階の森もそうだけど、この地下迷宮おかしいぞ?」
地下迷宮がおかしいのは、バロン以外の全員が地下2階で気づいていました。明らかに人工的に作るには無理のある構造です。本来なら地下2階は地下1階の重さでペシャンコです。
どうやら、脳筋奴隷の中で一番脳筋なのは、バロンのようです。おそらくは勝てないのにギャランに挑発されては、何度も戦いを挑んでは負けて、ギャランに自分を倒した経験値を貢いでいる事に気づいていません。
ガシィっと、ギャランは砂を右手で掴むと何かを確認しているようです。
『サラサラサラ。』
「この砂の温度、おかしくないか?気温に比べてもこの砂の温度の方が異常に高い気がするぞ。砂の下で火でも焚いてるんじゃねぇのか?」
んんっ~?そんな事は本には書いてなかったけど、確かに砂風呂をやるにも暑過ぎるわね。それに砂地だと敏捷が低下するから、ここが正念場になるのは間違いないでしょうね。
生息するモンスターは『パラライズスコーピオン』のみです。尻尾に付いている鋭い針を刺して、対象を数十秒麻痺させる能力があります。
「まあ、モンスターの情報はこのぐらいしかないわ。対策は書いてなかったわ。麻痺除けのお守りがあれば一番だけど手に入らないし、仕方ないわね。」
エッサが毒除けのお守りを持っていますが、役に立つのは地下13階の毒地帯です。毒除けのお守りがあれば、毒にならずに楽に進めたのに、エッサは毒除けのお守りの存在を隠し通しました。
「麻痺除けのお守りねぇ?そんな便利な装備があれば一番だろうけど、無いんだろう?砂の中にいるサソリを引っ張り出す方法を探そうぜ。」
バロンの靴の裏に盾を履いて、サソリの麻痺針をガードする作戦は、すぐに却下されました。バロンが馬鹿だから正解のはずがありません。次はアランが作戦を思いついたようです。
「斬空波で地面を攻撃すれば、驚いて砂から飛び出して来るんじゃないのか?斬空波で無理なら、威力が上の斬空乱波を使えばいいだろう。」
まあまあ、いい作戦だけど、 MPの消費が多過ぎるかもね。斬空波ならレベル1の剣技だから消費 MPは低いから、結構無駄使いしても大丈夫だとは思うけど、悩むよりも、実際に試してみた方が早いわね。
「三人共、この場所から北北西に真っ直ぐに進めば、ボスモンスターがいるから、とにかく、この方向に斬空波を定期的に撃ち続けてちょうだい。私が後方から三人に続いて進むから、誰かが麻痺したらすぐに治してあげるわ。さあ!さっさと倒して王都に帰るわよ!」
「斬空波!」
「斬空波!」
「斬空波!」
三人が定期的に前方の砂地に飛ぶ斬撃を放ち続けました。斬撃の一部が、砂の中の隠れるサソリに当たる事で、砂から飛び出して来るようです。ビックリではなく、怒って飛び出して来るのが予想との違いです。
『ジャキン!ジャキン!ジャキン!』
赤い殻のパラライズスコーピオンが両腕の鋏を鳴らしています。何かの合図でしようか。これも予想と違います。
「おい、女!ありゃー、仲間を呼び集める時の合図だぜ。雑魚モンスターなら呼び集めてから倒してもいいけど、あのサソリは強いんだろ?だったら倒した方がいいかもしれないぜ。」
モンスター三匹でも十分にキツイのに、集団戦とかゴメンだわ。さっさと全力で倒してこの場から離れましょう。
「全力で瞬殺して、この場から離れるわよ!もう、何匹か集まって来ているでしょうから、1匹を三人でボスモンスターだと思って倒すのよ。回復は任せてなさい!」
この砂漠地帯も長期戦には向いていないわね。鎧や武器の重さは感じないけど、汗と疲労の蓄積はいつもよりも早く感じるし、20分から30分が限界ね。場合によっては、一度、14階に戻って、キャンプしないとヤバイわ。はぁ~、ダンジョンの中で寝る事になるなら、食料だけでなくて、テントも用意すれば良かったわ。
ただ、地下迷宮の入り口で待つのは正直言って暇なので、エッサとロックタの2人は霊峰ミルドに出現するレベル20程度のモンスターを倒し回っていました。
はぁ~、エッサ様は恋人のエミィ様が危険な地下迷宮に入ったのに、心配ではないのでしょうか?もしかして、不安な気持ちを紛らわす為にこんな事をやっているのなら。あぁ~、何て可哀想なエッサ様でしょう。
ロックタは妄想の世界のエッサを崇拝しているようです。強くて、聡明で、優しいエッサが恋人のエミィを失う事になったら、何という悲劇なのだろうと、心の中で涙を流しました。
「鳥野郎!こっちだ。こっちに下りて来い!丸焼きにして食ってやる。」
私が少しでもエッサ様を元気にして差し上げないといけない。エミィ様なら必ず戻って来ると信じるしかないんだ。
何言ってるべぇか?モンスターは倒したら灰になって消えるべぇ。食べられる訳ないべぇ。ロックタはネギと人参でも食べてればいいんだな。
「斬空波!あれ、出ないぞ?エッサ様、斬空波が出ません。どうしてですか?」
ロックタが頑張って、ネギと人参で鳥モンスターと戦っていますが、エッサはロックタの宴会芸には興味もないようです。別の事を考えていました。
変態奴隷は放って置いて。さてと、そろそろ、あの奴隷達が死んだ頃だべぇか?地下13階か、14階ぐらいで全滅すると思うけろ、奴隷の代わりはいくらでもいるから問題ないべぇ。問題なのは、エミィだべぇ!オラの本を返す前に死なれると困るんだべぇよ。まあ、あの本は絶対に壊れないから、エミィの死んだ場所の近くに転がっているべぇ。取りに行くのが少し面倒臭いけろが、仕方ないべぇな。エミィ~、出来るだけ、早くに死ぬか、オラの所まで逃げ帰るんだべぇよ。
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「暑いなぁ~。何でダンジョンの中に、砂漠が広がっているんだよ?地下8階の森もそうだけど、この地下迷宮おかしいぞ?」
地下迷宮がおかしいのは、バロン以外の全員が地下2階で気づいていました。明らかに人工的に作るには無理のある構造です。本来なら地下2階は地下1階の重さでペシャンコです。
どうやら、脳筋奴隷の中で一番脳筋なのは、バロンのようです。おそらくは勝てないのにギャランに挑発されては、何度も戦いを挑んでは負けて、ギャランに自分を倒した経験値を貢いでいる事に気づいていません。
ガシィっと、ギャランは砂を右手で掴むと何かを確認しているようです。
『サラサラサラ。』
「この砂の温度、おかしくないか?気温に比べてもこの砂の温度の方が異常に高い気がするぞ。砂の下で火でも焚いてるんじゃねぇのか?」
んんっ~?そんな事は本には書いてなかったけど、確かに砂風呂をやるにも暑過ぎるわね。それに砂地だと敏捷が低下するから、ここが正念場になるのは間違いないでしょうね。
生息するモンスターは『パラライズスコーピオン』のみです。尻尾に付いている鋭い針を刺して、対象を数十秒麻痺させる能力があります。
「まあ、モンスターの情報はこのぐらいしかないわ。対策は書いてなかったわ。麻痺除けのお守りがあれば一番だけど手に入らないし、仕方ないわね。」
エッサが毒除けのお守りを持っていますが、役に立つのは地下13階の毒地帯です。毒除けのお守りがあれば、毒にならずに楽に進めたのに、エッサは毒除けのお守りの存在を隠し通しました。
「麻痺除けのお守りねぇ?そんな便利な装備があれば一番だろうけど、無いんだろう?砂の中にいるサソリを引っ張り出す方法を探そうぜ。」
バロンの靴の裏に盾を履いて、サソリの麻痺針をガードする作戦は、すぐに却下されました。バロンが馬鹿だから正解のはずがありません。次はアランが作戦を思いついたようです。
「斬空波で地面を攻撃すれば、驚いて砂から飛び出して来るんじゃないのか?斬空波で無理なら、威力が上の斬空乱波を使えばいいだろう。」
まあまあ、いい作戦だけど、 MPの消費が多過ぎるかもね。斬空波ならレベル1の剣技だから消費 MPは低いから、結構無駄使いしても大丈夫だとは思うけど、悩むよりも、実際に試してみた方が早いわね。
「三人共、この場所から北北西に真っ直ぐに進めば、ボスモンスターがいるから、とにかく、この方向に斬空波を定期的に撃ち続けてちょうだい。私が後方から三人に続いて進むから、誰かが麻痺したらすぐに治してあげるわ。さあ!さっさと倒して王都に帰るわよ!」
「斬空波!」
「斬空波!」
「斬空波!」
三人が定期的に前方の砂地に飛ぶ斬撃を放ち続けました。斬撃の一部が、砂の中の隠れるサソリに当たる事で、砂から飛び出して来るようです。ビックリではなく、怒って飛び出して来るのが予想との違いです。
『ジャキン!ジャキン!ジャキン!』
赤い殻のパラライズスコーピオンが両腕の鋏を鳴らしています。何かの合図でしようか。これも予想と違います。
「おい、女!ありゃー、仲間を呼び集める時の合図だぜ。雑魚モンスターなら呼び集めてから倒してもいいけど、あのサソリは強いんだろ?だったら倒した方がいいかもしれないぜ。」
モンスター三匹でも十分にキツイのに、集団戦とかゴメンだわ。さっさと全力で倒してこの場から離れましょう。
「全力で瞬殺して、この場から離れるわよ!もう、何匹か集まって来ているでしょうから、1匹を三人でボスモンスターだと思って倒すのよ。回復は任せてなさい!」
この砂漠地帯も長期戦には向いていないわね。鎧や武器の重さは感じないけど、汗と疲労の蓄積はいつもよりも早く感じるし、20分から30分が限界ね。場合によっては、一度、14階に戻って、キャンプしないとヤバイわ。はぁ~、ダンジョンの中で寝る事になるなら、食料だけでなくて、テントも用意すれば良かったわ。
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