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第6章・エミィ編。

第68話・闇取引き。

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『ガチャン、キィー、ガチャン。コツコツコツ。』

 エッサは鉄の扉の先にある、狭くて長い階段を下りて行きます。

 エミィが牢獄を出てから、しばらく経った後に、エッサがやって来ました。ルナには、まさに救いの神に見えた事でしょう。

「エッサ~、私を助けに来たんでしょう!私、絶対に助けてくれるって信じていたよ。」

「当たり前だべぇ。仲間なら助け合うのは当然の事だべぇ。それよりも本当に人を殺した事はないんだべぇな?」

 またぁ~?いい加減にウンザリなんだけど!まあ、エミィとは、まだ話していないようだし、エッサ1人なら簡単に騙せるわね。

「もぉ~、違うわよぉ~!私がそんな人間に見えるの?きっと何かの間違いよ。そうでしょう?」

 ほらほら、こんな可愛らしい笑顔の女の子が、人を殺す訳ないでしょう?ねぇ、信じてくれるよね。

「だったら、お前を助ける価値はないべぇ!いま、オラに必要なのは冷酷な殺人鬼だべぇ。役立たずはそこに入っているべぇ。」

 スタスタスタとエッサは怒って帰って行きます。ルナはまだ檻の中に入ったままです。

 えっ!ちょっと、えっ!嘘でしょう!

「エッサ、話を聞いてよ!私、役に立つから。必ず役に立つから、ここから出してよ!お願い!」

「本当だべぇか?でも、殺して欲しい相手はレベル53もあるんだべぇよ。助かりたいからって、調子のいいこと言ってるだけなんじゃないべぇか?」

 当たり前でしょう!助かる為には、平気で嘘だって言えるわよ。それよりもエッサが人を殺して欲しいなんて、私を騙す罠?それとも冗談?答え次第で私を助けるか決めるつもりなの?

 罠でも、冗談でもありません。エッサは邪魔になりそうなライバル達を、ルナを使って消そうと考えています。とりあえずは地下迷宮の探索に向かうだろう闘技場の奴隷、ギャラン、バロン、アランの中から、最低1人は消そうと思っています。凄腕奴隷が3人もいれば、地下迷宮を簡単にクリアされてしまう恐れもあります。

「エッサの為なら、何でもするわ。誰も殺した事はないけど、エッサの為なら頑張るわ!」

 罠か分かんないけど、無難な答えなら大丈夫なはずよ。

「分かったべぇ。チャンスをやるべぇ。今から言う3人の中から、今日中に1人でも消す事が出来たら、オラの仲間だべぇ。色仕掛けでも、闇討ちでもいいから、必ず殺るんだべぇよ。オッケーだべぇか?」

 とりあえず、はい!と答えれば出れそうねぇ。レベル53は無理でも、レベル27のエッサなら殺して逃げる事も簡単なはずよ。最悪の場合、そうしましょう。

 ルナはエッサの為に、3人の凄腕奴隷を殺す事を約束しました。どう考えても無謀な作戦ですが、エッサもルナも自分の事しか考えていません。冷静な判断能力がなくなっていました。

 ◆

『名前・ギャラン。職業・王都一の奴隷剣士。称号・王都最強の奴隷。闘技場の覇者。レベル53。HP3220。MP932。攻撃力238。魔力248。敏捷343。』

「はい、エッサ。これがギャランさんのステータスよ。知り合いに頼んで苦労したんだからね!」

「ミミさん、ありがとうなんだな。へぇ~、これが王都で一番強い人なんだべぇなぁ~。」

 エッサは酒場の三人娘のミミに頼んで、本に載っていなかった、ギャランのステータスを入手しました。王都で一番レベルが高いので、サイン代わりに自分のステータスを書いて渡しているようです。人気者は大変そうです。

 うんだぁ。酔っ払って、裸で寝ている所を襲えば行けそうな気がするべぇ。オラの称号をプレイヤーキラーで汚したくないから、攻撃するのは、ルナだけなんだな。いざとなれば全ての罪を被って、ルナには死んでもらうんだな。うんだぁ。多少の犠牲は仕方ねぇ。

 エッサはルナを連れて、ギャランのいる闘技場に向かいました。ギャランは今日も試合で勝って、連勝記録を更新したようです。上機嫌で仲間の奴隷達と酒を飲んでいました。

「わぁ~、ギャランさんですよねぇ~!私、大ファンなんです!今夜、ギャランさんと一緒にいてもいいですかぁ~?」

 何やってるべぇか!もっと身体を引っ付けるべぇよ!胸を押し付けて、もっと積極的に誘惑するんだべぇ。顔が駄目なら身体を使うんだべぇ!

 お酒に酔ったフリをして、男奴隷達の中にルナは入って行きました。狙うはギャランの命です。2人きりになれる静かな所に連れて行って、剣で20回以上斬れば殺せるはずです。たとえギャランが無理でも、バロンにアランもいます。1人ぐらいには、お持ち帰りされる自信がルナにはありました。

「何だ、酔っ払いか?まあまあの顔だな。誰でもいいから連れて行って遊んで来ていいぞ。」

 どうやら、ギャランはこの程度の顔の女は相手にもしないようです。当然のように、人気者のバロンも、アランも相手にしません。ようやくレベル12のマッコイがルナを静かな所に連れて行きました。

「ヘッヘッヘッ!さあって、楽しもうかな、お嬢さん?」

『コォキーン!』

「あぐぅ!」

 マッコイのモッコイが蹴り潰されてしまいました。バァタンと静かな路地裏でマッコイは朝まで眠る事になりました。ご愁傷様です。

「ハァハァ、失敗した。変なのが釣れちゃったわ。」

 ルナは興奮しているのか、ちょっと息が荒いです。乱れた服装を綺麗に戻していると、隠れていたエッサがやって来ました。

「何やってるべぇか!キチンと誘惑しないからこんなのが来るんだべぇ。次は警戒するから、この手は使えないべぇよ。どうするんだべぇか!」

 こうなったら、闇討ちしかありません。でも、勝てない相手に勝負するほど、エッサ達は馬鹿ではありません。何とか、戦わずに勝つ方法を考えるしか他に道はありません。奴隷達が地下迷宮に出発するのは、早くて明日、遅くて明後日ぐらいです。残り時間は僅かでした。













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