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第6章・エミィ編。
第66話・ルナの嘘。
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『パラパラ。パラパラ。パァタン。』
エミィは本の中身を適当にめくって読んでいます。どうやら興味はないようです。すぐに閉じてしまいました。
「あの野盗、この本に書かれている事を話していただけじゃない!偉そうに威張って、全然大した事ないじゃない。」
私がベッドに入ったら、すぐに触ってくるし、もう最悪なんですけど!
エミィはルナが囚われている牢獄に向かっています。前に連れて行かれて、出て来たので、道はもう覚えています。お別れの挨拶にでも行くのでしょうか。
「なんだ、お前は?ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ。」
エミィは牢獄を守る看守の男に止められてしまいました。エッサのような兵士長権限があれば簡単に入れますが、普通は知り合いや家族が入っていなければ、牢獄には入れません。
「友達が捕まったと聞いて、何かの間違いだと思って、面会に来たんですけど駄目でしょうか?」
「それは残念だったな。友達の名前と、君の名前を教えて欲しい。上の許可が出れば、看守が付き添いで中に入れるからな。最後の挨拶だと思って、しっかりするだぞ。」
「はい。」
エミィも数日前に、ちょっとだけ入っていましたが、短時間なので看守に忘れられているようです。面会手続きも簡単に下りました。
『ガチャン、キィー、ガチャン。』
頑丈な鉄扉を開くと、まずは階段です。階段を下りると、その先がルナが入っている牢獄です。この牢獄は男女問わず一緒のフロアに入れられます。圧倒的に男性の方が多いので、女性が入れられるのは、牢獄に入ってすぐ近くの檻の中です。
「エミィ~、会いたかったよぉ~。お金の準備は出来たの?」
「どうやら元気そうねぇ。ある意味、感心するわ。」
ルナは昨日の夜はグッスリと眠れたようです。今は朝ご飯を食べ終えて、のんびりと寝転んでいました。
「10分ぐらいで戻って来るから、その間に話し終えるんだぞ。」
看守の男性は気を遣って、2人から離れて行きました。同性同士ならば問題ないだろうと思ったのでしょう。
「はぁ~、助かったわ。このまま奴隷になっちゃうかと思って、ヒヤヒヤしたんだから。それでここから出られるのは、今日のいつ頃なのかな?出来れば、お昼前には出たいんだけどなぁ~。」
昨日の夜ご飯は、売れ残りのパン1個だけでした。そして、朝ご飯もパン1個でした。扱いが酷過ぎます。さっさと誰でも出たくなります。
「残念だけど、あんたはここから出られないわ。だって、人殺しなんでしょう?危なくて出せないわよ。」
「もぉ~、違うってば!冗談はやめてよねぇ。」
ルナはちょっとだけ怒ったフリをして、すぐに笑いました。エミィの悪い冗談にちょっとだけ付き合てあげたようです。
「冗談じゃないわよ。私、嘘つきは昔からよく分かるの。あんたの話す事は半分以上が嘘よ。商人かどうかも怪しいものね。違うかしら?」
エミィは表情一つ変えずに、淡々と話し続けます。エミィの直感が、ルナは黒だと決めているようです。
「あっはははは。何、言ってるの?商人の許可書も持ってるし、私のステータスの職業にも商人狩人だって書いてあるでしょう。ダンジョンで、私が矢で攻撃したから怒っているんでしょう?もう二度としないから許してよ。」
「無駄よ、絶対に助けない。それにエッサもお金を用意出来ないから、あんたを助ける事は出来ないわ。あんたは終わりなの。終わりなのよ。」
これでいいの。エッサはコイツを助けるつもりでしょうけど、コイツは絶対に駄目。このチャンスは見逃せないのよ。
「ねぇ、エミィ~?私達、仲間なんでしょう。仲間が奴隷にされそうになってんだよ。エッサなら、王様に頼めば、何とかなるよ。エミィは私の事が嫌いだから、私に意地悪したいだけなんだよね?そうでしょう?」
あぁ、ダンジョンで本当に殺しておけば良かった。エッサなら私の事を信じて必ず助けてくれるのに、この女がいる所為で上手くいかないわ。
エミィの言う通り、ルナは人を殺しています。他所の国で奴隷として、商人に買われたルナは、旅の途中で商人の男を殺して、その荷物と全財産を奪い取って、この王都まで逃げて来ました。
「残念だけど、私が全力で邪魔するから夢を見ない事ねぇ。あんたは絶対に助けないし、助けさせない。せいぜい金持ちの変態と仲良く暮らすのね。」
ふぅ~、この女とこれ以上話すのは限界ね。さっさと家に帰って、エッサをもう一度説得しましょう。
「エミィ~、気をつけて帰るのよ。ここら辺は凄く物騒だからね。また、すぐに会えるから楽しみに待ってるのよ。あっははははは!」
ルナの不気味な笑い声が背後から聞こえて来ます。簡単に牢獄から逃げ出す事は出来ないはずです。でも、ルナのすぐに会えるという言葉に、エミィは嘘を感じませんでした。本気でエミィに会うつもりなのでしょう。危険な相手ですが、この世界に死刑はありません。誰もが最高神オーディン様によって、生きるチャンスが与えられる素晴らしい世界なのです。
エミィは本の中身を適当にめくって読んでいます。どうやら興味はないようです。すぐに閉じてしまいました。
「あの野盗、この本に書かれている事を話していただけじゃない!偉そうに威張って、全然大した事ないじゃない。」
私がベッドに入ったら、すぐに触ってくるし、もう最悪なんですけど!
エミィはルナが囚われている牢獄に向かっています。前に連れて行かれて、出て来たので、道はもう覚えています。お別れの挨拶にでも行くのでしょうか。
「なんだ、お前は?ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ。」
エミィは牢獄を守る看守の男に止められてしまいました。エッサのような兵士長権限があれば簡単に入れますが、普通は知り合いや家族が入っていなければ、牢獄には入れません。
「友達が捕まったと聞いて、何かの間違いだと思って、面会に来たんですけど駄目でしょうか?」
「それは残念だったな。友達の名前と、君の名前を教えて欲しい。上の許可が出れば、看守が付き添いで中に入れるからな。最後の挨拶だと思って、しっかりするだぞ。」
「はい。」
エミィも数日前に、ちょっとだけ入っていましたが、短時間なので看守に忘れられているようです。面会手続きも簡単に下りました。
『ガチャン、キィー、ガチャン。』
頑丈な鉄扉を開くと、まずは階段です。階段を下りると、その先がルナが入っている牢獄です。この牢獄は男女問わず一緒のフロアに入れられます。圧倒的に男性の方が多いので、女性が入れられるのは、牢獄に入ってすぐ近くの檻の中です。
「エミィ~、会いたかったよぉ~。お金の準備は出来たの?」
「どうやら元気そうねぇ。ある意味、感心するわ。」
ルナは昨日の夜はグッスリと眠れたようです。今は朝ご飯を食べ終えて、のんびりと寝転んでいました。
「10分ぐらいで戻って来るから、その間に話し終えるんだぞ。」
看守の男性は気を遣って、2人から離れて行きました。同性同士ならば問題ないだろうと思ったのでしょう。
「はぁ~、助かったわ。このまま奴隷になっちゃうかと思って、ヒヤヒヤしたんだから。それでここから出られるのは、今日のいつ頃なのかな?出来れば、お昼前には出たいんだけどなぁ~。」
昨日の夜ご飯は、売れ残りのパン1個だけでした。そして、朝ご飯もパン1個でした。扱いが酷過ぎます。さっさと誰でも出たくなります。
「残念だけど、あんたはここから出られないわ。だって、人殺しなんでしょう?危なくて出せないわよ。」
「もぉ~、違うってば!冗談はやめてよねぇ。」
ルナはちょっとだけ怒ったフリをして、すぐに笑いました。エミィの悪い冗談にちょっとだけ付き合てあげたようです。
「冗談じゃないわよ。私、嘘つきは昔からよく分かるの。あんたの話す事は半分以上が嘘よ。商人かどうかも怪しいものね。違うかしら?」
エミィは表情一つ変えずに、淡々と話し続けます。エミィの直感が、ルナは黒だと決めているようです。
「あっはははは。何、言ってるの?商人の許可書も持ってるし、私のステータスの職業にも商人狩人だって書いてあるでしょう。ダンジョンで、私が矢で攻撃したから怒っているんでしょう?もう二度としないから許してよ。」
「無駄よ、絶対に助けない。それにエッサもお金を用意出来ないから、あんたを助ける事は出来ないわ。あんたは終わりなの。終わりなのよ。」
これでいいの。エッサはコイツを助けるつもりでしょうけど、コイツは絶対に駄目。このチャンスは見逃せないのよ。
「ねぇ、エミィ~?私達、仲間なんでしょう。仲間が奴隷にされそうになってんだよ。エッサなら、王様に頼めば、何とかなるよ。エミィは私の事が嫌いだから、私に意地悪したいだけなんだよね?そうでしょう?」
あぁ、ダンジョンで本当に殺しておけば良かった。エッサなら私の事を信じて必ず助けてくれるのに、この女がいる所為で上手くいかないわ。
エミィの言う通り、ルナは人を殺しています。他所の国で奴隷として、商人に買われたルナは、旅の途中で商人の男を殺して、その荷物と全財産を奪い取って、この王都まで逃げて来ました。
「残念だけど、私が全力で邪魔するから夢を見ない事ねぇ。あんたは絶対に助けないし、助けさせない。せいぜい金持ちの変態と仲良く暮らすのね。」
ふぅ~、この女とこれ以上話すのは限界ね。さっさと家に帰って、エッサをもう一度説得しましょう。
「エミィ~、気をつけて帰るのよ。ここら辺は凄く物騒だからね。また、すぐに会えるから楽しみに待ってるのよ。あっははははは!」
ルナの不気味な笑い声が背後から聞こえて来ます。簡単に牢獄から逃げ出す事は出来ないはずです。でも、ルナのすぐに会えるという言葉に、エミィは嘘を感じませんでした。本気でエミィに会うつもりなのでしょう。危険な相手ですが、この世界に死刑はありません。誰もが最高神オーディン様によって、生きるチャンスが与えられる素晴らしい世界なのです。
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