禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第5章・シナリオ遂行編。

第64話・プレイヤーキラー。

「あぁ、疲れた。さっさと家に帰って、お風呂に入りたいわね。」

　まだ夕方にもなっていません。エミィはお風呂に入って、晩ご飯まで時間を潰すみたいです。

「ちょっと！ちょっと！みんな、待ってよ！何で助けてくれないのよ？」

「逃げたぞ！絶対に捕まえるんだ！」

　何故だか、ルナだけが王都の出入り口で門番達に止められてしまいました。高い敏捷のステータスで、何とか門番達を振り切って、エッサ達に助けを求めますが、エッサ達は知らないフリを貫き通します。

「人殺しが逃げたぞ！被害者が出る前に、力尽くでも拘束するだ！」

　どうやら、プレイヤーキラーとは、人殺しを意味する称号だったみたいです。道理で称号を獲得した瞬間に、レベル27のエッサよりも高い、レベル29になれた訳です。色々な修羅場は既に経験済みだったようです。

「私、本当に誰も殺してないよ。本当に本当だよ！みんななら信じてくれるよね？」

　ルナは、エッサとロックタの前に立ち塞がって、必死に無実を訴えます。

「エッサ様、知らない人がついて来るのですが、どうしましょうか？」

　王都の出入り口までは、手を繋いで姉弟のように仲が良かったのに、信じられない変わりようです。

「王都には色々な人がいるべぇ。危ない人と関わり合いにならないように注意するんだべぇよ。」

　スタスタスタと足を止めたら、仲間と思われてしまいます。絶対に止まったら駄目です。

『ガァシィ、ドォタァン！』

「捕まえたぞ！今すぐに牢獄に入れてやるからな！」

　4、5人の門番によって、ルナは力尽くで地面に押し倒されてしまいました。もう逃げられません。

「エッサ！エミィ！ロックタ！私達、仲間なんでしょう？助けてよぉ～！」

　必死に3人の名前を呼んで助けを求めますが、エミィとロックタは進み続けます。ピッタとエッサの足だけが止まってしまいました。どうやら、迷っているようです。

「だべぇ～～、仕方ないんだな。仲間のピンチを放って置く事は出来ないんだな。門番さん、ルナはオラの仲間だべぇ。人殺しなんて、出来るような人間じゃないんだべぇ。」

「エッサ、ありがとう～。私、本当に誰も殺してないよ。」

　プレイヤーキラーの称号は、故意に他人を攻撃する事で獲得出来ます。殺さなくても、攻撃を繰り返す事でも獲得出来るので、意外と判断が難しい称号です。この称号を持つ人は、ほとんどが闘技場で奴隷として売られてしまいます。

「あぁ、確かにこの女がエッサと一緒にいる所を何回か見た事あるな。だが、コイツは犯罪者だ！この国では犯罪者は奴隷として罪を償わないといけない。さあ、退いてくれ。」

　どうやら、エッサの事を知っている門番さんのようです。王都を出入りする時によく挨拶するので、顔と名前を覚えられていたようです。

「だったら、オラが奴隷として買うんだな。それならいいべぇ？いくら払えばいいか教えて欲しいんだな。」

「ちょっと！何、勝手な事を言ってるのよ！そんな女、放って置いてもいいでしょう。きっと裏でコソコソ、人を殺していたのよ。お金が勿体ないでしょう。やめましょうよ。」

　お金という言葉に反応して、エミィが急いで戻って来ました。どうやら、エミィは反対のようです。遠くにいるロックタはどうしたらいいのか分からないようです。エッサはお金の心配をするよりも、仲間を助けたいようです。

「はぁ～、とんだお人好しだな。若い女の奴隷は珍しいから、大体25万Gぐらいだな。容姿もまあまあ良い方だから、30万Gが相場の金額だな。どうするんだ？払うのか、払わないのか。俺達はどっちでもいいんだぞ。」

　ガサゴソ、ガサゴソ。ヤバイべぇ！15万Gしかないべぇ。全然足りないんだな。ロックタの購入費に、貸家とお祝いパーティーと、一気にお金を使ってしまったんだな。どうすればいいんだべぇ！

「分割払いでいいべぇか？」

　エッサの努力の甲斐もなく、ルナは牢獄に連れて行かれました。地獄の沙汰も金次第です。明日の朝までには足りないお金を集めないと、ルナは奴隷として知らない人の物になってしまいます。でも、簡単に大金を貸してくれる人なんていません。エッサに出来る事は諦める事だけなのでしょうか。

　◆

「今から地下迷宮に行けば、間に合うかもしれないべぇ！地下15階まで行けば、ランク6の武具が手に入るから、王様に頼んで、ルナを助けてもらえるはずなんだな。」

「ねぇ、エッサ。私達、疲れているのよ。次の奴隷市まで3日ぐらいはあるんでしょう？だったら、今日はしっかり休んで明日にしましょうよ。その方がいいと思うわよ。ねぇ、ロックタ？」

　ロックタも疲れているようです。返事がありません。それに地下15階のモンスターのレベルは、40～42はあります。エッサ達では行く事も難しい場所です。

「分かったべぇ。明日の朝に、ルナの冤罪を解きに王様の所に行ってみるべぇ。ちょうど報告書を提出したいと思っていたんだべぇ。」

　エッサは今日中に、ルナを助けるのは諦めました。何とか明日、王様に会ってお願いしてみるつもりです。