禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第5章・シナリオ遂行編。

第52話・歓迎祝い。

「一番簡単な称号は王都の貢献者だべぇ。つまりは王都にとって利益を上げる何かをすればいいんだな。」

　だとしたら、パーティーで古代遺跡を19階まで制覇すれば王様から全員貰えそうだべぇが、それじゃあ遅いんだな。

『ドンドン。』とエッサの部屋の扉を誰かが乱暴に叩いています。

「ご主人様、夜ご飯の準備が整いました。」

　奴隷剣士のロックタがエッサを呼びに来たようです。ご主人様と呼ばれると背中がムズムズするのでやめるように言ったのに忘れているようです。

「今行くべぇ。とりあえずは前衛のロックタを優先して称号持ちにした方が戦力アップ確実だべぇ。」

　実際に多くのモンスターと直接戦うのはエッサとロックタの前衛2人です。ロックタを鍛える事で戦闘能力は飛躍的に上昇します。王都の闘技場で優勝すれば貰えると思いますが、それが出来たら苦労はしません。

　今日は4人だけでパーティー結成祝い、引っ越し祝い、エミィとロックタの歓迎祝いと、複数のお祝いを一緒にまとめてお祝いしています。

「美味しい！エッサ達はいつもこんなに美味しい食べ物を食べてるの？私が今まで食べていたのは、腐った土の塊だったの？」

　王都あるあるです。田舎の食べ物は基本的に不味いです。田舎から王都にやって来た人は、とにかく食べ物に驚きます。次に物の値段が異常に高い事に驚きます。

「今日は2人の歓迎祝いだから、ちょっとだけ豪華なだけだべぇ。明日からは普通に戻るから期待しないようにするんだべぇ。」

　広い四角いテーブルの上には、サンドイッチ、グラタン、ステーキ、海鮮パエリア、オムライスが並んでいます。全体的に炭水化物が多いです。明日もパーティー全体のレベル強化です。そう考えると用意した料理の値段は格安です。全部合わせて2万Gもしないでしょう。

「どうしたんだべぇ？ロックタも座って食べていいんだべぇよ。」

「いえ、私は奴隷です。ご主人様達の残り物をいただければ十分幸せです。」

　ロックタはペコリと頭を下げて辞退しました。流石にこのままでは、生活に支障を来たしてしまいます。ある程度は普通に振る舞ってもらわないと困ります。

「えぇ～～！みんなで食べようよぉ～！ロックタが食べないなら、私も食べないよ！」

「えっ～と、私も食べません！」

　ルナとエミィの女性2人が食事の手を止めて、ロックタがテーブルにつくのを待っています。ロックタは闘技場では、このような場合の対処法を教えてもらってないので困っているようです。

「空いている席に座って、好きな料理を食べればいいんだべぇ。オラは奴隷を雇ったんじゃなくて、仲間を雇ったんだべぇ。仲間なら部屋の隅に突っ立ってないで、一緒に食べるんだべぇ。」

「分かりました。ご主人様が望むなら仕方ありません。よろしくお願いします。」

　ロックタはエミィとルナの2人の間に自然に座りました。2人の年上の女性に勧められるままに料理を食べ始めました。

　うんだぁ？どういう事だべぇ？オラの隣にも席は空いているべぇよ。好きな料理を食べていいと言ったけど、好きな女の隣には座っていいとは言ってないべぇ。

「ロックタ、先に言うけど、隣に座っているエミィはオラの恋人だべぇ。変な事をしたらただじゃおかないべぇよ。」

「エッサ、私の事を恋人だなんて嬉しい。」

　こういう事はキチンと教えておかないといけないべぇ。パーティーの仲間同士の恋愛バトルなんて、オラはお断りだべぇ。

「ご主人様、ご安心ください。私は年上には興味はありません。それにエミィ様やルナ様程度の女性は王都にはゴロゴロいるので、好きになる事もないでしょう。心配ありません。」

　確かに酒場の三人娘の方が容姿的には綺麗です。でも、思っていても言ったら絶対に駄目です。今度はショックのあまり、2人の女性の手が止まってしまいました。