禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第4章・パーティーメンバー編。

第49話・エミィを連れて行く。

「おぉ！エッサじゃないか。どうしたんだ？今度の休みは3ヶ月後じゃなかったのか？がぁははは、それとも新しい彼女でも紹介しに来たのか？母ちゃん、今度で何人目だったかな？」

「標準語！父ちゃん、だべぇはどうしたんだべぇ？何で標準語で喋っているんだべぇ？村人の誇りはどこに捨てたんだべぇ！」

　家の中には変わり果てた、オッサとサッサの2人が、綺麗な服を着て寝転んでいました。ほとんど休日だけ田舎で暮らしている都会人と同じです。

「エッサ、そんなに怒らないでぇ。まあ、アップルパイでも食べて、みんなでゆっくり話しましょうよ！」

「わぁ～、ちょうどお腹が空いていたんですよぉ～。私、ルナです。おば様、お世話になります。」

　どうやら、オラの事をエッサとして認識しているべぇ。でも、村人全員が変だべぇ。まるでオラをビックリさせる為にお芝居をしているみたいだべぇ。

「父ちゃん、1ヶ月前ぐらいに村に出た野盗の事を覚えているべぇか？あれからどうなったんだべぇ？」

「何言ってんだぁ？野盗なんか一度も村に来た事なんかないぞ。他所の村と勘違いしてるんじゃないのか。」

「そうよぉ～。この村に野盗なんか来ないわよ。まぁ～、この村で一番のお金持ちの家には来るかもしれないわねぇ。おっほほほほ！」

　どういう事だべぇ？オラの知っている父ちゃんと母ちゃんじゃない。顔だけは一緒で、中身はまるで別人だべぇ。

「へぇ～、エッサさんは16歳の時に、お城に試験に合格したんですねぇ～。じゃあ、一発合格じゃないですか！見かけによらず凄いんですねぇ。」

「まあ、俺の息子だから当然だな。俺も若い頃は王都の闘技場で鍬使いのオッサと呼ばれて、恐れられていたからなぁ～。」

　もういいべぇ。全部、オラが知らない事ばかりだべぇ。とりあえず目的の僧侶を探して、さっさと村から出るんだべぇ。

「父ちゃん、母ちゃん、今日は仕事で村に来たんだべぇ。村の中で僧侶になれそうな人はいないべぇか？」

「母ちゃん、知ってるかぁ～？僧侶といえば若くて可愛い女子じゃろう。だったらゴンゾウの所のエミィなら、エッサに惚れているようだし、お隣のお嬢さんが嫌じゃないのなら貰って行ってもいいんじゃないのか？」

　どういう事だべぇ？おかしいべぇ？オラにとって都合が良過ぎるべぇ。まるで誰かがオラに古代遺跡をクリアさせたいみたいだべぇ。

　エッサとルナは家から出ると、エミィの家に向かいます。色々とおかしな所はあるものの気になる所を上げていけば、キリがありません。

「エミィ、オラと一緒に王都で暮らして欲しいんだべぇ。」

　以前のエミィなら、こんな事を言ったら『はぁ？何言ってんの？馬鹿じゃないの。』と絶対に断るはずだべぇ。それがエミィという女だべぇ。

「えっ？エッサが私と一緒に暮らしたいなんて、私、夢でも見ているの？嬉しい、嬉しいよぉ～！」

　ポロポロと涙を流しながら、エミィは喜んでいます。あの日、エッサに石ころを投げつけて、村から追い出そうとした女と、同一人物とは思えない変わりようです。

　とりあえず、エミィは王都に連れて行くべぇ。村から離せば元に戻るかもしれないべぇ。でも、元に戻らなくても、オラが好きだったエミィが、オラの事を好きになっているだけでも嬉しいべぇ。