禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第2章・王都入門編。

第19話・フローラちゃん。

「お客さん！お客さん！閉店ですよぉ～！出て行ってください！」

「ぐぅ～。ぐぅ～。」

「その汚れた服装を見てみろ。何処かの村から冒険者になりたくて、わざわざここまで来たんだろうよ。構わねぇ、寝かせておけ。」

　お腹一杯に飯を食べたエッサは、疲れていたのか本を読みながら、寝てしまいました。お店で働いている若い方の女給さんに起こされそうになりますが、お店のマスターのおかげで、そのまま眠り続ける事が出来ました。

「ぐぅ～。ぐぅ～。ぐぅ～。」

　◆

『チュンチュン。チュンチュン。』とこの都会でもスズメ達は早起きです。朝日が昇る頃には必ず起きて一斉に鳴き始めます。

「お客さん。お客さん。朝ですよ。起きてください。」

「んんっ？ここは何処だべぇ？」

　可愛らしい子供の声で、エッサは起こされました。左横を見ると、透明なガラスコップに水を入れたものを持った、美少女が立っていました。

「お客さん、飲み過ぎですよ。冷たいお水を飲んでシャキッとしてください。」

「ありがとうさぁ。ごくごく。はぁ～～、オラ、酒場で寝てしまっただか？あいやぁ～、何だか恥ずかしい所を見られてしまっただなぁ。」

「そうです、とっても恥ずかしい事です。でも、お客さんだけじゃないので安心してください。毎日、何人も同じような恥ずかしい事をするお客さんがいるんですから。うっふふふ。」

　はいやぁ～、この女の子がフローラちゃんだべぇさぁ！今でもこんなに可愛いのに、6年後の18歳のフローラちゃんに今と同じ事を言われたら、オラ、地面に頭を擦り付けて『オラと結婚してください！』とお願いする自信があるさぁ。

「お客さん、田舎の人ですよね？その話し方は王都では珍しいですから。んんっ～～～、剣に兜に胸当てですか？装備は結構揃っているのに、お客さんからは他の冒険者のようなオーラというか、強さみたいなのを感じられませんね。」

「あっはは、オラのレベルはまだ1だから、仕方ねぇよ。都会の冒険者様には歯が立たねぇ。」

「レベル1？それなんですか？初めて聞いた言葉ですけど。」

　あいやぁ～！失敗したぁ～。都会にはレベルという言葉があると思ったけど無かったかぁ。仕方ねぇ、誤魔化そう。うんだぁ。

「オラの田舎ではレベル1はお金の1Gぐらい使えねぇ奴の事をいう言葉で、レベル５００もあれば、このお店の美味しいオムライスも食べる事が出来る凄え奴だという意味なんだべさぁ！」

「へぇ～、そんな意味だったんですねぇ。じゃぁ、お客さんは王都にはレベルを増やしに来たんですね！だったら、うちのお店でも毎日、何件かのお仕事の依頼が来るので受けてみてください！成功すれば一気にレベル３０００ぐらいにはなれますよ。うっふふふ。私、そろそろ学校なので失礼しますねぇ。あっ！お客さんの名前、まだ聞いていませんでしたね。私はこのお店のマスターの娘でフローラです。お客さんの名前はなんて言うんですか？」

「オラの名前は！いや、次に会った時に教えるさぁ。早く学校に行かねぇと遅刻するべさぁ。勉強、頑張るんだぞぉ！」

「はぁ～い！お客さんも頑張って、レベルを増やしてくださいね。」

『ブゥンブゥン、ブゥンブゥン。』とエッサも手を振ってお別れします。

　あいやぁ～、あれは天然の魔性の女さぁ。フローラちゃんがあと3歳年を取っていたら、オラ、牢獄に入れられていたかもしれねぇ。うんだぁ。フローラちゃんには悪いけど、レベルはそんなに一気には増えねぇ。地道にコツコツ努力するしかねぇ。だども、せっかくフローラちゃんがお仕事を紹介してくれたんだぁ。ちょっとだけ、依頼というものを見ないとなぁ。