禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか？

第一章・村人編

第11話・もう1人のエッサ。

「何の音じゃ？外に誰かいるんじゃなかとかぁ？」

「父ちゃん、猪かもしれん！2人で追い払ってやろう！」

　外から聞こえた大きな物音に気付いて、家の中にいた2人の男が鍬と鎌を持って出て来ました。エッサは急いで剣と兜を拾うと、兜を急いで被りました。

「わぁ！お前さん、誰だぁ！村の者じゃなかろう？」

　鎌を持っている男がエッサを見て、ビックリしています。剣を持って、兜を被っている知らない男が家の外にいたのです。それはビックリします。

(父ちゃん、オラはあんたの息子のエッサだよぉ～。それよりも、父ちゃんの隣にいるオラにソックリな男は誰ねぇ～？)

「おい、お前ぇ～！野盗だなぁ～！村にはお前にやる物なんか一つもねえぞぉ～！痛い思いをする前にさっさと消え失せろぉ～！」

　先祖代々受け継がれ鍬を持ち上げて、エッサにソックリな男が今にも襲い掛かって来そうです。

(その鍬は森の中に置いて来たはずなのに、何故にお前が持つちょるとねぇ？何故にオラにそんなにソックリなんねぇ？)

「エッサ、止めねぇか！お～い！お～い！武器を持った他所者がいるぞぉ～！男衆は武器を持って、家から出て来てくれぇ～！」

　エッサの父親のオッサが大声で叫んで、村の男衆を呼んでいます。鍬を持ったエッサが一人で無茶しないように、エッサの前に立って制止しています。

『ガラガラガラ。ガラガラガラ。』と村のあちこちの家で、横開きの玄関の扉が次々に開いていきます。ゾロゾロと思い思いの武器を持った男達が出て来ました。

(オラは他所者じゃない！トトペット、オラだよ？タッタさん、オラだよ？何で偽者のオラが父ちゃんの隣にいるさぁ！その鍬も父ちゃんもお前んじゃなくて、オラのもんなんじゃぞぉ！)

「オラはエッサだよぉ～。父ちゃんなら分かるよねぇ～？」

　兜を脱いで、エッサは父ちゃんのオッサに顔を見せました。でも、結果は思い通りにはいきません。

「はぁ～？お前がオラの息子のエッサだとぉ～？全然、顔が違うじゃないか！いい加減な事抜かすんじゃねぇぞぉ～！このコソ泥がぁ～！さっさと村から出て行かねぇと、ボコボコにして畑の肥やしにしちまうぞぉ～！」

「よく見てけろ！オラだよ、エッサだよ？トトペット、エミィ、タッタさん、ゴンゾウさん、オラだよ、本物のエッサだよ？信じてけろ。」

　村人の多くが武器を持って、剣を持ったエッサを取り囲んでいます。初めて野盗を見た事でいきり立っているようです。噂では野盗は金や食糧以外にも女、子供を連れ去っては奴隷として売り払うらしいです。容赦なく倒すべき存在です。

「おりゃー！」と子供の掛け声と共に、石ころがエッサに向かって飛んで来ました。最初は一個、次に二個、三個と投げる人が増えていきました。

「痛い！止めてけろ！痛いから、止めてけろ！」

　エッサは急いで鉄の兜を被りましたが、それでも、次々に投げ付けられてくる、投石の全てから全身を守るには足りませんでした。

　このままでは、エッサのHPが0になってしまいます。このまま野盗として村人に殺されるか、村人と戦って逃げるしか、エッサに思いつける選択肢はありませんでした。エッサは剣を握り締めると、村人に向かって行きました。