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第一章・村人編

第7話 剣技を使え

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「本の通りなら、モンスターは決められた攻撃を繰り返すだけだべぇ。人間様の力を思い知らせてやるべぇ!」

 斬空波は剣を振るだけで、真っ直ぐに斬撃が飛ぶらしいです。
 エッサは縦振りと横振りのどっちで剣を振ろうか迷っています。
 でも、迷っている時間はありません。トレントが向かってきます。

『ギギギィ!』
「とにかくやるんだべぇ! そいやぁっ!」

 エッサはどちらか決めると、剣を掛け声と共に横振りしました。
 でも、何も起こりません。

「何だべぇ? なんで何も起きないんだべぇ?」
『ギギギィ!』

 エッサはおかしいな? と首を傾げていますが、悩んでいる時間はありません。
 ガサガサ、ガサガサと葉音を立てて、トレントがすぐ近くに迫っています。
 このままでは危険なので、一旦安全な距離まで離れる必要があります。

「まさか、オラのレベルが1以下だったんだべぇか? そんな訳がないべぇ。中ボスとか、その辺に現れる野盗でもレベルがあるのに、村人のオラに無い訳ないべぇ。何かが足りないだけなんだべぇ」

 ダッダッダッとエッサは走って距離を取ります。トレントは動きが遅いです。
 ちょっと早い赤ん坊のヨチヨチ歩きと同じです。エッサには絶対に追い付けません。

「習得条件が無い、誰でも最初から使える技なのに、何で使えないんだべぇ⁉︎」

 エッサはトレントから離れると、急いで技の習得条件が書かれたページを探します。
 トレントが再び攻撃範囲まで接近するのに、計算では三十~四十秒はかかります。

「横振りじゃなくて、縦振りじゃないと駄目なんだべぇか? えいやぁっ!」

 エッサは急いで本を地面に置くと、両手で剣を握って縦に振り下ろしました。
 ビューンと音を立てて、剣が振り下ろされましたが何も起きません。
 やっぱり、エッサのレベルが1以下なのかもしれません。

「はっ! そういえば魔法を使う時に、恥ずかしい言葉を言うように書いてあったべぇ!」

 それでも、エッサは諦めずに必死に頭を使って考えました。
 そして、何かに気付いたようです。

「もしかして、これも恥ずかしい言葉を言わないと使えないべぇか? オラ、あんな恥ずかしい言葉を言わないと使えないなら、剣技も魔法も一生使えなくていいんだべぇ!」

 エッサが恥ずかしい言葉を言うか迷っていると、メコメコと地面が微妙に揺れました。

「ん? ヤバイべぇ⁉︎ 下から来るんだべぇ⁉︎」

 その微妙な揺れにエッサは気付くと、なりふり構わずに真横に頭から飛び退きました。
 エッサが今まで立っていた地面の下から、六本の鋭い木の根が突き出てきました。
 地面の揺れに気付けなかったら、串刺しになって死んでいました。

「あいやぁ⁉︎ トレントの攻撃方法を知らなかったら死んでたべぇ! 今は恥ずかしがっている場合じゃねぇ。うんだ、うんだぁ」

 エッサは地面から急いで起き上がると、剣をトレントに向けて構えます。
 そして、剣をしっかりと両手で握って気合いを入れていきます。
 あとは技名を叫びながら、剣を縦に振り下ろすだけです。

「行くべぇよぉ……ッ‼︎」

 ヒューン——ザァン!
 空気を斬り裂きながら飛んでいった斬撃がトレントに命中しました。

『ギギギィィィィ!』

 グラグラと斬空波の斬撃でトレントの身体が揺れています。
 でも、すぐに体勢を整えて向かって来ました。
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