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第一章・村人編
第4話 こんな事はありえない
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「はぁ、はぁ、はぁッ……!」
エッサは疲れています。本を森の木に何度も何度も投げつけましたが壊れません。
頑丈な本にも限度があります。
「これだけやっても傷一つ付かないなんて、本当に本だべかぁ? それとも本当にモンスターや魔法が存在して、あの小太りの変な名前のプロデューサーとか言う男が、この世界を作った創造主なんだべかぁ? そんなこと信じられないねぇ。信じたら駄目だぁ!」
エッサは頭を抱えて、本の内容を絶対に信じないように抵抗します。
それでも考えてしまいました。思ってしまいました。
この本の情報が正しいのなら、この森にはモンスターがいて、森の奥の方にある宝箱の中には『グラディウス』という剣が入っている事になります。
モンスターか、宝箱のどちらか、一つでも確かめる事が出来れば、この本の情報が正しい事になります。
「オラの方が正しいと証明してやるべぇ! 付いて来るんだべぇ!」
エッサは地面に落ちている本を怒りながら拾い上げました。
西の森に出現するモンスターのレベルは16~18とか訳が分からない情報です。
村人のエッサにはレベルが書かれていません。
強そうな冒険者のレベルが1なので、レベルなんていうものは、どうでもいい情報だと思っています。
「こっちだべぇ」
西の森の地図を頼りに、エッサは目的の宝箱の場所を目指します。
本の森の地図と実際の森の道はほとんど一緒です。
それよりも、誰も入らない森の中が綺麗に整備されている方が不気味でした。
「この道もオーディン様、いやいや、プロデューサー様の部下の、グラフィックデザイナー様が作ったものなんだべかぁ? 一人でこんな森をいくつも作れるなんて、きっと神様に匹敵する力をお持ちなんだべぇ。凄えお方なんだべぇなぁ」
キョロキョロとモンスターを一応警戒して、エッサは進みます。
モンスターは何故だか、すぐ目の前に見える人間しか襲わないと、この本には書かれています。
この情報が正しいのなら、距離を取るだけで襲われる事は絶対にありません。
ガサガサ、ガサガサと木の葉が擦れるような音が聞こえて来ました。
パラパラパラと素早くエッサは本のページを捲りました。
(もしかして、この本の通りにデカイ紫色の蜘蛛モンスターか、歩く木のモンスターが現れたんじゃないだべぇかぁ?)
エッサは茂みの中に隠れて、現れるだろう何かを待つ事にしました。そして、それが現れました。
ガサガサ、ガサガサと木の葉を揺らしながら、エッサの顎の高さぐらいの『木』が歩いてきました。
(信じらんねぇ⁉︎ 何で木が歩くんだぁ⁉︎ いやいや、木が歩ける訳がねぇ! あれは誰かが切った木を担いでいるに違いねぇ! 絶対にそうだぁ! 確かめてやるべぇ!)
エッサは勇気を出して、歩く木に気付かれないように近付いていきました。
エッサは疲れています。本を森の木に何度も何度も投げつけましたが壊れません。
頑丈な本にも限度があります。
「これだけやっても傷一つ付かないなんて、本当に本だべかぁ? それとも本当にモンスターや魔法が存在して、あの小太りの変な名前のプロデューサーとか言う男が、この世界を作った創造主なんだべかぁ? そんなこと信じられないねぇ。信じたら駄目だぁ!」
エッサは頭を抱えて、本の内容を絶対に信じないように抵抗します。
それでも考えてしまいました。思ってしまいました。
この本の情報が正しいのなら、この森にはモンスターがいて、森の奥の方にある宝箱の中には『グラディウス』という剣が入っている事になります。
モンスターか、宝箱のどちらか、一つでも確かめる事が出来れば、この本の情報が正しい事になります。
「オラの方が正しいと証明してやるべぇ! 付いて来るんだべぇ!」
エッサは地面に落ちている本を怒りながら拾い上げました。
西の森に出現するモンスターのレベルは16~18とか訳が分からない情報です。
村人のエッサにはレベルが書かれていません。
強そうな冒険者のレベルが1なので、レベルなんていうものは、どうでもいい情報だと思っています。
「こっちだべぇ」
西の森の地図を頼りに、エッサは目的の宝箱の場所を目指します。
本の森の地図と実際の森の道はほとんど一緒です。
それよりも、誰も入らない森の中が綺麗に整備されている方が不気味でした。
「この道もオーディン様、いやいや、プロデューサー様の部下の、グラフィックデザイナー様が作ったものなんだべかぁ? 一人でこんな森をいくつも作れるなんて、きっと神様に匹敵する力をお持ちなんだべぇ。凄えお方なんだべぇなぁ」
キョロキョロとモンスターを一応警戒して、エッサは進みます。
モンスターは何故だか、すぐ目の前に見える人間しか襲わないと、この本には書かれています。
この情報が正しいのなら、距離を取るだけで襲われる事は絶対にありません。
ガサガサ、ガサガサと木の葉が擦れるような音が聞こえて来ました。
パラパラパラと素早くエッサは本のページを捲りました。
(もしかして、この本の通りにデカイ紫色の蜘蛛モンスターか、歩く木のモンスターが現れたんじゃないだべぇかぁ?)
エッサは茂みの中に隠れて、現れるだろう何かを待つ事にしました。そして、それが現れました。
ガサガサ、ガサガサと木の葉を揺らしながら、エッサの顎の高さぐらいの『木』が歩いてきました。
(信じらんねぇ⁉︎ 何で木が歩くんだぁ⁉︎ いやいや、木が歩ける訳がねぇ! あれは誰かが切った木を担いでいるに違いねぇ! 絶対にそうだぁ! 確かめてやるべぇ!)
エッサは勇気を出して、歩く木に気付かれないように近付いていきました。
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