長崎奉行所拷問官・鬼頭仁之助

もう書かないって言ったよね?

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石抱きの刑・丙

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 鬼頭仁之助は長屋に火を放ち、10人もの死傷者を出した罪人・正之助(せいのすけ)なる30代の男に話しを聞かせていた。

 鬼頭「けれども、そこには赤ん坊のお加代ともう1人、寛吉がよく知っている女がお加代を抱いて立っていました。その女は寛吉を見ると顔をほころばせて『お前さん!』ととても嬉しそうに走り寄って来ました。寛吉『お民(たみ)なのか?お前はお加代を産んでから、しばらくして流行病で亡くなっただろうが?どうして、こんな所にいるんだ~?』と18歳の若さで死んでしまった、寛吉の美しい女房のお民がその頃の姿のままで生きていました」

 正之助「そいつはめでたい話だな旦那。火事で焼け死んだ奴らにも聞かせてやりたいぜ!」と女房と娘を南蛮人に手篭めにされ、奉行所の裁きでお咎め無しを申し渡された男が絶望の中で答えました。

 鬼頭「寛吉は喜び言いました『お民、お加代を連れてここから出るぞ!それから、また一緒に、3人で暮らそう?』とお民の手を握って、幸せな夢を思い描いていました。3人は一緒に龍神様の腹の中を出口を目指して進んで行きます。何時間もただただ真っ直ぐに走って行きます。やっと出口の光が見えてきました。そんな時でした。龍神様『寛吉、ここから出ることが許されるのは2人までだ!私の力では2人までしか出すことは出来ない。女房か娘か、どちらかを選べ!』と3人に聞こえるように話しました」と話し続けます。

 正之助「俺だったら、自分が残って、2人を出してやりたいなぁ~」と自分が犠牲になることを選びました。

 鬼頭「………寛吉『龍神様、オラが残るから2人を外の世界に出してくれ!いいだろう?』と自分が残ることを選びました。龍神様『いいだろう。お民とお加代を外に出してやる。その代わりにお前はココに残ってもらうぞ!』と約束通りに外に出して上げました。寛吉は2人が無事に出られて喜び『龍神様ありがとうございます』と感謝の言葉を残して消えてしまいました」と話し続けます。

 正之助「鬼頭さん。今の話は、今考えて作りましたね?私なんかの為にありがとうございます!」と頭を下げて礼を述べました。

 鬼頭「1年後、また村では生贄の女を選ぶことになりました。誰もが嫌がり、生贄役を押しつけあいます。そんな中で『私がやります‼︎』と1人の少女が元気な声で名乗り出ました。少女は龍神様の泉にやって来ると、お加代『私のお父さんを返してください!今度は私が代わりになります』と龍神様にお願いしました。龍神様『お前は一度、生贄になったな。生贄は一度だけの決まりだ。決まりを破ったお前には罰を与える。この男の面倒を見てもらうぞ!』と龍神様は口から、少しだけ若くなってしまった寛吉を吐き出すと消えてしまいました。お加代は龍神様に言われた通りに、しっかりと男が死ぬまで罰を喜んで受けました。めでたしめでたし!」と話し終えました。

 正之助「ずいぶんと都合のいい話ですね。結局は家族仲良く幸せに暮らしましたですか?現実は違いますよ!」と南蛮人というだけで罪に問われない現実に、怒りを露わにしました。

 鬼頭「その通りだな。お前には、これから南蛮人の目の前で焼け死んでもらう!いいな?」と正之助の目の前に油の入った桶を置きました。

 正之助「くっ、それがお奉行所のやり方ですか!」とさっきまで感じていた喜びも、すっかりと冷えてしまいました。

 鬼頭「お前の処刑は夜中に、この南蛮船の上で執行する。しっかりと焼き尽くすんだぞ!」と南蛮人が寝静まった夜中に、正之助を船まで連れて行くと、正之助「ありがとうございます」と鬼頭に礼を言うと、油をかぶって、身体に火を付けて『あっははは』と笑いながら、罪人達と焼け死んでいきました。

 《めでたし、めでたし》
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