長崎奉行所拷問官・鬼頭仁之助

もう書かないって言ったよね?

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鞭打ちの刑

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 遠山景晋は早速、町人の恰好に着替えて、遊び人の景(かげ)さんとして城下町の探索に出かけた。

 景さんは金貸しの文三(ぶんぞう)の溺死体が上がった明神川(みょうじんがわ)に行ってみると、この界隈では名の知れた釣り爺さんの彦八(ひこはち)に会うことが出来た。

 景さん「今日もやっているな爺さん。どれどれ?鰡(ぼら)ばっかりだな!こんなところまで上がって来るんだな」と釣り爺さんの水桶には3匹の30㎝ぐらいの大きさの魚が生きたまま泳いでいました。

 釣り爺さん「久しぶりだな。悪餓鬼がこんなところに何しに来た!ここじゃ魚しか釣れんぞー!」と景晋の若かりし頃の女癖をネタにして『ハッハッ』と笑います。

 景さん「爺さん、その話は酒でも飲みながら、また今度にしようぜー。今日来たのは最近、上がった溺死体のことで話がしたくてな!爺さん何か知っていることはないかい?」と明神川一の情報通の釣り爺さんに聞いてみました。

 釣り爺さん「金貸しの文三のことか?アイツの悪い噂はここまで届いているよ!酒屋で会った奴に酒を奢って酔わせると、博打に連れて行って金を貸しては、法外な利子で取り立てる悪どい奴だ!死んでくれて良かったよ」と文三のことを話すだけで胸くそが悪くなった釣り爺さんは『あ~あ!』と悪態をつきました。

 景さん「なるほどな、そういうカラクリがあったのか。釣りの邪魔して悪かったな爺さん。今度、饅頭と酒を土産に持って来るよ」と帰ろうとしましたが、釣り爺さん「待て待て!文三かどうか分からないが橋から酔っ払いが落ちたと仲間が話していた。すぐに泳いで岸に上がったらしいから死んではいないはずだ!一応は何かの役に立つかもしれないぞ?」と興味深い情報を教えてくれました。

 景さん「そうか?爺さん、ありがとよー」と釣り爺さんに礼を言うと去って行きました。

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 遠山景晋は借金のカタに遊郭に売り飛ばされた女達を探る為に、夜の丸山(まるやま)遊郭の探索を開始した。

 景さん「へぇ~!姐さんの本当の名前はお吉さんって言うんですか!確か最近女房に逃げられたって、酒場で騒いで奉行所に引っ張られた男の女房の名前もお吉って言うですよ。まさか姐さんがそのお吉さんじゃないんですか?」と歳は24になる、鉄二の女房お吉ではないかと、遊郭では雛菊(ひなぎく)と名乗るお吉に冗談のように言ってみました。

 お吉「あの呑んだくれの馬鹿店主が本当にどうしようもないね~。まあ、1年ここで働けば借金は無くなるから、帰ったらしっかりとこき使ってやるよ!」と気丈に振る舞っていますが、鉄二の元に戻るために夜の仕事にも耐えています。

 景さん「実はな、お吉さん。俺は鉄二に頼まれて、金貸しの文三について調べているんだよ!文三が明神川で溺死体で見つかってな、それで鉄二が殺したんじゃないかと奉行所は睨んでいるんだよ。お吉さんは何か知らないかい?」と借金のカタに遊郭に売り飛ばしたお吉に、文三は御執心でした。

 お吉「あの人に限って、そんなことする度胸はないよ!それに文三を殺したのは旗本の三吉勘十郎(みよしかんじゅうろう)だよ。文三に脅されて仕方なく、殺したみたいだけど…あいつが賭場の元締めだからね。どうせ金の話で揉めたんだろうね!」と賭場の元締めであり、全ての事件の黒幕であろう人物を突き止めた遠山景晋は1人賭場に乗り込んで行った。

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 景さん「丁!」と賭場で遊びに興じています。

 壺振り「4・6の丁!」と景さんの勝ちが続きます。

 三吉勘十郎「兄さん気前がいいね~!良かったらサシで勝負するかい?」とイカサマで勝たせて気分を良くさせてから、景晋の身ぐるみを剥ごうと企てています。

 景さん「丁!」と賭けます。壺振り「1・6の半!」と負けました。景さん「丁!」と賭けました。壺振り「3・4の半!」と負けた景さんの札を取ろうとすると『パァシィ~ン!』と景さんが壺振りの右手を平手で叩くとサイコロが3個コロコロと転がり落ちました。

 景さん「イカサマとは感心しないな~お武家様。それともこの賭場ではイカサマしても良いんですかい?」と『クックック』と笑いながら、三吉勘十郎の顔を見つめて聞いてみました。

 三吉勘十郎「変な言いがかりはやめてほしいな!これ以上騒ぐようなら力づくで追い出すぞ‼︎」と明らかに侮辱されたことを我慢出来ないようです。

 景さん「騒いだら、文三のように明神川で溺れさせるつもりですか?三吉の旦那!」と真剣な表情で三吉勘十郎を問い詰めました。

 三吉勘十郎「お前ー!何者だ!ただの町人ではないな!お前らーこの男を縛り上げて知ってることを喋らせろ‼︎」と賭場にいる手下に命令すると三吉勘十郎を含めた7人の男が景さんを囲い込みました。

 景さん「おうおう!慌てんじゃないよ~!数ある花のその中で、この背中に咲かせた遠山椿、散らせるもんなら散らしてみやがれ‼︎」と上半身の着物を脱いで見事に咲いた赤い椿の花を悪党どもに見せつけました。

 三吉勘十郎「生きて帰れると思うなよー!構わねぇー、叩き殺せ‼︎」と手下達と一斉に向かって行きました。

 景さん「成敗!」と次から次へと襲いかかる手下を素手で返り討ちにしては、手下の1人から刀を奪い取ると峰打ちで、全員を動けなくなるまで叩きのめしてしまいました。

 『ピュー!ピュー!』と騒ぎを聞きつけた岡っ引きの呼び笛の音が聞こえて景さんはその場から急いで立ち去りました。

 後日、お白州で三吉勘十郎とその手下はあの夜にぱっと咲いた遠山椿を見せつけられると、『あぁあー‼︎』と言って大人しくなりました。

 《めでたし、めでたし》

 
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