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水責めの刑

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 鬼頭仁之助が事故の参考人として長屋で一人暮らしをしている鉄二(てつじ)を長崎奉行所の拷問部屋に連れて来ました。遠山景晋は事故の参考人程度をわざわざ連れて来たことに疑問をいだき、隠れて話しを聞くことにした。

 鬼頭「わざわざ済まないな。女房のお吉は元気にしているのか?別れたらしいが連絡ぐらいはまだしているんだろう?」と鉄二が最近別れたらしいお吉のことを聞きました。

 鉄二「さあな。何処か他所で若い男と楽しく暮らして居るだろうよ」と器量良しで評判だった、お吉ならば確かに納得出来そうな答えです。

 鬼頭「ならばいいのだが、これだけでもう帰ってよいとは流石に奉行所も暇ではない。ちょっとだけ儂の作った話しを聞いて、感想を話してくれないか?」

 鉄二の返事を聞いてから、鬼頭仁之助は話し始めました。

 鬼頭「ある神社に鬼の金貸しが住んでいました。鬼の金貸しは神社に続く道に小銭を置いて行きます。ある日、道に落ちている小銭を拾いながら1人の男がやって来ました。鬼の金貸しはその男が神社の中に入ると背後から『俺の金を盗もうとしたな!さっさと俺の金を返せ!』と男を脅します。男が拾ったお金を全て返しても『足りないぞ!俺の金を全て返せ!』と男の身体を持ち上げて『ブンブン!』と振り回します。男の身体から『チャリンチャリーン!』と男が最初から持っていたお金が落ちて来ました」と話し始めました。

 鉄二「鬼の金貸しか。その男は殺されたか、食われて死んだんだろ!」と鬼頭の話しの続きを先に話します。

 鬼頭「その通りだ。では続きを話そうか。鬼の金貸しは男を食い殺して、次の獲物が来るように小銭を道に置いて行きます。しばらくすると、鉄二という男がやって来ました。鉄二は小銭を拾いながら鬼の住む神社に向かって進んで行きます。鉄二は『俺の金を返せ!』と突然背後から鬼に捕まりました。ジタバタと暴れる鉄二を鬼は力任せに投げ飛ばします。鬼は『俺の金を全て返せ!そしたら命は助けてやる!』と鉄二を脅します。鉄二は慌てながらも『ちょっとだけ待ってくれれば倍にして返してやれる!ちょっとだけ待ってくれ!』とズル賢い知恵を使って、小銭を持ったまま鬼から逃げようと嘘をつきました。鬼は『分かった!ちょっとだけ待ってやる。嘘だったらお前の大事な物を代わりに貰って行くぞ!』と言って、鉄二を見逃しました」と参考人の鉄二を話しの中に登場させます。

 鉄二「………」は黙って鬼頭の話しを聞き続けます。

 鬼頭「ある日のこと女房のお吉と長屋でのんびりと過ごしていると、鬼の金貸しがやって来て『ちょっとだけ待ってやった!お前の大事な女房を貰って行くぞ!』とお吉を力付くで攫って行きました。お吉は鬼の金貸しに骨までしゃぶり尽くされると捨てられました。お吉を奪われた鉄二はカンカンに怒って鬼の金貸しが住む神社に怒鳴り込んで行きました。鉄二は知恵を使って鬼を殺そうとします。鉄二は『3本勝負をして俺が1本でも勝てたら女房のお吉を返してくれ!』と鬼の金貸しに言いました。鬼はニヤニヤと『いいだろう。1本でも勝てたら女房を返してやる!だが、お前が1本も勝てなかったらお前を食い殺してやるからな!』と口を大きく開けて『ガチガチ!』と鋭い歯を鳴らして見せました」と鉄二と鬼の3本勝負が始まる所まで話してからチラリと目の前に座る鉄二を見ました。

 鉄二「………」は顔を下に向けて少しだけ呼吸が荒くなり、手は小刻みに震え始めていた。鬼頭は話しの続きを話し始めました。

 鬼頭「鉄二は酒樽を持って来て『1本目は飲みくらべだ!先に酔い潰れた方が負けだ!』と鬼との勝負を始めました。けれども、鉄二は『チビチビ!』と酒を舐めるようにゆっくりと飲んでいます。逆に鬼は豪快に『ガブガブ!』と樽の酒を全部飲み干してしまいました。鉄二は慌てて酒樽をドンドン用意しては鬼に飲み干され行きます。鉄二は『俺の負けだ!酒樽を用意する金が無いと降参しました』鬼は『ガァハッハッハッハ!』と愉快に笑ってから『それは残念だ。まだまだ飲み足りないが仕方ない、次の勝負を言ってみろ!』と足元をフラつかせながら鉄二に近付いて行きます。鉄二は『次は殴り合いだ!俺の拳骨に耐え切れたら、お前の勝ちだ!』と言うと、鬼は『ガァハッハッハッハ‼︎』と笑って言いました『いいだろう。100発殴らせてやる!顔でも金玉でも好きな所を殴れ。俺様は1発で十分だ!』鉄二は鬼の言う通りに好きな所を100発殴りました。殴られている間も鬼は『ガァハッハッハッハ‼︎』と笑い続け、痛くも痒くもないと殴られ続けました。鉄二は『ハァハァ!』と殴り疲れてフラフラです。鬼が近付いて『俺様の番でいいなと?』と鉄二の前に立ちました。鉄二は慌てて地面に土下座して『俺の負けだ!だから殴らないでください!』と必死に鬼に謝りました。鬼は『いいだろう。だが3本目の勝負にお前が負けた時は、死ぬまで殴らせてもらうぞ!』と容赦なく鉄二を殺すつもりです。鉄二はペコペコと何度も頭を下げて礼を言います。3本目の勝負は我慢くらべです‼︎水中に長く潜っていた方が勝ちです。鉄二はズルをして水中でも呼吸が出来るように筒を用意していました。鉄二と鬼は背中合わせに川の中に潜って我慢を開始しました。鉄二は川の底の大きな石にロープを結んで気付かれないように鬼の足に固く結びました。鬼はいつまで経っても鉄二が諦めないので、だんだん息が苦しくなってしまいました。ついに我慢出来なくなって潜るのを止めようとしますが、足のロープで浮き上がれません。『ガァボゴォボ!』と水が口の中に入って行きます。とうとう鬼は死んでしまいました。めでたしめでたし!」と話し終えました。

 鬼頭「鉄二、何か言うことはないか!」と話しの感想を聞いてみました。

 鉄二「鬼頭さん、俺が金貸しの文三(ぶんぞう)を酔わせて川に投げ捨てました。どうぞお縄をかけてください」と事故死と思われていた、文三の殺しを自白しました。

 鬼頭「そうか……つまらなかったか。では、しばらく待ってくれ!面白い話しになったら呼びに行く!それまでは長屋でいままで通りに暮らしているんだ!いいな?」と鉄二を帰してしまいました。

 鬼頭「遠山様、あとは頼みましたよ!」と物陰に隠れている遠山景晋にそう言うと去って行きました。
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