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第22話

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「是非是非、死ぬ前に王子様に会いたいよぉー!」
 
 そう言って兵士に頼み込んで、セラさんの付き添いとして、私達三人も王子様に会えることになった。
 熊のような大きな身体の近衞騎士団長に案内されて、王子様の待つ部屋に向かっている。
 向かっているのはセラさん、お婆さん、ラナさん、私の四人の女性だ。
 私が王子様で、この四人の中からお妃を選ぶならラナさんで決定だ。

「……随分とかかるんだね?」

 お婆さんが近衛騎士に聞いた。闘技場から結構な時間、城の中を歩き回っている。
 それも人気のない奥の奥の方に向かって。

「……そうだな。この辺でいいだろう」
「ん?」

 近衛騎士が左側に小さな庭がある暗い廊下の真ん中で立ち止まると振り返って言った。
 もしかすると予想外の展開で、「私が王子だ」……とか名乗るのだろうか?

「貴様達を王子に会わせるつもりはない。ここで全員死んでもらう」
「なぁっ⁉︎」

 ちょっと待って⁉︎ いま、達、全員って言った⁉︎
 本当に予想外の展開だ。近衛騎士が鞘から剣を抜いて言った。
 私、無理やり連れて来られただけです。

「それはどういうことだい? 王子の命令かい?」
「貴様達が知る必要がないことだ。卑怯な手を使って偽りの優勝を手にした者達にはな」

 お婆さんが近衛騎士に聞いて、近衛騎士が理由を教えてくれた。
 だけど、この時点でもう黙っている必要はない。
 近衛騎士に向かって言った。

「ちょっ、ちょっと待ってください!」
「何だ?」
「私、無関係です! このお婆さんに無理やり連れて来られただけなんです!」

 そんなんです。私、無関係なんです。
 言うべきことは言う。ハッキリ言わないと殺される。
 それなのに、

「ほぉー、無関係か。貴様、闘技場でハンバーガーを売っていたな?」
「えっ、はい、売ってましたけど……?」
「選手達にも売っていたな?」
「えっ、あっ、はい、売ってましたけど……⁇」

 まるで私が犯人の一人だと決めつけているみたいに近衛騎士が聞いてくる。
 確かにハンバーガーを選手達にも売っていた。買いたいと言われたら売るに決まっている。

「ハンバーガーを食べた選手の何人かが体調不良を訴えている。何を入れたんだ?」
「な、何も入れてません‼︎」

 私の必死の訴えにマジックが自動発動してくれた。

 ☆メンタルマジック発動☆

(あっ、それ私です)

 お・ま・えかあああ‼︎ 真犯人めっちゃ近くにいた。
 白魔導士の服脱ぎ捨てて、一般人装っている真犯人がいた。
 コイツが犯人だと今すぐ指差して教えてあげたい。

「この女が犯人です! 白魔導士の服着てたから、治療と称して毒でも盛ったんじゃないですか!」

 もちろん言った。言うに決まっている。

「ひ、酷い。私、そんなことしてないのに……ぅぅぅ」
「嘘つけええ! お前がやったんだろ!」

 そんな嘘泣きで騙されるか。どうせその乳も偽乳なんだろ。

「何だ、仲間割れか?」
「違います! 仲間じゃないです!」
「では何故、その女が白魔導士に紛れ込んでいたのを知っている?」
「うっ、そ、それは……」

 ラナさんを指差して犯人を近衛騎士に教えたのに、逆に疑いを深めている。
 マジックで心を読んだからです、と正直に答えても通用しないと思う。
 それを言ったら、近衛騎士に「では、俺の心を読んでみろ」と言われてしまう。
 それで読んだら読んだら、「この化け物め!」とか問答無用で斬られそうだ。

「フッ。そこまでバレてたら仕方ないねぇ~。ああ、その通りだよ。あんたの言う通りだ。だけど、今度はこっちが聞く番だよ」
「……何だと?」
「金なんて最初から貰うつもりはないよ。その代わり知っていることを全部話しな。今までの武闘会で優勝した女達は何処だい? 優勝後に全員行方不明になるなんて無関係とは言わせないよ」
「……えっ?」

 ちょっと待って。私の周りの空気が一変した。
 今の状況がよく分からない。
 私達が悪者で、あっちが正義なんだよね?

「お前達……一体何者だ?」
「聞いてるのはこっちだよ。何処にいるんだい!」

 明らかに近衛騎士が警戒している。
 そんな近衛騎士をお婆さんが強気に問い詰めた。
 そこに、

「クククッ♪ ランドルフ、そんなに知りたければ教えてあげればいい。これから君達が行く場所だってね」
「お、王子‼︎」
「い、良いお客様‼︎」

 暗い廊下の角から男がスッと現れた。まさかの展開に近衛騎士と私が驚いた。
 流れる金色の髪、スラッとした身体つき、白の礼服、私を助けてくれた良いお客様だ。
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