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第15話

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 ☆☆☆

「ただいまぁ……」

 悪い子の朝帰りではなく、良い子の夜帰りだ。
 街の観光は十分楽しんだし、使った分たっぷり稼がせてもらった。
 お婆さん達がいる空き家っぽい家の扉をそっと開けて中に入った。

「なんだ、帰ってきたのか」
「あ、当たり前じゃないですか」

 セラさんが私の顔を見るなり嫌そうに言ってきた。そりゃー帰るに決まっている。
 街の宿屋は当然武闘会で全部満室。街の外にテント出して寝るよりは、この空き家の方がマシだ。

「セイラ、明日は早いんだ。さっさと休んで疲れを取っておきな」

 お婆さんが当たり前のように言ってきた。
 普通はご飯食べたのか、ぐらい聞くところだ。
 もちろん食べすぎて、歩くのもキツイぐらい食べてきた。
 言われなくても、さっさと布団出して寝ようと思っている。

「ふぅー」

 パジャマに早着替えすると、白いシーツを振り回して、自宅のベッドを床に召喚した。
 テントや宿屋のベッドよりも、やっぱり寝なれたマイベッドだ。
 何処ぞのおじさんが使ったかもしれない宿屋ベッドよりも、自分の匂いが染みついたマイベッドだ。
 目を閉じれば、すぐに心地よい眠気がやってきた。

「……セイラは眠ったみたいだね。明日の最終確認をするよ」

 お婆さん達はまだ何かするみたいだ。
 私が聞いても意味ないので、このまま眠らせてもらいます。
 おやすみなさい。

 ☆☆☆

「すぅー、すぅー……」
「起きな」
「ぐぁああああ‼︎」

 ドスン。隕石落ちて来た‼︎

「ゔあぁ~~‼︎」

 私のお腹に隕石落ちて来た‼︎

「ゔあぁ~~‼︎」
「油断し過ぎだよ。武闘会だったら死んでるよ」

 私のお腹に妖怪怪力ババアが落ちて来た‼︎

「はぁはぁ……うぐっ……お、おはようございます」

 今日も素敵な一日が始まらない予感がする。ベッドの上を転げ回った。
 お婆さんのキツイ一撃ですっかり目が覚めてしまった。

「早く支度しな。もうあんた以外は出来てるよ」
「ぅぅぅ……?」

 まったく悪びれる様子もなく、お婆さんが急かしてきた。
 完全に涙で開ききってしまった両目で部屋の中を確認した。
 お婆さんの言う通り、動きやすい戦士っぽい服に着替えたセラさんがいた。

「ダラシない顔して。そんなんで優勝できると思ってるのか」
「す、すみません」

 言われた意味がよく分からないまま謝ってしまった。
 私が武闘会に参加して優勝できるのか、私がセラさんのサポートをしっかりして優勝させることが出来るのか。
 出来れば後者の方がいいけど、やっぱり違うみたいだ。お婆さんが言ってきた。

「受付までもう時間がないね。セイラ、あんたは強そうな奴がいたら、魔法で浮かせて妨害しな。あとは他の参加者が倒してくれるよ」
「……」

 昨日の夜の最終確認で決まったのだろう。
 参加しなくていいって言ったのに、やっぱり参加させるつもりだ。
 まあ、それでも譲歩したのかサポートだ。多分、特訓で才能が無いと分かったのだろう。
 だが、それも断る! 優勝目指して頑張ってきた人達を邪魔するなんて出来ない。
 さっさと負けて、観客席でハンバーガー売ってやる。

 ☆☆☆

 ステージ衣装ではなく、普段着に着替えると、お城の門までズラリと人が並ぶ道を強制連行だ。
 アメリア夫人は留守番で、セラさん、ラナさん、お婆さんが私が逃げ出さないように囲んでいる。

「ここからはあんた達二人で行った方が早いねえ。セラ、必ず優勝するんだよ」

 お婆さんが立ち止まると、セラさんを見て言った。私はまったく見ていない。
 広い道は右側の観客用と左側の選手用で分かれている。
 可愛い戦士服を着た若い女性達がスイスイ左の道を進んでいく。

「誰に言ってんだ、婆さん? 遊びで来ているような女達に俺が負けるかよ」
「そうだろうねえ。でも、あんたと同じでガチの奴もいるんだ。それに予想外の裏切りってのもあるんだよ」
「っ‼︎」

 お婆さんが予想外の裏切りの部分で、今度はチラッと私の方を見て言った。
 マズイ、素早く目を逸らしてしまった。

「裏切りねぇ……まあ、最初から信用してねえから問題ねえよ。ほら、行くぞ、セイラ!」
「は、はーい!」

 今度はセラさんがジッと私を見て言っているけど、まだ裏切っていない。
 そんな目で私を見ないでほしい。
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