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第14話
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☆☆☆
「ギ、ギブ……」
でしょうね。最初から分かっていた。冷えたスプーンを帽子の中にポトリと手放した。
ついでにまだ半分以上も残っているパフェを帽子の中にコッソリお持ち帰りした。
冷たくなったお腹が「も、もう、い、いいです……」と悲痛な叫びを訴えている。
これ以上食べても誰も喜ばない。
「ふぅ~、やっぱり甘いものは別腹だな。さてと……次は何食べる?」
「次は温かいのがいいわね。あっちの方にシチューとかなかったかしら?」
「へぇっ?」
……信じられない。二人が椅子から立ち上がって食べた食べたと満足している。
ガラスの器には信じられないことに、まだ三分の二もアイスとフルーツが残っている。
これを食べたとは言わない。つまみ食いだ。
「あ、あのぉ……まだ残ってますよ?」
本来、お店の人が言うべき台詞を私が代わりに言った。
「全部食べられるわけだろ。食べたいなら食っていいぞ。パフェ好きなんだろ? 俺達は次の店に行くから、食べ終わったら家に帰ってろよ。帰らないと俺達が怒られるんだからな」
「なぁ‼︎」
平然とした顔でセラさんが言うと、私の空の器を見てさらに言った。
これは全部食べたから空になったわけじゃない。頑張って食べて、コッソリお持ち帰りしたからだ。
ついでに私は辛党だ。甘いものより、しょっぱいのが好きだ。
「お姉さん、金はここに置いてくぞ」
「ありがとうございます! またのお越しをお待ちしております!」
金を払うと本当に二人が行ってしまった。
お店の人さえもつまみ食い犯にお礼を言っている。
「こ、こなくそぉー‼︎」
怒り任せにテーブルに残された山盛りパフェ二つを器ごと帽子にブチ込んだ。
そして、素早く召喚マジックで空の器を二つ取り出した。
「フゥーッ、フゥーッ……こ、これで良しぃ♪」
冷たいパフェを食べたはずなのに、何故か冷や汗をかいてしまった。
まったく食べ物を粗末にするとは許せない。
帽子の中のパフェ達は私の胃に余裕がある時に処分してやる。
「さてと……」
ゴッドマザーの言いつけを破って、見張り二人が遊びに行ってしまった。
絶好の逃亡チャンス到来だ。私はサポート役だから逃げても問題ない。
武闘会に参加するのはセラさんとお婆さんだけで十分だ。
妖怪怪力ババアに変身すれば、優勝できる可能性も十分ある。
晴れて自由の身になったので、早速自由を満喫させてもらう。
二人が素通りした店々に引き返した。
まずはチーズ肉焼き。次は炒飯、焼きそばと全て帽子の中に購入させてもらった。
今は無理でも夜なら食べられる。その時までにお腹を空かせてやる。
その為にも街を散策だ。他にもありそうな美味しそうな料理を探してやる。
☆☆☆
「月見ハンバーガー二個、チキンナゲット二個、ポテト四個ください」
「はい、少々お待ちください!」
早くも月見、さらにチキンナゲットまで解禁してしまった。
マジックナルドの衣装に早着替えして、ハンバーガー売りながら街を散策している。
異世界料理を見るのはタダだが、買って食べるにはお金がいる。
つまりこれが一番効率的な移動方法なのだ。
「まさかあんな欠点があったとは……」
そして、何故こうなったかというと、召喚マジックに欠点があったからだ。
召喚マジックを使えば、私の想像通り、記憶通りの料理を出すことが出来る。
でも、食べたことのない知らない料理は出せないのだ。
見た目が似た料理は出せても、実際に食べてみると味が別物だったのだ。
塩だと思って舐めたら、砂糖だったみたいな感じだ。
それに……これはこれでお金以外にも手に入れられるものがある。
「あの、おすすめのお祭り限定料理ってありますか?」
「それならコロコロ鳥の煮卵だろうな。それにしても、そろそろベリアス王子には結婚してもらいたいんだが、この調子では一生独り身だろうな」
「まあ、こっちは武闘会のお陰で毎回稼がせてもらっているんだから文句は言えんだろう」
「煮卵か……」
ゴクリ、悪くない。そう、『情報』だ。
ただハンバーガー売って、料理買い漁っているだけなのに、自然と情報が集まってくる。
この国の王子の名前、武闘会の優勝賞品、参加資格なんかも手に入れた。
優勝賞品で王子との結婚も可能らしいけど、今までの優勝者でそれを選んだ女性はいない。
何故、女性なのかというと、武闘会の参加資格が若い女性限定だからだ。
この時点でお婆さんは出場できない。セラさんが私の見張りを放棄した理由もおそらくこれだ。
一人でもライバルになりそうな女を排除したいのだろう。
何となく気持ちは分かるけど、優勝するつもりも王子様と結婚するつもりもない。
もしも武闘会に出場して優勝したとしても、欲しいのは優勝賞金・金貨一万枚と叶えられる願い一つだけだ。
「ギ、ギブ……」
でしょうね。最初から分かっていた。冷えたスプーンを帽子の中にポトリと手放した。
ついでにまだ半分以上も残っているパフェを帽子の中にコッソリお持ち帰りした。
冷たくなったお腹が「も、もう、い、いいです……」と悲痛な叫びを訴えている。
これ以上食べても誰も喜ばない。
「ふぅ~、やっぱり甘いものは別腹だな。さてと……次は何食べる?」
「次は温かいのがいいわね。あっちの方にシチューとかなかったかしら?」
「へぇっ?」
……信じられない。二人が椅子から立ち上がって食べた食べたと満足している。
ガラスの器には信じられないことに、まだ三分の二もアイスとフルーツが残っている。
これを食べたとは言わない。つまみ食いだ。
「あ、あのぉ……まだ残ってますよ?」
本来、お店の人が言うべき台詞を私が代わりに言った。
「全部食べられるわけだろ。食べたいなら食っていいぞ。パフェ好きなんだろ? 俺達は次の店に行くから、食べ終わったら家に帰ってろよ。帰らないと俺達が怒られるんだからな」
「なぁ‼︎」
平然とした顔でセラさんが言うと、私の空の器を見てさらに言った。
これは全部食べたから空になったわけじゃない。頑張って食べて、コッソリお持ち帰りしたからだ。
ついでに私は辛党だ。甘いものより、しょっぱいのが好きだ。
「お姉さん、金はここに置いてくぞ」
「ありがとうございます! またのお越しをお待ちしております!」
金を払うと本当に二人が行ってしまった。
お店の人さえもつまみ食い犯にお礼を言っている。
「こ、こなくそぉー‼︎」
怒り任せにテーブルに残された山盛りパフェ二つを器ごと帽子にブチ込んだ。
そして、素早く召喚マジックで空の器を二つ取り出した。
「フゥーッ、フゥーッ……こ、これで良しぃ♪」
冷たいパフェを食べたはずなのに、何故か冷や汗をかいてしまった。
まったく食べ物を粗末にするとは許せない。
帽子の中のパフェ達は私の胃に余裕がある時に処分してやる。
「さてと……」
ゴッドマザーの言いつけを破って、見張り二人が遊びに行ってしまった。
絶好の逃亡チャンス到来だ。私はサポート役だから逃げても問題ない。
武闘会に参加するのはセラさんとお婆さんだけで十分だ。
妖怪怪力ババアに変身すれば、優勝できる可能性も十分ある。
晴れて自由の身になったので、早速自由を満喫させてもらう。
二人が素通りした店々に引き返した。
まずはチーズ肉焼き。次は炒飯、焼きそばと全て帽子の中に購入させてもらった。
今は無理でも夜なら食べられる。その時までにお腹を空かせてやる。
その為にも街を散策だ。他にもありそうな美味しそうな料理を探してやる。
☆☆☆
「月見ハンバーガー二個、チキンナゲット二個、ポテト四個ください」
「はい、少々お待ちください!」
早くも月見、さらにチキンナゲットまで解禁してしまった。
マジックナルドの衣装に早着替えして、ハンバーガー売りながら街を散策している。
異世界料理を見るのはタダだが、買って食べるにはお金がいる。
つまりこれが一番効率的な移動方法なのだ。
「まさかあんな欠点があったとは……」
そして、何故こうなったかというと、召喚マジックに欠点があったからだ。
召喚マジックを使えば、私の想像通り、記憶通りの料理を出すことが出来る。
でも、食べたことのない知らない料理は出せないのだ。
見た目が似た料理は出せても、実際に食べてみると味が別物だったのだ。
塩だと思って舐めたら、砂糖だったみたいな感じだ。
それに……これはこれでお金以外にも手に入れられるものがある。
「あの、おすすめのお祭り限定料理ってありますか?」
「それならコロコロ鳥の煮卵だろうな。それにしても、そろそろベリアス王子には結婚してもらいたいんだが、この調子では一生独り身だろうな」
「まあ、こっちは武闘会のお陰で毎回稼がせてもらっているんだから文句は言えんだろう」
「煮卵か……」
ゴクリ、悪くない。そう、『情報』だ。
ただハンバーガー売って、料理買い漁っているだけなのに、自然と情報が集まってくる。
この国の王子の名前、武闘会の優勝賞品、参加資格なんかも手に入れた。
優勝賞品で王子との結婚も可能らしいけど、今までの優勝者でそれを選んだ女性はいない。
何故、女性なのかというと、武闘会の参加資格が若い女性限定だからだ。
この時点でお婆さんは出場できない。セラさんが私の見張りを放棄した理由もおそらくこれだ。
一人でもライバルになりそうな女を排除したいのだろう。
何となく気持ちは分かるけど、優勝するつもりも王子様と結婚するつもりもない。
もしも武闘会に出場して優勝したとしても、欲しいのは優勝賞金・金貨一万枚と叶えられる願い一つだけだ。
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