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第九章 神の名を持つ男vs神域の支配者
第103話 岩山のダンジョン探索
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黄泉の国に戻ると、別の岩山の鉄格子の前までやって来た。
「ここの封印が一番弱いから開けられるんだよ。エィッ!」
「おお!」
ラス様が鉄格子の鉄棒を両手で掴むと、真横に引っ張った。
すると、鉄棒が横に曲がって隙間が広がった。
反対側の鉄棒も同じように引っ張ると、人が通れるぐらいの隙間になった。
「この中に入って、何をするんですか?」
ママの脱獄を手伝う可能性が高そうだけど、もしかすると違うかもしれない。
念の為にラス様に聞いてみた。
「怪物退治よ。この中は怪物が閉じ込められたダンジョンになっているの。簡単に言うと、ママの身体から落ちた老廃物から生まれた怪物が住んでいるの。ダンジョンは中で全部繋がっているから、ママの所には入らないように気を付ければ大丈夫よ」
脱獄はしなくていいみたいだけど、危険なダンジョンで怪物倒して、レベルアップみたいだ。
ラスボスはママみたいだけど、倒したらアウトだから、押し倒すだけで我慢だ。
どうせ押し倒した先は今は出来ない。
「じゃあ、簡単に手順を説明するから忘れないでね。今は肉体の方が魂よりも強いから、その猫耳の姿なの。まずは怪物を倒しまくって、元の姿に戻ってみて。それで下級神ぐらいの力になれるから」
「分かりました。怪物はどうやって倒すんですか? ラス様も付いて来るんですよね?」
白猫イケメンから神村に戻るのは我慢する。
あとは武器と仲間を用意してもらいたい。今の俺は荷物持ちぐらいしか出来ない。
剣を持てば戦士になれるから、回復術が使えるラス様に援護してもらいたい。
「私は入れないから駄目だよぉー。それに一人で倒さないと意味ないよ。ここの時間は止まっているようなものだから、外の時間とか気にせずに頑張ってみようぉー!」
ラス様が元気に左拳を上げている。武器なし、仲間なしでテンションは上がらない。
「あの、武器だけでいいから、何か貰えませんか?」
「武器なら宝箱が落ちているよ。まずは下級神になるまで、その辺で頑張って」
「じゃあ、食糧だけでも……」
「大丈夫、大丈夫。草とか生えているらしいよ」
何が大丈夫なのか一つも分からない。鉄格子の中に無理矢理に押し込まれた。
これ以上は話すだけ時間の無駄らしい。ラス様が鉄格子を曲げて隙間を閉じた。
「ちょっと! これだと出られないじゃないですか⁉︎ 開けてくださいよ!」
鉄格子を自分で引っ張ってみたけど、ビクともしない。
ラス様に必死にお願いした。逃げ道ぐらいは用意してほしい。
「いやぁー、パパに雰囲気が似ているから放っとけないんだよねぇー。駄目な子供ほど可愛いのは本当だね。下級になったら迎えに来るから、ここで待っていて。死んだら駄目だよぉー」
「嫌ぁー! 置いてかないでぇー!」
手を振って離れていくラス様に、鉄格子から両手を出して、大声で助けを求めた。
獅子は我が子は千尋の谷に落とすそうだけど、俺はどう見ても子猫ちゃんだ。
一緒に落とされた獅子の子供の餌にしかならない。
♢
「くっ、駄目か」
ラス様の姿が完全に見えなくなった。自力で脱獄するのは無理なのは分かっている。
だったら、やる事は一つしかない。まずはどんな怪物がいるのか調べるしかない。
「最悪だ。人間のやる事じゃない」
神に文句を言っても何も変わらない。
二車線ぐらいの広さになった岩山トンネルを進んでいく。
トンネルは明るく、湧き水が所々にある。
シャボン玉のような水の色だけど、飲めない不味さではなかった。
壁には緑色の苔があるから、海藻だと思って我慢すれば食べられる。
「まずは武器を手に入れないと死ぬな」
トンネルに複数ある通路を一つずつ調べていく。
怪物はもう見つけている。青く透明なスライムと薄緑色の巨大ナメクジだ。
こんな雑魚を怖がっていたなんて恥ずかしい。見つけたら踏み潰してやった。
「ベッドがある……」
通路の行き止まりに扉を見つけた。
恐る恐る開けてみると、狭い部屋には誰もいなかった。ベッドと茶色い宝箱があるだけだ。
生活感はないから、休憩室みたいな場所かもしれない。長居しない方が良さそうだ。
「よし、剣だ! んっ? 小さくなった⁉︎」
横長の宝箱の蓋を開けると、中に古代人が使うような幅広いの鉄剣が入っていた。
無いよりはマシだと思って手に取ると、宝箱が手の平サイズに小さくなった。
もしかしたらと思って、宝箱に鉄剣を入れてみると予想通りに吸い込まれた。
これなら持ち運びが楽で助かる。
「時間が分からないのはキツイな」
ポケットにスマホが入っていたけど、壊れているのか動かない。
空腹や疲れや眠気を感じるから、身体の時間は流れているみたいだ。
とりあえず安全な場所を見つけるまでは、休むのは我慢しよう。
「へぇー、これは吸い込めるんだ」
両刃の鉄剣で倒した大ナメクジが宝箱に吸い込まれた。水と苔は吸い込めなかった。
通路の死体を片付けるには、ちょうどいいゴミ箱だ。
「エィッ! ヤァッ!」
スライムと大ナメクジを鉄剣で倒しまくって、死体を宝箱に放り込んでいく。
トンネルの中がすっかり綺麗になってしまった。
時間経過で新しい怪物は生まれないみたいだ。
「髪がちょっと黒くなっている。雑魚を倒しても効果は薄そうだ」
スマホの画面を鏡代わりに見ると、髪の一部が黒くなっていた。
雑魚を合わせて七十匹以上も倒したのに、あまり元に戻っていない。
もっと強い怪物を倒した方が効果があるのかもしれない。
「まずは弱そうな方を倒してみるか」
トンネル探索で別の怪物が出現した通路が二ヶ所あった。大コウモリと大ガエル、狼と大鷲だ。
飛び跳ねるだけの大ガエルを斬り倒して、飛んでくるだけの大コウモリも斬り倒した。
老師との三年間の修業で鍛えた、剣術や体術は身体が覚えている。
「うん、やっぱり少しずつ強くなっている」
楽に大ガエルと大コウモリを倒せるようになってきた。
力だけでなく、素早さや跳べる高さも上がっている。
スマホで確認すると、髪の黒い部分が広がっていた。
「グゥゥゥ……」
「あぁー、あれはまだいいかな」
通路を進んでいくと、また別の怪物が現れた。
ドロドロに溶けた身体のゾンビが、唸り声を上げて動き回っている。
仕方ないから通路を引き返した。狼と大鷲を倒してレベルアップだ。
ゾンビに噛まれたら一発で終わりだ。
「回復薬とか、万能薬とかないのかな?」
二個目の宝箱には籠手、胸当て、脛当ての革鎧セットが入っていた。
出来れば回復薬や強力な武器が欲しい。
折れた鉄剣を宝箱に入れると、修理されて戻ってくる。
便利だけど、斬れ味は低いままだ。
(死体をお供え物だと考えると、願いを言えば叶うんじゃないのか?)
試しに回復薬が欲しいとお願いしてみた。何も反応がなかった。
やっぱり収納箱の代わりにしかならないみたいだ。
ラス様の説明が足りないから仕方ない。
「はぁー、頑張って下級神を目指すしかないか」
一人で寂しいけど、下級神になるまでの我慢だ。きっと神様になれば、色々と出来る事が増えると思う。
宝箱の真の力も発揮できるはずだ。あるのか分からないけど、そう信じるしかない。
「ここの封印が一番弱いから開けられるんだよ。エィッ!」
「おお!」
ラス様が鉄格子の鉄棒を両手で掴むと、真横に引っ張った。
すると、鉄棒が横に曲がって隙間が広がった。
反対側の鉄棒も同じように引っ張ると、人が通れるぐらいの隙間になった。
「この中に入って、何をするんですか?」
ママの脱獄を手伝う可能性が高そうだけど、もしかすると違うかもしれない。
念の為にラス様に聞いてみた。
「怪物退治よ。この中は怪物が閉じ込められたダンジョンになっているの。簡単に言うと、ママの身体から落ちた老廃物から生まれた怪物が住んでいるの。ダンジョンは中で全部繋がっているから、ママの所には入らないように気を付ければ大丈夫よ」
脱獄はしなくていいみたいだけど、危険なダンジョンで怪物倒して、レベルアップみたいだ。
ラスボスはママみたいだけど、倒したらアウトだから、押し倒すだけで我慢だ。
どうせ押し倒した先は今は出来ない。
「じゃあ、簡単に手順を説明するから忘れないでね。今は肉体の方が魂よりも強いから、その猫耳の姿なの。まずは怪物を倒しまくって、元の姿に戻ってみて。それで下級神ぐらいの力になれるから」
「分かりました。怪物はどうやって倒すんですか? ラス様も付いて来るんですよね?」
白猫イケメンから神村に戻るのは我慢する。
あとは武器と仲間を用意してもらいたい。今の俺は荷物持ちぐらいしか出来ない。
剣を持てば戦士になれるから、回復術が使えるラス様に援護してもらいたい。
「私は入れないから駄目だよぉー。それに一人で倒さないと意味ないよ。ここの時間は止まっているようなものだから、外の時間とか気にせずに頑張ってみようぉー!」
ラス様が元気に左拳を上げている。武器なし、仲間なしでテンションは上がらない。
「あの、武器だけでいいから、何か貰えませんか?」
「武器なら宝箱が落ちているよ。まずは下級神になるまで、その辺で頑張って」
「じゃあ、食糧だけでも……」
「大丈夫、大丈夫。草とか生えているらしいよ」
何が大丈夫なのか一つも分からない。鉄格子の中に無理矢理に押し込まれた。
これ以上は話すだけ時間の無駄らしい。ラス様が鉄格子を曲げて隙間を閉じた。
「ちょっと! これだと出られないじゃないですか⁉︎ 開けてくださいよ!」
鉄格子を自分で引っ張ってみたけど、ビクともしない。
ラス様に必死にお願いした。逃げ道ぐらいは用意してほしい。
「いやぁー、パパに雰囲気が似ているから放っとけないんだよねぇー。駄目な子供ほど可愛いのは本当だね。下級になったら迎えに来るから、ここで待っていて。死んだら駄目だよぉー」
「嫌ぁー! 置いてかないでぇー!」
手を振って離れていくラス様に、鉄格子から両手を出して、大声で助けを求めた。
獅子は我が子は千尋の谷に落とすそうだけど、俺はどう見ても子猫ちゃんだ。
一緒に落とされた獅子の子供の餌にしかならない。
♢
「くっ、駄目か」
ラス様の姿が完全に見えなくなった。自力で脱獄するのは無理なのは分かっている。
だったら、やる事は一つしかない。まずはどんな怪物がいるのか調べるしかない。
「最悪だ。人間のやる事じゃない」
神に文句を言っても何も変わらない。
二車線ぐらいの広さになった岩山トンネルを進んでいく。
トンネルは明るく、湧き水が所々にある。
シャボン玉のような水の色だけど、飲めない不味さではなかった。
壁には緑色の苔があるから、海藻だと思って我慢すれば食べられる。
「まずは武器を手に入れないと死ぬな」
トンネルに複数ある通路を一つずつ調べていく。
怪物はもう見つけている。青く透明なスライムと薄緑色の巨大ナメクジだ。
こんな雑魚を怖がっていたなんて恥ずかしい。見つけたら踏み潰してやった。
「ベッドがある……」
通路の行き止まりに扉を見つけた。
恐る恐る開けてみると、狭い部屋には誰もいなかった。ベッドと茶色い宝箱があるだけだ。
生活感はないから、休憩室みたいな場所かもしれない。長居しない方が良さそうだ。
「よし、剣だ! んっ? 小さくなった⁉︎」
横長の宝箱の蓋を開けると、中に古代人が使うような幅広いの鉄剣が入っていた。
無いよりはマシだと思って手に取ると、宝箱が手の平サイズに小さくなった。
もしかしたらと思って、宝箱に鉄剣を入れてみると予想通りに吸い込まれた。
これなら持ち運びが楽で助かる。
「時間が分からないのはキツイな」
ポケットにスマホが入っていたけど、壊れているのか動かない。
空腹や疲れや眠気を感じるから、身体の時間は流れているみたいだ。
とりあえず安全な場所を見つけるまでは、休むのは我慢しよう。
「へぇー、これは吸い込めるんだ」
両刃の鉄剣で倒した大ナメクジが宝箱に吸い込まれた。水と苔は吸い込めなかった。
通路の死体を片付けるには、ちょうどいいゴミ箱だ。
「エィッ! ヤァッ!」
スライムと大ナメクジを鉄剣で倒しまくって、死体を宝箱に放り込んでいく。
トンネルの中がすっかり綺麗になってしまった。
時間経過で新しい怪物は生まれないみたいだ。
「髪がちょっと黒くなっている。雑魚を倒しても効果は薄そうだ」
スマホの画面を鏡代わりに見ると、髪の一部が黒くなっていた。
雑魚を合わせて七十匹以上も倒したのに、あまり元に戻っていない。
もっと強い怪物を倒した方が効果があるのかもしれない。
「まずは弱そうな方を倒してみるか」
トンネル探索で別の怪物が出現した通路が二ヶ所あった。大コウモリと大ガエル、狼と大鷲だ。
飛び跳ねるだけの大ガエルを斬り倒して、飛んでくるだけの大コウモリも斬り倒した。
老師との三年間の修業で鍛えた、剣術や体術は身体が覚えている。
「うん、やっぱり少しずつ強くなっている」
楽に大ガエルと大コウモリを倒せるようになってきた。
力だけでなく、素早さや跳べる高さも上がっている。
スマホで確認すると、髪の黒い部分が広がっていた。
「グゥゥゥ……」
「あぁー、あれはまだいいかな」
通路を進んでいくと、また別の怪物が現れた。
ドロドロに溶けた身体のゾンビが、唸り声を上げて動き回っている。
仕方ないから通路を引き返した。狼と大鷲を倒してレベルアップだ。
ゾンビに噛まれたら一発で終わりだ。
「回復薬とか、万能薬とかないのかな?」
二個目の宝箱には籠手、胸当て、脛当ての革鎧セットが入っていた。
出来れば回復薬や強力な武器が欲しい。
折れた鉄剣を宝箱に入れると、修理されて戻ってくる。
便利だけど、斬れ味は低いままだ。
(死体をお供え物だと考えると、願いを言えば叶うんじゃないのか?)
試しに回復薬が欲しいとお願いしてみた。何も反応がなかった。
やっぱり収納箱の代わりにしかならないみたいだ。
ラス様の説明が足りないから仕方ない。
「はぁー、頑張って下級神を目指すしかないか」
一人で寂しいけど、下級神になるまでの我慢だ。きっと神様になれば、色々と出来る事が増えると思う。
宝箱の真の力も発揮できるはずだ。あるのか分からないけど、そう信じるしかない。
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