上 下
96 / 111
第八章 小島の王vs偉大なる大国の聖女

第96話 電磁砲と監禁されない選択肢

しおりを挟む
「近くにいる土地神でいいな?」
「はい、問題ないです」
「スノウ、索敵してくれ」
『もうやっている。近くに三体いる』

 パンと豆のスープの代金を俺が支払うと、土地神狩りに出発した。
 下級は戦闘機で倒せるから、ガルシアには戦闘中の不慮の事故で死んでもらう。
 中級に殺させて、怒りに燃える俺がスサノオと契約して仇を討つ。
 ……これもチンチンの為だ。許してくれ。

 極秘の暗殺計画を用意して、ヘリコプターに乗り込むと、上空から土地神を探した。
 契約できそうな土地神もいるかもしれないから、いきなり攻撃はしない。
 交渉決裂後に戦闘開始だ。

(流石にあの服装で戦闘はしないか)

 ヘリコプターの中で、ガルシアが白服を着替え始めた。
 丈夫な白い半袖シャツの上に、袖無しの黒革製のジャケットを着ていく。
 長ズボンは色落ちした丈夫な紺色ジーンズを穿いていく。

『あれは獣神だな』
「分かった。ヘリを降ろせ、狙撃する」
「了解です」

 荒野の中に土地神を見つけたようだ。
 ハズレの獣神のようだけど、契約できた土地神に吸収させれば強化できる。
 レベルアップ薬だと思って集めるしかない。
 指示される方向にヘリを飛ばして、広い荒野の真ん中に着陸させた。

「待っていろ。すぐに箱に変えてやる」
「いえ、まずは交渉します。話せば分かるかもしれません」

 ヘリから黒いショットガンを持って、ガルシアが飛び降りた。
 銃の砲身の先端から真ん中が裂けて、細長いワニの口に並んだ牙のように見える。
 銃というよりは機械銃のような気がする。

「仕事内容は分かっている。獣神とは契約できない。時間の無駄だ」
「俺の時間を使うから待ってください。雇い主は俺ですよ」
「そうだったな。任せるとしよう」

 ……ふぅー、やれやれ。
 依頼者の言う事を聞かない傭兵に待機命令を出して、土地神との交渉を始めた。
 地面に百二十センチ程の可愛い水色蛇がいる。

『その肌の色、また他所者が来た。お前達が来てから、この土地がもっと悪くなった』
『ならば、手を貸して良くすればいい。敵を知らねば、敵なのか味方なのかも分からない』

 囁くような男の声で蛇が喋り出した。
 前のように神爺が交渉を始めた。だけど、今回は交渉に失敗した方が良い。
 激怒した土地神にガルシアを殺害させる。あとは以下省略でスサノオを手に入れる。

『お前達の事はよく知っている。これ以上は知る必要もない』
『では、我々を知ればいい。私達の事は何も知らないはずだ』
『お前達の事など知りたくもないわ!』
『くっ、それでも神か? 良識はどこに置いてきた!』

 ……良くやった!
 交渉は見事に失敗した。水色蛇の身体が爆発するように膨れ上がった。
 その場から急いで離れると、予定通りに傭兵に戦闘を任せた。

「すみません、ガルシアさん。あとはお任せします!」

 水色蛇の尻尾からライオンの身体が生えて、背中から翼竜のような緑色の翼が生えた。
 頭から胴体の真ん中までが紫色で、真ん中から尻までが水色の蛇の鱗に覆われている。
 一般的に『キメラ』と呼ばれる合成獣だ。コイツは強そうだ。

「的が大きくなって助かった」
「えっ?」

 俺が離れると、ガルシアが左手に持ったショットガンをキメラに向けた。
 ワニの口のような砲身全体から青い電気が発生している。

(あれ、レールガンじゃね?)

 多分、俺の嫌な予感は当たっている。
 近未来の武器を使うのは反則だ。俺だって使えるならライトセーバーを使う。
 電磁シールドバリアで、どんな攻撃も防ぐに決まっている。

「っゔ……!」
『ぎゅぱぁっ……!』

 青い光の弾丸が発射された瞬間、空気を引き裂く爆音が発生した。
 地を走る落雷が連続で発射されているようだ。
 耳穴を両手で塞いで、頭から尻先まで貫通されるキメラを見学した。

「終わりだ。封印してやれ」
『分かっている。これで三億とは楽な仕事だ』

 ……くっ、運の良い奴だ。下級では手も足も出ないか。
 俺もレールガンが欲しい。あとで作り方を教えてもらおう。
 最初の暗殺計画が失敗して、地面に倒れたキメラが水色蛇の姿に戻った。
 青黒渦巻きの賽銭箱が触れると、水色鱗の宝箱に封印されてしまった。

 ♢

 下級土地神しか見つからない。倒して封印して宝箱だけが集まっていく。
 ヘイゼル市に帰って、俺の手作り料理を振る舞いながら、作戦会議を始めた。

「まずは設計図が欲しいと願えばいい。あとは設計図に書かれているパーツを集めて、最後にパーツを繋げて完成させて欲しいと願えばいい。それである程度の物は作れる」
「なるほど、なるほど」

 作り方を教えた武器で、自分が暗殺されると知らずに可哀想な奴だ。
 激辛麻婆豆腐に猛毒を仕込めば、楽に暗殺できたが、料理を冒涜する行為は出来なかった。
 料理は人を幸せにする為にある。最後の晩餐だと思って、全ての力で中華鍋を振るった。

『兄貴、チンチン治すなんて、時間の無駄だぜ。兄弟二人で仲良く一人と契約しようぜ』
「だったら、俺のチンチンを厄祓いしてくれ。あんた、厄祓いが出来るんだろ?」

 スサノオが神爺を悪い道に誘っている。
 チンチン治してくれたら、連れていってもいいけど、治せないなら絶対に駄目だ。

『その封印は俺一人じゃ無理だな。兄貴と力を合わせて、別の上級神が一人いれば破壊できるかもな』
「じゃあ、父親か母親か姉貴に協力してもらえば解けるんだな?」

 黒龍がいれば治せたみたいだ。
 あの役立たずが役に立つチャンスが来たけど、あの役立たずの所為で封印された。
 やっぱり役立たずでしかない。だったら、家族を紹介してもらおう。
 神爺が上級神ならば、家族も上級のはずだ。

『それは無理だ。スサノオは国外追放されている。日本に入る事は出来ない』
「ちょっとだけなら大丈夫だって。笑って許してくれるよ」

 神爺は駄目だと言っているけど、家族ならば許してくれる
 もしかすると国外追放じゃなくて、海外留学に行けと言った可能性もある。
 沖縄か北海道の最南端、最北端から徐々に中心を目指せば大丈夫だ。

『無理なもんは無理だ。ここの上級土地神を倒せばいいんだから任せておけよ』
「それこそ無理だよ。中級で殺されるだけだ。上級なら瞬殺だよ」
『ハッハハ! 中級如きに負けるかよ。上級なら前にヤマタノオロチをタイマンでブチ殺した。兄貴と二人がかりなら楽勝だぜ』

 ……本当かよ?
 スサノオは自信満々で大丈夫だと言っている。
 本当の実力は知らないけど、下級土地神はレールガンで瞬殺している。
 上級三人家族に会える可能性は低いし、会えたとしても戦闘になるかもしれない。
 だとしたら、上級土地神を倒した方が安全な気もしてきた。

『どうする? 協力的な下級土地神を探した方が安全だと思うぞ。下手に封印を解けば、反抗の意思があると、シスターに言っているようなものだ』
「確かにそうなんだけど……」

 神爺が言っている事も理解できる。でも、おチンチン様の我慢の限界なんだ。
 それに封印を解かれない可能性が高すぎる。
 どんなに頑張っても、あのシスターからは解いてくれる気配がしない。
 正直言って、二ヶ月我慢するぐらいなら死んだ方がマシだ。

(選択肢は三つある。間違えれば絶体絶命のピンチだ)

 今までの流れで分かっている。過去の流れでは全部監禁されている。
 つまり監禁されない流れが正解だ。上級三人家族は監禁されそうだ。
 上級土地神との戦闘は死ぬか生きるかだ。土地神との地域発展は褒められるだけで終わりそうだ。
 ならば、答えは決まったも同然だ。

「よし、上級土地神を倒して封印しよう。それで仕事は終わりだ。成功報酬は百億出す」
『ヒュー! 気前が良いねぇ! そういう奴は好きだぜ』
「その金額ならば俺も文句はない。早く終わらせよう」

 両手の指を全部広げて見せた。俺の選択にスサノオとガルシアは賛成してくれた。
 まさか、途中で逃げたりはしないと思うけど、今回の報酬は後払いにしよう。

『反対はしないが気を付けろ。上級ならば、黒龍と匹敵する力を持っている。私一人では傷一つ付けられなかった強敵だ』
「大丈夫だ。あの時とは違う。俺の中には黒龍の力の一部が残っている。かなり強くなっているよ」
『だといいがな』

 神爺だけが心配している。気持ちは分かるけど、今の俺なら 張敏ヂャンミンの叔父貴も倒せる。
 中国とアフリカの人口が同じぐらいに多いけど、きっと大丈夫なはずだ。
 監禁されない選択肢を選んでいる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...