【R18】月読神社の賽銭箱に選ばれた色欲高校生〜たった五円で願いを叶えられる賽銭箱〜

もう書かないって言ったよね?

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第六章 記憶喪失の少年vs中華人民共和国

第65話 中国マフィアの工場見学

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「ここが中国かぁー、海外旅行は初めてかも」

 蒼桜さんと二人で中国の市場にやって来た。
 お祭りの屋台のように、道の左右に小さな店がたくさん並んでいる。
 眼鏡、鞄、キーホルダー、花火などの雑貨が売られている。

「こっちよ。観光に来たんじゃないんだから、迷子にならないでよ」

 白シャツに白ネクタイ、黒の半ズボンの蒼桜さんが、人差し指をクイクイ動かして呼んでいる。
 お店の商品を見るのをやめて、小走りで向かった。

「あっ、ごめん。でも、たくさんあるね。何か買っていこうかな?」
「賽銭箱で大量に作られた物よ。消耗品のほとんどは賽銭箱で作られているの。使徒が消えたら全部消えるから、ゴミを出さなくて環境には良いんじゃない」

 二人で人混みの中を歩いて話していく。
 蒼桜さんは人混みが嫌いなのか、話す言葉に棘を感じる。
 それとも、これから向かう先に緊張しているのだろうか?
 だったら、男の僕がしっかりと緊張を和らげないと駄目だ。

「確かにエコだね。真似してやってみようかな。蒼桜さんも良かったら、小さなお店とかやらない? 二人で色々作って楽しいと思うよ」
「チッ。誰がやるか、んんっ! あんっ!」
「蒼桜さん、大丈夫⁉︎」

 舌打ちが聞こえた気がしたけど、蒼桜さんが急にエッチな声を出した。
 例の発作が起きたようだ。地面にしゃがみ込んで悶えている。
 人混みの「どうしたんだ?」という視線が、僕達に向けられているのが分かる。

「んんっ、だ、大丈夫、収まったから。お店、楽しそうだね」
「……っ!」

 心配する僕を心配させない為に、蒼桜さんが引き攣った笑顔で無理して笑ってくれた。
 未来の話をするのは今じゃなかった。夢も希望も取り戻すのは全てが終わった後だ。

「ごめん、蒼桜さん。僕が絶対に賽銭箱を手に入れるから、それまでもう少しだけ我慢して」

 蒼桜さんに約束した。蒼桜さんの平和な日常は僕が取り戻す。
 賽銭箱の試練で、武装した特殊部隊の倉庫から二人で銃火器を手に入れた。
 こんな僕だって、銃を持った強い兵士も倒せるんだ。
 僕が蒼桜さんを救う!

「あそこよ」
「うわぁ、怖そうな人達がいるね」

 決意を新たに市場を通り抜けると、目的地の入り口に到着した。
 スキンヘッドの三人の男達が、地下へと続く階段の前を封鎖している。
 スーツの上着とネクタイを着ていないだけなのに、緑と青のビジネスシャツが怖い。
 絶対にサラリーマンじゃなくて、中国マフィアA、B、Cだ。

「パパッと片付けて来て」
「えっ? 僕が?」

 カップルを装って様子を見ていると、蒼桜さんがお願いしてきた。

「女の私にやらせるつもり?」
「うううん、僕がやるよ! 男の僕がやってくる!」
「じゃあ、お願いね」

 そうだった。いくら強いとはいえ、女の子に男三人を倒して欲しいなんて言えない。
 もしも発作が起きたら、女の子の三つの穴を三人のイチモツで同時に犯される。
 そんな事をさせるわけにはいかない。

「んっ? 日本人か?」
「おい、ここから先は市有地だ。家、家だ。分かるな? 帰れ、帰れ」
「どうせ、言葉なんて分からねぇよ。修学旅行のガキが迷子になったんだ。市場はあっちだ。あっちに行け」
「……」

 親切な二人が手を振ったり、バツ印を見せたり、指を指したりと、巧みなジェスチャーで教えてくれる。
 でも、言葉は全部、両耳の翻訳機のお陰で分かっている。悪いと思うけど、しばらく眠ってもらう。

「フゥッ、ハァッ、リァッーッ!」
「はぐっ!」「うがぁ!」「げはぁ!」

 腹への右拳の直拳、顔面への左拳の裏拳、腹への両拳の双直拳で瞬殺した。
 ドサァ、ドサァと三人の男達が、地面に気を失って倒れていく。

「この力……やっぱり武術の達人なんだ」
 
 息を吸うように殴り倒してしまった。
 この若さでこの強さだ。幼い頃から武術の鍛錬を受けていたに決まっている。
 両手の震えが止まらない。一体僕は何者なんだ?

「はい、ご苦労様。あとは首を折って殺せば終わりよ。糞尿は出るけど、血を撒き散らすよりはマシだから」
「えっ? 殺すの?」

 平然な顔でやって来た蒼桜さんが物騒な事を言い出した。
 目的の賽銭箱を持っている一人だけを殺せば済む話だ。
 悪人だとしても、人は人だ。

「当たり前でしょ。起きたら騒がれるし、顔を見られたから厄介よ。監視カメラで顔は撮られるだろうけど、肉眼で見るのとカメラ越しに見るのは違うの。雰囲気とか匂いとか喋られると面倒なんだから!」
「あっ……」

 蒼桜さんが話しながら、まったく躊躇なく、男の首の骨を両手で回転させてへし折った。
 木に成っているリンゴを、もぎ取って食べるような自然な動作だ。

「ほら、さっさとやって。市場の生きた鶏とか魚と一緒よ。殺すのに慣れないと生きられないから。遥が普段食べている肉や魚も、遥の為に誰かが殺しているんだからね。その男は遥が殺して」
「あ、うん……」

 蒼桜さんがパパッと二人の男の首をへし折った。残りの一人は僕の練習用に殺さないといけない。

「グッ!」

 胸の真ん中に嫌な塊を感じるけど、男のこめかみと顎下を持って、何度もやったようにへし折った。
 自分の身体の骨を鳴らしたような手応えしか感じなかった。
 むしろ、終わったと安心している自分がいる。

 多分、本物の人間を殺したのは初めてじゃない。
 この手は何人も殺している手だ。

「うん、上手く折れてる。ここから先は全員悪人だから、視界に入った人間は手当たり次第に殺していいから。でも、ドラゴンとスコーピオンには気をつけて。玄武を守っている凄腕の殺し屋で強いらしいから」
「殺し屋か……うん、分かった」

 蒼桜さんが死んでいるのを確認すると、地下工場の説明を始めた。
 まだ、殺さないといけないらしい。

 こんな復讐なんてやめて、静かに暮らした方が良いと言いたいけど、軽はずみには言えない。
 父親を殺されて、危険な薬物を使われた事がない僕には、きっと蒼桜さんの苦しみは理解できない。

 男三人を引き摺りながら階段を下りると、最新鋭の工場を思わせる綺麗な場所に出た。
 清潔感のある白い廊下に、ガラス張りの部屋が何部屋もある。
 部屋の中には、私服にエプロンを付けた十代後半~六十代の女性がいる。

「この人達が悪人? この人達も殺さないといけないの?」

 どう見ても楽しく仕事しているようにしか見えない。
 一部屋八人~十人程度で色々な雑貨を作っている。
 ミシンで鞄を縫ったり、ドライバーで子供の玩具のネジを締めている。

「ただの一般労働者よ。地元の人間を雇って、地域貢献しているの。殺しても代わりがすぐに用意されるから、時間の無駄よ。まあ、邪魔するようなら殺してもいいんじゃない」

 僕の疑問に答えると、蒼桜さんが部屋を無視して廊下を歩いていく。
 部屋の女性達が見慣れない僕達を見ているけど、何も言ってこない。

「どちら様ですか? 何のご用でしょうか?」

 だけど、廊下の先から私服にエプロンの四十代程の女性がやって来た。
 見回りの女性みたいだ。丁寧な言葉遣いで聞いてきた。

張敏ヂャンミンさんに仕事で会いに来たんです。案内してもらってもよろしいですか?」
「すみませんが、どちら様でしょうか?」

 蒼桜さんが微笑みを浮かべて答えたけど、女性は納得していないようだ。
 もう一度聞いてきた。

「長生きしたいなら聞かない方がいいですよ」
「……っ!」

 その所為で蒼桜さんの顔から微笑みがスッーと消えてしまった。
 脅すような冷たい声で、女性に警告している。
 このままだと殺しそうだから、僕が止めないといけない。

「すみません。極秘なので話せないんです。あなたの上司の方に会わせてもらえば助かります」
「……失礼しました。こちらへどうぞ。ご案内させてもらいます」
「ありがとうございます」

 やっぱり話せば分かってくれる。
 女性が頭を下げて謝罪すると、笑顔で案内を引き受けてくれた。

「気をつけた方がいいわよ。あの女、警戒しているからロクな所に連れて行かないから」

 少し離れて歩き出すと、日本語で蒼桜さんが言ってきた。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。その辺にいる優しそうなおばさんだよ」
「ふふっ。優しそうなおばさんね。まあ、すぐに分かるわ」
「んっ?」

 おかしな事は言ってないのに、笑われてしまった。
 どう見ても優しそうなおばさんにしか見えない。
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