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第五章 鬼畜高校生vs復讐鬼

第62話 神vs人間

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「……始めるか」

 目覚めると手足の邪魔な鎖を引き千切った。枷は握り潰して外していく。

『ジリリリーッッ!』

 防犯装置が作動したのか、うるさい音が鳴り響いている。
 目の前に賽銭箱を呼び出すと、青色の服と黒い刀身を持つ刀を出させた。
 隣国の神狩りを始める。

「うおおーッッ!」
「実力が分からぬとは面倒なものだ」

 邪魔な鉄扉を斬って、部屋の外に出ると、刺又を持った十一人の男達が向かってきた。
 男達の隙間を縫うように進みながら、全員の身体を神刀『月読命つきよみのみこと』で斬り裂いた。

「ぎゃああああ!」
「悪いが時間がない。最下級の神二柱が生贄では十二分が限界だ」

 この国の人間を殺すのは避けたいが、目的の為には少ない犠牲は受け入れるしかない。
 異国の神の気配を頼りに、女の居場所に向かって走った。

「ここか」

 視界に入った七十三人の人間を斬り殺して、部屋の前まで辿り着いた。
 頑丈でもない、ただの木扉を蹴り飛ばして、豪華な内装と調度品に囲まれた部屋の中に入った。

「あぁー、もぉー、誰? こんな夜中に夜這いとか信じられないんだけど」

 大きな白いベッドに寝ていた金髪の女が不機嫌そうに起きた。
 柔らかい灰色のフード付きの長袖上着と半ズボンを着ている。
 ベッドから降りると、寝惚けた目でジッーと見てくる。

「……えっ、本当に誰?」
「神村遥だ。忘れたのか?」
「いやいやいや、全然別人だから」

 分からないようだから教えてあげたが、心の目が腐っている女には難しいようだ。
 愚かにも否定している。髪と瞳が銀色になり、身長が十八センチ伸びただけだ。
 姿形が下の下から極上の極上に変わっても、中身は同じだ。

「私の本体はこっちだ。能力で神村遥の身体を借りている。約束通りにお前を殺しに来た」

 宙に賽銭箱を浮かせて、女に説明した。誰にやられたのか分からないと困る。

「へぇー、そう。明らかに別人だけど、これなら整形する必要はなさそうね。たっぷり可愛がってあげる」
「こちらもそのつもりだ。遊んでやる。かかって来い」
「あはぁ。雑魚のくせの生意気!」

 左手を向けると軽く振って要求した。やっとやる気になったようだ。
 二股の尻尾と猫耳を生やした女が、大きな笑みを浮かべて向かってきた。
 寝込みの女を襲うつもりはない。正面から戦って、自慢の力を全てへし折る。
 お前に敗北の味を教えてやる。

「爪で全身を斬り刻んであげる。何度も何度もね!」

 猫娘が周囲を高速移動で動き回って、撹乱しようとしている。
 悪いが低速移動で動き回られても、見ている方は退屈なだけだ。
 隙があると勘違いしたのか、懐に潜り込んで、顎下に跳び上がるように右拳を振り上げてきた。

「キャハァ!」
「遅い」
「へぇっ? ひゃっ⁉︎」

 左手で笑う猫娘の右手首を掴んで、天井に向かって投げ飛ばした。
 もっと高く跳べるように手伝ってやる。猫娘が天井に背中から激しく激突した。

「ぎゃはっ……!」
「眠気覚ましには、これで十分だろう」

 猫娘が天井の破片と一緒に落ちてきた。床に両手足を着いて綺麗に着地した。

「くぅぅぅ、ムカつく!」
「待ってやるから本気を出せ。その状態のお前は弱すぎて、倒した気にもなれない」

 猫娘が耳と尻尾を震わせて、イラついているが、もう一段階強くなれる事は知っている。
 こっちは猫娘ではなく、虎娘と遊びに来た。

「はぁ? 調子に乗るな。パパの賽銭箱から、あんたが手に入れる価値もない最下級の神だって聞いているのよ。こっちは最上級の四獣の白虎、私は白豹のエミリよ。神格も人格も全てが上の存在なの」
「それは凄い。思わず土下座しそうになった……早く変われ。変われないなら、その気にさせてやる」

 口で言っても分からないようだ。自慢話を聞いている余裕はない。
 残り時間は七分だ。少し暴力的な方法を使わせてもらう。

「にゃ⁉︎」

 黒刀の刃と峰をひっくり返して、逆刃の刀にすると猫娘に襲いかかった。
 本当の高速移動を見せてやる。見れるものならな。

「フゥッ、ハァッ、フゥッ!」
「うっ、かぁ、きゅうっ……!」

 致命傷にならないように、猫娘の手足や腹に切れぬ刃を叩き込んでいく。
 痛みに顔を歪める猫娘が、距離を取ろうと離れるが、離れるよりも追いかける方が速い。
 簡単に追い付いて、追加の連撃を叩き込んでいく。

「あぐぅ、ゔぅぅ!」
「十四回だ。私が本気なら、お前は十四回死んでいる。蚊を叩き落とすのも飽きた。そのまま死ぬか?」

 両足を震わせて立っている猫娘に、実力差を丁寧に教えてやった。
 このまま意地を張って、死ぬような性格ではないだろう。

「くぅぅぅ、それが本気! この私に手加減して、わざと捕まって……舐めやがって!」
「それは勘違いだ。ピンチだから出て来たわけじゃない。チャンスだから出て来ただけだ。私なら絶対に記憶は消さない。さて、話は終わりだ。お前を殺す」

 無駄話のし過ぎで、残り時間が六分を切ってしまった。
 猫娘に右手に持った切っ先を向けた。

「チッ! 团结一致!」
『明白』
「ひひぃ。望み通りに見せてあげる! 手足引き千切って、義手に変えてあげる! 動けない身体で後悔しなさい!」
「それは楽しみだ」

 ようやく本気を出してくれるようだ。猫娘の前に二つの賽銭箱が現れた。
 見えていた白い肌が、白黒の線が不規則に並んだ虎柄の体毛に変わり始めた。

「ガァッ!」

 少し待つと変化が終わったようだ。
 問答無用で目の前まで一瞬でやって来ると、握り締めた右拳を顔の左側に振り回してきた。
 左手を右拳の軌道上に構えた。手の平に強い衝撃が走って、手の平が五ミリも動かされた。

「これが全力か?」
「えっ? づあああーッッ!」

 虎娘の右拳を左手で掴んで聞いた。
 意味を理解してないようだから、右拳を強く握り潰して、苦痛の声を上げさせた。
 少しは理解したようだ。

「このぉ……リァッ!」

 右拳を掴まれたまま、その場で高く跳び上がると左足を振り上げて、頭の上に踵を振り落としてきた。
 刀を握ったままの右拳を、虎柄の左足の足首を狙って振り上げた。

「あぎぁっ!」

 右拳に骨が砕ける手応えを感じた。
 虎娘が再び苦痛の声を上げると、その場に崩れ落ちて、床に両膝を突いて跪いた。
 頭の高さが随分と高いものだ。掴んでいた右拳から左手を離して、腹の高さにある顔を殴り飛ばした。

「ふぎぁっ!」

 力で床に訂正させた。

「期待外れの強さだ。早く全力を出せ。それとも、それが全力か?」
「あぐっ、あ、あり得ない……⁉︎」

 床に倒れている虎娘にゆっくり近づいていく。
 虎娘が右足と尻尾を巻き付けた左足で立ち上がると、怯え始めた顔で見ている。
 ようやく自分の置かれている状況が理解できたようだ。

「それはこちらの台詞だ。その程度の力で、よくこの国を攻めようと思ったものだ。その愚かさには感心する」
「くぅ! 何で、最下級のクソ神がこんなに強いのよ! ちょっと話が違うじゃない!」

 取り乱した虎娘が床にある黄金の賽銭箱に向かって、怒鳴り散らしている。
 
『如果是与生命的契约,选择生命』
「はぁ? 何言ってるのよ!」

 黄金の賽銭箱の言葉に虎娘が更に怒っている。
 自分の命と他人との契約なら、誰だって命を選ぶ。それは神も同じだ。
 真に怒るべきは、自分の行動と選択の愚かさだけだ。

「私なら敵に捕まった捕虜の言葉は信じない。そして、その捕虜と一緒に敵と戦おうとはしない」
「まさか、コイツ⁉︎ 私を裏切って……」
「それは違う。お前の力を弱体化したり、邪魔したりしていない。純粋に力と力の差だ。強ければ人間でも神に勝てると思ったのか?」

 虎娘が馬鹿げた考えを思い付いたようだから、訂正しておいた。

「くぅぅぅ! 覚えてなさい!」
「んっ?」

 虎娘が鋭い四本の犬歯を見せて悔しがると、左手を腰に回した。
 すぐに片端にボタンの付いた筒を見せてきた。
 勝てないと判断して逃げるようだ。瞬間移動のボタンを押した。

 だが、全てに対して対応が遅すぎる。お前を倒す準備は二つも用意した後だ。
 一つは同族の他の賽銭箱を集める事、もう一つはすぐに教えてやる。

「えっ? えっ? どういう事!」
「無駄だ。お前を最初から逃すつもりはない。今度は私がお前に薬をプレゼントとしてやろう」

 その場から自分が一歩も動いていない事に驚いている。何度もボタンを押している。
 馬鹿らしい。それが使えるなら、わざわざ走ってやって来ない。
 賽銭箱を近くに呼び寄せると、中から赤い液体の入った小瓶を取り出した。

「ごくり……な、何なの、それ……?」
「処女の純潔を集めて作った特別な薬だ。効果はたった一人の男に対しての完全性奴隷化。簡単に言えば、使用者を神村遥漬けに出来る。念じれば身体に触れずに、死ぬまで快楽と激痛を与えられる」
「ひぃっ!」

 強張った表情の虎娘が、興味があるようだから教えてやった。
 お前の為に用意した特別製だ。処女百人の快楽と激痛が濃縮された薬だ。
 普通の女は十五秒も耐え切れない。

「合作」
『明白』
「あぎゃあっ!」

 黄金の賽銭箱と大理石の賽銭箱に命じた。虎娘が普通の女に戻って、床に倒れた。
 倒れている女に近づいて、右足の太ももに刀を床まで突き刺した。

「あぎゃあああ! や、やめて、殺さないでぇ!」
「安心しろ。死にはしない。死んだ方がマシだと思える状態にするだけだ」
「いやぁ……いやぁああーッッ!」

 小瓶の蓋を開けると刀身に流した。
 刀身を赤い液体が流れていき、女の太ももの傷口から侵入していく。
 全身を神村遥で犯していく。もうお前は神村遥に逆らえない。

「さて、家まで送る時間はあるな」

 残り一分。太ももから刀を抜いて、傷口を塞いだ。
 女を掴んで、キャンピングカーにお持ち帰りした。
 身体を拘束しておくから、目覚めたら、お前の好きに使えばいい。

【第五章・終わり】
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