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第五章 鬼畜高校生vs復讐鬼
第61話 午前零時
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「うぅ……あぁ……」
凄く眠くて起きれない。意識がまだ寝ていろと言っているようだ。
目蓋を頑張って開けようとするのに、視界が霞んで何も見えない。
それでも曇りガラスのような世界が鮮明に見えてきた。
「こ、ここは……?」
薄暗い部屋の床と壁が見える。腐った肉色の鉄扉が見える。
どこだか分からないけど、自分の置かれている状況は理解できた。
両手首と両足首の枷に、天井と床から伸びる二本の長い鎖と短い鎖が繋がっている。
両手をバンザイさせられた状態で服は何も着ていない。
「ぐぅっ! これは?」
鎖を引き千切ろうと力を入れたら、右肩が痛んだ。
首を何とか動かして見ると、縫い合わされた跡が見えた。
拘束されているけど、少なくとも殺すつもりはないみたいだ。
「ぐぅああーッッ! はぁ、はぁ……駄目だ!」
身体中が痛いけど、足の痛みは比較的に軽い。
叫んで痛みを我慢して、長さ二十センチ程の鎖を引き千切ろうとした。
だけど、予想以上の頑丈さに無理だと諦めた。
「ははっ。この状況は経験があるな」
独房に入れられた時は黒マスクの男がやって来た。
あの時は結局、食事が出るのか分かる前に脱出した。
今回は前よりも難易度が高そうだ。
「ヤァッ! ヤァッ!」
誰もいないうちに脱出するに決まっている。
ピクリとも動かない左手首の鎖を引き千切ろうと引っ張る。
痛みに負けて休んでいる暇はない。
「はぁ、はぁ……くっ!」
……間に合わなかった。
全身汗だく、手首血だらけなのに、灰色の鉄扉が開いて見覚えのある女が現れた。
瞬間移動は起動しなかったようだ。
「一人で何やっているんですか? イヤラシイですね」
「これは何のつもりだ? 俺の服はどうした?」
エミリが大股二歩の距離で立ち止まると、目を逸らして、口を隠して言ってきた。
質問があるのは俺の方だ。この状態と生かしている理由を知りたい。
「ああ、オシッコとウンチを漏らして臭かったので処分しました」
なるほど、まともに答えるつもりはないらしい。
本当に俺を痛ぶり、辱める為だけに生かしたみたいだ。
だったら好きなだけやればいい。
「分かった。ほら、早くしろよ。拷問したいんだろ? この変態女が! ぺえっ!」
エミリに向かって、溜めた唾を飛ばした。顔まで届かずに床に着地した。
「あぁー、躾のなっていない駄犬ですね。でも、安心してください。すぐに尻尾を振って、私の足の指を喜んで舐めるようになります」
俺の僅かな抵抗に呆れると、微笑みを浮かべて言ってきた。
想像するだけでも気持ち悪い。指を噛み千切る事はあっても、そんな事は絶対にあり得ない。
「抱いて欲しいなら手錠を外せ。死ぬまで抱いてやる」
「やだなぁ、ものの例えですよ。そんなご褒美やるわけないでしょ。本気にして汚いものブッ勃てないでくださいよ。ふふっ。あなたにやるのはコレですよ」
「んっ?」
俺が抱いてやると言ったのに、手枷を外すつもりはないらしい。
背中に右手を回して、大理石の賽銭箱を手の平に持つと、左手で白い液体の入った小瓶を取り出した。
強力な精力剤でも飲ませて、俺を性的に痛ぶるつもりなら無駄だ。
どんなに欲情しても、お前に尻尾を振るぐらいなら舌を噛んで死んでやる。
「これは記憶を書き換える薬です。大量に飲ませて、あなたの中の私の記憶を弄くり回してあげます。うふふっ。私に恋人と妹のどっちになって欲しいですか?」
「そんな事が……」
そんな事が出来るわけない、そう言いたかった。
だけど、藤原さんで経験している。記憶を消されて何も覚えていなかった。
「出来るんですよ。死んだ家族よりも新しい家族を作る方が簡単なんです。お父さんもお母さんも妹も用意してあげます。あなたが大好きな藤原美鈴として、あなたにいっぱい頼み事をしてあげます。頑張って働いてくださいね、遥きゅん」
「お、お、お前えぇーッッ!」
手足が引き千切れようと関係ない。全力で目の前の女を殺す。
この吐き気のする笑みを浮かべる女を、藤原さんだと思って愛したくない。
俺の家族だけじゃなく、思い出も愛まで奪うなんて絶対に許さない。
「あはははっ。そんなに興奮しないでくださいよ! はい、お薬の時間ですよ」
「殺してやる、殺してやる、殺してやるーッッ!」
動かない鎖に拘束されても、叫んで暴れて抵抗を続ける。
それでも無理矢理に小瓶の白い液体を飲まされていく。
吐こうとしても、口を無理矢理に閉じられて喉の奥に流し込まれる。
どんどん意識が……大切な思い出が消えていく……。
♢
『起きろ……起きろ……』
「んんっ……」
寝ていると爺さんの声が聞こえてきた。
知らないはずなのに、懐かしく感じる。
「ここは……?」
目を覚ますと手足に鎖を着けられて、天井にぶら下げられていた。
この暗い部屋には見覚えがない。
「俺、何で、裸なんだろう? あれ? 俺って……誰だ?」
何かを思い出そうとしても、何も思い出せない。
頭の中に真っ白な絵しか見えない。
『23時59分だ。午前零時に助けて欲しいと願いを言え。お前を助けてやる』
「あんたは誰なんだ? ここはどこなんだ?」
『それを知りたければ、ただ助けて欲しいと願えばいい』
幻覚なのか爺さんの声がずっと聞こえてくる。
もしかすると死後の世界なのだろうか?
『午前零時だ。助けて欲しいと願え。お前の全てが奪われる前に』
考えていると時間がやって来た。爺さんがまた尋ねてきた。
助けてくれるなら、助けて欲しい。鎖に繋がれるのは嫌だ。
「よく分からないけど、助けて欲しい。これで自由になれるの?」
『始まりの時を持って、お前の願いを叶えよう。全てが終わるまでの僅かな時を眠れ』
「えっ? あぁ……うぅ……すぅー、すぅー」
お願いしたら、急に眠くなってきた。身体が冷たくなっていくのに気持ちが良い……。
凄く眠くて起きれない。意識がまだ寝ていろと言っているようだ。
目蓋を頑張って開けようとするのに、視界が霞んで何も見えない。
それでも曇りガラスのような世界が鮮明に見えてきた。
「こ、ここは……?」
薄暗い部屋の床と壁が見える。腐った肉色の鉄扉が見える。
どこだか分からないけど、自分の置かれている状況は理解できた。
両手首と両足首の枷に、天井と床から伸びる二本の長い鎖と短い鎖が繋がっている。
両手をバンザイさせられた状態で服は何も着ていない。
「ぐぅっ! これは?」
鎖を引き千切ろうと力を入れたら、右肩が痛んだ。
首を何とか動かして見ると、縫い合わされた跡が見えた。
拘束されているけど、少なくとも殺すつもりはないみたいだ。
「ぐぅああーッッ! はぁ、はぁ……駄目だ!」
身体中が痛いけど、足の痛みは比較的に軽い。
叫んで痛みを我慢して、長さ二十センチ程の鎖を引き千切ろうとした。
だけど、予想以上の頑丈さに無理だと諦めた。
「ははっ。この状況は経験があるな」
独房に入れられた時は黒マスクの男がやって来た。
あの時は結局、食事が出るのか分かる前に脱出した。
今回は前よりも難易度が高そうだ。
「ヤァッ! ヤァッ!」
誰もいないうちに脱出するに決まっている。
ピクリとも動かない左手首の鎖を引き千切ろうと引っ張る。
痛みに負けて休んでいる暇はない。
「はぁ、はぁ……くっ!」
……間に合わなかった。
全身汗だく、手首血だらけなのに、灰色の鉄扉が開いて見覚えのある女が現れた。
瞬間移動は起動しなかったようだ。
「一人で何やっているんですか? イヤラシイですね」
「これは何のつもりだ? 俺の服はどうした?」
エミリが大股二歩の距離で立ち止まると、目を逸らして、口を隠して言ってきた。
質問があるのは俺の方だ。この状態と生かしている理由を知りたい。
「ああ、オシッコとウンチを漏らして臭かったので処分しました」
なるほど、まともに答えるつもりはないらしい。
本当に俺を痛ぶり、辱める為だけに生かしたみたいだ。
だったら好きなだけやればいい。
「分かった。ほら、早くしろよ。拷問したいんだろ? この変態女が! ぺえっ!」
エミリに向かって、溜めた唾を飛ばした。顔まで届かずに床に着地した。
「あぁー、躾のなっていない駄犬ですね。でも、安心してください。すぐに尻尾を振って、私の足の指を喜んで舐めるようになります」
俺の僅かな抵抗に呆れると、微笑みを浮かべて言ってきた。
想像するだけでも気持ち悪い。指を噛み千切る事はあっても、そんな事は絶対にあり得ない。
「抱いて欲しいなら手錠を外せ。死ぬまで抱いてやる」
「やだなぁ、ものの例えですよ。そんなご褒美やるわけないでしょ。本気にして汚いものブッ勃てないでくださいよ。ふふっ。あなたにやるのはコレですよ」
「んっ?」
俺が抱いてやると言ったのに、手枷を外すつもりはないらしい。
背中に右手を回して、大理石の賽銭箱を手の平に持つと、左手で白い液体の入った小瓶を取り出した。
強力な精力剤でも飲ませて、俺を性的に痛ぶるつもりなら無駄だ。
どんなに欲情しても、お前に尻尾を振るぐらいなら舌を噛んで死んでやる。
「これは記憶を書き換える薬です。大量に飲ませて、あなたの中の私の記憶を弄くり回してあげます。うふふっ。私に恋人と妹のどっちになって欲しいですか?」
「そんな事が……」
そんな事が出来るわけない、そう言いたかった。
だけど、藤原さんで経験している。記憶を消されて何も覚えていなかった。
「出来るんですよ。死んだ家族よりも新しい家族を作る方が簡単なんです。お父さんもお母さんも妹も用意してあげます。あなたが大好きな藤原美鈴として、あなたにいっぱい頼み事をしてあげます。頑張って働いてくださいね、遥きゅん」
「お、お、お前えぇーッッ!」
手足が引き千切れようと関係ない。全力で目の前の女を殺す。
この吐き気のする笑みを浮かべる女を、藤原さんだと思って愛したくない。
俺の家族だけじゃなく、思い出も愛まで奪うなんて絶対に許さない。
「あはははっ。そんなに興奮しないでくださいよ! はい、お薬の時間ですよ」
「殺してやる、殺してやる、殺してやるーッッ!」
動かない鎖に拘束されても、叫んで暴れて抵抗を続ける。
それでも無理矢理に小瓶の白い液体を飲まされていく。
吐こうとしても、口を無理矢理に閉じられて喉の奥に流し込まれる。
どんどん意識が……大切な思い出が消えていく……。
♢
『起きろ……起きろ……』
「んんっ……」
寝ていると爺さんの声が聞こえてきた。
知らないはずなのに、懐かしく感じる。
「ここは……?」
目を覚ますと手足に鎖を着けられて、天井にぶら下げられていた。
この暗い部屋には見覚えがない。
「俺、何で、裸なんだろう? あれ? 俺って……誰だ?」
何かを思い出そうとしても、何も思い出せない。
頭の中に真っ白な絵しか見えない。
『23時59分だ。午前零時に助けて欲しいと願いを言え。お前を助けてやる』
「あんたは誰なんだ? ここはどこなんだ?」
『それを知りたければ、ただ助けて欲しいと願えばいい』
幻覚なのか爺さんの声がずっと聞こえてくる。
もしかすると死後の世界なのだろうか?
『午前零時だ。助けて欲しいと願え。お前の全てが奪われる前に』
考えていると時間がやって来た。爺さんがまた尋ねてきた。
助けてくれるなら、助けて欲しい。鎖に繋がれるのは嫌だ。
「よく分からないけど、助けて欲しい。これで自由になれるの?」
『始まりの時を持って、お前の願いを叶えよう。全てが終わるまでの僅かな時を眠れ』
「えっ? あぁ……うぅ……すぅー、すぅー」
お願いしたら、急に眠くなってきた。身体が冷たくなっていくのに気持ちが良い……。
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