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第五章 鬼畜高校生vs復讐鬼

第58話 宗教法人・八卦会潜入

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 三食女の子付きの快適な女子寮生活から離れて、宗教法人『八卦会』の本部にやって来た。
 人里離れた山奥にあるのに、ひっそりと佇むつもりはないらしい。

「東京ディズニーランドかよ」

 望遠鏡で遠くから覗きながら、思わずツッコンでしまった。どちらかと言うと、バッキンガム宮殿だ。
 直径五十メートルはある丸い噴水、緑の芝生と赤い花が咲き誇る広い庭、ヘリコプターが二機、二千人は住める灰色の豪華な宮殿と……欲望に満ちた宗教だ。
 赤いタオルを身体に巻いているだけの人達を見習ってほしい。

「皆殺しはまだ早いな」

 まずは八卦会を調査しないといけない。信者以外は立ち入り禁止だからよく分からない。
 欲望に満ちた金持ち達が全財産を寄付して作った、真面目な宗教施設かもしれない。

「今日も良い天気ですねぇ」
「ええ、これなら畑の野菜も美味しく育ちます」
「まあ、それは楽しみだわぁ」

 透明人間になって施設内に潜入した。敷地と建物は立派だが、まるで田舎だ。
 身なりの綺麗なおばさんとおじさんが、庭でのんびり立ち話をしている。
 服も落ち着いた私服だし、カルト宗教とは思えない。

(ただの金持ち達の老人ホームじゃないのか?)

 でも、老人ホームというには、子供や二十代の男女もいるから多分違う。
 制服を着た職員はいないけど、全員が左手首に銅色、銀色、金色の軍隊みたいな認識票をぶら下げている。
 階級みたいなものが存在しているようだ。

 年齢が高くても銅色だったり、若くても金色だったりして統一性がない。
 寄付の金額や信者になった年数、役職とかの重要度で決まるんだろう。
 
「外には何もなかったな」

 野菜畑は隠語だと思ったのに、大麻畑はどこにも見つからなかった。
 普通にジャガイモを育てていた。多分、建物の中に性奴隷牧場があるはずだ。
 若い女性信者に子供を産ませて、子供を育てて性奴隷として販売している。
 良い食事を与えて、健康な子供を産ませているのだろう。

「アヘ、アヘヘヘェ!」
「グへ、グゥヘヘヘ!」

 宮殿のような建物に入ると、適当に部屋を調べ回っていく。薬物の使用部屋を見つけた。
 ピンク色の湯気が立ち込めるサウナ室の中で、裸の男達が寝転んで恍惚の表情を浮かべている。
 部屋の扉には妄想部屋と書かれている。効能は幻覚作用と快楽作用の二つみたいだ。

「やっぱり普通の施設じゃないな。賽銭箱の力が使われている」

 他にも効能が違う部屋がたくさんあった。
 減量、若返り、治療、整形、身体能力強化と……簡単に言えば改造人間の製造施設だ。
 問題があるとしたら、これ自体は悪い事ではない事だ。
 ただの美容施設で個人的な娯楽や趣味と言われれば、それで終わりだ。

 だけど、偽議員の製造施設がここなら話は変わる。
 日本を揺るがす大犯罪に協力したのならば、その代償は当然支払ってもらう。

「間違いない、イケメン外人だ」

 建物を歩き回って、巨大な礼拝堂の祭壇で、信者達の相手をしている教主を見つけた。
 三十代前半の筋肉質な長身の身体に、白い長袖長ズボンの修道服を着て、その上に袖無しの黒服を着ている。
 白髪のように金髪が混じった黒髪のライオンヘアに、灰色の瞳にワイルドな口髭と顎髭を短く生やしている。
 手嶌蘭瞳てしまらんどうではなく、闇堕ちオーラ○ド・ブルームに改名した方が覚えやすい。

 ♢

「さてと、服を着るか」

 一旦礼拝堂から出ると戦闘準備を始めた。
 全裸状態はヤバイ。服を着て、刀と銃と瞬間移動を装備した。
 ついでに五円玉をキャンピングカーから持ってくるのも忘れない。
 今回は復讐なので、仮面無しの顔出しOKだ。
 誰にやられたのか、しっかりとエミリに報告してもらう。

『パンッ!』
「動くな!」
「きゃあああ!」

 礼拝堂に入ると天井に向かって、左手に持つ銃を一発発砲した。今のは威嚇射撃だ。
 動いた信者は敵だと認定して、容赦なくこの世から排除する。

「お前が手嶌蘭瞳だな? 蒼桜エミリを知っているな?」

 長椅子に座る二十人以下の田舎信者達は無視だ。
 祭壇に立って両手を上げている手嶌に、銃口を向けて近づいていく。

「お話を聞くので落ち着いてください。確かに私が手嶌蘭瞳です。その蒼桜エミリさんを探しているんですか?」
「惚けるつもりなら、信者を一人ずつ殺していく。願いが叶う賽銭箱を持っているだろう」

 丁寧な優しい口調で聖人ぶりたいんだろうけど、無駄だ。
 祭壇の五メートル程前で立ち止まると、強い口調で脅して聞いた。
 素直に白状しないなら、上の中の顔を、俺と同じ下の中に拳で整形してやる。

「そういう事でしたか……分かりました。賽銭箱をお渡しします。ですから、誰にも危害を加えないと約束してください」

 やっぱり賽銭箱を持っていた。
 諦めたように認めると、賽銭箱と引き換えに身の安全を要求してきた。

「ああ、約束する。それともう一つ聞きたい事がある。この施設に西田総理が国会議員達と来ていたのは知っているな? 何をしていたんだ?」
「確か……ただの治療だと記憶しております。それが何か?」

 完全に惚けるつもりだ。偽総理が死んだ後に偽議員の整形は解けた。
 コイツが持っている賽銭箱で整形していない証拠だ。
 だけど、治療なら黄金の賽銭箱で自分で出来る。絶対に何か隠している。

「チッ、さっさと賽銭箱を出せ!」
「賽銭箱は別の場所に保管しています。そこまで案内させてください」
「罠じゃないだろうな?」

 コイツの顔がイケメンだから気に食わないわけじゃない。
 普通の人間が銃を向けられて、こんなに冷静になれるはずがない。
 この余裕のある態度は、絶対に罠があるに決まっている。

「私が信じられないのなら、ここにいる子供や女性を人質に連れて行ってください。私がおかしな動きをした時は、私と一緒に殺してくれて構いません」
「お前の指図は受けない。決めるのは俺だ。賽銭箱はどうでもいい。お前をボコボコにしてやる!」

 コイツの顔がイケメンだから殴るんじゃない。人が追い込まれた時に本性を現すからだ。
 殺されそうになったら、凶悪な本性を現して抵抗するはずだ。

「クククッ。これは困りました。殴られてまで時間稼ぎをするつもりはないんですよ、私もね」

 一段高い祭壇に登ると、手嶌が両手を下げて急に笑い出した。
 綺麗な顔を殴られる前に本性を現した。

「それが本性か? 殺す前に聞きたい事が二つある。偽総理に協力していたな?」
「信者を何人か貸しただけです。それ以外は個人的な関係です。蒼桜エミリは私の婚約者なんですよ」
「それは助かった。お前を殺せば、その婚約者の泣き顔が見れそうだ!」

 教主が綺麗な金髪の婚約者を自慢げに紹介してくれた。その女は俺にとっての地雷だ。
 質問が一つで済んで助かった。自慢のイケメン教主の顔面を穴だらけにしてやる。

「フッ」

 顔面に向かって引き金を引いた。
 教主が軽く笑って銃弾をしゃがんで躱すと、そのまま飛び跳ねるような素早い動きで向かってきた。
 銃弾を左右斜めに跳んで躱して、数歩で懐まで入り込むと、胴体に左拳を振り回してきた。

(速いがいける)

 後ろに軽く跳んで躱して、着地と同時に踏み込んで、左手の顔を狙って振り落とした。
 教主が両腕を左手に向かって振り上げて、左手を撥ね上げた。
 僅かに体勢が傾いた隙を狙って、教主が高速の右拳を打ってきた。

「ハァッ、リァッ!」
「くっ、がぁ、ハァッ!」

 左手から銃を捨てて受け止めると、お互いの顔面と胸を狙った高速の拳の打ち合いが始まった。
 腕で受け止め、払い退け、直径二メートルの範囲内で、フェンシングのように激しく打ち合う。
 激しい打ち合いで呼吸が苦しくなってきた。

「ぐぅ!」

 我慢できずに後ろに跳んで離れた。教主も同じタイミングで離れた。
 だけど、すぐにお互いが前進した。また打ち合いが始まる。
 右手で左腰の刀の柄を素早く掴んで、教主の顔を両断する為に、高速の居合い抜きを放った。

「くっ……!」

 教主が前進を踏み止まり、刃に対して身体を真横すると、上半身だけを後ろに倒して刃を躱した。

「なるほど、聞いていた以上にやるようだ」
「あんたは見掛け倒しだな。誰だか分からないように、次は鼻を削ぎ落としてやる」

 教主の右頬から赤い血の線が浮かび上がっている。
 あんたに恨みはないけど、次に婚約者と会うのは葬式だ。
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