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第四章 最低高校生vs美少女三人

第40話 心と身体が入れ替わる

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『二つの心と身体が入れ替わる時、真実の愛を一つ選択せよ。お前の選択で力を与えよう』
「んんっ……」

 ベッドで寝ていると、また賽銭箱の声が聞こえてきた。
 隣に黄金賽銭箱がいるんだから、暇ならそいつと喋ればいい。
 偽総理の財布の一角硬貨を入れても、何も喋らないけど、お前なら心を開いてくれる。
 頑張って友達になれ。

「すぅー、すぅー……」
「神村君……神村君……」
「んんっ? 薫?」
「神村君、起きて!」

 身体を揺すられて、薄っすらと目を開けると薫の顔が見えた。合鍵を使って、また入ったようだ。
 白いシャツの上に、ピンクの薄い生地の長袖パーカーを着て、同じピンクの半ズボンを履いている。
 ブラを着けていないから、胸の先端がシャツに浮き出ている。

(はぁー、モテる男は辛いよ)

 時間的に夜這いじゃないけど、お兄ちゃんを朝這いに来たのなら無駄だ。
 お兄ちゃんには藤原さんという可愛い彼女がいる。
 どんなに誘惑されようと、もうケーキ屋には行かないと決めている。

「薫、実は話があるんだ。お兄ちゃん、彼女が出来たんだ。だから、薫とはエッチな事はしない」
「もぉー、神村君! 寝惚けてないで起きてよ! 私は妹じゃないよ!」
「えっ? じゃあ、誰なの?」

 起き上がると真面目な顔で朝這いを断った。だけど、薫は諦めないようだ。
 妹じゃないプレイをしたいみたいだけど、どう見ても妹にしか見えない。
 血の繋がらない義妹プレイでもしたいのだろうか?

「藤原美鈴だよ! 起きたら知らない部屋にいたからビックリしたけど、机の教科書に神村薫って書いてあったから、神村の家だって分かったの。昨日の帰り道に、部屋の鍵が一緒だって言ってたでしょ」
「あぁー、言ってたね。うん、言ってた」

 お兄ちゃんは妹の口から、藤原さんの名前と昨日の会話が出て来たのにビックリだ。
 まさかお兄ちゃんをストーカーするほど、好きになっていたとは知らなかった。

「薫、よく聞いて。兄妹は結婚できないんだ。お兄ちゃんよりも良い男はたくさんいる。お兄ちゃんをストーカーする時間をその人を探す為に使いなさい」
「もぉー、神村君、お願い! 怒らないから賽銭箱で早く元に戻して! 神村君がやったんだよね!」

 良い男は星の数程いるのに、説得に失敗してしまった。
 冗談みたいな事を言っているけど、薫の顔は冗談を言っている顔じゃない。
 もうお兄ちゃんじゃないと駄目みたいだ。ベッドから下りて、床に正座した。

「……ごめん、薫。お兄ちゃんが悪かった。でも、好きな人と約束したんだ。その人だけを愛すると決めたんだ。だから、もう薫とは遊びでも出来ないんだ。ごめん」

 薫が本気だとしても、その気持ちに応える事は出来ない。
 記憶を消した方が楽だけど、兄の前に男として責任を取りたい。
 頭を床にしっかり付けて謝り続ける。

 いつかは遊びの関係も終わる。
 お互いの為にも、だらだらと不純な関係を続けるべきじゃない。

「神村君、さっきから何を……えっ? 神村君、本当に妹と……えっ、嘘だよね?」
「ごめん、薫。お兄ちゃんが悪かったんだ。薫は悪くない。エッチ以外は何でもするから許して欲しい」

 俺の言葉が信じられないのか、薫が確かめるような声で聞いてきた。
 何度聞かれても答えは変わらない。

「っ! 最低、不潔! そんな人だって思わなかった! うぅぅ……大嫌い!」
「……ごめん、薫」

 薫が部屋から出て行った。泣かせてしまったけど、これで良かったと思える日が来る。
 男としては無理だけど、兄として薫を一生愛し続ける事を約束する。
 本当にごめん。お兄ちゃんを一生恨み続けていいから、幸せになってほしい。

 ♢

『ルルルルル♬』

 憂鬱な気持ちで登校していると電話が鳴った。妹と本気の喧嘩をしたのは久し振りだ。
 しばらくはお互い気まずい状態になる。まるで別れた彼氏と彼女みたいだ。

「はぁー、誰だろう? うっ、藤原さんだ……」

 正直、今は出たくない。妹を泣かせた後に楽しく会話できそうにない。
 でも、妹を泣かせておいて、藤原さんまで悲しい思いをさせるわけにはいかない。
 クズはクズでも、二人の女の子を悲しませる最低のクズにはなりたくない。

「もしもし? どうしたの?」

 勇気を出して、電話に出た。

『あぁー! お兄ちゃん、大変大変! なんか知らない人になってるんだよ! お兄ちゃんの学校の制服着ているから助けてよ!』
「っーぅ! 藤原さん、ちょっと落ち着いて。何が大変なのか分からないから」

 電話越しに藤原さんが大声で、しかも早口で話してきた。
 耳が痛いし、お兄ちゃんと大変以外の言葉は耳に残らなかった。

『落ち着いてられないよ! 変なおじさんに学校まで送られるし、二年生の授業なんて分かんないよ! 校門の前にいるから、五秒で来てよ!』

(めちゃくちゃだな)

 普段の藤原さんなら絶対に言わない事を言っている。
 もしかすると、また女友達の悪戯かもしれない。昨日の玲奈とかいう女だ。
 藤原さんの声だけど、友達なら声真似ぐらい出来そうだ。

 よし、少し揶揄ってやる。

「五秒は無理だよ。六分ぐらいはかかるから、教室で待ってて」
『無理ぃー! 全然知らない人達の中に入れないよ! 家には帰れないし、お兄ちゃんなら何とか出来るでしょ! うぅぅ……早く来てよぉ……』

 玲奈が困っている感じを出して、涙声で助けを求めている。これって、ハニートラップじゃね? 
 藤原さんに頼まれて、俺の浮気度をチェックしているんだ。騙されたら終わりだな。
 
「ごめんごめん。走って行くから待てて」
『うん、早く来てね』
「うん、分かってる。じゃあ、切るね」

 反応が少し可愛かったから、もう少し続けても良かったけど、電話を切った。
 妹を振った直後に彼女の友達に手を出すとか、クズ中のクズだ。
 ハサミでタンポン切り落とされても、文句も言えない大罪だ。

「あっ、藤原さんだ……」

 校門まで走ると、本当に藤原さんが待っていた。
 他所の学校の人みたいに、ソワソワと挙動不審になっている。

「藤原さん、おはよう」
「うぅぅ……お兄ちゃん!」
「ひゃっ! ふ、藤原さん! う、嬉しいけど、た、停学になるから離れようか」

 挨拶すると涙目になっている藤原さんが抱きついて来た。
 嬉しいけど場所が悪い。先生に見つかったら、生徒指導室に呼び出される。
 優しく両肩を掴んで、急いで引き離した。

「ふぅー、それで藤原さん、どうしたの?」

 学校の人気の無い場所まで移動して、藤原さんに何があったのか聞いてみた。
 お兄ちゃんと呼ばれるよりは、先輩と呼ばれる方が個人的には興奮する。

「だから大変なの! ほら、知らない女の子になっているんだよ! 今日の私を家で見てないの!」

 藤原さんがクルクル回って、スカートを持ち上げて、身体を見せてくる。
 水色のパンティが見れて、朝から嬉しいけど、他の男には見られたくない。

「藤原さん、ちょっと落ち着こう。言っている意味が分かんないから。えーっと、藤原さんが藤原さんじゃないんだね?」
「うぅー! お兄ちゃんのバカバカバカ! 藤原さんじゃないよ! 薫だよ! 妹の薫だよ!」
「うんうん、ごめん、藤原……じゃなくて、薫」

 藤原さんが情緒不安定なのは分かった。
 怒った藤原さんが両手を握って、俺の胸をポカポカ叩き始めた。
 可愛いし、痛くないから、放課後まで叩かれたい。

(んっ? 待てよ……)

 でも、朝にも似たような事が起きた。
 薫が藤原さんだと言っていた。そして、藤原さんが薫だと言っている。
 二人が一緒に階段から転げ落ちて、入れ替わったと言われたら信じるけど、二人とも寝ていただけだ。
 そんな事が起きるなら、世界中で入れ替わり事件が大発生する。

「えーっと、薫。ちょっと質問してもいい?」
「うぅぅ……何?」

 でも、確かめる方法が一つだけある。涙目になっている藤原さん(薫)に聞いた。
 二人に同じ事をやったけど、チョコレートでお腹に書いた文字が違う。
『チェックイン20分後』なら藤原さん、『チェックイン10分後』なら薫だ。

「薫なら知っていると思うけど、薫のお部屋へのお兄ちゃんのチェックインは何分後?」
「へふぇ! じゅ、10分後だよ。もしかしてここでするの? お兄ちゃんの電話番号があったから、お兄ちゃんの知り合いの女の子なんでしょ? 私は良いけど、この身体は私じゃないし……」

 間違いない! この藤原さんは薫だ!
 俺の知っている藤原さんは、スカートの股を恥ずかしそうに押さえない。
 藤原さんは誘っても、学校の屋上でエッチな事はさせてくれない。
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