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第四章 最低高校生vs美少女三人

第39話 神社で愛の告白

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『黄金の賽銭箱を回収せよ……黄金の賽銭箱を回収せよ……』
「んんっ……」

 無事に偽総理を倒したお祝いに、妹と藤原さんとたくさんケーキ屋に行った。
 夜に部屋のベッドで疲れて寝ていると、賽銭箱の声が聞こえてきた。

「うるさいなぁ……分かったよ」

 目覚まし時計のアラームなら簡単に消せるけど、賽銭箱を床に叩きつけて止めるわけにはいかない。
 あんな寒い所には行きたくないけど、パパッと回収して、暖かいベッドに戻ろう。

「おおー! 寒い寒い!」

 寒すぎると目が覚めるみたいだ。
 北極の大地をピョンピョン飛び跳ねて、偽総理の死体に近づいた。

「うわぁ、ヤバイな。俺も死んだらこうなるのか……」

 偽総理の死体は服を着ていなかった。
 俺の予想通り、賽銭箱で作った物は持ち主が死んだら消えるみたいだ。
 とりあえず身元が分からないように、持ち物は全部回収しよう。
 近くに落ちていた財布、スマホ、黄金賽銭箱。手から時計、指輪を回収した。
 転がっている頭には眼鏡は付いていなかった。

「やっぱり別人だな」

 凍り付いた偽総理の顔は、中国系の四十代ぐらいの別人だった。
 賽銭箱で顔を変えられる薬も作れるみたいだ。イチモツも変えられるから当然かもしれない。
 顔をイケメンに整形して、手当たり次第にナンパして、ケーキ屋にお持ち帰りしたい。

 だけど、そんな不純な裏切り行為はもうしない。
 明日の放課後、藤原さんと二人でボロ神社に行く。そこで永遠の愛を誓って告白する。
 もう遊びも浮気もしない。俺の全部を藤原さんに捧げる。

(まあ、断られたらケーキ屋でやけ食いするかもしれないけど……)

 でも、大丈夫だ。自信がある!
 藤原さんの身体は完全に、俺の身体の虜になっている。
 今日も柔らか藤原さんシュークリーム生地の中に、18禁生クリームをたっぷり詰め込んできた。
 お腹パンパンになって、藤原さんも動けなくなるぐらいに大満足していた。

「よし、明日はお賽銭を奮発するぞ!」

 偽総理の財布には四十人程の福沢諭吉が入っている。
 戦利品としては十分な金額だ。これで毎日ケーキ屋に最低十回は通える。

「ムフフ。今から夜這いに行ってもいいかも」

 北極に来た所為で身体が冷えてしまった。藤原さんに温めてもらいたい。
 でも、それは明日のお楽しみだ。大人しく自宅に瞬間移動で戻った。

「ここでいいか。あぁー、寒い寒い!」

 ボロ賽銭箱と黄金賽銭箱を本棚の空きスペースに並べた。
 明日は大事な日だ。風邪を引いたら大変だから、さっさと布団に潜り込んだ。

 ♢

「藤原さん、一緒に帰ろう」

 待ちに待った放課後がやって来た。
 二つ隣の教室に向かって、女友達と一緒にいた藤原さんに声をかけた。

「あっ、うん。玲奈れなちゃん、また明日ね」
「はぁーい。襲われそうになったら、二人で逃げるんだよ。無理なら神村が死んでも守れぇー」
「あっはは……まあ、頑張るよ」

 藤原さんの指○似のお友達に邪魔されなかったけど、俺の事が気に入らないみたいだ。
 普段、藤原さんにしつこい男がいるとか相談されているのかもしれない。

「どうしたの神村君? もしかして、まだ危ないの?」
「偽総理を倒したから安心だと思うよ。今日は別の用で来たんだ」
「そうなんだ」

 学校を出て二人っきりになると、藤原さんが心配して聞いてきた。
 残党に命を狙われる危険はあるけど、黄金の賽銭箱は俺が持っている。
 弱体化した残党狩りは総理に任せておけばいい。

「整形できる薬があるんだけど、藤原さんはどんな顔の男が好き?」
「うーん、考えた事ないけど、優しい顔の人が好きかな」
「へぇー、優しい顔かぁー」

 適当にどうでもいい話を話して、目的地のボロ神社に向かう。
 藤原さん家の帰り道だから怪しまれる事はない。自然な流れでお参りして告白する。

「藤原さん、ちょっと寄り道していいかな? 神様に助かった事を感謝したいんだ」
「うん。それなら私もするね」

 上に見える神社を指差して、藤原さんを誘ってみた。すぐにOKの返事が返ってきた。
 二人で三十段程の石階段を上って、賽銭箱の前までやって来た。

(よし、今日の俺は大人の男だ!)

 ズボンのポケットから高級財布を取り出して、福沢諭吉を一枚取り出した。
 迷わずに賽銭箱の中に投入すると、手を二回叩いてお願いした。

「藤原さんと付き合いです。大好きな藤原美鈴さんと付き合いです。どうか付き合ってください」
「ふぇっ!」

 拾ったお金で堂々とお願いすると、チラッと藤原さんの顔を見た。
 真っ赤な顔で俯いている。困っているのか、恥ずかしいのか分からない。
 今すぐに返事をもらいたいけど、大事な事だから考える時間も必要だ。
 急かす男は嫌われそうな気がする。

「藤原さん、帰ろうっか? 藤原さんはお願いしたい事ある?」

 何事もなかったように藤原さんに聞いた。
 心臓がドキドキで破裂しそうだけど、今日の俺は余裕のある大人の男だ。
 緊張も動揺も焦りも見せたらいけない。

「う、うん、あの……神村君……」
「んっ? 何?」

 まだ帰りたくないみたいだ。藤原さんはその場から動こうとしない。

「神村君って……私の事、その……好きなの?」

 藤原さんが右手で自分の右頬に触れて、真っ直ぐに俺を見つめて聞いてきた。
 揺れる瞳は困っている。赤い顔には嬉しさと恥ずかしさが、ぐちゃぐちゃに混ぜ合って見える。

(嗚呼、可愛い。可愛いけど、どっちなんだい!)
 
 藤原さんの表情だけで判断するなら、個人的に確率は五分五分だと思う。
 俺の返事次第で、気持ちが好きにも嫌いにも変わりそうだ。

「あっ……」
「好きだよ。中学の頃からずっと好きだった。これからも好きでいたい。藤原さんは俺の事好き?」

 返事を急かすつもりはなかったのに我慢できなかった。
 藤原さんの左頬に右手で優しく触れて、正直に話して聞いてしまった。
 藤原さんが俺の右手から離れると、震える声で気持ちを話し始めた。

「そんなの分かんないよ。神村君、いつも強引だし、キスして、エッチして……私の大切な初めて奪って、デートもした事ないのに、好きなんて言われても分かんないよ」
「うっ!」

(お、おっしゃる通りです)

 明らかに告白失敗だ。藤原さんの表情から嬉しさが消えて、怒りが現れてきた。
 次々に俺への不満が口から飛び出してくる。恨まれて当然の事をしました。
 素早く土下座した。エッチは一度したから、何度しても同じだと思っていました。

「ごめん、藤原さん! でも、好きなのは本当なんだ! デートもしたいし、嫌ならエッチは二度としない! だから一回だけ付き合ってください!」

 カッコつけるのをやめて、誠心誠意謝って、自分の見っともないありのままの姿を見せた。
 子供なんだから大人の余裕なんてあるわけない。

「別にもういいよ。謝ってもなかった事には出来ないんだから」
「うぅぅ……ごめん、藤原さん。でも、好きなんだ。世界で一番愛しているんだ」

 謝っても駄目みたいだ。怒っている藤原さんの声が上から降ってくる。
 それでも今は謝って、好きだという気持ちを伝えるしかない。

「んんっ~! わ、分かったから……一回だけだから、一回だけ何だからね」
「えーっと、それって……?」

 声が柔らかくなった気がする。顔を上げて、藤原さんを見て確認した。

「う、うん……一回だけ、一回だけ付き合おう。駄目だったら、すぐに別れるからね」

 怒ってなさそうだけど、凄く困った感じの顔に見える。
 我儘な子供に仕方なく、お菓子を買ってあげるお母さんの顔だ。

「えっ? 本当に⁉︎ 本当に付き合ってくれるの!」
「もぉー、本当だよ。こんな事嘘でも言わないよ」

 だけど、何でもいい。藤原さんが付き合ってくれると言った。
 もう取消しは出来ない。土下座から素早く立ち上がって喜んだ。

「やったぁ! 絶対だよ! 嘘吐いたら、付き合ってもらうよ!」
「もぉー、しつこいなぁー。やっぱりやめようかなぁー」
「ごめんなさい! もうしつこくしません!」

 藤原さんがちょっと意地悪だ。急いで両手を合わせて謝った。
 ドSの藤原さんも可愛い。もう一度土下座するから、足で踏んで罵って欲しいです。
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