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第三章 最強高校生vs内閣総理大臣

第34話 看守達との死闘

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「めちゃくちゃだ!」

 人質達の波に加わって、看守二人に突撃した。
 廊下に立っていたら、見えないから突き飛ばされる。

「ぐはぁ! うぐぐっ、まだまだ!」
「そ、そうだ! まだ死ぬには早い!」

 人質達が看守二人の圧倒的な力に殴り飛ばされていく。
 それでも震える身体で立ち上がり、再び向かっていく。

「チッ、しつこい奴らだ」
「雑魚は無視だ。アイツだけを警戒しろ」

 やっぱり姿は見えている。だけど、誰だか見えていない。
 素早い動きを控えて、人質達に紛れ込んだ。そして……

「ハァッ!」
「ぐああーッッ!」

 俺を見ていない看守を狙って、全力の右ストレートを眼鏡に叩き込んだ。
 右目に拳が突き刺さり、看守が悲鳴を上げている。
 だけど、丁寧に左目も割るつもりはない。

(昇○拳!)

 渾身の右拳を顎下に打ち噛ました。

「ごぉぺっ……!」

 拳と一緒に看守の身体が宙を舞って、背中から床に激突した。

「お前か!」
「そうだ!」

 人質に紛れ込むのは終わりだ。仲間がやられて、看守が一直線に向かってきた。
 もう小細工は通用しない。俺から絶対に目を離すつもりはない。
 こっちももう逃げも隠れもしない。かかって来い。

「ラァッ!」
「ぐぅ! ガアッ!」
「がはぁ……!」

 看守の腹に一発ブチ込んだ。でも、すぐに顔面を殴り飛ばされた。
 全力の殴り合いをするつもりが、攻撃力は同じでも防御力が違うらしい。

「どうした! 休憩か!」
「ぐっ、くっ!」

 完全に足が止まってしまった。防御するだけでハンマーで叩かれているみたいに痛い。
 痛み止めを今すぐに作りたい。即効性と持続性がないと意味ないけど。

「セイリァ!」
「ぐぅっ……!」

 両腕で防御したのに、看守の左足の回し蹴りで壁に蹴り飛ばされた。

「はぁ、はぁ……」

 チャンスがあれば、どこかの道場でキチンと武術を習おう。
 小林寺で習った事は容赦なく急所を狙えだけだった。
 そんなの子供なら誰でも知っている。

「手間取らせやがって。たっぷり可愛がってやる」
「ははっ……そっちの趣味はないけど、可愛がってくれるならチェンジでお願いするよ。あんた不細工だからマスク着けてんだろ?」
「……リンチはやめだ。今すぐに殺してやるよ!」

 笑っていたのに急に不機嫌になった。本当の事を言われて傷付いたようだ。
 襲い掛かってきたので、急いで逃げた。強引な男は嫌われる。
 
「嫌だね!」
「この野朗……逃げるつもりか!」

 逃げるつもりはない。一発逆転を狙うなら、床に落ちている瞬間移動を拾うしかない。
 看守と一緒に一万メートルだ。右手で拾って立ち止まると振り返った。

「来いよ。遊びは終わりだ。全力で相手してやる」
「……あぁー、そういう事か。残念だったな。その対策はもう終わっている。パラシュートも必要ない」
「あっ……」

 看守が急に嬉しそうに上着のファスナーを下ろして、服の裏側を見せてきた。
 銃以外に筒型の瞬間移動が数本見えた。

「お前、最近脱獄した奴だな? 家族親戚皆殺し決定だ」
「違うよ。オイラ、そんな奴知らないよ」

 正体がバレそうだったから、可愛い子供の声真似で誤魔化した。

「今更遅いんだよ。声紋鑑定すれば分かる。それに声を変えた時点で、本人だと言っているのと同じだ」
「くっ!」

 だけど、逆効果だった。もう絶対に逃げられない。
 こんな事になるなら、高級マンションのお嬢様達と、手当たり次第に子作りしてくれば良かった。
 どうせ誰の子供か分からない。俺の死体は綺麗に焼却される。

「うおおーッッ!」
「何だ?」

 万策尽きた状態で対峙していると、廊下を震わせる怒号が鳴り響いた。
 まだ動ける人質五人が向かってきた。

「私達が押さえる! その間にやってくれ!」
「死に損ないが……時間稼ぎも出来ねぇよ」

 気持ちは有り難いけど、俺もそう思う。右手の瞬間移動のボタンを押した。
 場所は看守の目の前だ。戦闘中のよそ見は禁物だ。
 看守の頭を両手で掴んで、眼鏡に激しく頭突きした。

「ラァッ!」
「ぐがぁ! このぉー!」

 怯ませる事は出来たけど、すぐに反撃の右肘鉄が左肩に振り下ろされてきた。
 看守の右腹から後ろに素早く回り込んで回避した。コイツが頑丈なのは知っている。

「私が目を隠す! 手足を押さえてくれ!」
「任せろ! 死んでも離さん!」

 チャンスを見逃さず、五人が看守に飛びかかった。首や手足にしがみ付いていく。
 看守が身体を振り回して、手足に付いた虫みたいに振り落とそうとしている。

「このぉー! 邪魔すんじゃねぇ!」 

 議員が命を懸けた作ったチャンスだ。絶対に無駄にはしない。
 賽銭箱から急いで銃を取り出した。
 
「この死に損ないが……おごぉ!」
「死に損ないはお前だ。いや、もう死んでいるな」

 銃身を汚い口の中に突っ込んで、小さな脳味噌に向かって銃弾をブチ込んだ。

『パンッ!』
「ぐっ……!」

 身体は鍛えたみたいだけど、人間として一番大事な所を鍛え忘れている。
 お年寄りは大切に扱え。

「議員、大丈夫ですか?」

 看守と一緒に人質五人が床に倒れた。議員か分からないけど、多分議員だ。
 上級国民でお年寄りだから、素早く声を掛けて助け起こした。

「あぁ、大丈夫だ。この程度はかすり傷だ。それよりもこの男は何者なんだ? 人間とは思えない力だ」
「そうですね」

 議員が死んでいる看守から黒マスクを剥ぎ取った。
 不細工な顔になってしまったけど、問題は日本人とは違う顔付きだ。

「北朝鮮、韓国、中国といったところか。まさか侵略行為?」

 看守の素顔を見て議員が考え込んでいるけど、外交問題はお偉いさんに任せる。
 声紋鑑定で俺の正体がバレるのは時間の問題だ。
 それに乱交パーティ会場で俺を拘束した二人とは、倒した男達は声が違っていた。
 最低でもまだ二人残っている。

「議員、お願いがあります」
「何だね?」
「これを使って、安全な場所に避難してください。病院で治療した方がいい人もいます」

 名前も知らない議員に簡易瞬間移動を十五本、どこでも瞬間移動を二本渡した。
 これだけあれば、全員を避難させる事は出来る。残り数本は子作り用に必要だ。
 
「それは構わないが、君はどうするつもりだ?」
「やる事があるんです。大至急やる事が……」

 もう時間がない。敵の頭を倒すしか全員が助かる道はない。
 あの偽総理を倒せば問題解決だ。
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