上 下
27 / 111
第三章 最強高校生vs内閣総理大臣

第27話 フェイクニュース事件

しおりを挟む
 独房からの脱出に成功して、お昼前の高校の屋上にやって来た。
 五円玉を使って、高校の制服、刀、銃、瞬間移動、食事を用意した。
 腹を殴られた痛みは残っているけど、どんな傷も一瞬で治る回復薬は作れない。

「良かった、大丈夫みたいだ」

 賽銭箱を使って、家族全員の安全を確かめた。黒マスクの男は近くにいなかった。
 西田総理の動きを確かめようとしたけど、その願いは叶えられないと拒否された。
 見られないように道具を使っているのかもしれない。

「とりあえず藤原さんだな」

 屋上で昼休みまで待って、チャイムと同時に動いた。
 流石に黒マスクの男達も学校で暴れたりは出来ない。
 階段を下りて、自分の教室を通過して、二つ隣の教室にいる藤原さんを探した。

「藤原さん、藤原さん」
「んっ?」

 手招きして、お友達とお弁当を食べようとしている藤原さんを呼んだ。
 腕を折られて、総理にボコられた俺は心配じゃないみたいだ。
 お昼ご飯も余裕で喉が通るみたいだ。

「おはよう、神村君。どうしたの?」

 藤原さんの天使のような笑顔を見て、今すぐに押し倒しそうになった。
 だけど、ここは教室で、今はもっと重要な事があると我慢した。

「うん、おはよう。昨日のニュース見た? 大ニュースだったでしょ」

 黒板の日付で今日が何日なのか分かった。

「ニュース? 昨日のフェイクニュースの事? 凄いイタズラだったね」
「フェイクニュース? 違うよ、あれは本物だよ」
「ふふっ。神村君は騙されやすいんだね」
「えっ?」

 藤原さんの反応がおかしい。まるで無関係みたいな反応だ。
 それにあれだけの死人を出して、フェイクニュースで押し通すのは不可能だ。
 もしかすると教室だから、笑って誤魔化しているのかもしれない。

「美鈴ぅー! ご飯早くぅー!」
「はぁーい!」

 藤原さんのお友達が待ち切れないと呼んできた。

「藤原君、ごめんね! 話はそれだけかな?」
「うん、これだけだよ。ごめんね、邪魔しちゃって」
「うううん、大丈夫。またね」
「うん、またね」

 藤原さんが手を合わせて可愛く謝ってきた。これを見れただけでも、今日は幸せでお腹一杯です。
 どうぞごゆっくりお食事を楽しんでください、と席に戻る藤原さんを見送った。

「……教室に戻るか」

 フェイクニュースの情報収集は自分の教室でも出来る。教室に戻ると友達にスマホを借りた。
 藤原さんの言う通り、フェイクニュース扱いになっている。殺したはずの国会議員が元気に話している。

(替え玉でも用意したのか? 女の子達はどうなったんだ?)

 相手は国家権力だ。顔や声が似ている人間ぐらい用意できる。
 だけど、こっちには賽銭箱がある。本物の居場所ぐらい分かる。
 女の子達がどうなったか調べるついでに探してやる。

 スマホを友達に返すと、人が来ない場所に移動した。
 個室トイレで賽銭箱の声は不気味すぎる。体育倉庫で試す事にした。

「昨日殺した国会議員の居場所を教えてください」
『その願いを叶える事は出来ない。死んだ人間の魂はどこにもない』
「確かにその通りだ。じゃあ、死体の場所を教えてください」
『その願いを叶える事は出来る。願いを叶えたければ、危険な試練を乗り越えろ』

 賽銭箱にお願いすると、ちょっと深い答えが返ってきた。
 追加の五円玉で死体の居場所を聞いた。こっちはOKみたいだ。
 崖登りの試練をクリアして、巨大な火葬場で燃やされている死体の山に辿り着いた。

「証拠隠滅が早すぎる。お役所の仕事じゃないな」

 本物は死んでいると分かっただけでも収穫はあった。
 次は女の子達の居場所を聞いてみた。
 ……といっても知っている女の子は佐藤夏織だけだ。

「どういう事だ? 状況が分からない……保護されたのか?」

 豚と一緒に焼かれたと思ったら、予想外の場所にいた。
 病院のベッドに黒髪に戻って寝ている。
 生かしておいたら、二ヶ月間何をされていたか証言されるだけだ。
 国会議員の替え玉を用意して、証拠隠滅した意味がなくなってしまう。

「大金で黙らせたか、話したら殺すと脅したのか?」

 どちらにしても、まともな方法を使ったとは思えない。
 今は生きている事を喜ぶしかない。
 
「ふぅー、状況は分かったけど、俺の状況はどうなっているんだろう?」

 フェイクニュース扱いなら、俺が起こした事件も無かった事になる。
 もちろんそれはあり得ない。脱獄したからこのまま見逃してくれるとも思えない。
 猟犬が殺しにやって来ると言っていた。

「放課後、藤原さんに相談してみるか」

 一人でいくら考えても良い答えは出そうにない。
 放課後まで我慢して、藤原さんに佐藤さんがどうなったか報告しよう。

 チャイムが鳴ると教室から急いで出た。
 藤原さんの教室に行くと、お昼の時に見た友達と話していた。

「藤原さん、佐藤さんの事で話があるんだけどいいかな?」
「えっ、うん……佐藤さんって、どの佐藤さん?」
「あの佐藤さんだよ。病院にいるから安心していいよ。これから一緒にお見舞いに行こう」

 友達がいるから惚けているみたいだ。
 二人っきりで話がしたいから、早く一緒に帰りたい。

「えっ? えーっと、ごめんね、神村君。私、その人の事知らないと思うんだけど……」
「大丈夫、会えば思い出すから。佐藤さんも藤原さんに凄く会いたがっていたよ」
「ちょっといい加減にしつこ過ぎ。美鈴が困ってんの分かんないの? ただの中学の同級生のくせに、馴れ馴れ過ぎなのよ」

 藤原さんを連れて行こうとすると、肩下まで伸びている黒髪の友達が怒ってきた。
 指原○乃似の美人だけど、凄く気が強そうだ。口よりも拳が出るタイプだ。
 緊急事態なんだから、事情を知らないなら出来れば邪魔しないでほしい。

「ただの同級生じゃないよ。家にも行った事あるし、お母さんのクッキーも食べた事あるから」

 ただの女友達にただの友達扱いされて、ちょっとムカっとした。
 藤原さんとは肉体関係もある特別な友達だ。

「えっ? 美鈴、本当なの? そんな話、一度も聞いた事ないよ」
「私も知らないよ。神村君、私のママと仲が良いの?」

 これは駄目だ。藤原さんは完全に惚けるつもりだ。
 友達に紹介できない駄目彼氏なんだろう。かなりショックだ。

「そんなわけないでしょ。このキモ男が勝手に妄想しているだけ。キモ男、今度美鈴に何かしようとしたら先生に言うから。退学になりたくないでしょ」
「わ、分かったよ。ごめんね、藤原さん」 

 これ以上いると本当に先生を呼ばれそうだ。二人に謝ると教室から退散した。
 スマホは藤原さんの家にあるから、夜に瞬間移動で部屋に取りに行くしかない。
 ちょっと意地悪な小悪魔藤原さんに、俺も仕返しに悪戯しちゃおう。
 ムフフ、夜が楽しみだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

処理中です...