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第二章 最強高校生vs上級国民
第20話 便利な道具と小林寺入門
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「ただいま」
何もしないアピールの為に走らずに、ゆっくり歩いて家に帰った。
学校で授業中に考えていた事を全て試すしかない。
『分身』『瞬間移動』『透明人間』『絶対防御』『悪人探知器』『時間停止』『飛行マント』——
学校に分身を行かせれば、その間のアリバイを作れる。俺が攻撃してないなら、俺の家族も攻撃されない。
瞬間移動は悪人がいる場所に素早く移動する為と、襲われている人を助ける為だ。
藤原さんが監禁されている時に、これがあればもっと早く助けられた。
その他のアイテムも戦いに必要な物だ。どれか一つでも作れれば、全面戦争が優位になる。
「まずは悪人探知器だ。善人を間違って殺したらマズイ」
悪人の中に美少年がいた場合は、敵なのか化粧水なのか分からない。
皆殺しは楽だけど、無実の美少年だったら両親にも世間にも非難される。
「簡単な試練で悪人が一目で分かる道具をください」
『その願いを叶える事は出来ない。叶えたければ、難しい試練を乗り越えろ』
賽銭箱に五円入れてお願いした。作れると分かったけど、難しい試練だった。
個人的に簡単、危険、難しいの順番で難易度が上がると思っている。
もう一度五円入れると願った。とりあえず挑戦してみよう。
『ここはひよこ鑑定場だ。八分以内に百匹のひよこをオスとメスで分けよ。成功すれば悪人が分かる眼鏡を与えよう。ただし、一羽でも間違えれば試練は失敗だ。さあ、難しい試練を乗り越えろ』
『ピイイー♬』
「ひよこの百発百中当てか……人間に出来るのか?」
難しいなら出来ると思った自分を殴りたい。
横長の大きな机の上に、大きな箱に入った黄色いひよこ百羽がピヨピヨ鳴いている。
大きな箱の左右にオス、メスと書かれた箱が用意されている。
『失敗だ』
「くっ!」
試しに一羽持って、メス箱に入れてみた。
神爺の声が聞こえて、すぐに部屋に帰された。
「駄目だ、プロを呼ばないと無理だ」
運に任せて、有り金全部使いたくない。
悪人眼鏡を諦めて、次の願いを言ってみた。
「一ヶ所だけ瞬間移動できる道具が欲しい」
自由に瞬間移動するのが無理なのは知っている。でも、一ヶ所だけなら可能性はある。
藤原さんに持たせておけば、緊急避難させる事が出来る。
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、不可能な試練を乗り越えろ』
「ああ、駄目だ」
可能だけど、不可能な試練だった。この時点でもう諦めた。
「……何だ、ここは?」
硬い金属の地面に放り出された。まるで機械の中に閉じ込められた気分だ。
天井や床、壁に見える緑色に光る線が不規則に伸びている。
金属の壁は硬く冷んやりしている。
『ここは古代施設だ。十六時間以内に施設に仕掛けられた謎を解き、最深部に辿り着ければ、瞬間移動できる道具を与えよう。さあ、不可能な試練を乗り越えろ』
『ピイイー♬』
神爺の説明が終わると、笛が鳴り響いた。
ひよこよりは可能性はあるけど、不可能には挑みたくない。
「とりあえずやってみるか」
何もやらないとお金が勿体ない。機械音が鳴り響く迷路を歩いた。
こういう謎解きゲームは仲良し四人組とかで挑戦したい。
藤原さんと二人で協力して謎を解きたい。
「失敗したら藤原さんを誘ってみようかな」
協力して瞬間移動できる道具を二つゲットして、お互いの家を緊急避難所にする。
そして親に隠れて、あんな事やこんな事を……ムフフフ。
「これは?」
妄想しながら適当に歩いていると、行き止まりの壁に扉とタッチパネルを見つけた。
見た感じだと二十五枚のパズルを動かして、何かの絵や記号を作るみたいだ。
不可能というわりには簡単な謎解きパズルだ。
「これなら適当に動かしていれば、そのうちに当たるかも」
ジグソーパズルと同じなら、角と端から並べていけばいい。
外側から内側に向かって、少しずつ合わせていけば完成だ。
「よし、完成だ」
十五分ぐらいで宇宙文字が完成した。
扉に緑色の血管が浮かび上がり、強く光ると勝手に左右に分かれて開いた。
『ドドドドッ!』
「はぐっ……!」
凄く見覚えのある光景だ。扉が開いた瞬間に死んだ。
頭に複数の銃身を回転させて発射するバルカン砲を装備した、多脚戦車に全身を穴だらけにされた。
「はっ!」
意識が戻ると、横長鞄と刀と一緒に部屋に倒れていた。
特殊部隊の隊員はいなかったけど、殺人ロボットがいた。
♢
「いきなり凄い道具は無理か……」
さっきので分かったけど、強くなってから挑戦しないとクリアできない試練がある。
ゴブリンと同じで難しい試練でも、何度も続けて地味に強くなるしかない。
「あぁー、長いのは嫌だなぁー」
この試練に武器は持ち込めない。靴だけ履いて、賽銭箱に五円入れた。
「難しい試練で少し強くしてください」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、難しい試練を乗り越えろ』
賽銭箱に吸い込まれて、石畳の地面に放り出された。
「……また来てしまった」
『ここは小林寺だ。一週間の試練に逃げ出さずに耐え切れれば、少しだけ強くしよう……』
神爺の説明中だけど、前に一回来た事がある。
小林寺は山の頂上に建てられた大きな修業寺だ。
「ハァッ! ヤァッ! ハァッ! ヤァッ!」
橙色の修業着を着た少年と青年が日夜修業に励んでいる。
本物の少林寺と違い、普通に日本語で会話するから偽少林寺だ。
「何をしている? 早く立ち上がりなさい。それとも袋叩きに耐えられる修業がしたいのか」
「老師、申し訳ありません」
有無を言わせない先輩のような威圧の篭った声が聞こえた。
素早く立ち上がって、灰色の髪と髭の威厳のある老人に両手を合わせて謝罪した。
最初に挑戦した時に謝罪しなかったら、集団リンチに遭って、三千段の岩階段から投げ落とされた。
この小林寺は礼儀作法に恐ろしく厳しい。
「よろしい。靴を脱ぎなさい」
「はい」
老師が顎髭を撫でで謝罪を受け入れると、最初の修業が始まった。
言われた通りに急いで靴を脱いだ。
「靴を履きなさい」
「はい」
靴を脱ぐと、すぐに老師が履くように言ってきた。
この脱いで履く動きを疲れるまでやらされる。
絶対にあの映画の真似だ。
「休む事なく、そのまま続けなさい」
「はい」
老師が修業中の少年達に右手を向けて、少しだけ指を動かした。
三人の少年が全力疾走で椅子とテーブルを持ってきた。
阿吽の呼吸というよりも、絶対的な支配だ。
「はぁ、はぁ……老師、この修業に何の意味があるんですか?」
三時間も続けて疲れてきたので、椅子に座って書物を読んでいる老師に聞いた。
どんなに素早く脱いで履けるようになっても、この修業は終わらない。
老師の気持ちを汲み取った行動をしないと、次の修業には進ませてくれない。
「意味が分からないなら、意味が分かるまで続けなさい」
「くっ! 俺は強くなる為に来たんです! 武術を教えてください!」
老師の言葉にブチ切れたフリをして、脱いだ靴を地面に叩きつけた。
老師に投げつけるのは絶対に駄目だ。命中しなくても集団リンチに遭う。
「この無礼者が! 老師に……」
「構わない」
「はっ!」
俺の態度に本気でブチ切れた、門下生二百名以上が襲い掛かろうとした。
それを老師が片手で制止して、椅子から立ち上がった。
「お前の言う通りだ。靴を履くのも脱ぐのもどこでも出来る。武術もそうだ。どこでも出来る。それなのに何故、皆がこの寺にやって来ると思う?」
老師の問いには沈黙で分からないと応えた。すぐに老師が続きを話し出した。
「人は動物や植物と同じだ。環境によって己の姿を変える。道場ならば強く、学校ならば賢く、己を変える。だが、お前には迷いがある。迷いがある者は一生変われない。私が見ていたのはお前の変われる力だ」
「も、申し訳ありません、老師! すぐに続けます!」
老師の言葉で何かに気づいたフリをして、地面に素早く土下座した。
そして、投げつけた靴を急いで拾おうとすると老師が止めた。
「その必要はない。外界と隔離されたこの場所で行う事は全てが武術になる。お前に箒を一本渡す。その箒で一週間寺を隅々まで掃除せよ。一週間後の寺と箒を見て、お前の変われる力を見させてもらう」
「はっ! ありがとうございます!」
大袈裟に感謝して、全力疾走で箒を持ってきた少年から、老師が受け取った箒を受け取った。
この場面は二回目だ。面倒くさいけど、やっと次の修業に進める。
何もしないアピールの為に走らずに、ゆっくり歩いて家に帰った。
学校で授業中に考えていた事を全て試すしかない。
『分身』『瞬間移動』『透明人間』『絶対防御』『悪人探知器』『時間停止』『飛行マント』——
学校に分身を行かせれば、その間のアリバイを作れる。俺が攻撃してないなら、俺の家族も攻撃されない。
瞬間移動は悪人がいる場所に素早く移動する為と、襲われている人を助ける為だ。
藤原さんが監禁されている時に、これがあればもっと早く助けられた。
その他のアイテムも戦いに必要な物だ。どれか一つでも作れれば、全面戦争が優位になる。
「まずは悪人探知器だ。善人を間違って殺したらマズイ」
悪人の中に美少年がいた場合は、敵なのか化粧水なのか分からない。
皆殺しは楽だけど、無実の美少年だったら両親にも世間にも非難される。
「簡単な試練で悪人が一目で分かる道具をください」
『その願いを叶える事は出来ない。叶えたければ、難しい試練を乗り越えろ』
賽銭箱に五円入れてお願いした。作れると分かったけど、難しい試練だった。
個人的に簡単、危険、難しいの順番で難易度が上がると思っている。
もう一度五円入れると願った。とりあえず挑戦してみよう。
『ここはひよこ鑑定場だ。八分以内に百匹のひよこをオスとメスで分けよ。成功すれば悪人が分かる眼鏡を与えよう。ただし、一羽でも間違えれば試練は失敗だ。さあ、難しい試練を乗り越えろ』
『ピイイー♬』
「ひよこの百発百中当てか……人間に出来るのか?」
難しいなら出来ると思った自分を殴りたい。
横長の大きな机の上に、大きな箱に入った黄色いひよこ百羽がピヨピヨ鳴いている。
大きな箱の左右にオス、メスと書かれた箱が用意されている。
『失敗だ』
「くっ!」
試しに一羽持って、メス箱に入れてみた。
神爺の声が聞こえて、すぐに部屋に帰された。
「駄目だ、プロを呼ばないと無理だ」
運に任せて、有り金全部使いたくない。
悪人眼鏡を諦めて、次の願いを言ってみた。
「一ヶ所だけ瞬間移動できる道具が欲しい」
自由に瞬間移動するのが無理なのは知っている。でも、一ヶ所だけなら可能性はある。
藤原さんに持たせておけば、緊急避難させる事が出来る。
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、不可能な試練を乗り越えろ』
「ああ、駄目だ」
可能だけど、不可能な試練だった。この時点でもう諦めた。
「……何だ、ここは?」
硬い金属の地面に放り出された。まるで機械の中に閉じ込められた気分だ。
天井や床、壁に見える緑色に光る線が不規則に伸びている。
金属の壁は硬く冷んやりしている。
『ここは古代施設だ。十六時間以内に施設に仕掛けられた謎を解き、最深部に辿り着ければ、瞬間移動できる道具を与えよう。さあ、不可能な試練を乗り越えろ』
『ピイイー♬』
神爺の説明が終わると、笛が鳴り響いた。
ひよこよりは可能性はあるけど、不可能には挑みたくない。
「とりあえずやってみるか」
何もやらないとお金が勿体ない。機械音が鳴り響く迷路を歩いた。
こういう謎解きゲームは仲良し四人組とかで挑戦したい。
藤原さんと二人で協力して謎を解きたい。
「失敗したら藤原さんを誘ってみようかな」
協力して瞬間移動できる道具を二つゲットして、お互いの家を緊急避難所にする。
そして親に隠れて、あんな事やこんな事を……ムフフフ。
「これは?」
妄想しながら適当に歩いていると、行き止まりの壁に扉とタッチパネルを見つけた。
見た感じだと二十五枚のパズルを動かして、何かの絵や記号を作るみたいだ。
不可能というわりには簡単な謎解きパズルだ。
「これなら適当に動かしていれば、そのうちに当たるかも」
ジグソーパズルと同じなら、角と端から並べていけばいい。
外側から内側に向かって、少しずつ合わせていけば完成だ。
「よし、完成だ」
十五分ぐらいで宇宙文字が完成した。
扉に緑色の血管が浮かび上がり、強く光ると勝手に左右に分かれて開いた。
『ドドドドッ!』
「はぐっ……!」
凄く見覚えのある光景だ。扉が開いた瞬間に死んだ。
頭に複数の銃身を回転させて発射するバルカン砲を装備した、多脚戦車に全身を穴だらけにされた。
「はっ!」
意識が戻ると、横長鞄と刀と一緒に部屋に倒れていた。
特殊部隊の隊員はいなかったけど、殺人ロボットがいた。
♢
「いきなり凄い道具は無理か……」
さっきので分かったけど、強くなってから挑戦しないとクリアできない試練がある。
ゴブリンと同じで難しい試練でも、何度も続けて地味に強くなるしかない。
「あぁー、長いのは嫌だなぁー」
この試練に武器は持ち込めない。靴だけ履いて、賽銭箱に五円入れた。
「難しい試練で少し強くしてください」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、難しい試練を乗り越えろ』
賽銭箱に吸い込まれて、石畳の地面に放り出された。
「……また来てしまった」
『ここは小林寺だ。一週間の試練に逃げ出さずに耐え切れれば、少しだけ強くしよう……』
神爺の説明中だけど、前に一回来た事がある。
小林寺は山の頂上に建てられた大きな修業寺だ。
「ハァッ! ヤァッ! ハァッ! ヤァッ!」
橙色の修業着を着た少年と青年が日夜修業に励んでいる。
本物の少林寺と違い、普通に日本語で会話するから偽少林寺だ。
「何をしている? 早く立ち上がりなさい。それとも袋叩きに耐えられる修業がしたいのか」
「老師、申し訳ありません」
有無を言わせない先輩のような威圧の篭った声が聞こえた。
素早く立ち上がって、灰色の髪と髭の威厳のある老人に両手を合わせて謝罪した。
最初に挑戦した時に謝罪しなかったら、集団リンチに遭って、三千段の岩階段から投げ落とされた。
この小林寺は礼儀作法に恐ろしく厳しい。
「よろしい。靴を脱ぎなさい」
「はい」
老師が顎髭を撫でで謝罪を受け入れると、最初の修業が始まった。
言われた通りに急いで靴を脱いだ。
「靴を履きなさい」
「はい」
靴を脱ぐと、すぐに老師が履くように言ってきた。
この脱いで履く動きを疲れるまでやらされる。
絶対にあの映画の真似だ。
「休む事なく、そのまま続けなさい」
「はい」
老師が修業中の少年達に右手を向けて、少しだけ指を動かした。
三人の少年が全力疾走で椅子とテーブルを持ってきた。
阿吽の呼吸というよりも、絶対的な支配だ。
「はぁ、はぁ……老師、この修業に何の意味があるんですか?」
三時間も続けて疲れてきたので、椅子に座って書物を読んでいる老師に聞いた。
どんなに素早く脱いで履けるようになっても、この修業は終わらない。
老師の気持ちを汲み取った行動をしないと、次の修業には進ませてくれない。
「意味が分からないなら、意味が分かるまで続けなさい」
「くっ! 俺は強くなる為に来たんです! 武術を教えてください!」
老師の言葉にブチ切れたフリをして、脱いだ靴を地面に叩きつけた。
老師に投げつけるのは絶対に駄目だ。命中しなくても集団リンチに遭う。
「この無礼者が! 老師に……」
「構わない」
「はっ!」
俺の態度に本気でブチ切れた、門下生二百名以上が襲い掛かろうとした。
それを老師が片手で制止して、椅子から立ち上がった。
「お前の言う通りだ。靴を履くのも脱ぐのもどこでも出来る。武術もそうだ。どこでも出来る。それなのに何故、皆がこの寺にやって来ると思う?」
老師の問いには沈黙で分からないと応えた。すぐに老師が続きを話し出した。
「人は動物や植物と同じだ。環境によって己の姿を変える。道場ならば強く、学校ならば賢く、己を変える。だが、お前には迷いがある。迷いがある者は一生変われない。私が見ていたのはお前の変われる力だ」
「も、申し訳ありません、老師! すぐに続けます!」
老師の言葉で何かに気づいたフリをして、地面に素早く土下座した。
そして、投げつけた靴を急いで拾おうとすると老師が止めた。
「その必要はない。外界と隔離されたこの場所で行う事は全てが武術になる。お前に箒を一本渡す。その箒で一週間寺を隅々まで掃除せよ。一週間後の寺と箒を見て、お前の変われる力を見させてもらう」
「はっ! ありがとうございます!」
大袈裟に感謝して、全力疾走で箒を持ってきた少年から、老師が受け取った箒を受け取った。
この場面は二回目だ。面倒くさいけど、やっと次の修業に進める。
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