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第二章 最強高校生vs上級国民

第18話 見つかったベッドの下の危険物

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「うぅぅ、もう終わりだ」

 部屋に入るとベッドに潜り込んで、頭まで布団を被った。
 泊まらずに早く帰ってきたから、母さんに食事を用意してないと怒られた。
 ケーキと藤原さんを食べてしまったから、今は食欲がない。

 藤原さんとの関係も学校生活も人生も終わりだ。
 一時的な感情じゃないけど、今日、全部終わった。

 コン、コン……

「お兄ちゃん、話があるんだけどいい?」

 扉を叩く音と妹の声が聞こえてきた。今は誰とも何も話したくない。
 お兄ちゃんは宇宙人でも、狼男でも、吸血鬼でもないけど、鬼畜だった。

「入るよ……うわぁー、そういうのは鍵掛けてやってよ。早くパンツ履いてよね」

 勝手に部屋に入ってきて、勝手に変な事をしていると勘違いしている。
 布団からすぐに頭だけ出して、ベッドから目を逸らしている薫を見た。

「何もしてないよ。話って何?」
「お兄ちゃん、知らないと思うけど、私の部屋の鍵とお兄ちゃんの部屋の鍵って一緒なんだよ」
「えっ?」

 赤と白のチェックの半袖シャツを着た薫が、黒の半ズボンから鍵を取り出して、指先でクルクル回しながら言ってきた。
 合鍵を持っていると言っているけど、俺の鍵を没収したいなら、気づいた時に言うはずだ。
 外出中の兄の部屋に合鍵で侵入しても、大した物は盗めない。

「それは知らなかったけど、薫の部屋に勝手に入った事はないよ」

 入れると知っていたら、入ったかもしれないけど、知らなかったから入った事はない。

「そんな事聞いてないし。私が聞きたいのは、そのベッドの下に隠してある物だよ。犯罪だよ」
「なっ!」

 ベッドを指差して、不機嫌そうな顔の薫が全部知っていると言ってきた。
 エッチな本を探していたら、危険な刀と盾を見つけてしまったようだ。

 大変な時なのに、大変な物が見つかってしまった。
 混乱状態の頭をこれ以上混乱させないでほしい。

「お前、まさか勝手に入って、勝手に……」
「見られて困るような物を隠しているのが悪いんだよ。お母さんに言うから」
「薫、ちょっと待って! 本当に待って!」

 布団から飛び出して、部屋から出て行こうとする薫を引き止めた。
 正しい判断だけど、その先の結果は最悪しか想像できない。
 家族の中から人殺しを出したら、家族全員の人生が終わる。

「待たないし。お母さんに年上の友達が家に来たって聞いたよ。悪い友達と付き合ってるんでしょ」
「あれは友達じゃないよ。脅されて仕方なく家に入れたんだ」
「ほら、やっぱり悪い友達と付き合ってるんだ。こういうのは警察に相談した方が良いんだよ」
「それはもう解決したから、大丈夫だから、お兄ちゃんの話を聞いて」

 兄思いの良い妹だと涙を流したいけど、警察だけには相談できない。
 薫に賽銭箱の力を見せて、何とか黙ってもらうしかない。

「もぉー、何? 何言っても無駄だよ」

 見せたい物があると言って、薫にベッドに座ってもらった。

「この賽銭箱は魔法の賽銭箱なんだ。薫が欲しい物を何でもプレゼントするから内緒にしてほしい」
「はぁ? お兄ちゃん、馬鹿なの?」

 鞄から取り出した賽銭箱を見せると、想像以上の馬鹿にした反応が返ってきた。
 その気持ちは分かるけど、一回騙されたと思ってチャンスをください。

「食べ物は駄目だけど、服とかなら簡単に作れるから」
「じゃあ、紅女べにじょの制服作って。出来ないならお母さんに言うから」
「分かった。制服を作るから内緒にして」

 紅女は薫の第二志望だった高校だ。無事に第三志望の高校に入学している。
 赤色のジャケット、赤色と灰色のチェック柄のスカートが可愛いと言っていた。
 学校案内のパンフレットがあるらしいから、部屋に取りに行ってもらった。

「はい、時間稼ぎしても無駄だよ。絶対に言うから」

 靴を履いて待っていると、薫がパンフレットを持ってきた。
 絶対に言うなら、何をやっても意味がない。

「薫は信じてないんだよね? だったら、制服を出したら、絶対に誰にも言わないって約束して」
「別にいいよ。本当だったら、お兄ちゃんの言う事何でも聞いてあげる。ほら、早くやってよ」

 薫の何でもはかなり怪しい。制服を出しても言いそうな気がする。
 こんな時の為に、記憶を消せる薬とか用意しておけば良かった。

「この制服が欲しい」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「な、な、喋った⁉︎」

 横長黒バックを持って、賽銭箱に五円入れて願いを言った。
 賽銭箱が喋り出して、薫が驚いた声を出した。
 出来れば、吸い込まれた時点で信じてほしい。

「……やっぱりここか」

 見覚えのある花畑に放り出された。丸い花壇がいくつも見える。
 山田組の返り血で汚れた服を、新品の同じ服に変えるのに来た事がある。

『ここは花畑だ。一時間以内に赤、白、黒、灰色の花を全て集めよ。全て集めた時に制服を与えよう』
「よし、さっさと終わらせよう」

 神爺の説明が終わって、笛が鳴り響いた。
 丸い花壇を全部回って、必要な花を見落とさなければクリアだ。
 鞄を開けて、花壇の花を間引きする感じで集めていく。

『よくぞ簡単な試練を乗り越えた。願い通りに制服を与えよう。さあ、受け取れ』

 必要な花が集まったようだ。鞄の中の花が消えて、地面に紅女の制服が放り投げられた。
 相変わらず物の扱いが雑すぎる。地面の制服を拾うと部屋に戻された。

「……薫、持ってき……!」
「出て来たな、妖怪! 私のお兄ちゃん、どこにやったの!」

 部屋に戻されると、刀を抜いた薫に大歓迎された。
 かなり興奮しているけど、それは玩具じゃない。二人殺している凶器だ。

「か、薫、落ち着いて。何言っているんだ? お兄ちゃんはお兄ちゃんだぞ」
「黙れ、妖怪!」
「うわぁ!」

 説得しようとしたけど、落ち着いて話すのは無理みたいだ。兄思いの妹が問答無用で斬りかかって来た。
 慌てて床から立ち上がって、刀を振り下ろす薫の両腕を受け止めた。

「うっ、それ本当に死ぬからやめて!」
「くぅぅぅ! やっぱりお兄ちゃんの力じゃない!」

 殺されそうになったら、前のお兄ちゃんでもこのぐらいの力は出せる。
 薫が体重を乗せて刀を押し込んでくるけど、力尽くで奪い取って、ベッドに刀を放り投げた。

「この離せ! お兄ちゃんを返せ!」
「薫、お願いだから、ちょっと静かに……!」

 掴まれた腕を振り回して、薫が足で足を蹴って暴れまくる。
 これ以上大声で騒がれたら、母さんがやって来る。
 賽銭箱の中で話すしかない。机の上の賽銭箱に急いで五円入れた。

「ひゃっ!」
「ケーキが欲しい!」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』

 薫が放り出されても痛くないように、ベッドに押し倒して願いを言った。
 すぐにベッドと一緒にケーキ屋に放り込まれた。
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