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第二章 最強高校生vs上級国民

第17話 魔が差した初体験

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「これとか大丈夫かな?」

 ケーキを食べ終えて待っていると、藤原さんが遠慮がちにスマホを見せてきた。
 画面には、きのこの形の小さなクッションが映っている。お値段は千二百円とお手頃価格だ。

「本当にこれでいいの?」
「うん、赤色が良いかな。でも、無理なら何色でも良いから!」

 絶対に俺が買うと思っている。手を振って凄く遠慮している。
 男の甲斐性を見せる為に自腹で購入したいけど、それだと意味がない。

「何色でも大丈夫だよ。賽銭箱に聞いてみるね」

 クッションの材料は布と綿ぐらいだ。簡単な試練を乗り越えれば手に入る。
 人前で使うのは初めてだけど、財布から五円取り出して賽銭箱に入れた。

「赤色のきのこクッションが欲しい」

 手を合わせてお願いすると、すぐに賽銭箱が喋り出した。

『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「えっ、賽銭箱が喋ったの?」

 藤原さんにも賽銭箱の声が聞こえるみたいだ。
 でも、もっと驚く事がすぐに起きる。賽銭箱の中に俺が吸い込まれた。

「てて……藤原さんは来ないのか」

 予想通りに吸い込まれて放り出されたけど、近くに藤原さんの姿が見えない。
 お金を入れて、願いを言った人だけが吸い込まれるみたいだ。
 藤原さんにも賽銭箱が使えるか、試練が終わったら試してもらおう。

「きのこ狩りをするとは思わなかった」

 試練の内容は、森の中から赤色のきのこを二十本集めるだった。
 怪物はいないみたいだから、安心して森の中を歩いて探せる。
 履いているスリッパは汚しても綺麗になる。問題なく泥だらけに出来る。

「藤原さんの枕と一緒に入れば良かった」

 手に持てる物は一緒に吸い込まれる。
 枕を持っていれば、藤原さんの匂いを嗅ぎながら探せた。
 藤原さんの枕には精神安定効果がある。

「あぁー、でも、ベッドとタンスの方が良いかも。あっちの方が超強力そうだ」

 きのこを探しながら色々考える。
 ベッドを持って行けるなら、藤原さんの手を握れば連れて行けるかもしれない。
 藤原ママにも邪魔されずに、本当の意味で二人っきりになれる。

「ムフフ。それいいかも。命の恩人だから、手を触るぐらいの権利はあるよね」

 まだ出来るとは決まってないけど、やってみないと分からない。
 最高だけど最低でも手を触れる。これはやらなきゃ損だ。

『よくぞ簡単な試練を乗り越えた。願い通りに赤色のきのこクッションを与えよう。さあ、受け取れ』

 二十本のきのこを集めると、硬い筒に柔らかい水玉の傘が乗っているクッションが現れた。
 持ち上げて鈍器に使えそうだと思っていると、部屋に戻されてしまった。

「きゃぁ!」
「……ただいま、これでいいかな?」

 いきなり放り出された俺に、藤原さんが驚いて声を出した。藤原ママは駆け込んで来ない。
 床に転がっているきのこを拾って、藤原さんに渡した。

「あっ、凄い……本物だ。どうやったの?」
「手品じゃないよ。さっき言った通り、願いが叶う賽銭箱なんだよ」

 藤原さんがきのこが本物なのか、撫で回して確かめている。
 本物だと認めてくれたみたいだけど、エッチな光景だった。

「藤原さんに協力して欲しい事があるんだけど、いいかな?」

 藤原さんが床にきのこを置いたので聞いてみた。
 賽銭箱の中で思いついた事を色々試したい。

「私に出来る事なら何でもいいよ」

 何でもしてくれるなら、本当に何でもお願いしたい。

「手を繋いでくれるだけでいいよ。賽銭箱の中に連れて行けるか知りたいんだ」
「それだけでいいの? うん、いいよ。はい」
「ありがとう、握るね」

 物事には順序がある。藤原さんが右手を出してきたので、優しく握った。

(嗚呼、小さくて柔らかくてスベスベだぁー!)

 指先で藤原さんの手の甲を撫で回す。ずっと触っていたい。

「神村君、お願いは言わなくてもいいの?」
「あっ! ごめんごめん。願い事を考えていたんだ。何がいいかなぁー?」

 不純な気持ちで触っていると、藤原さんに言われてしまった。
 今は藤原さん以外は考えられないけど、二人っきりになりたい。
 賽銭箱に五円入れると、床とベッドの隙間に左手を入れた。

「ケーキが欲しい」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「きゃぁ!」

 願いを言うと賽銭箱に吸い込まれた。そして、地面に放り出された。

「てて……あっ! 藤原さん、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫……ここどこなの?」

 ベッドと藤原さんの両方を連れて来る事に成功してしまった。
 藤原さんに床から立ち上がってもらって、ベッドに座ってもらった。
 商品は並んでないけど、どこかの小さなお店の中みたいだ。

『ここはケーキ屋だ。キッチンの道具と食材を使って、二時間以内にケーキを作れば、作ったケーキを与えよう』

 藤原さんが混乱しているけど、神爺の説明が始まってしまった。
 まさかの自分で作れだけど、ケーキを作る為に来たわけじゃない。

「どうしよう、神村君。私、ケーキ作れないよ」

(誰も来ない場所で藤原さんと二人っきり、誰も来ない場所で二人っきり!)

 もう我慢できない。
 ケーキを作れないと困っている藤原さんの両肩を掴んで、ベッドに押し倒した。

「はぁ、はぁ、藤原さん……」
「神村……君? んっ⁉︎ んゔゔゔっ!」

 戸惑っている藤原さんの唇に強引にキスした。
 舌を入れて、藤原さんの中を乱暴に掻き回していく。

「ちゅっ、ちゅうう……」
「んっ……ぁ……ゃぁ……」
「藤原さん、藤原さん……」

 もう止まれない。
 胸を触って、お尻を撫で回す。溜め込んだ想いを藤原さんの中に流し込みたい。
 服を脱がして、服を脱いで、最後まで勢いに任せて始めてしまった。

「あっ、んっんーっ!」
『時間切れだ』

 神爺の声が聞こえて、藤原さんの部屋に戻された。

「……っ!」

 ベッドが元の位置に戻って、俺と藤原さんは床に倒れていた。
 脱いだ服は着ている、身体の方も元通りになったみたいだ。
 何もなかったのと同じだと、言い訳する事は出来るけど……

「ひゃぁ! 神村君……あの、その……」

 藤原さんが身体だけ俺に向けて、口元を右手で隠して真っ赤な顔で俯いている。
 身体は元通りでも、記憶は元通りにならないみたいだ。全部覚えている反応だ。

「ごめん、我慢できなくて、ごめん……」
「えっ、あ、うん……そっか、我慢できなかったんだ……うん、そっか……」

 目を合わせられずに、お互い何故か小声で話してしまう。
 これ以上は部屋にいる勇気はない。賽銭箱と財布を鞄に急いで入れた。

「ごめん、帰るね、ごめん……」
「あっ、うん、さようなら……」

 立ち上がるともう一度謝った。藤原さんは目も合わせてくれない。
 部屋から一人で出ると一人で玄関から出た。そして、声を上げて一人で走り出した。

「あああーッッ!」

(ごめんで済むなら、警察はいらねぇよ!)
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