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第一章 平凡高校生vs不良集団
第14話 天使の救出
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「あった」
扉開け男にトドメを刺して、見張り二人の持ち物を調べた。
ポケットの中から十一本の鍵が付いた鍵束が出てきた。
扉が多いから、他にも捕まっている女の子がいるかもしれない。
「手当たり次第にやるしかないか」
藤原さんの部屋は分かっているけど、どの鍵なのか分からない。
次々に鍵穴に鍵を入れて確かめた。
「んっ?」
五本目で当たりを引いた。ゆっくりと扉を開けて、中を確認する。
薄暗い廊下に四つの扉がある。見張りはいないようだ。
藤原さんの部屋は一番奥の扉だ。
「はぁ、はぁ……」
この扉の先に藤原さんがいるのに、不安な気持ちで胸が苦しい。
もう手遅れかもしれない。その時はどうしたらいいのか分からない。
祈るような気持ちで扉のドアノブを回した。鍵は掛かっていなかった。
「あんっ? 誰だ、お前?」
「グゥッ!」
部屋の中に薄っすらと髭を伸ばした男が見えた。
その瞬間、男の左胸に向かって全力で刀を突き刺し、左に斬り裂いた。
「がっ、あぐぅぅ!」
考える時間は必要ない。叫ばれる前に動かれる前に全員殺す。
「うごぉ……!」
「お前……!」
壁にもたれていた男の腹を肘鉄で砕き、ビデオカメラを持った男の顔を斜めに斬り裂いた。
残るは裏切り者だけだ。
「ひぃぃ! ち、違います、脅されて連れて来られたんです! 殺さないで……!」
刀を振り上げて近づいていくと、床に腰を抜かしている太田が命乞いを始めた。
失禁しているのか制服のズボンが濡れていき、布から漏れ出している。
「神村君? 神村君……だよね?」
「へぇっ? か、神村? 本当だ、神村だ……お前がどうして……」
ベッドに制服姿のままで拘束されている藤原さんが話しかけてきた。
良かった。まだ何もされてないみたいだ。
「もう大丈夫だから安心して、すぐに手錠の鍵を外すから」
返り血と刀の衝撃が強過ぎて、誰なのか半信半疑みたいだ。
刀を床に置いて、しゃがみ込むとベッドの藤原さんに微笑んだ。
手錠の鍵は倒れている男の誰かが持っているはずだ。
「う、うん……あ、危ない!」
「あぐっ……!」
藤原さんが注意してくれたけど、その前に後頭部を硬い何かで殴られた。
顔からベッドに倒れ込んでしまった。
「はぁ、はぁ、余計な事すんなよ! お前、馬鹿なのか? こんなチャンス二度とやって来ないんだ。他の部屋にも女がいる。全員とヤリ放題だ。そんな事も分かんねぇのかよ!」
倒れたまま顔だけ動かすと、パイプ椅子を持った興奮した太田が見えた。
極限状態だと人間の本性が現れるらしいけど、こんな醜い本性は見たくない。
囚われた女の子を助ける英雄になるよりも、さらに傷つける極悪人の道を選んだ。
だったら、もう容赦しない。藤原さんのパンティを見たお前を殺す。
「ぐっ、お前、最低の屑だな。反省するチャンスも二度とやって来ないぞ」
「お前を殺せば、バレないんだよ!」
本気で殺すつもりだ。パイプ椅子の角を振り下ろしてきた。避ければ藤原さんに当たる。
体勢を急いで上に変えて、落ちて来る椅子を両手で受け止めた。
「ぐっ!」
両手が少し痺れた。だけど、その程度だ。もう勝てない相手じゃない。
椅子を力尽くで押し返して立ち上がった。
「ぐぐぐっ、お、お前、化け物かよ⁉︎」
自分よりも大きな相手だけど、今は酷く小さく見える。
怯える太田からパイプ椅子を奪い取って、こめかみに全力で椅子を叩き込んだ。
「消えろ!」
「ぴゅがぁ……!」
殴った衝撃で太田の頭と同じように、椅子の金属フレームが変形した。
床に倒れた太田の上に投げ捨てた。どちらももう使い物にならない。
「ごめん、すぐに助けるから」
余計な時間を使ってしまった。見張りのポケットを探して、小さな鍵を見つけた。
手錠の鍵穴に入れて、両手足を拘束していた二つの手錠を外した。
「ありがとう、神村君……でも、でも、私の所為で神村君が人殺しに……」
ベッドから床に立ち上がると、藤原さんが今まで我慢していたのか泣き出した。
パイプ椅子の一撃よりも、この涙の方が百万倍痛い。
「泣かないで、藤原さん。そんな顔を見たくて来たんじゃないよ。藤原さんの笑っている顔が見たいんだから」
「う、うん、ごめんなさい。ごめんね、神村君……」
「さあ、帰ろう。帰りが遅いと、お父さんとお母さんが心配するよ」
本当に心配するべきは人殺しになった自分の人生だけど、今は何もかも忘れたい。
部屋にあった藤原さんの靴と荷物を回収して、ビデオカメラは黒い横長バッグに回収した。
警察の人にも、藤原さんの映像は見せたくない。
「嫌ぁ……家に帰してください」
「大丈夫、助けに来たんだ」
他の部屋を調べると、ベッドに拘束された下着姿の十代後半の女の子が三人もいた。
全員の手錠を外して、歩けない女の子は抱き抱えて、死体が乗っていない車に運んだ。
二~四階は誰もいなかったけど、地下にはコスプレ服から卑猥な大人の玩具、犯行映像が入ったパソコンやDVDまで多数保管されていた。
証拠品には手を付けずに放置して、まともな服だけを三着拝借した。
下着姿で行動させるわけにはいかない。
「運転できるの?」
「大丈夫、アメリカの高速道路でパトカーから逃げ切ったから」
「そ、そうなんだ。凄いんだね」
車のエンジンをかけると、後部座席の藤原さんが心配そうに聞いてきた。
警察官が撃ってこなければ、余裕で安全な場所まで運転できる。
あとは女の子の誰かに警察に連絡してもらって、保護してもらえば安心だ。
神様へのお願いは、これからの四人の幸せな人生をお願いしたい。
その願いが叶えられない不可能な願いだとしても……。
【第一章・終わり】
扉開け男にトドメを刺して、見張り二人の持ち物を調べた。
ポケットの中から十一本の鍵が付いた鍵束が出てきた。
扉が多いから、他にも捕まっている女の子がいるかもしれない。
「手当たり次第にやるしかないか」
藤原さんの部屋は分かっているけど、どの鍵なのか分からない。
次々に鍵穴に鍵を入れて確かめた。
「んっ?」
五本目で当たりを引いた。ゆっくりと扉を開けて、中を確認する。
薄暗い廊下に四つの扉がある。見張りはいないようだ。
藤原さんの部屋は一番奥の扉だ。
「はぁ、はぁ……」
この扉の先に藤原さんがいるのに、不安な気持ちで胸が苦しい。
もう手遅れかもしれない。その時はどうしたらいいのか分からない。
祈るような気持ちで扉のドアノブを回した。鍵は掛かっていなかった。
「あんっ? 誰だ、お前?」
「グゥッ!」
部屋の中に薄っすらと髭を伸ばした男が見えた。
その瞬間、男の左胸に向かって全力で刀を突き刺し、左に斬り裂いた。
「がっ、あぐぅぅ!」
考える時間は必要ない。叫ばれる前に動かれる前に全員殺す。
「うごぉ……!」
「お前……!」
壁にもたれていた男の腹を肘鉄で砕き、ビデオカメラを持った男の顔を斜めに斬り裂いた。
残るは裏切り者だけだ。
「ひぃぃ! ち、違います、脅されて連れて来られたんです! 殺さないで……!」
刀を振り上げて近づいていくと、床に腰を抜かしている太田が命乞いを始めた。
失禁しているのか制服のズボンが濡れていき、布から漏れ出している。
「神村君? 神村君……だよね?」
「へぇっ? か、神村? 本当だ、神村だ……お前がどうして……」
ベッドに制服姿のままで拘束されている藤原さんが話しかけてきた。
良かった。まだ何もされてないみたいだ。
「もう大丈夫だから安心して、すぐに手錠の鍵を外すから」
返り血と刀の衝撃が強過ぎて、誰なのか半信半疑みたいだ。
刀を床に置いて、しゃがみ込むとベッドの藤原さんに微笑んだ。
手錠の鍵は倒れている男の誰かが持っているはずだ。
「う、うん……あ、危ない!」
「あぐっ……!」
藤原さんが注意してくれたけど、その前に後頭部を硬い何かで殴られた。
顔からベッドに倒れ込んでしまった。
「はぁ、はぁ、余計な事すんなよ! お前、馬鹿なのか? こんなチャンス二度とやって来ないんだ。他の部屋にも女がいる。全員とヤリ放題だ。そんな事も分かんねぇのかよ!」
倒れたまま顔だけ動かすと、パイプ椅子を持った興奮した太田が見えた。
極限状態だと人間の本性が現れるらしいけど、こんな醜い本性は見たくない。
囚われた女の子を助ける英雄になるよりも、さらに傷つける極悪人の道を選んだ。
だったら、もう容赦しない。藤原さんのパンティを見たお前を殺す。
「ぐっ、お前、最低の屑だな。反省するチャンスも二度とやって来ないぞ」
「お前を殺せば、バレないんだよ!」
本気で殺すつもりだ。パイプ椅子の角を振り下ろしてきた。避ければ藤原さんに当たる。
体勢を急いで上に変えて、落ちて来る椅子を両手で受け止めた。
「ぐっ!」
両手が少し痺れた。だけど、その程度だ。もう勝てない相手じゃない。
椅子を力尽くで押し返して立ち上がった。
「ぐぐぐっ、お、お前、化け物かよ⁉︎」
自分よりも大きな相手だけど、今は酷く小さく見える。
怯える太田からパイプ椅子を奪い取って、こめかみに全力で椅子を叩き込んだ。
「消えろ!」
「ぴゅがぁ……!」
殴った衝撃で太田の頭と同じように、椅子の金属フレームが変形した。
床に倒れた太田の上に投げ捨てた。どちらももう使い物にならない。
「ごめん、すぐに助けるから」
余計な時間を使ってしまった。見張りのポケットを探して、小さな鍵を見つけた。
手錠の鍵穴に入れて、両手足を拘束していた二つの手錠を外した。
「ありがとう、神村君……でも、でも、私の所為で神村君が人殺しに……」
ベッドから床に立ち上がると、藤原さんが今まで我慢していたのか泣き出した。
パイプ椅子の一撃よりも、この涙の方が百万倍痛い。
「泣かないで、藤原さん。そんな顔を見たくて来たんじゃないよ。藤原さんの笑っている顔が見たいんだから」
「う、うん、ごめんなさい。ごめんね、神村君……」
「さあ、帰ろう。帰りが遅いと、お父さんとお母さんが心配するよ」
本当に心配するべきは人殺しになった自分の人生だけど、今は何もかも忘れたい。
部屋にあった藤原さんの靴と荷物を回収して、ビデオカメラは黒い横長バッグに回収した。
警察の人にも、藤原さんの映像は見せたくない。
「嫌ぁ……家に帰してください」
「大丈夫、助けに来たんだ」
他の部屋を調べると、ベッドに拘束された下着姿の十代後半の女の子が三人もいた。
全員の手錠を外して、歩けない女の子は抱き抱えて、死体が乗っていない車に運んだ。
二~四階は誰もいなかったけど、地下にはコスプレ服から卑猥な大人の玩具、犯行映像が入ったパソコンやDVDまで多数保管されていた。
証拠品には手を付けずに放置して、まともな服だけを三着拝借した。
下着姿で行動させるわけにはいかない。
「運転できるの?」
「大丈夫、アメリカの高速道路でパトカーから逃げ切ったから」
「そ、そうなんだ。凄いんだね」
車のエンジンをかけると、後部座席の藤原さんが心配そうに聞いてきた。
警察官が撃ってこなければ、余裕で安全な場所まで運転できる。
あとは女の子の誰かに警察に連絡してもらって、保護してもらえば安心だ。
神様へのお願いは、これからの四人の幸せな人生をお願いしたい。
その願いが叶えられない不可能な願いだとしても……。
【第一章・終わり】
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