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第一章 平凡高校生vs不良集団
第3話 願いを叶える試練
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「わぁっ!」
歩いていたら知らない誰かに突き飛ばされたみたいに、激しく地面に倒された。
「痛たたたぁ……どこだよ、ここは?」
右肘を左手で摩りながら立ち上がると周囲を見回した。
誰もいないけど、どこかの大きな会社のロビーみたいだ。
『ここはインビシブルタワーだ。五時間以内に透明人間を倒せば、透明人間になれる薬を与えよう。時間切れや死亡した場合は強制退場になる。ここで死亡しても死ぬ事はない。試練を乗り越えるのが難しい場合は、ギブアップと宣言すれば自主退場できる。さあ、お前の願いを叶えよ』
『ピイイー♬』
「えっ、ちょっと⁉︎」
神爺が一方的にルールを説明すると、いきなり何かのゲームが始まった。
大きな笛の音が辺りに響き渡る。参加者一人だけだよね?
「ねぇ、アイテムないの? 素手で倒さないといけないの?」
質問は一切受け付けないみたいだ。
とりあえずゲームの基本は情報収集だ。その辺を歩き回って調べるしかない。
黒線が縦横に引かれた白い岩床を歩いて、大きな自動ドアに向かった。
外は夜だけど明かりが見える。外に出れば誰かいるかもしれない。
「ぐぐぐっ! 駄目だ、開かない」
自動ドアのセンサーが反応しないから、両手で引っ張って開けようとした。
鍵が掛かっているみたいに、扉はビクともしなかった。
「はぁー、部屋を調べてみるか」
現在の装備はスリッパと制服だ。これで透明人間を倒せるとは思えない。
最低でも赤外線ゴーグルが欲しい。見えない敵は倒せない。
「これって、夢じゃないよね?」
ビルの中を歩いて、アイテムを探す。長椅子と観葉植物は重いから諦めた。
壁の硬さや冷たさ、消毒液のような匂いは現実みたいだ。
夢のようなフワフワした感覚がない。
「ヘイ、ボーイ!」
「んっ?」
廊下を歩いていると本場の英語で呼ばれた。男の声がした背後を振り返ろうとすると……
『パンッ!』
「ぅぐっ……!」
意識が消えてしまった。
「えっ? えっ、俺の部屋? 夢だったの?」
再び意識を取り戻すと、自分の部屋の床に寝ていた。
何が起こったのか意味不明だけど、机の上には賽銭箱がある。
立ち上がると賽銭箱に五円入れて聞いてみた。
「ねぇ、何が起きたの?」
『その願いを叶える事は出来る。お前は特殊部隊の隊員に、頭を銃で撃たれて死亡した』
「なるほど、そうだったんだ」
賽銭箱が教えてくれたから間違ない。夢ではなく、これは現実だ。
それに透明人間以外にも、銃を持った特殊部隊の隊員がいる。
筋肉ムキムキの戦闘の達人と素手で戦って、銃を奪い取るのは不可能だ。
俺の握力は38しかない。もっと簡単な願いじゃないと叶えられない。
「惚れ薬も多分無理かな。んんー……」
頭を使って色々考えるけど、道で一万円拾うのは無理だ。
戦うのが基本なら、身体能力を超人にして欲しいとお願いしたい。
でも、それは難しいと思う。ここはチリも積もれば作戦で行こう。
身長を三十センチ伸ばすのは難しくても、一ミリ伸ばすのは簡単だと思う。
「まずは靴だ」
今度はしっかり戦う準備も済ませておこう。
動きやすい服に着替えて、玄関から運動靴を持ってきた。
武器は現地調達するしかない。賽銭箱に五円入れてお願いした。
「簡単な試練で少しだけ強くしてください」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「よしっ!」
予想通りの結果がやって来た。ガッツポーズして、賽銭箱の中に吸い込まれた。
「ぐはぁ!」
何が起きるか分かっていたから、倒れないように頑張ったけど無駄だった。
また地面に倒された。
『ここは街道だ。一時間以内にゴブリン五匹を倒せば、少しだけ強くしよう……』
「ゴブリンか。ゲームだと定番の雑魚だけど、最近は強いのもいるんだよなぁー」
神爺の説明が続いているけど、死んだら強制退場は分かっている。
周囲を見回して情報を集めてみた。街道は森の中の一本道で、明るくて見通しが良い。
赤い矢印の立て看板があるから、この方向に進めばいいみたいだ。
『ピイイー♬』
「よし、行こう」
笛の合図が鳴ったので、まずは道を真っ直ぐに進む事にした。
しばらく進んでいると、森の中から緑色のカエル人間が飛び出してきた。
「グゲェ!」
「うわぁー! 小さいゴブリンだ!」
悲鳴を上げて逃げ出しそうになったけど、何とか踏み止まった。ゴブリンの身長が小学一年生だった。
だけど、右手にはピカピカのランドセルではなく、ピカピカの短剣を持っている。
壮絶な小学生デビューをしたくないなら、今すぐに短剣は森に投げた方がいい。
「オマエ、コロス、ブッコロス」
「ひぃっ!」
ゴブリンが片言の言葉を話してきた。口からボタボタと涎を垂らしている。
道で遭遇したら、急いで交番まで走って逃げたい相手だ。
そんな危険な相手が短剣を振り上げて走ってきた。
「コロス、コロス、コロス!」
「あああーッッ!」
逃げ出したいのに、両足がガクガク震えて動かない。
それでも刺される恐怖に負けて、両足跳びで右に跳んで避けた。
「うわぁぁ!」
「ヨケルナ!」
「ひぃっ!」
だけど、すぐにゴブリンが身体を反転させて追いかけてきた。
短剣を振り上げて、腹に突き刺そうと狙ってくる。刺されないように必死に逃げ回る。
殴るか蹴るかしないと倒せないけど、そんな経験はない。
小さな虫と違って、ゴブリンは子供並みに大きい。
踏み潰したら、大量の体液が身体中から噴き出してくる。
「うっぷっ」
赤い体液を想像しただけで気持ち悪くなってしまった。
短剣を奪い取っても、簡単に刺したり出来ない。
もうギブアップした方が絶対に良い。だけど、だけど……
「うわあああ!」
逃げ回るのをやめて立ち止まると、ゴブリンに向かって全力ダッシュした。
左手を握り締めて、叫んで覚悟を決めた。
「ウワァッ!」
「ゲボォ……!」
渾身の左ストレートをゴブリンの鼻に叩き込んだ。岩を殴ったような硬い感触を感じた。
ゴブリンがバナナで足を滑らせたみたいに、後頭部から地面に倒れた。
「あぐぅっ、痛ぁーッ!」
殴っただけなのに、指が折れたみたいに痛い。
地面に倒れているゴブリンは鼻血を出したまま動かない。
だけど、胸が上下に動いている。まだ生きている。
「やらないと、早くやらないと……」
短剣を握っている右手を右足で踏みつけて、右手の指を広げて短剣を奪い取った。
これで脅威は無くなったけど、早く殺さないと起きてしまう。
首を斬り裂くのも、目玉を突き刺すのも無理だ。出来そうなのは心臓に突き刺すぐらいだ。
「ああっ、ああっ……」
両手で大きめの果物ナイフぐらいある短剣を握り締めて、震える切っ先を左胸に向けた。
目を閉じて何も考えずに腕を振り落とした。
「ウワァッ!」
「ギュプゥ……!」
「ひぃっ!」
突き刺した瞬間に生温かい何かが顔に飛んできた。
吐きそうになる感情を飲み込んで、短剣を抜いてもう一度胸に突き刺した。
「うっぷっ!」
刺すとすぐに短剣から手を離して、急いでゴブリンから離れた。
「うげええええーッッ!」
地面に向かって、胃の中の物を次々に吐き出していく。
生々しい本物の死の声は、どう考えても作り物とは思えない。
生き物を殺してしまったという罪悪感が、ただただ気持ち悪い。
「ギブアップ」
静かに宣言すると安全な部屋に帰還した。
歩いていたら知らない誰かに突き飛ばされたみたいに、激しく地面に倒された。
「痛たたたぁ……どこだよ、ここは?」
右肘を左手で摩りながら立ち上がると周囲を見回した。
誰もいないけど、どこかの大きな会社のロビーみたいだ。
『ここはインビシブルタワーだ。五時間以内に透明人間を倒せば、透明人間になれる薬を与えよう。時間切れや死亡した場合は強制退場になる。ここで死亡しても死ぬ事はない。試練を乗り越えるのが難しい場合は、ギブアップと宣言すれば自主退場できる。さあ、お前の願いを叶えよ』
『ピイイー♬』
「えっ、ちょっと⁉︎」
神爺が一方的にルールを説明すると、いきなり何かのゲームが始まった。
大きな笛の音が辺りに響き渡る。参加者一人だけだよね?
「ねぇ、アイテムないの? 素手で倒さないといけないの?」
質問は一切受け付けないみたいだ。
とりあえずゲームの基本は情報収集だ。その辺を歩き回って調べるしかない。
黒線が縦横に引かれた白い岩床を歩いて、大きな自動ドアに向かった。
外は夜だけど明かりが見える。外に出れば誰かいるかもしれない。
「ぐぐぐっ! 駄目だ、開かない」
自動ドアのセンサーが反応しないから、両手で引っ張って開けようとした。
鍵が掛かっているみたいに、扉はビクともしなかった。
「はぁー、部屋を調べてみるか」
現在の装備はスリッパと制服だ。これで透明人間を倒せるとは思えない。
最低でも赤外線ゴーグルが欲しい。見えない敵は倒せない。
「これって、夢じゃないよね?」
ビルの中を歩いて、アイテムを探す。長椅子と観葉植物は重いから諦めた。
壁の硬さや冷たさ、消毒液のような匂いは現実みたいだ。
夢のようなフワフワした感覚がない。
「ヘイ、ボーイ!」
「んっ?」
廊下を歩いていると本場の英語で呼ばれた。男の声がした背後を振り返ろうとすると……
『パンッ!』
「ぅぐっ……!」
意識が消えてしまった。
「えっ? えっ、俺の部屋? 夢だったの?」
再び意識を取り戻すと、自分の部屋の床に寝ていた。
何が起こったのか意味不明だけど、机の上には賽銭箱がある。
立ち上がると賽銭箱に五円入れて聞いてみた。
「ねぇ、何が起きたの?」
『その願いを叶える事は出来る。お前は特殊部隊の隊員に、頭を銃で撃たれて死亡した』
「なるほど、そうだったんだ」
賽銭箱が教えてくれたから間違ない。夢ではなく、これは現実だ。
それに透明人間以外にも、銃を持った特殊部隊の隊員がいる。
筋肉ムキムキの戦闘の達人と素手で戦って、銃を奪い取るのは不可能だ。
俺の握力は38しかない。もっと簡単な願いじゃないと叶えられない。
「惚れ薬も多分無理かな。んんー……」
頭を使って色々考えるけど、道で一万円拾うのは無理だ。
戦うのが基本なら、身体能力を超人にして欲しいとお願いしたい。
でも、それは難しいと思う。ここはチリも積もれば作戦で行こう。
身長を三十センチ伸ばすのは難しくても、一ミリ伸ばすのは簡単だと思う。
「まずは靴だ」
今度はしっかり戦う準備も済ませておこう。
動きやすい服に着替えて、玄関から運動靴を持ってきた。
武器は現地調達するしかない。賽銭箱に五円入れてお願いした。
「簡単な試練で少しだけ強くしてください」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「よしっ!」
予想通りの結果がやって来た。ガッツポーズして、賽銭箱の中に吸い込まれた。
「ぐはぁ!」
何が起きるか分かっていたから、倒れないように頑張ったけど無駄だった。
また地面に倒された。
『ここは街道だ。一時間以内にゴブリン五匹を倒せば、少しだけ強くしよう……』
「ゴブリンか。ゲームだと定番の雑魚だけど、最近は強いのもいるんだよなぁー」
神爺の説明が続いているけど、死んだら強制退場は分かっている。
周囲を見回して情報を集めてみた。街道は森の中の一本道で、明るくて見通しが良い。
赤い矢印の立て看板があるから、この方向に進めばいいみたいだ。
『ピイイー♬』
「よし、行こう」
笛の合図が鳴ったので、まずは道を真っ直ぐに進む事にした。
しばらく進んでいると、森の中から緑色のカエル人間が飛び出してきた。
「グゲェ!」
「うわぁー! 小さいゴブリンだ!」
悲鳴を上げて逃げ出しそうになったけど、何とか踏み止まった。ゴブリンの身長が小学一年生だった。
だけど、右手にはピカピカのランドセルではなく、ピカピカの短剣を持っている。
壮絶な小学生デビューをしたくないなら、今すぐに短剣は森に投げた方がいい。
「オマエ、コロス、ブッコロス」
「ひぃっ!」
ゴブリンが片言の言葉を話してきた。口からボタボタと涎を垂らしている。
道で遭遇したら、急いで交番まで走って逃げたい相手だ。
そんな危険な相手が短剣を振り上げて走ってきた。
「コロス、コロス、コロス!」
「あああーッッ!」
逃げ出したいのに、両足がガクガク震えて動かない。
それでも刺される恐怖に負けて、両足跳びで右に跳んで避けた。
「うわぁぁ!」
「ヨケルナ!」
「ひぃっ!」
だけど、すぐにゴブリンが身体を反転させて追いかけてきた。
短剣を振り上げて、腹に突き刺そうと狙ってくる。刺されないように必死に逃げ回る。
殴るか蹴るかしないと倒せないけど、そんな経験はない。
小さな虫と違って、ゴブリンは子供並みに大きい。
踏み潰したら、大量の体液が身体中から噴き出してくる。
「うっぷっ」
赤い体液を想像しただけで気持ち悪くなってしまった。
短剣を奪い取っても、簡単に刺したり出来ない。
もうギブアップした方が絶対に良い。だけど、だけど……
「うわあああ!」
逃げ回るのをやめて立ち止まると、ゴブリンに向かって全力ダッシュした。
左手を握り締めて、叫んで覚悟を決めた。
「ウワァッ!」
「ゲボォ……!」
渾身の左ストレートをゴブリンの鼻に叩き込んだ。岩を殴ったような硬い感触を感じた。
ゴブリンがバナナで足を滑らせたみたいに、後頭部から地面に倒れた。
「あぐぅっ、痛ぁーッ!」
殴っただけなのに、指が折れたみたいに痛い。
地面に倒れているゴブリンは鼻血を出したまま動かない。
だけど、胸が上下に動いている。まだ生きている。
「やらないと、早くやらないと……」
短剣を握っている右手を右足で踏みつけて、右手の指を広げて短剣を奪い取った。
これで脅威は無くなったけど、早く殺さないと起きてしまう。
首を斬り裂くのも、目玉を突き刺すのも無理だ。出来そうなのは心臓に突き刺すぐらいだ。
「ああっ、ああっ……」
両手で大きめの果物ナイフぐらいある短剣を握り締めて、震える切っ先を左胸に向けた。
目を閉じて何も考えずに腕を振り落とした。
「ウワァッ!」
「ギュプゥ……!」
「ひぃっ!」
突き刺した瞬間に生温かい何かが顔に飛んできた。
吐きそうになる感情を飲み込んで、短剣を抜いてもう一度胸に突き刺した。
「うっぷっ!」
刺すとすぐに短剣から手を離して、急いでゴブリンから離れた。
「うげええええーッッ!」
地面に向かって、胃の中の物を次々に吐き出していく。
生々しい本物の死の声は、どう考えても作り物とは思えない。
生き物を殺してしまったという罪悪感が、ただただ気持ち悪い。
「ギブアップ」
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