【R18】月読神社の賽銭箱に選ばれた色欲高校生〜たった五円で願いを叶えられる賽銭箱〜

もう書かないって言ったよね?

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第一章 平凡高校生vs不良集団

第3話 願いを叶える試練

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「わぁっ!」

 歩いていたら知らない誰かに突き飛ばされたみたいに、激しく地面に倒された。

「痛たたたぁ……どこだよ、ここは?」

 右肘を左手で摩りながら立ち上がると周囲を見回した。
 誰もいないけど、どこかの大きな会社のロビーみたいだ。

『ここはインビシブルタワーだ。五時間以内に透明人間を倒せば、透明人間になれる薬を与えよう。時間切れや死亡した場合は強制退場になる。ここで死亡しても死ぬ事はない。試練を乗り越えるのが難しい場合は、ギブアップと宣言すれば自主退場できる。さあ、お前の願いを叶えよ』
『ピイイー♬』
「えっ、ちょっと⁉︎」

 神爺が一方的にルールを説明すると、いきなり何かのゲームが始まった。
 大きな笛の音が辺りに響き渡る。参加者一人だけだよね?

「ねぇ、アイテムないの? 素手で倒さないといけないの?」

 質問は一切受け付けないみたいだ。
 とりあえずゲームの基本は情報収集だ。その辺を歩き回って調べるしかない。
 黒線が縦横に引かれた白い岩床を歩いて、大きな自動ドアに向かった。
 外は夜だけど明かりが見える。外に出れば誰かいるかもしれない。

「ぐぐぐっ! 駄目だ、開かない」

 自動ドアのセンサーが反応しないから、両手で引っ張って開けようとした。
 鍵が掛かっているみたいに、扉はビクともしなかった。

「はぁー、部屋を調べてみるか」

 現在の装備はスリッパと制服だ。これで透明人間を倒せるとは思えない。
 最低でも赤外線ゴーグルが欲しい。見えない敵は倒せない。

「これって、夢じゃないよね?」

 ビルの中を歩いて、アイテムを探す。長椅子と観葉植物は重いから諦めた。
 壁の硬さや冷たさ、消毒液のような匂いは現実みたいだ。
 夢のようなフワフワした感覚がない。

「ヘイ、ボーイ!」
「んっ?」

 廊下を歩いていると本場の英語で呼ばれた。男の声がした背後を振り返ろうとすると……

『パンッ!』
「ぅぐっ……!」

 意識が消えてしまった。

「えっ? えっ、俺の部屋? 夢だったの?」

 再び意識を取り戻すと、自分の部屋の床に寝ていた。
 何が起こったのか意味不明だけど、机の上には賽銭箱がある。
 立ち上がると賽銭箱に五円入れて聞いてみた。

「ねぇ、何が起きたの?」
『その願いを叶える事は出来る。お前は特殊部隊の隊員に、頭を銃で撃たれて死亡した』
「なるほど、そうだったんだ」

 賽銭箱が教えてくれたから間違ない。夢ではなく、これは現実だ。
 それに透明人間以外にも、銃を持った特殊部隊の隊員がいる。
 筋肉ムキムキの戦闘の達人と素手で戦って、銃を奪い取るのは不可能だ。
 俺の握力は38しかない。もっと簡単な願いじゃないと叶えられない。

「惚れ薬も多分無理かな。んんー……」

 頭を使って色々考えるけど、道で一万円拾うのは無理だ。
 戦うのが基本なら、身体能力を超人にして欲しいとお願いしたい。

 でも、それは難しいと思う。ここはチリも積もれば作戦で行こう。
 身長を三十センチ伸ばすのは難しくても、一ミリ伸ばすのは簡単だと思う。

「まずは靴だ」

 今度はしっかり戦う準備も済ませておこう。
 動きやすい服に着替えて、玄関から運動靴を持ってきた。
 武器は現地調達するしかない。賽銭箱に五円入れてお願いした。

「簡単な試練で少しだけ強くしてください」
『その願いを叶える事は出来る。叶えたければ、簡単な試練を乗り越えろ』
「よしっ!」

 予想通りの結果がやって来た。ガッツポーズして、賽銭箱の中に吸い込まれた。

「ぐはぁ!」

 何が起きるか分かっていたから、倒れないように頑張ったけど無駄だった。
 また地面に倒された。

『ここは街道だ。一時間以内にゴブリン五匹を倒せば、少しだけ強くしよう……』
「ゴブリンか。ゲームだと定番の雑魚だけど、最近は強いのもいるんだよなぁー」

 神爺の説明が続いているけど、死んだら強制退場は分かっている。
 周囲を見回して情報を集めてみた。街道は森の中の一本道で、明るくて見通しが良い。
 赤い矢印の立て看板があるから、この方向に進めばいいみたいだ。

『ピイイー♬』
「よし、行こう」

 笛の合図が鳴ったので、まずは道を真っ直ぐに進む事にした。
 しばらく進んでいると、森の中から緑色のカエル人間が飛び出してきた。

「グゲェ!」
「うわぁー! 小さいゴブリンだ!」

 悲鳴を上げて逃げ出しそうになったけど、何とか踏み止まった。ゴブリンの身長が小学一年生だった。
 だけど、右手にはピカピカのランドセルではなく、ピカピカの短剣を持っている。
 壮絶な小学生デビューをしたくないなら、今すぐに短剣は森に投げた方がいい。

「オマエ、コロス、ブッコロス」
「ひぃっ!」

 ゴブリンが片言の言葉を話してきた。口からボタボタと涎を垂らしている。
 道で遭遇したら、急いで交番まで走って逃げたい相手だ。
 そんな危険な相手が短剣を振り上げて走ってきた。

「コロス、コロス、コロス!」
「あああーッッ!」

 逃げ出したいのに、両足がガクガク震えて動かない。
 それでも刺される恐怖に負けて、両足跳びで右に跳んで避けた。

「うわぁぁ!」
「ヨケルナ!」
「ひぃっ!」

 だけど、すぐにゴブリンが身体を反転させて追いかけてきた。
 短剣を振り上げて、腹に突き刺そうと狙ってくる。刺されないように必死に逃げ回る。
 殴るか蹴るかしないと倒せないけど、そんな経験はない。

 小さな虫と違って、ゴブリンは子供並みに大きい。
 踏み潰したら、大量の体液が身体中から噴き出してくる。

「うっぷっ」

 赤い体液を想像しただけで気持ち悪くなってしまった。
 短剣を奪い取っても、簡単に刺したり出来ない。
 もうギブアップした方が絶対に良い。だけど、だけど……

「うわあああ!」

 逃げ回るのをやめて立ち止まると、ゴブリンに向かって全力ダッシュした。
 左手を握り締めて、叫んで覚悟を決めた。

「ウワァッ!」
「ゲボォ……!」

 渾身の左ストレートをゴブリンの鼻に叩き込んだ。岩を殴ったような硬い感触を感じた。
 ゴブリンがバナナで足を滑らせたみたいに、後頭部から地面に倒れた。

「あぐぅっ、痛ぁーッ!」

 殴っただけなのに、指が折れたみたいに痛い。
 地面に倒れているゴブリンは鼻血を出したまま動かない。
 だけど、胸が上下に動いている。まだ生きている。

「やらないと、早くやらないと……」

 短剣を握っている右手を右足で踏みつけて、右手の指を広げて短剣を奪い取った。
 これで脅威は無くなったけど、早く殺さないと起きてしまう。
 首を斬り裂くのも、目玉を突き刺すのも無理だ。出来そうなのは心臓に突き刺すぐらいだ。

「ああっ、ああっ……」

 両手で大きめの果物ナイフぐらいある短剣を握り締めて、震える切っ先を左胸に向けた。
 目を閉じて何も考えずに腕を振り落とした。

「ウワァッ!」
「ギュプゥ……!」
「ひぃっ!」

 突き刺した瞬間に生温かい何かが顔に飛んできた。
 吐きそうになる感情を飲み込んで、短剣を抜いてもう一度胸に突き刺した。

「うっぷっ!」

 刺すとすぐに短剣から手を離して、急いでゴブリンから離れた。

「うげええええーッッ!」

 地面に向かって、胃の中の物を次々に吐き出していく。
 生々しい本物の死の声は、どう考えても作り物とは思えない。
 生き物を殺してしまったという罪悪感が、ただただ気持ち悪い。

「ギブアップ」

 静かに宣言すると安全な部屋に帰還した。
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