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第十二話

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 まずは村人だ。主人公との戦いを邪魔されるよりも逃げられる方が嫌だ。
 村娘に逃げられでもしたら、レベル上げが無駄になってしまう。

「って!」

 おいおいおい!俺はいつから正々堂々と戦う勇者様になったんだ?
 子供人質に取って、脅せばいいだけだ。
 このガキ、殺されたくなかったら武器捨てろ!で主人公なら無抵抗で殺されてくれる。
 勝ちゃ~良いんだよ、勝ちゃ~。

 そうと決まったら、村少年と村少女だ。
 作戦は決まった。人質作戦だ。悪だね、俺って最高の悪だ。
 セーブクリスタルでしっかりセーブすると人質を探した。

「オラッ!」

 ふぎゃ!と村少年に蹴りを入れて、地面にぶっ倒した。
 良いねえ、良いねえ♪俺って最高の悪だ。

「ちみぃ! 何やってるんだね!」
「はぁ?」

 おっと、目撃者だ。村爺さんが拳をプルプル震わせて怒鳴ってきた。
 どうやら俺が最高の悪だと知らないらしい。
 だったら身体に教えてやらないと駄目だな。
 少年の背中に日本刀を容赦なくブッ刺した。
 
「ひいい! こ、殺しおった!」
「ああ、殺したけどそれがどうかしたか?」
「な、何じゃと⁉︎ この極悪人が!」
「ひぃはぁー! 最高の褒め言葉だぜ!」

 俺も最高だが、爺さんの反応も最高だ。
 そんな最高な爺さんにも日本刀をくれてやった。

「ぐばぁああ!」

 口程にもない爺さんだ。たったの三撃で力尽きた。

「良いねえ、強いって最高だ!」

 最高の気分だ。爺さんと少年の死体を持ち物に収納した。
 村人程度にやられる心配は皆無だ。このまま村を一回りして、建物の中にいる村人も殺してやる。
 廃村、廃村、廃村♪だ。

 目についた村人を女子供関係なく片っ端から切り殺していく。
 やはり剣士を選んで正解だった。助けを呼ぶ暇も与えずに数秒で倒せてしまう。
 道でズバッ!家に押し入ってズバッ!だ。
 これで残るは主人公とヒロインだけになった。

 はい、ここでセーブだ。邪魔者はいなくなった。
 村の住人達は持ち物の中に収納したので、もう逃げられる心配はない。
 この状態でセーブしない馬鹿はいない。あとで村娘達にはたっぷりと奉仕してもらう。

「よし、セーブ完了だ」

 セーブしてしまった。これでもう後戻りは出来ない。
 あとは進むだけだ。持ち物から村少年を取り出した。
 蘇生薬で生き返らせると主人公の家を目指した。

「おい、降りて来い! 早く来ないとこのガキ殺すぞ!」

 二階に向かって大声で脅した。
 主人公は一人暮らしだが、地下一階の二階建ての立派な家に住んでいる。
 二階と言ってもロフトのような作りだから、一階からでも二階に人がいれば見える。

「お前、さっきの——ッ! 何してんだ!」

 主人公が俺に気付くと下を見て、日本刀を首元に押し当てられている村少年に気付いて、剣を持って二階から飛び降りてきた。
 4メートル近くあるから、俺がやったら両足グギィで骨折案件だ。

「このガキ見えねえのかよ! 武器捨てろ! 早く武器捨てろよ!」
「うわーん! 助けて!」

 だが、そんな事はどうでもいい。計画通りにやってやる。
 少年の頭を掴んで日本刀を押し当てて、主人公に向かって命令する。
 少年の方も良い演技している。あとでご褒美にケーキでも奢ってやろう。

「お前、自分が何やってるのか分かってるのか?」
「ガキ脅して、テメェーに命令してんだよ。やるのかやらねえのかさっさと決めろ。助けを待つつもりならこのガキ殺すぞ」
「うわーん、お兄ちゃん助けてぇー!」
「ほら、どうすんだよ! 殺すぞ、殺しちゃうぞ!」

 ケーキにジュースも付けてやる。
 涙と鼻水流して訴える少年に、こっちも負けじと演技に熱がこもる。
 
「……すまん、ペータ。コイツからはクズの臭いがする。武器を捨てても助ける保証なんてない」
「おいおい、酷え兄ちゃんだな! お前に死ねって言ってるぞ」
「お兄ちゃん助けてよぉー! 僕、まだ死にたくないよぉー!」

 良いぞ!もっと感情を込めて言うんだ!
 お前の名演技ならきっと、主人公に武器を捨てさせる事が出来る。

「奥義——」

 あっ、駄目そうだ。主人公が必殺技を使おうと切っ先を前に向けた。
 雷突きにも見えるが、これはおそらくアレだ。

「疾風迅雷!」
「うぴゃー!」「ぐぼぉっ!」

 風と雷を纏った剣と主人公の神速の突きが少年と俺の胸と腹を突き刺した。
 二人一緒に家の外に突き飛ばされ、地面をゴロゴロ転がっていく。

「くっ、やりやがったな!」

 村少年は即死、俺の方はバトルアーマーのお陰で大したダメージは受けてない。
 まだまだ余裕で戦える。

「ペータ、必ず仇は取るからな」

 自分で殺しておいてよく言う。
 家から出てきた主人公が村少年を見て誓っている。

 残念だが、お前の命日はそのガキと一緒だ。
 俺が持つ武器と防具の性能は、主人公が持つ武器と防具のザッと7倍だ。
 つまり7回攻撃を喰らっても、こっちは1回攻撃を当てれば、ダメージはほぼ同じだ。
 つまり攻撃を喰らいながら反撃すれば、絶対に負けないという事だ。

 行くぜ!と村正を両手でしっかり握って突撃した。
 四本持っていると一本奪われるだけで終わる。
 絶対的な攻撃力の優位を、そう簡単に失うわけにはいかない。
 邪魔で余計な三本はメニュー画面の持ち物に収納した。

 セィッ!と気合いを入れた一撃を斜めに振り下ろした。
 それを軽く避けると主人公が、俺の顔に向かって突きを放ってきた。
 避ける必要も避ける実力もないので、気にせずに村正を突きに合わせて振り抜いた。

「ぐぅっ!」「うっ!」——とお互いの一撃が身体に命中した。
 けれども、一撃の威力は俺の方が上だ。主人公の方が少しだけ大きく怯んだ。
 このまま打ち合いを続ければ、予想通り俺の勝利は確実だ。
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