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第十話

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「くぅぅぅ、失敗した!」

 主人公にやっぱり殺された。セーブクリスタルの前に強制送還された。
 いつも上手く村人を殺せていたから油断した。次こそは一人ずつ確実に始末してやる。

 さて、店主オヤジを倒して目標の一つは確認できた。
 オヤジと爺さんが経験値200、息子が150、少年が75だ。
 やるとしたら道具屋の店主オヤジを倒して、道具屋に爺さん連れ込んで殺しまくる。
 これが一番経験値とゴールドが手に入る方法だ。

 もちろん蘇生薬が無限に手に入る場合のみ有効な手だ。
 次は無限に道具屋のアイテムが使い放題できるか確認だ。

 道具屋に行くと今度はカッコつけずに店主オヤジを斬りつけた。
 やっぱり「ぐぎぁ!」と悲鳴を上げたので、騒ぎを聞きつけてオバサンが降りてきた。
 外から建物を見たら道具屋は二階建てだった。二階が住居スペースなのだろう。

 だとしたら、オバサンだけじゃなくて、爺さんか婆さん、息子か娘、少年か少女がいる可能性がある。
 同じ家を襲って二度も失敗するなんて、一流の強盗がやる事じゃない。
 俺は一流の強盗になると決めたんだ。こんな所で立ち止まっていられない。

「もぉー……」

 扉が開いた瞬間に雷突き!をお見舞いした。
 その台詞はもぉー聞いた。二度も聞く必要はない。

「ぴぃぎぃ!」

 雷突きで硬直したオバサンにさらに追加攻撃で斬りつける。
 そして、お前も休憩できると思うなよ!と床に倒れている店主オヤジに剣風斬!と斬撃を飛ばす。

 とにかく助けを呼ぶ暇は与えない。
 二対一が出来ずに四対一が出来るわけがない。
 あの盗賊団の魔女を捕獲するには四対一で勝てる実力になるしかない。

「「…………」」

 ふぅー、ふぅー!手間取らせやがって!無事に夫婦二人を斬殺した。
 普通は返り血で床も壁も血塗れだろうけど、店内は綺麗なものだ。
 二階に人が残っていないか確認したいが、今はアイテムが取り出せるか確認するのが先だ。

 店主がアイテムを売る時に確認する、板に付けられた在庫表みたいな紙を手に持った。
 商品の名前と値段が書かれているだけで、特に変わった特徴はない。
 試しにパンをタッチしてみた。
 すると、パンの文字が光って、パンが板から飛び出してきた。

「へぇー、なるほどね♪」

 これは超絶便利な魔法の在庫表だ。
 無料でパン食い放題になった。チーズも食い放題だ。

 さて、金の心配もしなくて済むなら店主にはもうひと働きしてもらう。
 まずは二階に連れて行く前に二階のチェックだ。
 俺は一流強盗だから、タンスの中とベッドの下に誰も隠れてないか要チェックする。

 念の為に在庫表からレーザーアーマーという革鎧を取り出して、上半身の防御力を強化した。
 ロングソードと木盾を構えて、階段をゆっくりと慎重に上っていく。

 俺は女、子供にも容赦しない、血も涙もない凶悪犯罪者だ。
 娘と少女が隠れているなら、たっぷりと可愛がってやる。

「ちっ、誰もいないか」

 タンス、風呂、ベッド、トイレ、窓を開けて壁にぶら下がっていないかも確認した。
 間違いなく道具屋夫婦だけの二人暮らしだ。これだとベッドと風呂で楽しめない。

「佐藤様、佐藤様、聞こえますか?」
「あ、ああ、聞こえます!」

 残念がっていると土下座社長の声が聞こえてきた。
 周囲に土下座している社長の姿は見えない。声だけ送っているようだ。

「それは良かった。何かお身体に不調はありませんか?」
「いや、何ともないが……何か問題でもあったんですか?」

 身体を触って確認したが、特に何も感じない。
 さっき主人公に大量出血させられたから何か異常でも出たのだろうか。

「いえいえ、確認です。それと良いご報告がありまして。脳科学の権威フランケンシュタイン博士のご協力を得る事が出来まして。脳にチップを埋め込んで、ゲーム世界の情報を佐藤様の脳にログインさせれば問題解決できるのではないか、という提案がありまして。それで佐藤様に手術の同意をお伺いしたいと思い、ご連絡した次第でして。佐藤様、どうでしょうか?」

 どうでしょうか?と聞かれても、それしか方法がないならやるしかない。

「危険はないですよね?」

 だが、脳にチップ埋め込むとかヤバそうだ。
 安全が確認できないなら、人体実験なんて絶対受けない。

「ご心配なく。手術の方も世界的な権威ドクターブラックジャック、ドクターXに依頼済みです。費用は全てこちらが負担します。佐藤様は受けるだけです」

 なるほど。二人共、俺でも知っている名医だ。
 つまり絶対に失敗しないという事だ。だったら受けるしかない。

「分かりました。お願いします」
「ありがとうございます。それと手術の準備の為に数日必要になります。ご不便とは思いますが、もうしばらくご辛抱ください」

 よし、数日あるならヒロインをやれる。魔女もやれる。
 ログアウトまでたっぷり楽しんでやる。
 その為にもご不便点はしっかり報告させてもらう。

「ちょっといいですか? 改善点を見つけたんですけど……」
「はい、どのような点ですか?」

 よし、聞く気みたいだから全部言ってやる。
 まず村人の死体が持ち物に入らない、俺の怪我だけが恐ろしくリアル、パンティが純白が多い、魔女のパンティは見てないが色々とあると嬉しい。
 これは別にいいが、ヒロインの行動予定時刻表が欲しい。

「なるほど、分かりました。すぐに変更させていただきます。ですが、村人やヒロイン、モンスターはAI行動なので、決まった時間に何かをするように出来ていません。こちらはご辛抱くださいませ」

 それなら仕方ない。確かに決まった時間に何かをするなら意外性がない。
 死体と怪我とパンティを改善してくれるなら、あとは我慢するか。
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