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第3章 束縛編
第23話 (薫パート)
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「このお店ならゆっくり話せそうね。入りましょう」
(喫茶店か……初めて入るかも)
カラン~コロン~。
古谷さんと路地裏にある小さな喫茶店に入ると、中にはたった2人のお客さんしかいませんでした。店の一番奥の席に座ると早速彼女と支払いの事で揉めてしまいました。
「コーヒーでいいわよね。そのぐらいは奢らせてよ」
「いいよ。女の子に奢らせる程、お金には困っていないから」
「そういえばバイトしてたんだっけ。別に気にしなくていいのに……私も実家のお手伝いで同級生よりはお小遣いは多めに貰ってるのよ」
「だったら別々に払うという事でいいんじゃないの。それで話ってなんなの?」
どちらがお金を払うかで、僕達は意地を張ってしまいます。古谷さんは実家の和菓子屋のお手伝いをしているので、お小遣いに余裕があるようです。こんな言い争いはサラリーマン達がやる事です。
「じゃあ、単刀直入に聞くけど、七瀬さんの事、どこまで本気なの? 好きなの? それともただの遊びなの?」
(古谷さんには関係ないだろう! と言ったら、きっと怒るんだろうな。こんな風に聞くって事はそれなりに七瀬さんと親しいと考えて答えた方いいはずだ)
2人の学校や遊んでいる時の話し方や態度を見ると、おそらく友達以上の関係なのは分かります。問題は何処まで個人的な話をしているかです。
「好きだよ。それは嘘じゃない。でも、他にも好きな人がいるんだ。七瀬さんもそれは知っているよ」
「ああっ~~、もうぉ~‼︎ 隠そうとしたら殴ってやろうと思ってたのに! どうして言っちゃうのよ!」
古谷さんは悔しそうに髪の毛を掻き乱します。そして、ポフッとテーブルの上に顔を伏せてしまいました。彼女の意外な可愛い仕草にドキッとしてしまいます。
(やっぱり七瀬さんに聞いていたんだ。だとしたら、他の事も色々と知っているんだろうな)
「だって、古谷さんは七瀬さんの事を本気で心配しているんだよね。だったらこっちも本気で答えないと失礼だろう」
彼女の性格から考えても、どちらか一方の味方をするとは思えません。たとえ七瀬さんの親友だとしても、中立の立場で冷静に対応してくれるはずです。
「くぅっ~~//// もうぉ…あんたって、本当に及川に聞いてた通りの空気が読めない男ね。でも、これだけは言わせて。七瀬さんとは別れないで欲しいの。少なくとも1年間は彼女の理想の恋人でいて欲しいの。七瀬さんの為を思うならそうして」
古谷さんの頬が一瞬だけ赤くなったと思ったら、次の瞬間にはまた鋭い視線に戻って話し始めます。
「ごめん。それは出来ないかもしれない。さっきも言ったように好きな人がもう1人いるんだ。今死ぬ程考えて答えを出そうとしている。でも、答えが出ないんだ」
「はぁ~~。そんなの私も分かってるよ。誰かにその人を好きになって欲しいと言われても困るよね。私も自分が無茶な事を言ってるのは十分理解しているよ。でも、七瀬さんはやっと立ち直って一歩目を進み始めたばかりなんだよ。こんなに早く躓いたら、もう立ち直れないかもしれないよ…」
怒ったり、悔しがったり、落ち込んだり、悲しんだりと、古谷さんの感情はコロコロと変わります。きっと自分でも何が正しいのか迷っているんだと思います。
「古谷さんは七瀬さんの事を何処まで知ってるの? 確か高校から友達になったんだよね。何だかその話し方だと、もっと前からの知り合いのように聞こえたんだけど。良かったら七瀬さんの事で知っている事を教えて欲しいんだ。僕の答えを出す為にも…」
「………」
古谷さんは何も話さずに1人で考え込んでいます。話すべきか、話さない方がいいのか悩んでいるようです。
「ねぇ、望月君は七瀬さんの部屋に入ったんだよな? だったら本棚にアレがないのに気付いたかな?」
「黒魔術と呪いの本の事じゃないなら、分かんなかったと思うよ」
古谷さんはこの答えが気に入らなかったようです。ジィーーと睨まれてしまいました。
「冗談を聞きたい訳じゃないんだけど……アルバムだよ。中学校の卒業アルバム。小学校のアルバムはあったけど、中学校のアルバムは無かったでしょう?」
(確か…占いの本と学校の教科書と……あとは…)
なんとか思い出そうとしますが、その後に起きた出来事の方が鮮明に残っていて、思い出す事は出来そうにないです。
「ごめん。そこまで細かくは見てなかったよ。それがそんなに変な事なの?」
「それだけならね。七瀬さん…中学校のアルバムは捨てたって言ったのよ。見たくないって言ったの。どうしてだと思う?」
(そんなの要らないからだろうけど……小学校のアルバムはあって、中学校のアルバムは捨てるなんて変だよね。だとしたら、あるけど、見られたくないから捨てたって嘘を吐いたと考えるのが自然なのかな?)
色々と理由を考えましたが、本当の正解は七瀬さんにしか分かりません。
「中学校時代に太っていたとか、可愛くなかったとかじゃないのなら、お手上げだよ。本当に捨てているのかも、俺には分かんないよ。古谷さんは正解を知ってるの?」
七瀬さん以外で答えを知っている可能性があるとしたら目の前の人物だけです。そして、彼女も答えを話したいと思っているはずです。
(古谷さんは知っている……そして、話したくはないけど、話さないといけないと思っている。だったら、背中を押してあげれば話してくれる可能性はある)
「知ってるよ。七瀬さんは望月君には知られたくないだろうけど、あんた達2人がデート中に、七瀬さんの中学校の奴らとたまたま会う可能性もあるんだ。その時に事情を知らないとどうしていいか分かんないでしょう?」
(やっぱり七瀬さんの秘密を何か知ってるんだ)
「中学校で何か問題を起こしたって事? あの七瀬さんが……?」
彼女は普段から大人しい性格です。2人っきりの時は少しは我儘になりますが、ベッドの上で押し倒した時の彼女は、凄く素直で凄く可愛い女の子でした。そんな女の子が問題を起こすとは考えられません。
「七瀬さんが悪い訳じゃない。悪いのは学校の奴らだよ。七瀬さんはただの被害者で、悪いのはイジメた奴らだよ。くだらない理由でね」
(喫茶店か……初めて入るかも)
カラン~コロン~。
古谷さんと路地裏にある小さな喫茶店に入ると、中にはたった2人のお客さんしかいませんでした。店の一番奥の席に座ると早速彼女と支払いの事で揉めてしまいました。
「コーヒーでいいわよね。そのぐらいは奢らせてよ」
「いいよ。女の子に奢らせる程、お金には困っていないから」
「そういえばバイトしてたんだっけ。別に気にしなくていいのに……私も実家のお手伝いで同級生よりはお小遣いは多めに貰ってるのよ」
「だったら別々に払うという事でいいんじゃないの。それで話ってなんなの?」
どちらがお金を払うかで、僕達は意地を張ってしまいます。古谷さんは実家の和菓子屋のお手伝いをしているので、お小遣いに余裕があるようです。こんな言い争いはサラリーマン達がやる事です。
「じゃあ、単刀直入に聞くけど、七瀬さんの事、どこまで本気なの? 好きなの? それともただの遊びなの?」
(古谷さんには関係ないだろう! と言ったら、きっと怒るんだろうな。こんな風に聞くって事はそれなりに七瀬さんと親しいと考えて答えた方いいはずだ)
2人の学校や遊んでいる時の話し方や態度を見ると、おそらく友達以上の関係なのは分かります。問題は何処まで個人的な話をしているかです。
「好きだよ。それは嘘じゃない。でも、他にも好きな人がいるんだ。七瀬さんもそれは知っているよ」
「ああっ~~、もうぉ~‼︎ 隠そうとしたら殴ってやろうと思ってたのに! どうして言っちゃうのよ!」
古谷さんは悔しそうに髪の毛を掻き乱します。そして、ポフッとテーブルの上に顔を伏せてしまいました。彼女の意外な可愛い仕草にドキッとしてしまいます。
(やっぱり七瀬さんに聞いていたんだ。だとしたら、他の事も色々と知っているんだろうな)
「だって、古谷さんは七瀬さんの事を本気で心配しているんだよね。だったらこっちも本気で答えないと失礼だろう」
彼女の性格から考えても、どちらか一方の味方をするとは思えません。たとえ七瀬さんの親友だとしても、中立の立場で冷静に対応してくれるはずです。
「くぅっ~~//// もうぉ…あんたって、本当に及川に聞いてた通りの空気が読めない男ね。でも、これだけは言わせて。七瀬さんとは別れないで欲しいの。少なくとも1年間は彼女の理想の恋人でいて欲しいの。七瀬さんの為を思うならそうして」
古谷さんの頬が一瞬だけ赤くなったと思ったら、次の瞬間にはまた鋭い視線に戻って話し始めます。
「ごめん。それは出来ないかもしれない。さっきも言ったように好きな人がもう1人いるんだ。今死ぬ程考えて答えを出そうとしている。でも、答えが出ないんだ」
「はぁ~~。そんなの私も分かってるよ。誰かにその人を好きになって欲しいと言われても困るよね。私も自分が無茶な事を言ってるのは十分理解しているよ。でも、七瀬さんはやっと立ち直って一歩目を進み始めたばかりなんだよ。こんなに早く躓いたら、もう立ち直れないかもしれないよ…」
怒ったり、悔しがったり、落ち込んだり、悲しんだりと、古谷さんの感情はコロコロと変わります。きっと自分でも何が正しいのか迷っているんだと思います。
「古谷さんは七瀬さんの事を何処まで知ってるの? 確か高校から友達になったんだよね。何だかその話し方だと、もっと前からの知り合いのように聞こえたんだけど。良かったら七瀬さんの事で知っている事を教えて欲しいんだ。僕の答えを出す為にも…」
「………」
古谷さんは何も話さずに1人で考え込んでいます。話すべきか、話さない方がいいのか悩んでいるようです。
「ねぇ、望月君は七瀬さんの部屋に入ったんだよな? だったら本棚にアレがないのに気付いたかな?」
「黒魔術と呪いの本の事じゃないなら、分かんなかったと思うよ」
古谷さんはこの答えが気に入らなかったようです。ジィーーと睨まれてしまいました。
「冗談を聞きたい訳じゃないんだけど……アルバムだよ。中学校の卒業アルバム。小学校のアルバムはあったけど、中学校のアルバムは無かったでしょう?」
(確か…占いの本と学校の教科書と……あとは…)
なんとか思い出そうとしますが、その後に起きた出来事の方が鮮明に残っていて、思い出す事は出来そうにないです。
「ごめん。そこまで細かくは見てなかったよ。それがそんなに変な事なの?」
「それだけならね。七瀬さん…中学校のアルバムは捨てたって言ったのよ。見たくないって言ったの。どうしてだと思う?」
(そんなの要らないからだろうけど……小学校のアルバムはあって、中学校のアルバムは捨てるなんて変だよね。だとしたら、あるけど、見られたくないから捨てたって嘘を吐いたと考えるのが自然なのかな?)
色々と理由を考えましたが、本当の正解は七瀬さんにしか分かりません。
「中学校時代に太っていたとか、可愛くなかったとかじゃないのなら、お手上げだよ。本当に捨てているのかも、俺には分かんないよ。古谷さんは正解を知ってるの?」
七瀬さん以外で答えを知っている可能性があるとしたら目の前の人物だけです。そして、彼女も答えを話したいと思っているはずです。
(古谷さんは知っている……そして、話したくはないけど、話さないといけないと思っている。だったら、背中を押してあげれば話してくれる可能性はある)
「知ってるよ。七瀬さんは望月君には知られたくないだろうけど、あんた達2人がデート中に、七瀬さんの中学校の奴らとたまたま会う可能性もあるんだ。その時に事情を知らないとどうしていいか分かんないでしょう?」
(やっぱり七瀬さんの秘密を何か知ってるんだ)
「中学校で何か問題を起こしたって事? あの七瀬さんが……?」
彼女は普段から大人しい性格です。2人っきりの時は少しは我儘になりますが、ベッドの上で押し倒した時の彼女は、凄く素直で凄く可愛い女の子でした。そんな女の子が問題を起こすとは考えられません。
「七瀬さんが悪い訳じゃない。悪いのは学校の奴らだよ。七瀬さんはただの被害者で、悪いのはイジメた奴らだよ。くだらない理由でね」
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