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第2章 恋愛編
第13話 (明日香パート)
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また薫から彼女との事で相談をされてしまいました。頼れる女性の知り合いが私だけなのは分かります。私も恋愛関係で相談があったら遠慮なくするようにと言ってしまった手前、そう簡単に断る訳にはいきません。
「七瀬さんとのデート……上手くいかなかったんだ」
薫の彼女は七瀬明日香で間違いないようです。周囲には付き合っている事を隠しているようですが、休日の同じ日だけは2人とも友達との遊びを断っていました。こんな雑な隠し方だとバレてしまうのも時間の問題です。私ならもっと上手く隠せるのに。
「はぁ~~……私が行きたいデートの場所なんて私にも分かんないよ。家の中でゲームとかでいいんじゃないかな」
でも、それは家の中で2人っきりになる事を意味します。狭い部屋の中で男女が一緒になるのは危険です。ムラムラした薫が強引にキスを迫るかもしれません。実際に薫はそういう男でした。
「ああぁぁ~~//// やっぱり家と個室は駄目! もっと広くて人が沢山いる所がいいわね。そっちの方が若い2人にはいいはずよ!」
変な事を思い出してしまい、また顔が熱くなってしまいます。別に2人がキスしようが何しようが私には関係ありませんが、薫が欲望に任せて強引に彼女に迫れば、警察に訴えられて学校を退学になります。そうなると伯父さんと伯母さんが困ります。そうならない為に私が阻止しないと駄目なのです。
(もしかしたら私が親戚だから、キスしても訴えたりしないからキスしたのかな?)
唇を人差し指でなぞりながら、フッと思ってしまいました。2週間経った今、薫とのキスの感触は消えつつありました。でも、キスされた時のドキドキも嬉しさも一緒に消えていくようで少し怖いです。薫と私の初めての大事なキスが、こんな風に簡単に思い出となって消えるのは正直嫌です。
そして、この胸に残り続けるモヤモヤした気持ちさえも、いつかは消える時から来るのも……。
❇︎
部屋のベッドの上に持っている服を広げていきます。そろそろ決めないと薫との待ち合わせ時間に遅刻してしまいます。前の待ち合わせみたいに慌てて走っていくと汗臭くなるのでそれも嫌ですが、あの時は学校の制服でした。せっかくのデート練習です。私服は気合を入れたいのです。
(七瀬さんは清楚系のファッションみたいだけど、私はボーイッシュ系……薫の中では可愛い女の子というよりはカッコいい女の子のイメージが強いんだよね)
ベッドの上にはスカートはほとんどなく、デニムのショートパンツやパンツ、オーバーオールばかりありました。これも昨日、急に誘って来た薫が悪いのです。仕方なく水色、紫色、オレンジ色の派手なボーダーTシャツとデニムのショートパンツを着る事しました。
ゴクリ。
「念の為に下着も選んだ方がいいよね////」
ソッと下着が入っている衣装ケースを見てしまいました。可愛い下着ぐらいは少しは持っています。薫は前にカラオケボックスでキスの練習をお願いしてきたのです。静かな場所があれば『下着を見せて欲しい』とお願いする可能性も十分にあります。
私は絶対に見せるつもりはないのですが、前みたいに強引に決行する可能性があります。その時にダサい下着を穿いているのを見られたら、絶対に馬鹿にされてしまいます。そうならない為に大人の女性として対処しないといけないのです。
(そう…これは仕方なく選んでいるだけで、薫に見せるつもりはないんだから…)
予想以上に洋服選びに時間をかけてしまい、走らないと待ち合わせの時間に少し遅れそうな感じです。せっかく早起きしたのに、結局、前と同じようになってしまいました。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
北橋駅前でバスを降りて、薫が待っているだろう改札口に向かって走ります。
(7時58分…ちょっとだけ遅刻してもいいよね)
電車の出発時刻は8時10分です。私は走るのを止めると、リュックからタオルと制汗スプレーを取り出しました。このままでは呼吸の荒い、汗臭い女として会う事になります。本物の彼女ならそんな事は出来ないはずです。タオルで汗を拭き取ると、制汗スプレーを振りかけました。あとはゆっくり歩いて息を整えれば問題ないはずです。
(すぅーはぁー。すぅーはぁー。落ち着いてやれば出来る)
改札口の前には不安そうな薫の姿が見えました。私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると覚悟を決めました。今日は私がしっかりとデートをリードしないといけません。そして、今日が私にとっても、薫にとっても忘れられない一日になればいいと思います。いつかはこの胸の想いと一緒に過去の思い出になるとしても……私と薫が過去を振り返って後悔しないように。
「七瀬さんとのデート……上手くいかなかったんだ」
薫の彼女は七瀬明日香で間違いないようです。周囲には付き合っている事を隠しているようですが、休日の同じ日だけは2人とも友達との遊びを断っていました。こんな雑な隠し方だとバレてしまうのも時間の問題です。私ならもっと上手く隠せるのに。
「はぁ~~……私が行きたいデートの場所なんて私にも分かんないよ。家の中でゲームとかでいいんじゃないかな」
でも、それは家の中で2人っきりになる事を意味します。狭い部屋の中で男女が一緒になるのは危険です。ムラムラした薫が強引にキスを迫るかもしれません。実際に薫はそういう男でした。
「ああぁぁ~~//// やっぱり家と個室は駄目! もっと広くて人が沢山いる所がいいわね。そっちの方が若い2人にはいいはずよ!」
変な事を思い出してしまい、また顔が熱くなってしまいます。別に2人がキスしようが何しようが私には関係ありませんが、薫が欲望に任せて強引に彼女に迫れば、警察に訴えられて学校を退学になります。そうなると伯父さんと伯母さんが困ります。そうならない為に私が阻止しないと駄目なのです。
(もしかしたら私が親戚だから、キスしても訴えたりしないからキスしたのかな?)
唇を人差し指でなぞりながら、フッと思ってしまいました。2週間経った今、薫とのキスの感触は消えつつありました。でも、キスされた時のドキドキも嬉しさも一緒に消えていくようで少し怖いです。薫と私の初めての大事なキスが、こんな風に簡単に思い出となって消えるのは正直嫌です。
そして、この胸に残り続けるモヤモヤした気持ちさえも、いつかは消える時から来るのも……。
❇︎
部屋のベッドの上に持っている服を広げていきます。そろそろ決めないと薫との待ち合わせ時間に遅刻してしまいます。前の待ち合わせみたいに慌てて走っていくと汗臭くなるのでそれも嫌ですが、あの時は学校の制服でした。せっかくのデート練習です。私服は気合を入れたいのです。
(七瀬さんは清楚系のファッションみたいだけど、私はボーイッシュ系……薫の中では可愛い女の子というよりはカッコいい女の子のイメージが強いんだよね)
ベッドの上にはスカートはほとんどなく、デニムのショートパンツやパンツ、オーバーオールばかりありました。これも昨日、急に誘って来た薫が悪いのです。仕方なく水色、紫色、オレンジ色の派手なボーダーTシャツとデニムのショートパンツを着る事しました。
ゴクリ。
「念の為に下着も選んだ方がいいよね////」
ソッと下着が入っている衣装ケースを見てしまいました。可愛い下着ぐらいは少しは持っています。薫は前にカラオケボックスでキスの練習をお願いしてきたのです。静かな場所があれば『下着を見せて欲しい』とお願いする可能性も十分にあります。
私は絶対に見せるつもりはないのですが、前みたいに強引に決行する可能性があります。その時にダサい下着を穿いているのを見られたら、絶対に馬鹿にされてしまいます。そうならない為に大人の女性として対処しないといけないのです。
(そう…これは仕方なく選んでいるだけで、薫に見せるつもりはないんだから…)
予想以上に洋服選びに時間をかけてしまい、走らないと待ち合わせの時間に少し遅れそうな感じです。せっかく早起きしたのに、結局、前と同じようになってしまいました。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
北橋駅前でバスを降りて、薫が待っているだろう改札口に向かって走ります。
(7時58分…ちょっとだけ遅刻してもいいよね)
電車の出発時刻は8時10分です。私は走るのを止めると、リュックからタオルと制汗スプレーを取り出しました。このままでは呼吸の荒い、汗臭い女として会う事になります。本物の彼女ならそんな事は出来ないはずです。タオルで汗を拭き取ると、制汗スプレーを振りかけました。あとはゆっくり歩いて息を整えれば問題ないはずです。
(すぅーはぁー。すぅーはぁー。落ち着いてやれば出来る)
改札口の前には不安そうな薫の姿が見えました。私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると覚悟を決めました。今日は私がしっかりとデートをリードしないといけません。そして、今日が私にとっても、薫にとっても忘れられない一日になればいいと思います。いつかはこの胸の想いと一緒に過去の思い出になるとしても……私と薫が過去を振り返って後悔しないように。
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