上 下
11 / 34
第2章 恋愛編

第11話 (明日香パート)

しおりを挟む
 薫に彼女が出来てしまった。

(どんな子なんだろう?)

 こんな時に別々の学校に通っていると相手の事が分からないから少し不安になってしまう。

(もしかしたら、見た目が良いだけで性格最悪の子かもしれない。薫がホテルで皿洗いのバイトをしているのを知って、金づるにしようとしているのかも! だってそこまでカッコよくないし。中の上ぐらいだし…)

 よく考えれば知り合って3ヶ月程度で薫を好きになる女の子がいるとは思えません。冷静になって考えれば、おかしな点が一杯ありました。

「確か友達に薫と同じ学校に通っている子がいたはずだから聞いてみないと…」

 中学校の同級生に頼めば、薫と仲がいい女友達ぐらいは分かるはずです。薫の為にも私の為にも知らないといけない事があるのです。

 ❇︎

「あっ…斎藤さん! 本当に久し振りだね。4ヶ月ぶりかな」

「うん、そうだね。それよりもお願いしていた事、何か分かったかなぁ?」

 同じ中学校に通っていたバスケ部のチームメンバーに、薫の高校に通っている女の子がいました。薫とは別のクラスだったので調べるのに苦労したそうです。

「それなんだけど……特に仲が良い女の子は3人だけだったよ。その中で最近知り合ったばかりの女の子はこの2人だけだよ」

 友達のスマホには2人の女性の画像が映っています。黒髪の大人しそうな女の子と茶髪のギャル系の女の子です。いかにも薫が騙されそうなタイプです。

「ありがとう。変な頼み事してごめんね」

「良いんだよぉ~。探偵みたいで楽しかったし。それよりも望月君と従姉弟だったなんて驚いたよ。なんで学校では隠してたの?

「ほら、それは従姉弟同士で比べられたくないからだよ。黙っててごめんね」

「まあ、なんとなく斎藤さんの気持ちは分かるよ。それよりも望月君に彼女かぁ~……ちょっと羨ましいなぁ~。私も彼氏欲しいよ」

 やっぱり高校生になったら彼氏を作りたいと思うようです。それは男の子の薫も一緒なのかもしれません。強引に誘われて断り切れずに仕方なくOKしたのかもしれません。

「そうだね。私もお盆までに作りたいよ。それでどっちの女の子が怪しいと思う? この茶髪の女の子はどういう性格なのか分かる? 服装が派手とか男遊びが激しいとか、そんな感じの女の子じゃないよね」

 人を見た目で判断しては駄目ですが、こっちの茶髪の女の子の方が悪そうなイメージに見えました。

「えっ~と……古谷萌花ふるたにもかさんだね。分かるのは茶道部で実家が和菓子屋さんをやっているぐらいかな。男遊びが派手なんって噂は一度も聞いた事ないよ。どちらかというとそういう事にはキッチリしている感じかな」

「そうなんだ……」

(この子は違うのかも…見た目と違って中身はしっかりしているんだね。だとしたら、こっちの大人しそうな女の子かな)

 女の子に告白されて私に相談するぐらいです。古谷さんのようなしっかりした女の子に告白されて不安になるとは思えません。だとしたら、付き合うのにもキスするのにも不安になる、もう1人の子になります。

「ねぇ、こっちの大人しそうな子はどんな子なのかな?」

「その子は私もよくは分からないけど…名前は七瀬明日香さんだよ。クラブ活動はしていないみたい。分かるのはそれぐらいかな。でも、斎藤さんも下の名前は明日香だったよね。なんか付き合ったら呼びづらそうだね」

「あっはは…そうだね」

(多分、この子で間違いないかも。なんだかそんな気がする。確かめるには薫に彼女の名前をさりげなく聞いて、教えてくれるか確かめるだけ)

 ❇︎

『デートは週に何回ぐらいがいいと思う?』

「そんなの分かる訳ないじゃない。まだ誰とも付き合った事ないんだから」

 夜にまた薫からの相談のメールが来ていた。最近は頻繁に薫が連絡を送るようになった。私としては嬉しさ半分、悲しさ半分といった感じです。こっちは水泳部の練習で疲れていたので適当に返事を送る事にしました。

『7回』

「くっふふふふ…」

 揶揄いメールを送ると少しだけスッキリしました。

 ピロリーン。

『巫山戯ないでまともに答えてよ。実際に何回ぐらいがいいか教えてよ!』

 すぐに返ってきたメールには、薫の必死さが込められていました。本当に困っているのだろう。しょうがないので少しだけ考えて返事を送る事にしました。

『3回未満。一緒にいる時間が多過ぎると私なら疲れちゃう。恋人以外とのプライベートな時間も大切だと思うよ』

「まあ、学生だと週末ぐらいしか、ゆっくりデートは出来ないだろうけどね」

 ピロリーン。

『分かった。話し合って決める事にするよ。ありがとう…おやすみzzz』

「なっ!」

 一方的に連絡をしておいて、要が済んだら寝ようとします。こっちも聞きたい事があるのに自分勝手な奴です。

『ねぇ、彼女の名前を教えてよ。写真とかないの? 見せてよ!』

 今度はこっちの質問に答えてもらう番です。すぐに返ってこなかったので寝ていたと思っていたら、3分後にメールと画像が送られてきました。

『これが彼女のシンディ・キンバリー。じゃあ…おやすみzzz』

「むぅ~~……そう来たか。絶対に教えないつもりだな。だったら意地でも調べてやるんだから」

 どう見ても送られてきた画像の女性は外国人です。真面目に答えるつもりはないようです。やっぱり私に知られるとマズいのかもしれません。

 


 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。

あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。 その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

お針子と勘違い令嬢

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日突然、自称”愛され美少女”にお針子エルヴィナはウザ絡みされ始める。理由はよくわからない。 終いには「彼を譲れ」と難癖をつけられるのだが……

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです

珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。 ※全4話。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

処理中です...