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第2章 恋愛編

第9話 (薫パート)

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「ごめん、薫君!」

「大丈夫だよ。待ち切れなくて早く来過ぎただけだから」

 明日香との最初のデート。2人とも待ち合わせ時間の30分前に、待ち合わせ場所の大型ショッピングセンターに集まってしまいました。今日はここで2人っきりで買い物デートの練習をする事になります。

「えっ~~と、今日の私どうかな?」

 両手を広げて明日香が聞いてきました。きっと服装を含めて、全体的な印象が気になるようです。白のノースリーブブラウスに、青と白のストライプスカート。そして、ピンクのハンドバッグを持っています。

「凄く可愛いと思うよ。いつもと髪型が違うし…あとは少し大人っぽいのはお化粧してるのかな? うん、とっても綺麗だよ」

「うぅ~//// もういいよ。ごめん。それ以上は褒めなくていいから」

「ふっふ…照れてる姿も凄く可愛いよ」

「もうぉ~//// 今日は揶揄うのは禁止だよ!」

「はいはい。一応は頑張ってみるよ」

 明日香とのやりたい事リストが少しずつ埋まっていく。デートをする、手を繋ぐ、可愛いと言う、好きだと言う……5年間溜めていた想いが少しずつ消えて、気持ちが軽くなっていくのが分かった。

(もっと早くこうすれば良かったんだ。実らない初恋の相手に固執しても苦しむだけなんだ)

 薫はデート中も時折り頭の中に明日香の姿が浮かびます。その度に隣にいる楽しそうな七瀬を見つめます。そうする事で明日香の姿が心のモヤモヤと一緒に消えていってくれます。

「ねぇ、薫君は夏休みの予定とかあるのかな? 良かったらでいいんだけど、私の家に遊びに来ないかな?」

「それはいいけど……家族に紹介してもいいの? 明日香のお父さんとかこういう事には凄く厳しそうな印象があったんだけど」

「あっははは…お父さんは優しいから大丈夫だよ。まあ、私が男の子と付き合うのは心配はしているだろうけど、基本的に賛成してくれると思うよ。それに薫君なら紹介しても大丈夫だと思う」

「そんなにハードルを上げられると緊張するよ。まったく……今日はお父さんに渡すお土産を2人で決めないとな」

「そうだね。今、お父さんはお酒のおつまみに結構こだわってるよ。甘いお菓子よりはチーズとかハムとかがいいかも。でも、これだとお中元みたいになっちゃうね」

「はっはは…だったらお土産とお中元の2つを選ぼうか。お土産はお父さんが好きな物、お中元は明日香とお母さんが好きな物を選ぼうか。ちょうど明日香が隣にいるんだから選ぶのは簡単になるよ」

「うん。薫君がお父さんとお母さんに気に入られるように私頑張ってみるよ」

 頑張って2人で探してみた結果、結局はお母さんが料理にも使えるという事でチーズとハムになってしまいました。お父さんが食べられる分が残るかはお母さんのさじ加減になりそうです。

「あっはは…思っていたデートとは違うものになっちゃったね」

「そうかな? 明日香の家族の事も少しは分かったし、いままでは友達が周りにいて明日香と2人っきりでこんなに長く話す事はなかっただろう。俺はとっても楽しいかったよ」

「うん…私も薫君を一人占め出来て嬉しかった。でも、ずっと胸のドキドキが止まらなくて死んじゃうかよ思っちゃった。あっはは…そんな事は現実にはないんだろうけどね」

「ふっふ…これは困ったな。もっとドキドキさせないと明日香は死んでくれないのか? もっとドキドキさせるならアレしかないんだけど……」

 ジィーっと明日香の白いノースリーブブラウスの胸の膨らみ見つめて、薫は真剣に考えているフリをした。

「ゔゔっ~~//// そういうのはまだ駄目だよ」

 薫の視線に気づくと、明日香は慌ててピンクのハンドバッグで胸元を隠してしまった。

「ごめんごめん。冗談だよ」

「もうぉ~、そんな事言うなら安心して家に連れて行けないよぉ~」

「あっははは」

(七瀬さんは凄く可愛いし、素敵な女の子だと思う。正直言って本当に楽しかった。一緒にいれば、いつかは明日香の事を忘れられると思う。でも、今はまだ明日香の幻影としか見られない。私にとっては目の前の恋人はまだ明日香・七瀬という幻影なのだ)

 休日の土曜日と日曜日のどちらか1日は明日香と2人っきりでデートする事に決まった。さすがに友達の遊びを断り続ける理由が見つからないだろうし、2人の時間の都合が合わない時もある。周囲にはまだ付き合っている事は秘密にしないといけないのだ。


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