病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第五十六話 謎が解けた

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「ほぼ間違いないわね。でも、移動方法が謎なのよね。その子、空飛べないでしょ?」
『飛べない。いつも寝てるか土下座してる』

 お姉さんに聞かれて、知っていることを答えた。
 でも、アイツが

「いやいや飛んでたよ。一分以上も空中飛んでコウモリ斬りまくってたぜ」

 と嘘ついて邪魔してきた。

『それはない。アイツは超雑魚だから魔物倒せない』

 やっぱり別人だ。レナスが剣振り回して魔物を倒している姿が想像できない。

「いやいやオオトカゲもオオカマキリも凄い速さで瞬殺してたぜ。お前よりも速いんじゃねえのか?」
『じゃあ今からどっちが速いか試してみるか?』

 そこまで言うなら瞬殺されても文句は言えない。
 腹に一発重いのブチ込んで、床の味を覚えさせてやる。

「ピーちゃん、やめなさい」
『チッ、命拾いしたな』

 またお姉さんが止めてきた。アイツのヨダレで床を汚したくないらしい。
 あとで外でやるしかない。無駄だけど、帰り道には気をつけて帰るんだぞ。

「それでどうやって飛んでいたの? 魔法か何か?」
「いえ、普通に翼……じゃなくて、俺にだけ見える翼で飛んでました」
『お前、何言ってんだ? 頭おかしいのか?』

 みんなが優しいからって、僕まで優しくすると思うなよ。

「分かってねえのはお前だよ。達人クラスになると凄すぎて幻の翼が見えるんだよ」
「それはないわね」
「ああ、絶対ねえ」
「ありえませんね」

 みんなも優しくするのをやめてしまった。
 お姉さん以外にもおじさん、お兄さんも誰も幻の翼は見えないと言っている。

「だから本当に見たんだよ! 達人に会ったことないだけだろ!」

 それでもアイツは見たと言っている。
 大嘘ついてまで、みんなに構ってほしいなんて可哀想な奴だ。
 あっちのテーブルに飲みかけのミルクがあるから、それ飲んでママに所に帰るんだな。
 ママならお前の言うこと絶対信じてくれるから。

「アトラス君、落ち着いて。話を信じてないわけじゃないから。どんな翼が見えたのか教えてちょうだい」
「えっ、どんな翼って……黒くてコウモリみたいな翼でした。倒していたコウモリの翼とそっくりでした」

 あれ? 僕もレナスの背中にコウモリみたいな翼なら一瞬だけど見たことある。

「なるほど。もしかすると……」

 僕と同じようにお姉さんも考えていたと思ったら聞いてきた。

「ピーちゃん、そのレナス君にピーちゃんが倒したコウモリを持っていったことあったわよね?」
『あった。風呂場でコウモリの血飲んでた』
「なるほど。謎は解けたかもしれないわね」
「どういうことですか?」
『?』

 何が謎なのかさっぱり分からない。
 でも、余計なこと言うとアイツと同じ馬鹿仲間にされてしまう。
 ピィ~~も言わずに黙って聞いた。

「まず、ピーちゃんには言いにくいことなんだけど……【浮気】されているわよ」
『僕、浮気されてるの⁉︎』

 知らなかった。付き合っているバードフレンドもいないのに浮気されていた。

「ええ、きっとピーちゃんが持っていたコウモリの死体の中に生きていたコウモリがいたんでしょうね。それをレナス君が助けて、【従魔】にしたのよ。その従魔がドラゴンの血を飲んで、人を持って飛べるぐらいに【進化】したの。両腕に二匹飼わずに、背中に一匹飼っていたのよ」
『き、気づかなかった』

 あの野朗、僕に隠れてコウモリ飼ってた。
 しかも僕にコウモリの為に危険なドラゴンの血を取ってこさせた。
 みんなにはアクアドラゴン倒してきたって言ってるけど、死にそうな目に遭った。

「これが飛べる理由ね。問題はこっちよ。G、F、Eとダンジョンを進んでいるわ。次はDに行くはずよ」
「間違いねえな。それにちぃとヤバイ状況だ。おそらくコウモリの超音波で【逆従魔】にされている。髪が真っ白になっているのはその証拠だ。子供の意識はもうないだろうな」

 なんか深刻な話になっている。おじさん冒険者がお姉さんと話してる。
 魔物を飼っているじゃなくて、レナスが魔物に飼われているらしい。
 すごく想像できる姿だ。間違いなく飼われている気がする。

「その可能性は高いわね。家出じゃないとしたら、可能性は【復讐】ね。ピーちゃんへの敵意も仲間をやられたことからでしょう。そして、返り討ちに遭ったことで、更なる強さを求めてダンジョンを転々としているのよ。ピーちゃん、命狙われてるわよ」
『ピィ‼︎ 僕が気をつけないといけないの⁉︎』

 しかも、アイツじゃなくて、僕の方が夜道に気をつけないと駄目みたい。
 命助けてやったのに、命狙われるなんて、恩知らずなコウモリだ。

「その子の家には帰らない方がいいかもしれないわね。待ち伏せされているかもしれないわ」
「だからって、隠れているわけにも放置するわけにもいかねえだろ。力を付けていけば手に負えなくなるぞ」
「でも、空飛ぶ相手を捕まえるなんて無理よ。次の行き場所もDとしか分かってないし……」

 お姉さんとおじさん達の話を黙って聞いていたけど、もう限界だ。言ってやった。

『行き場所は分かってる。ドラゴンフルーツの森だ。そこでコウモリをぶっ倒す。怯えて暮らすなんて僕には出来ない!』

 来るなら来いじゃない。来る前にこっちから行ってやる。

「そうね。それが一番かもね。力を付ける前に倒すのが一番よ。でも、倒せるの? 前よりも力を付けているわよ」

 それなのにお姉さんが心配そうに言ってきた。
 超雑魚が頑張って、雑魚になったからって何が心配なのか分からない。

『誰に言ってんだ? アクアドラゴン倒した僕に勝てるわけないだろ』
「それが本当なら楽勝ね。今度は倒した証拠に鱗の一枚でも持ってきてね」
『大丈夫。レナスは小さいから袋に詰め込める。今度は持って帰る』
「おい、鳥。死ぬんじゃねえぞ」
『お前がな』

 お姉さんとアイツに約束すると扉を開けて外に出た。
 やれやれ世話の焼ける子供だ。僕はお前のママじゃないんだぞ。
 ちょっと手荒にお持ち帰りしてやるからな。
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