病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第四十九話 家に帰ってみた

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 廃村には緑子供、犬人間、ガイコツの三種類の魔物しかいなかった。
 ついでに寝れそうな綺麗な家も見つからなかった。
 これ以上、ここにいても意味がない。

『Fでも物足りないな。次はDでもいいかな?』

 ピーちゃん並に調子に乗っちゃった。キチンと順番通りいかないとね。
 倒した魔物の棍棒と剣は全部回収した。これで武器には困らない。
 でも、よく見ると剣なんて一回使ったら折れそうなぐらいボロボロだ。
 死体は買取らないって言ってたけど、棍棒と剣なら買取ってくれるかもしれない。
 石ころ売るついでに聞いてみようかな。

 出発の準備を済ませると光るトンネルを通り抜けて外に出た。
 中と同じで外もまだ暗かった。今から街に飛んでいけば、昼前には着くかもしれない。
 棍棒を使った加速斬りで、真っ直ぐ限定だけど瞬間的に速く飛べるようになった。

『よーし! 最速記録出しちゃいますか!』

 我慢して犬人間の血を飲んで、体調は万全だ。
 腕を回して翼を出した。方位磁石で街の方向も確認した。
 あとは飛ぶだけだ。

 真っ暗だけどハッキリ見える空の旅を続けて、明るくなった後も続けた。
 街に着いたのは驚きの昼前だった。高速落下で冒険者ギルドの屋根に着地した。
 さっさとお金を貰って、お母さんにお土産買って帰るとしよう。
 予定よりも遅くなったから、きっと心配している。

『お邪魔するよ』

 今度は足で扉を蹴り飛ばさずに、右手で軽く押して冒険者ギルドの中に入った。
 おじ様はそんな子供っぽい真似はしない。これが大人の扉の開け方だ。

『やあ、お嬢さん。お探しの小袋はこれでいいのかな?』
「うげぇ……」

 お姉さんにおじ様らしく挨拶すると受付に小袋を置いた。
 なぜか嫌そうな顔されたけど、もしかして少なかったとか?
 一匹残らず倒してきたから、これ以上は無理だと思います。
 まさか何日か泊まりがけで倒して、たくさん集めるのが普通なのだろうか。

「えっと、早かったですね。ダンジョンまで馬を飛ばしても半日以上かかるはずなんですけど……」
『半日だと? それは馬じゃなくて豚の話か? 悪いがもう取ってきた。さっさと金を貰おうか』

 どうやら帰るのが早すぎたから疑われているみたいだ。
 ごめんなさい、僕って馬より速いみたいです。
 なるほどなるほど、馬ってクソ遅いんですね。

「し、失礼しました。では、拝見させていただきます」
『うむ』

 お姉さんが謝ると袋の中を開けていく。
 どうやら石ころで問題ないみたいだ。
 石ころを赤、青、緑、茶色で分けている。
 一番多いのは茶色で、次に青、赤、緑だ。

「全部で三十一個ですね。何匹ぐらい倒したか覚えてますか?」

 お姉さんに聞かれたけど覚えていない。

『悪いな、百匹より先は数えるのをやめた。棍棒と剣は回収してきたから、そっちで数えてくれ』
「‼︎」

 収納袋を逆さまにして、床に棍棒とボロ剣をバラまいた。

「あの野朗、別の意味でヤバすぎだろ。人間に近い亜人系を皆殺しにしてきたみたいだ」
「それもたった一人で一日でかよ。どう考えてももう人間じゃねえよ。殺人鬼だ」

 前と違って吹き出している人はいない。
 僕のすごさがようやく理解できたみたいだ。
 大人しくコソコソ話している。

「えっと、こ、こちらはあとで数えさせてもらいますね」

 お姉さんが引きつった笑みでこう言ったけど、そんな時間はない。

『では買取りだな。急いでいるから待っている暇はない』
「申し訳ありません、おじ様、買取りだとしても数えないと計算できません。お待ちいただくか、お持ち帰りのどちらかになります」

 言われてみたらその通りだった。
 無理やり押し付けようと思ったのに駄目だった。

『仕方ない。ちょっとだけ待ってやろう』
「ありがとうございます、おじ様」
『うむ』

 おじ様、やっぱり素敵な響きだ。大人っぽく妥協するとお姉さんに感謝された。
 強気と優しさ、この二つを使い分けるのがおじ様みたいだ。

「お急ぎのようですけど、急用か何かですか?」

 棍棒とボロ剣を数えながらお姉さんが聞いてきた。
 ここは強気に答えるよりも優しさで答えた方がよさそうだ。

『久し振りにママのスープが飲みたくなってね。家に帰るところなんだよ』
「へ、へぇー、そうなんですね」

 なんか微妙な顔している。どうやら強気に答えるのが正解だったみたいだ。
 おじ様、なんて難しいんだ。

「棍棒六十六本、剣五十四本です。どちらも一本小銅貨二枚で買取らせてもらいます。【魔小石】は一個大銅貨一枚になります。——買取り金額は合わせて、小銀貨五枚、大銅貨五枚になります。よろしいでしょうか?」
『うむ。問題ない』

 凄い。お父さんのお小遣いを超えてしまった。これだと本当におじ様だ。

『クククッ。金持ちになってしまった』

 冒険者ギルドを出ると笑みが溢れてきた。
 お母さんのお土産どころか、新しい剣も買えそうだ。
 どちらも買うと家に向かって飛び立った。

 ♢♢♢

『どうしよう?』

 久し振りの家だ。
 玄関から帰った方がいいのか、窓から帰った方がいいのか分からない。
 でも、ここは普通に扉から帰るのがいいと思う。お父さんも玄関から帰っている。

『た、ただいまぁ……』

 自分の家なのに知らない人の家みたいだ。
 元気に「ただいま」って言って入りたかったけど、そんな勇気はなかった。
 静かに玄関の扉を開けると、聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で言うのが限界だった。
 それなのにお母さんの部屋の扉が勢いよく開いて、お母さんが飛び出してきた。

「ああ! レナス!」
『た、ただいまぁ、お母さん、ぐえぇ!」
「何日間も何処行ってたよ! 心配したじゃない!」

 こ、殺される。お母さんが凄い力で抱きしめてきた。
 犬人間の二倍、いや、三倍ぐらいはある。

『く、く、苦しいぃ……』

 死ぬ前にお母さんの背中を手で叩いて教えた。
 お土産のケーキがある。殺すかどうかはこれを食べた後に決めてほしい。

「ああ、ごめんなさい。どこも怪我してない?」

 今死にそうになったよ、とは言えない。言ってはいけない。

『大丈夫、怪我してないよ。お土産にケーキ買ってきたから食べて』
「そんなのいいからお風呂に入ってきなさい! もうぉー、こんなに血だらけにして!」
『ご、ごめんなさい』

 全部返り血だけど、確かに汚れすぎてちょっと臭い。
 お母さんにフードローブを脱いで、急いで渡すと急いでお風呂に向かった。
 旅に出る前に入ったのが最後だから、もう何日間も入っていない。
 服も僕もどっちも臭っている。野宿はもうこりごりだ。まともなお風呂とベッドで休みたい。
 
『あぁ~、やっぱり家が一番落ち着くなぁ~』

 湯船にお湯を溜めている間、温かいシャワーを浴びていると、

「レナス、入るわよ」
『ええっ⁉︎』

 服を着たまま、お母さんが普通に入ってきた。
 ちょっと待て⁉︎ 親不孝な僕を水責め、ううん、お湯責めにするつもり⁉︎

「じっとしてなさい。お母さんが洗ってあげるから」
『い、いいよ。自分で洗えるから……』
「見られたら困る怪我でもあるの!』
『な、ないです!』

 やっぱりめちゃくちゃ怒っている。
 僕の頭からつま先まで、石鹸とタオルで念入りに洗っていく。
 死なないけど、死にたくなるほど恥ずかしい。

「次は食事よ。風邪引かないように、キチンと身体と髪を拭いて出てくるのよ」
『はぁーい』

 ふぅー、終わったみたいだ。全身ピカピカにすると満足したみたいだ。
 お母さんがお風呂から出ていった。これでゆっくり湯船に浸かれる。
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