病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第四十七話 神聖な村じゃなかった

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 棍棒を右手に持つと家の中に入ってみた。
 お宅のお子さんが外で倒れてますよ、と教えてあげないといけない。

『あっ、誰もいない』

 外も内もボロボロの家の中には誰もいなかった。
 誰もいないどころか家具も何も置かれていない。
 こんな空き家みたいな家で、どうやって暮らしているのか分からない。
 もしかして、もう泥棒に入られた後とか? それだとあの警戒心と敵意に納得できる。

『んん~~、寝よ』

 大きく背伸びすると床に寝転んだ。

『駄目だ。臭すぎる』

 こんな獣臭がする床で眠れるはずがない。
 ここ絶対に家畜を解体する専用の建物だ。

『別の家、探そ』

 こんなの人間が寝る家じゃない。
 棍棒持って立ち上がると家の外に出た。

『あっ……』

 そしたら、解体小屋の周囲を棍棒を持った緑子供が大勢囲んでいた。
 ザッと数えただけでも二十から三十はいる。
 絶体絶命のピンチだけど僕には翼がある。
 背中に翼を広げると飛んで、屋根の上に着地した。
 
『う~~ん、これは泊まるのは無理だね』

 考えなくても見たら分かる。緑子供達が怒っている。
 小屋に走ってくると屋根に登ろうとしている。
 下を覗いてみると立った二人が足場になって、二人の肩に足を乗せて、屋根によじ登ってくる。
 早くも三人の緑子供が屋根に登ってきた。

『ゴォー! ゴォー!』
『先に手を出したのは僕じゃないですからね!』

 一応言ってみた。話し合いが出来るとは思えないけど言った。
 三人の緑子供は獣みたいな唸り声を上げて怒っている。

『くっ!』

 やっぱり無駄だった。三人がいっせいに襲いかかってきた。
 一対一なら余裕だけど、いくら遅い棍棒でも三本になると難しい。
 だから仕方ない。避けると緑子供の腹に棍棒を振り回した。

『ごぶっ……!』

 崩れ落ちるのを確認する暇もなく、他の緑子供の棍棒がやってくる。
 それも避けると今度は尻に棍棒を振り回した。

『ごぉん……!』

 だけど、尻を押された緑子供が屋根を駆け降りて下に落ちていった。

『あっ、ヤバ……』

 僕はちょっと押しただけで、あとはアイツが走って落ちただけだ。僕のせいじゃない。
 残りの一人は安全の為に棍棒を左手で受け止めると、棍棒を握ったままの右手で腹を殴って優しく倒した。

『ちょっと何なんだよ、この村は?』
『ごごごごぶぅぅ……!』

 屋根に登ろうと屋根の縁を左手で掴んでいた緑子供の左手を足で踏んづけた。
 退けろ退けろ、と痛がっているみたいだけど、ごぶ、じゃ分からない。
 いい加減話しが出来るまともな子供に現れてほしい。

『……あっ』

 手を踏んづけている緑子供の首元がチラッと見えた。
 そこには白い小さな袋がぶら下がっていた。
 冒険者ギルドのお姉さんが言っていたヤツだ。
 コイツら人間じゃない。魔物だ。
 村じゃなくて、ダンジョンだった。
 光のトンネルに守られた神聖な村じゃない。

『ごめんごめん。こっちだったね』

 どおりで話が通じないわけだ。笑顔で謝ると右手の棍棒を振り上げた。
 その棍棒を緑子供の頭に思いっきり振り落とした。

『‼︎』

 ぐちゃとトマトみたいに頭が潰れて飛び散った。
 手加減する必要はなかった。これからは全部重い一撃だ。
 屋根に倒れている二匹の頭にも棍棒を振り落とした。

『これで全員か? 思ったよりも少ないな』

 倒した緑子供を屋根から蹴り落とすと、屋根の縁に立って愚民どもを見下ろしながら言ってやった。
 たったの三十匹で僕を倒すつもりなら舐められたもんだ。
 全員解体小屋に倒した後に放り込んでやる。

『おりゃー!』

 屋根から飛び降りると、まずは挨拶代わりに下にいた緑子供の頭を棍棒で潰した。

『ごぶぅ……!』

 まずは一匹だ。両手に持った棍棒を振り回して、襲いかかってくる緑子供を次々に叩きのめしていく。
 囲まれてヤバくなったら空に退避して、単独で離れているヤツを撲殺した。

『数が多いだけじゃねえか。ちょっとは楽しませろよ』

 これで人間二人分の強さのFなら弱すぎる。
 あっ、もしかしたら前にお姉さんが言ってたやつかもしれない。
 Fダンジョンにいるからといって、Fランクの魔物じゃないというやつだ。
 多分、この緑子供は鎧ウサギと同じGランクだ。
 全部倒したら違う魔物がいないか探してやる。

 ♢♢♢

『あらよっと!』

 最後の緑子供を解体小屋に放り投げた。
 手に入れた小袋は六個だった。中身を見てみると……

『宝石?』

 茶色い石ころが一個だけ入っていた。
 他の袋も開けてみると色が違う石ころが出てきた。
 こんなのがお金になるなんて、不思議だな。

 落ちている棍棒を収納袋に全部回収すると空に飛んだ。
 これでしばらくは剣を買う必要はなくなった。
 次の魔物は何を持っているか楽しみだ。
 剣を持っている魔物がいるなら、剣買わなくて済むぞ。

『あっ、犬だ』

 すぐに緑子供以外の魔物を発見した。
 二足歩行している灰色の犬を見つけた。
 手には何も持っていないから、奪えるのは小袋と命だけだ。
 犬人間の頭上まで飛ぶと、棍棒を両手で持って高速落下で振り落とした。

『ガッ……!』
 
 僕は両足で地面に着地、犬人間は顔面から着地した。
 この犬人間もハズレみたいだ。Fランクにしては弱すぎる。
 もっと僕を楽しませてくれる魔物がいないか探してやる。

 ♢♢♢

『あっ、いたいた!』

 やっと見つけた。剣を持ったガイコツが歩いている。
 それも三人組で歩いている。あれはどう見ても強そうだ。
 空を飛んでいる僕に気づいたのか、剣を向けて仲間二人に教えている。
 棍棒二本を持つと地上に降りた。手加減なしで骨をバラバラに砕いてやる。

 カタカタ。カタカタ。

 骨を鳴らして三匹のガイコツが走ってきた。
 骨だけだというのに、その動きは生きてる人間みたいだ。
 両手に持った剣を振り回してきたので、左手の棍棒で刃を受け止めて、右手の棍棒を腰に振り回した。

『‼︎』

 背骨が砕けて、ガイコツの上半身が落ちてきた。
 力は緑子供より上だけど、犬人間よりは下だ。速さも平均っぽい。
 武器持っているだけで、他の二種類の魔物の強さと大差ない雑魚だ。

 ふぅー、ちょっと期待しすぎてしまったようだ。
 それとも僕が強くなりすぎてしまったとか?
 だったらこれからやるのは弱い者イジメの暴力になっちゃうかもね。

『おりゃー! ”加速斬り”』

 受け止める必要も避ける必要もない。左手の棍棒を捨てて、背中の翼で前に加速した。
 圧倒的な力と速さで全てを打ち砕いてやる。
 両手で持った棍棒を二匹のガイコツの胸に向かって、連続で叩き込んでやった。

『‼︎』

 上半身が砕かれたガイコツ二匹がバラバラと地面に崩れ散った。

『ごめん。やり過ぎちゃった』
 
 レベルアップなんてないから、自分で習得させてもらった。
 立てた左手で地面に散らばっている三匹に笑顔で謝った。
 もちろん形だけで、心はまったく込めていない。
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