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第四十四話 旅に出ます
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ピーちゃんに二度目の敗北を味わわされた翌日、僕は決意した。
このままでは駄目だ。僕も魔物を倒しに行こうと決めた。
部屋のベッドには『旅に出ます。二、三日で戻ります。』と書き置きを残しておいた。
収納袋と剣を持って、背中からコウモリの大きな翼を広げて空に飛び立った。
『わわぁっ⁉︎』
翼を力いっぱい羽ばたかせるだけかと思ったら違った。飛ぶって結構難しい。
両方の翼を同時に動かすか、ちょっとズラすか、それだけでも違いがある。
時には翼を動かさない方がいい時さえもある。
それでも何十分、何時間も飛び続ければコツが分かってくる。
飛ぶってやっぱり楽しい。身体をうつ伏せにして目的地に向かって翼を羽ばたかせる。
直立した体勢よりも寝た方が飛びやすかった。
風の抵抗が少なくなるからだ。
『ハァハァ、結構遠いな』
飛び疲れてきた。目的地はピーちゃんが特訓したダンジョンだ。
鎧ウサギと一角オオカミがいるダンジョンだ。
地図と方位磁石で確認しながら飛んでいる。
家から思った以上に距離があった。着く頃には夜になっていそうだ。
暗闇でもハッキリ見えるけど、やっぱり夜になると眠くなる。
宿屋のある街か村でグッスリ眠りたい。お金があるなら眠りたい。
竜薬草をいっぱい持ってきたけど、これで泊めてくれる宿屋はない。
『つ、着いたぁ……』
予定通りに夜到着だ。なかなか岩山が見つからないから探しまくった。
森の中を探しまくって、ダンジョンの入り口のトンネルを発見した。
このトンネルの向こうに危険な魔物が生息している。でも、最弱の雑魚魔物だ。
コイツらに負けるようなら、木工職人になるしかない。
材料なら森の中で取り放題だ。
背中の翼を身体の中にしまうとトンネルを歩いて進んでいく。
トンネルの中を飛んでいけるほど、まだ飛び慣れていない。
トンネルを抜けると聞いてたとおりの草原が広がっていた。
『あっ、温かい』
森の中とここでは温度が違った。
春のような心地よい温かさが満ちている。
目を閉じて寝っ転がれば三分で眠れそうだ。
でも、その後は魔物達に襲われて永眠させられてしまう。
冬山じゃないのに、寝たら死ぬぞだ。
『さあ、ウサギ狩りの始まりだ』
収納袋から剣を取り出すと両手で構えた。
最低ランクのGだ。人間一人で倒せる強さの魔物だ。
『あっ、上から探した方が早いかも』
草原を警戒しながら進んでいたけど、気づいてしまった。
上から探した方が見つけやすいし、複数の魔物に囲まれる心配もない。
飛べるんだから飛ぶべきだ。
『見ぃ~~つけた!』
飛び疲れて翼が重かったけど、一匹の白ウサギを見つけて疲れが吹っ飛んだ。
ピーちゃんよりも身体は大きいけど、ピョンピョン飛び跳ねる姿は弱そうだ。
あれなら確実に倒せる。
『お前に恨みはないけど死んでもらうよ』
翼を生やしたまま鎧ウサギの背後に静かに着地した。
ヤバイ時の逃げる準備も万端だ。
これで勝てないけど、負ける心配もなくなった。
全力で戦える。
『やあああ!』
『‼︎』
両手で持った剣の剣先を上に向けて、鎧ウサギに向かって走った。
声と足音で気づかれた。鎧ウサギが僕の方を振り向いた。
『ヤァッ!』
でも、もう遅い。硬い岩肌に守れている頭に剣を振り落とした。
『キュゥ……!』
岩肌を叩き砕いて、刃が頭の半分まで食い込んだ。
『ハハッ、ハハハッ、やってやった、やってやったぞ!』
剣を頭から抜くと鎧ウサギが地面に倒れた。初魔物撃破だ。
魔物を倒した衝撃で両手が震えている。肉体的にも精神的にもだ。
鎧ウサギの脚を掴むと収納袋の中に突っ込んだ。
『よし、このまま皆殺しだ』
一匹倒しただけで満足するほど、僕は控えめな性格じゃない。
この草原の魔物を全部倒してやる。
『ヒャヒヒヒ! 待て待てぇ~!』
『キュゥキュゥ』
ウサギなんて怖くない。剣を振り回して、逃げる鎧ウサギを追いかけ回す。
コイツらも本能で分かっているみたいだ。僕が強いって。
『グゥルルルル!』
『うわぁ!』
本能で分からない馬鹿犬もいるみたいだ。
額から角を生やしたオオカミが唸り声を上げて僕の前に現れた。
ウサギよりも身体が大きくて怖いから、つい空に飛んでしまった。
でも、コイツもGだ。ウサギに勝てて、オオカミに負けるはずがない。
『鳥に出来て、僕に出来ないわけがない! 恐怖じゃなくて、勇気を出すんだ!』
戦い方は全部ピーちゃんが教えてくれた。
戦うのに必要なのは強さじゃない。【勇気】だ。
この身体にはドラゴンの血が流れている。
オオカミ程度を怖がる理由はない。
『行くぞ!』
剣を頭上に構えると、地上に向かって翼を羽ばたいた。
さらに高速落下する勢いを利用して、両腕を振り下ろした。
『やぁあああ!』
『ガッ……!』
気合いを込めた一撃で、オオカミの頭を角ごと切り裂いた。
『死にたい奴からかかって来い』
『キュキュッ‼︎』
剣を振り下ろした体勢のまま、ギロリと目だけ動かして、ウサギを睨みつけて言ってやった。
ウサギが急いで逃げていった。ゆっくり立ち上がると剣に付いた血を振り回して取った。
『本気で逃げれば、僕から逃げられると思ってるのか?』
くぅ~~、オシッコ漏らしそうなぐらい超気持ちぃ~~。
寝ずに考えたカッコいい台詞が二つも言えた。
数十人に囲まれた時を想定した台詞だったけど、ウサギ一匹相手でも気持ち良さバツグンだ。
そりゃーピーちゃんも生意気にもなるよ。この快感はクセになる。
このままでは駄目だ。僕も魔物を倒しに行こうと決めた。
部屋のベッドには『旅に出ます。二、三日で戻ります。』と書き置きを残しておいた。
収納袋と剣を持って、背中からコウモリの大きな翼を広げて空に飛び立った。
『わわぁっ⁉︎』
翼を力いっぱい羽ばたかせるだけかと思ったら違った。飛ぶって結構難しい。
両方の翼を同時に動かすか、ちょっとズラすか、それだけでも違いがある。
時には翼を動かさない方がいい時さえもある。
それでも何十分、何時間も飛び続ければコツが分かってくる。
飛ぶってやっぱり楽しい。身体をうつ伏せにして目的地に向かって翼を羽ばたかせる。
直立した体勢よりも寝た方が飛びやすかった。
風の抵抗が少なくなるからだ。
『ハァハァ、結構遠いな』
飛び疲れてきた。目的地はピーちゃんが特訓したダンジョンだ。
鎧ウサギと一角オオカミがいるダンジョンだ。
地図と方位磁石で確認しながら飛んでいる。
家から思った以上に距離があった。着く頃には夜になっていそうだ。
暗闇でもハッキリ見えるけど、やっぱり夜になると眠くなる。
宿屋のある街か村でグッスリ眠りたい。お金があるなら眠りたい。
竜薬草をいっぱい持ってきたけど、これで泊めてくれる宿屋はない。
『つ、着いたぁ……』
予定通りに夜到着だ。なかなか岩山が見つからないから探しまくった。
森の中を探しまくって、ダンジョンの入り口のトンネルを発見した。
このトンネルの向こうに危険な魔物が生息している。でも、最弱の雑魚魔物だ。
コイツらに負けるようなら、木工職人になるしかない。
材料なら森の中で取り放題だ。
背中の翼を身体の中にしまうとトンネルを歩いて進んでいく。
トンネルの中を飛んでいけるほど、まだ飛び慣れていない。
トンネルを抜けると聞いてたとおりの草原が広がっていた。
『あっ、温かい』
森の中とここでは温度が違った。
春のような心地よい温かさが満ちている。
目を閉じて寝っ転がれば三分で眠れそうだ。
でも、その後は魔物達に襲われて永眠させられてしまう。
冬山じゃないのに、寝たら死ぬぞだ。
『さあ、ウサギ狩りの始まりだ』
収納袋から剣を取り出すと両手で構えた。
最低ランクのGだ。人間一人で倒せる強さの魔物だ。
『あっ、上から探した方が早いかも』
草原を警戒しながら進んでいたけど、気づいてしまった。
上から探した方が見つけやすいし、複数の魔物に囲まれる心配もない。
飛べるんだから飛ぶべきだ。
『見ぃ~~つけた!』
飛び疲れて翼が重かったけど、一匹の白ウサギを見つけて疲れが吹っ飛んだ。
ピーちゃんよりも身体は大きいけど、ピョンピョン飛び跳ねる姿は弱そうだ。
あれなら確実に倒せる。
『お前に恨みはないけど死んでもらうよ』
翼を生やしたまま鎧ウサギの背後に静かに着地した。
ヤバイ時の逃げる準備も万端だ。
これで勝てないけど、負ける心配もなくなった。
全力で戦える。
『やあああ!』
『‼︎』
両手で持った剣の剣先を上に向けて、鎧ウサギに向かって走った。
声と足音で気づかれた。鎧ウサギが僕の方を振り向いた。
『ヤァッ!』
でも、もう遅い。硬い岩肌に守れている頭に剣を振り落とした。
『キュゥ……!』
岩肌を叩き砕いて、刃が頭の半分まで食い込んだ。
『ハハッ、ハハハッ、やってやった、やってやったぞ!』
剣を頭から抜くと鎧ウサギが地面に倒れた。初魔物撃破だ。
魔物を倒した衝撃で両手が震えている。肉体的にも精神的にもだ。
鎧ウサギの脚を掴むと収納袋の中に突っ込んだ。
『よし、このまま皆殺しだ』
一匹倒しただけで満足するほど、僕は控えめな性格じゃない。
この草原の魔物を全部倒してやる。
『ヒャヒヒヒ! 待て待てぇ~!』
『キュゥキュゥ』
ウサギなんて怖くない。剣を振り回して、逃げる鎧ウサギを追いかけ回す。
コイツらも本能で分かっているみたいだ。僕が強いって。
『グゥルルルル!』
『うわぁ!』
本能で分からない馬鹿犬もいるみたいだ。
額から角を生やしたオオカミが唸り声を上げて僕の前に現れた。
ウサギよりも身体が大きくて怖いから、つい空に飛んでしまった。
でも、コイツもGだ。ウサギに勝てて、オオカミに負けるはずがない。
『鳥に出来て、僕に出来ないわけがない! 恐怖じゃなくて、勇気を出すんだ!』
戦い方は全部ピーちゃんが教えてくれた。
戦うのに必要なのは強さじゃない。【勇気】だ。
この身体にはドラゴンの血が流れている。
オオカミ程度を怖がる理由はない。
『行くぞ!』
剣を頭上に構えると、地上に向かって翼を羽ばたいた。
さらに高速落下する勢いを利用して、両腕を振り下ろした。
『やぁあああ!』
『ガッ……!』
気合いを込めた一撃で、オオカミの頭を角ごと切り裂いた。
『死にたい奴からかかって来い』
『キュキュッ‼︎』
剣を振り下ろした体勢のまま、ギロリと目だけ動かして、ウサギを睨みつけて言ってやった。
ウサギが急いで逃げていった。ゆっくり立ち上がると剣に付いた血を振り回して取った。
『本気で逃げれば、僕から逃げられると思ってるのか?』
くぅ~~、オシッコ漏らしそうなぐらい超気持ちぃ~~。
寝ずに考えたカッコいい台詞が二つも言えた。
数十人に囲まれた時を想定した台詞だったけど、ウサギ一匹相手でも気持ち良さバツグンだ。
そりゃーピーちゃんも生意気にもなるよ。この快感はクセになる。
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